見出し画像

紙パンツ・紙おむつリサイクル先進自治体に取材!

環境省が語る「ごみ問題」のいま。」でも紹介したように、環境省は「使用済の紙おむつのリサイクル(再生利用)等」を後押ししています。

実際、紙おむつのリサイクルはどのように行われているのでしょうか?前半では、3つの自治体の取り組みについてお聞きしました!

後半では、2024年4月から鹿児島県志布志市で正式に導入された“紙おむつの回収ボックス”の取り組みについてもご紹介します。こちらの回収ボックスには、私たちRefFプロジェクトの一環として「使用済み紙おむつから生まれた再生プラスチック」が素材の一部に使われています!


【鳥取県伯耆町】「使用済み紙おむつを燃料ペレット化。町内温泉施設のボイラー燃料へ」

最初にご紹介するのは、使用済み紙おむつを「燃料ペレット」にリサイクルする鳥取県伯耆町(ほうきちょう)の取り組みです。地域整備課の井本さんにお話を聞きました。

鳥取県伯耆町 地域整備課 井本さん。「伯耆町は住民1万人程度の小さな町。町の規模に合ったリサイクルを検討しました」と語ります。

―伯耆町はいつから紙おむつのリサイクルに取り組みはじめたのでしょうか?経緯を教えてください

井本さん「紙おむつのリサイクルの導入を検討しはじめたのは2010年ごろからになります。当時、2か所のごみ焼却施設を1か所に集約したいとの思いがあり、目標達成のためには燃えるごみの約3割の削減が必要になりました。そこで、これまで焼却処理していた水分を含む生ごみや高齢者の介護施設から排出される大量の紙おむつの削減が焦点になりました

伯耆町で回収された事業系の紙おむつのごみは燃料化システム(写真左上・右上)の活用により、燃料ペレットとして生成されます(写真左下)。

ー現在はどのように紙おむつの回収やリサイクルを行っているのでしょうか

井本さん「介護施設や医療機関、保育所などから排出される使用済み紙おむつを回収し、燃料化システムを活用して、紙おむつのごみを燃料ペレットとしてリサイクル。町営の温泉施設のボイラーの燃料として活用しています。燃料ペレットを使用することで温泉施設のボイラーのガスの使用量を約3割減少でき、運営コストも削減されました」

ー紙おむつリサイクル全般についてはいかがですか

井本さん「紙おむつのリサイクルは地域の規模やニーズに合わせて、再利用を促進する取り組みを進めることが重要ではないでしょうか。そのためには行政と民間企業、住民が連携して進めていく必要があると思います」

【静岡県掛川市】「ごみ減量日本一の市がチャレンジする、使用済み紙おむつのリサイクル」

次にご紹介するのは、いままさに紙おむつリサイクルへの第一歩を踏み出したばかりの静岡県掛川市。「ごみ減量日本一(※)」にもなった、ごみ減量とリサイクル意識の高い地域です。環境政策課 石山さんと谷中さんに取材しました。
※令和2・3年度 環境省 一般廃棄物処理実態調査(人口10万人以上50万人未満の自治体)

静岡県掛川市役所 協働環境部 環境政策課 谷中さん、石山さん(写真左から)。同市では、2005年に「クリーン推進員制度」を発足。現在も市民がクリーン推進員としてごみの分別指導に積極的に関わっています。

ー掛川市は2023年に『おむつリサイクル・ごみ減量推進会議』を設置し、現在までに計6回の会議を開催されています。取り組みについて教えてください

石山さん「会議では使用済み紙おむつをはじめ、製品プラスチック、生ごみ、剪定枝・落ち葉の4品目を新たな分別項目として検討を進めています。この4品目をあわせると、市で焼却されているごみの約4割にもなります。つまり、有効活用できる資源を燃やしてしまっていることにもなります」

谷中さん「現在、使用済み紙おむつは焼却されていますが、焼却にかかるコストやCO2排出量の削減の観点からも資源化を進めていくことが必要であると考えています」

ごみ減量推進会議は、学校関係者や自治会区長など市民参加型で開催。2025年度には、まずは製品プラスチックの分別回収がモデル地区で実施される予定です。

ー今後、紙おむつのリサイクルはどのように進めていくのでしょうか?

谷中さん「紙おむつのリサイクルには『水平リサイクル』『RPF(※)の大きく2つの方向性があると考えています。ただ、現時点では、回収スキームやコストなどの課題もあるため、まずは老人介護施設などの事業系ごみを対象に分別回収を行い、RPFへのリサイクルを検討している段階です」
※RPF (Refuse Paper & Plastic Fuel)とは、廃棄物を原料として製造された固形燃料のこと。

石山さん「“紙おむつから紙おむつをつくる“『水平リサイクル』はリサイクルとしては最上級のものだと考えています。短期的にはRPF製造を検討していますが、長期的には水平リサイクルも視野に入れています」

【鹿児島県志布志市】「使用済み紙パンツ・紙おむつの回収をスタート!ユニ・チャームとの取り組み」

最後にご紹介するのは、ユニ・チャームと連携して紙おむつの水平リサイクルの実証実験に協力いただいている鹿児島県志布志市です。
これまでにも、市の1/6の人口規模で紙おむつのテスト回収が行われてきました

そしてついに!2024年4月からは「紙パンツ(紙おむつ)」が市の資源ごみ回収品目として正式に導入されるんです!
志布志市役所のみなさんにあらためてお話を聞きました。

