幸せのカタチ

コツコツ

窓が鳴ったような気がして、編み物の手をとめる。

コツコツ

あぁ、やっぱり鳴ってる、なんだろう?と、窓の向こうをすかして見ると、ひらりひらりと動いてる手の平が見えた。

立ち上がって窓に近づいて、そろそろと開ける。

ここは1階だけど、地面からは高い所にある窓だから危なくはない。

そうすると、あの人が中腰でしゃがんでいた。

あ、と声に出そうとすると、シーっと言うように口に指をあてて、そして、にっこり笑ってリンゴをぽんと放り投げてきた。

慌ててリンゴを両手で受け止める。

あの人は、これは俺達二人の秘密だからな、とでも言うように、いたずらっぽく笑って、また指を口にあてた、声を出すなよ、とでも言うように。

私はリンゴを持った両手をふくらみ始めたお腹の上に置いて、うなづく。

音を立てないように、そろそろとあの人は中腰で歩きながら、玄関の方にまわって行く。

バカみたい。

私は嬉しくてなんだか気恥ずかしくて、つぶやく。

バカみたい。

リンゴ一個で大袈裟なんだから。



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