家庭教師の旅(1)〜ご家庭で飯を食う〜

 私は学生時代から現在にかけて15年間受験コーチをしているのですが、その中で最もキャリアの長いジャンルが家庭教師です。今回はそんな家庭教師としての体験談を気の向くままに書いてみます。
 家庭教師を始めたきっかけは、「お金が欲しい!」という欲望でした。当時はとにかく金欠学生で、深夜コンビニ・工場・レストラン(横浜のハードロックカフェ)で稼いだバイト代の殆どが学術書(メチャクチャ高い!)・家賃・交通費に消えてしまい、常に腹を空かせた状態でした。そしてこのままではまずいと考え、一般的に時給が高いとされる家庭教師のバイトに飛びついたのです。運良く横浜の家庭教師センターで自分によくしてくれる方と出会い、色々な案件を紹介してもらいました。
 仕事は入念な授業準備、ご家庭とのコミュニケーション、長時間の移動と大変ながらもやり甲斐があり、お金もある程度稼ぐことができました。そしてとにかく空腹であった私にとって「涙が出るほど」嬉しかったのが、時折指導後にいただくご馳走でした。ハンバーグ・焼き鳥・ステーキ・鰻・お鮨など、男子学生の大好物から高級なものまで無心でがっついたものです。また実家のある岐阜を離れて生活をする自分にとって、ご家庭での楽しい食事は「優しさ」・「温かさ」を感じる時でした。ある平日の夕方、指導先のお母様から「先生、もしよければ授業後にカレー食べませんか?」と電話が。私は「食べます!」と即答し、ご馳走にありつける幸せを噛み締めながらご家庭に向かいました。指導を終え、美味なカレーを頬張りながら娘様、お母様と談笑。緊張感がほぐれ、学校での出来事や趣味など多くの話題で盛り上がりました。そして、帰りの電車で「明日からまた頑張ろう」と思えたのです。
 家庭教師は塾や予備校と異なり、一講師が指導外でご家庭と密にコミュニケーションをとります。それを「面倒くさい」・「割に合わない」と思う方は家庭教師に向きません。しかし、今回書いたように家庭教師業を通して金では測れない「人情」を味わうことができます。この「無形の財」こそが私教育の中で家庭教師を特別なものにするのではないでしょうか。もし当時お世話になったご家庭の方々がこの記事をご覧になられたら一言、本当にありがとうございました!!
 

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