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スタンフォードの自分を変える教室

スタンフォードの自分を変える教室
ケリー・マクゴニガル
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著者は、スタンフォード大学の心理学の教授です。彼女の講義は大人気で毎年満員。本書は、そんな彼女の講義をベースにした1冊になります。
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たいていの人は自分のことを「意志力が弱い」と感じています。米国心理学会によると、目標を達成できない最大の原因としてアメリカ人が最も多く挙げているのが「意志力の弱さ」だそうです。
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これまで、読者に目標設定をすすめ、目標を達成するための方法を説く本はたくさんありますが、方法を知るだけで事足りるならば、誰もが新年に立てた目標はことごとく達成されています。
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本書は、スタンフォード大学で開講された講義をもとに執筆されて本であるため、授業に合わせ10週間の講座(大学では週1回の講義)を受講する形で構成されています。
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なので、1章を読み終わったら、その章で学んだ1つのことを1週間やってみることが良いそうです。ただし、読み進める前に取り組みたい課題を1つ設定してからスタートになります。
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☞1章:やる力、やらない力、望む力
イエスと言うべき時にイエスと言う、ノーと言うべき時にノーと言うためには、やる力とやらない力だけでは成り立たちません。実は、本当に望んでいることはなんなのかを思い出す力「望む力」が必要だそうです。
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まず、改善したい具体的な意志力の問題について、やるべきことは何なのか、なぜ誘惑に負けてしまうのかを特定します。
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そして、1日のあいだに行った決断について振り返ります。自分がいつ目標を達成するための選択、あるいは妨げる選択をしたのか分析します。
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意志力のトレーニング方法として有効なのが瞑想です。瞑想は呼吸に注目し今ここに集中することです。これによって、ストレスが減少し、誘惑に惑わされないようになるだけでなく、最新の研究では禁煙や減量にも効果があると実証されています。
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☞2章:意志力の本能
意志力には、心拍変動が関わっています。人は息を吸うと心拍数が上がり、吐くと心拍数が下がります。心拍数が上がると交感神経が働き、行動しやすい状態になります。一方、息を吐くと心拍数が下がり、副交感神経が働きリラックスした状態になります。また、呼吸のペースを遅くすると、前頭前皮質が活性化し心拍数も上昇します。なので、吐く方をゆっくりにして呼吸に集中するだけでも瞑想に近い効果が得られます。
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また、睡眠が足りないと意志力が低下するそうです。睡眠不足の状態では、体や脳の主要なエネルギー源であるグルコースを使用することができません。疲れていると、血液中のグルコースが細胞に吸収されにくいので、細胞がエネルギー不足となり疲労を感じます。すると、体や脳はエネルギーを欲しがるので、結果的に甘いものが食べたくなるそうです。最近やたら甘いものを欲する人は、睡眠をしっかりとると良いと思います。
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☞3章:疲れていると抵抗できない
寝不足や疲れている時、人は誘惑に弱くなるそうです。学生の時のテスト期間になると食や身だしなみにルーズになる人が多かったかと思います。
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意志力は1日のうちで起きた瞬間がピークなので、仕事などで夜帰ってきた頃には意志力はほとんど使い果たしています。なので、やりたいことがあるならば、朝の時間を上手に使うと良いと思います。
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脳は、エネルギーをお金のように扱います。これを「エネルギー予算」と呼び、エネルギーがたくさんある時は消費しますが、少ないと節約するそうです。つまり、エネルギーが少ないと脳が自制心を発揮できず、適切な判断ができなくなるということです。
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では、エネルギーを補給するために甘いものを食べればいいのかという問題になりますが、確かにチョコレートを食べると血糖値は上昇しますが、急激に上昇するとその後には急激に低下があります。なので、多くの心理学者や栄養士が推奨しているのは「低血糖食」といって血糖値を一定に保ってくれる食べ物です。例えば、脂肪分の少ないタンパク質やナッツ類、豆類、食物繊維、フルーツなどですね。毎日お菓子を食べている方がいたら、ナッツに置き換えてみると良いと思います。
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☞4章:罪のライセンス
人は目標に向かって前進すると、逆にも目標から遠ざかるような行動をしたくなるそうです。なので、To Doリストは実はおすすめされていません。
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また、人には「明日はもっとできる」と考える習性があるそうです。なので、明日でもできると考えてしまい、先延ばしにする傾向かあります。対策としては、「毎日同じことをする」とルール設定することです。例えば、誘惑に負けてタバコを1本多く吸ったら、明日も同じ本数吸わなければいけません。誘惑に負けてお菓子を食べてしまったら、毎日同じお菓子を食べないといけません。すると、本当に吸っていいのか、本当に食べていいのかと考えられるようになります。
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☞5章:脳が大きなウソをつく
脳内でドーパミンが放出されると、人は誘惑に負けやすくなります。毎日何気なくスーパーで買い物をしてると思いますが、大手の食品メーカーは、糖分、塩分、脂肪を絶妙に配合した商品で僕たちの神経細胞を狂わせてきます。
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逆に、ドーパミンをやりたくないことに利用する方法もあります。例えば、貯金が嫌いな人に貯金をさせようとした場合、貯金をするたびに100万円が当たる可能性があったら、貯金をする気になるかもしれません。
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☞6章:どうにでもなれ
恐怖管理理論とは、人が自分の死を考える時恐怖を感じ、脳内でパニックになることです。いつかは死ぬと思うと、不安を打ち消すためにありとあらゆる誘惑に負けやすくなります。
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意志力の1番の敵は、「どうにでもなれ」効果です。例えば、前の晩飲みすぎて落ち込んだ人ほど、その翌日の夜も飲みすぎる傾向になります。罪悪感の反動で飲まずにはいられなくなります。
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対策としては、自分を許してあげることだそうです。自分に厳しくしても、意志力は強くなりません。そして、失敗した自分を許し、変わろうと決心することで自制心を取り戻すことができます。
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☞7章:将来を売りとばす
欲しいものがある場合、10分待つだけで、報酬に対する脳の受け止め方が変わるそうです。脳は、すぐに味わえる目先の快楽にとても弱いので、10分待つとたいてい落ち着きます。それでもまだ欲しければ手に入れてもよいです。
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人には、将来の報酬を割り引いて考えてしまう特徴があります。これを割引率といいます。割引率の考え方で有名なマシュマロ・テストと呼ばれる実験があります。
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4歳の子どもたちに、マシュマロをすぐに1個もらうのと、15分待って2個貰うか選ばせるのです。ここで15分待てた子どもは、マシュマロを見ないようにしたり、遠くに置いたりしました。待てる子どもは優秀な大人になる可能性が高いそうです。
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☞8章:感染した!
意志力は感染するそうです。また、人は周りの影響を大きく受けます。
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ある人の友人が肥満になった場合、その人が将来肥満になるリスクは171%増加しました。また、姉妹が肥満になった女性本人が肥満になるリスクは67%増加しますし、兄弟が肥満になった男性本人の場合は肥満になるリスクが45%増加します。
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一方、自己コントロールも感染するそうです。ひとりが禁煙すると、その人の友人や家族も禁煙する確率が高くなりました。
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自分が誰の影響を受けているのか、あるいは尊敬する人が誰か考えてみるとよいそうです。
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長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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