鹿児島県志布志市役所 市民環境課 桑水さん、留中さん、松永さん(写真左から)。「紙パンツ(紙おむつ)専用回収ボックス」の設置に伴い、市民からは「家の中に紙おむつを長く置かなくてよくなった」という声も届いているそうです。

ー4月から「紙パンツ(紙おむつ)」の回収がはじまります。モデル回収を経て導入された経緯を教えてください

留中さん「2019年より実施されていたモデル回収では、当初は一般ごみを出す場所での排出をお願いしていました。その中で、大人用紙おむつは試算の半分も排出されていませんでした。志布志市の紙おむつ専用ごみ袋には名前を記入して排出するルールがあるため『紙おむつの使用が周りの人にわかってしまい、紙おむつのごみを出すのに恥ずかしさがあるのではないか』と推測しました。

そこで、紙おむつ専用回収ボックスを設置し、“紙おむつのごみを出している”ことが周りの方から確認できないようプライバシーに配慮しました。

4月からは市内約500か所のごみステーションに紙パンツ(紙おむつ)専用の回収ボックスを設置し、市全域において週1回の回収を実施。大人用紙おむつの回収率の向上をはかっていきます」

回収ボックスはごみ集積所のほか校区公民館にも設置。誰でも利用することができます。

ー今後の展望について教えてください

留中さん「以前は埋め立てごみの約1~2割が紙おむつごみ(重量ベース)でした。今回の施策が実施され、事業系の紙おむつごみまで回収されるようになることで、将来的には紙おむつのごみの量が1割程度になることを目指しています

・・・・・・・・・・・・

【アロン化成&ユニ・チャーム】回収ボックスには、使用済み紙おむつから取り出した『再生プラスチック』を使用!

4月から志布志市に設置される紙おむつの回収ボックスには、私たちRefFプロジェクトが使用済み紙おむつから取り出した「再生プラスチック」が素材の一部として使用されています!

回収ボックスを作成したアロン化成株式会社 管材事業部の中居さんと、ユニ・チャーム RefFプロジェクト 素材チームの川端さんにお話を聞きました。

◎アロン化成 中居さん

アロン化成株式会社 管材事業部 管材新事業推進部 中居さん。アロン化成はプラスチック製品の加工品を多く手がけています。回収ボックス「ステーションボックス」もそのひとつです。

ー回収ボックスのフタに、再生プラスチックが使用されています。作成時に苦労されたことは?

中居さん「会社としても、使用済み紙おむつから取り出した再生プラスチックを素材として使用するのは初めての試みでした。再生プラスチックの特性上、通常のプラスチック製品を作成する手法では成型が非常に難しく、なかなかうまくいきませんでした。試行錯誤を重ね、特殊な製法を採用することで作成することができました」

ー初めてのチャレンジならではのご苦労があったんですね。紙おむつのリサイクルについてはいかがですか

中居さん「アロン化成では排泄介護用品も扱っていますので、今後、紙おむつのごみの量が増えていくことは認識していました。紙おむつメーカーのユニ・チャームが自らリサイクルの仕組みを構築しようとしているのは、企業姿勢として素晴らしいこと。そのリサイクル事業に参画するのも重要なことだと考えています。環境省も紙おむつのリサイクルを推進していますし、全国に普及していただきたいと思っています」

使用済み紙おむつから取り出した再生プラスチックは、回収ボックスのフタの素材に使用されています(写真左)。ペレット状の再生プラスチック(写真右)。

◎ユニ・チャーム RefFプロジェクト 川端さん

ユニ・チャーム RefFプロジェクト 素材チーム 川端さん。RefFプロジェクトのメンバー紹介にも登場。「再生プラスチックも継続的に循環できるものにしていく必要があります」と語ります。

ー回収ボックスの素材に、再生プラスチックを活用したねらいについて教えてください

川端さん「いま、紙おむつを使用されているのは、赤ちゃんのお世話や高齢者の介護をしているご家庭だと思います。そうした限られた方だけではなくて、再生プラスチックを素材に使用した紙おむつ回収ボックスが市民のみなさんの目に触れることで『市民のみなさんの活動が、実際にリサイクル製品を生み出していることを実感していただく機会ができる』ことを志布志市にご提案しました

ー今回、紙おむつのリサイクルに取り組むいろいろな自治体をご紹介しています。ほかの自治体の取り組みについて感じられたことは?

川端さん「RefFプロジェクトとして⽬指している、 “紙おむつが紙おむつになる”⽔平リサイクルは、リサイクルとして重要な取り組みですが、⾃治体さんによって紙おむつごみの状況や考え⽅はそれぞれ異なります。それぞれの状況や段階に合わせて、検討していただけると良いと思います。

例えば、鹿児島県大崎町でも、再生プラスチックを使用した『ごみ回収袋』の実証実験を行っています。こうしたマテリアルリサイクルなどのバリエーションを用意することで、いろいろな自治体さんが紙おむつのリサイクルに参加しやすくなると考えています

あとがき

紙おむつのリサイクルへの取り組み方は、自治体の規模やニーズに合わせてさまざまです。取材では自治体から「紙おむつのリサイクルに取り組む自治体が増えていけば、解決できる課題もあるかもしれない」というコメントもありました。

これから、紙おむつのリサイクルに取り組む自治体が増えるためにも、まずは多くの方に「紙おむつはリサイクルできる」ことを知ってほしいです!

そして!この春、RefFプロジェクトの製品が一般発売されます。こちらのnoteでも詳しくご紹介する予定ですので、お楽しみに!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!