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もう一品の大人のご褒美

一品ずつ料理が提供されるより、一度に料理がテーブルに並んでくれた方が嬉しい。だから、僕は定食が好きだ。

飲み物を頼むときにいちいち店員さんと目を合わせなくて済むのも有難い。料理を食べる順番も自由に決められる。そういうところが気に入っている。価格も手軽で、味も庶民的で美味しい。

最寄駅の近くによく行く蕎麦屋がある。広めの店内にカウンター席が6割、残りはテーブル席だ。小綺麗なお店の窓からは線路が見下ろせる。

その店では、そばとカツ丼のセット、そばと天ぷらのセットがどちらも750円で売られている。財布に優しいので、つい通ってしまう。

その日も変わらず、そのセットを注文した。いつもと違ったのはそのあと。あろうことか、おつまみメニューの「イカの塩辛」も頼んでいる自分がいた。そんなこと、これまでなかった。それに、特に嬉しい出来事も悲しいことも無かったのに。

定食を食べる頻度は多いけれど、それ以外の追加の品を注文したことはない。チェーン店では「やよい軒」や「大戸屋」によく行くが、サイドメニューを頼んだことは記憶になかった。

もう一品を足すのは財布に余裕がないとできない。お金だけでなく、心にも余裕がないとできない行動だなと思う。

これまでは、倹約家な性格が僕にずっと染み付いていた。いかに美味しいものを食べるかより、いかに安く済ませるかの方を重視していた。

それが最近、どんな時間がしあわせだろうかと考えたときに「美味しいものを食べている瞬間」だと気付いた。

我慢して安いものを選んでいたのだなと気づけたのは、自分が料理をするようになったのも影響している。どんな食材を買っても2人で食べたら価格は半分になるので、そこまで高価になりようがない。つまり、何を食べるかの選定基準が価格ではなく「何を食べたいか」に変貌したのである。

メイン料理ともう一品。それは晴れの日も雨の日も関係なく食べたかったら頼んでいい。もう一品の注文で、その分これからの仕事も生活もやり抜こうと思える原動力になったりするのだから。


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