【痛い】ねずみよけのために超音波使うのやめてほしい【うるさい】

 最近すごい普及してないですか、ねずみよけの超音波。商業的な建物の入り口とか、搬入口、地下駐車場への出入り口。地下鉄の駅から地上へ出ることなくビルの地下階へ入れるような場所なんかにもよく流してある。中には外周をぐるっと丸ごと囲むように流している建物なんかもあって、近づくだけで具合が悪くなる。以前はまったく音のしなかった建物が急に使い始めたなと気がつくことも。
 人間には聞こえない音だなどと嘘を言ったのは誰なのだ、聞こえてるぞ、しかも街で使われている超音波にもいろいろと種類があって、うるさいけど我慢できなくもない程度の音から、2分も聞いてれば嘔吐するだろうなと思うほどのすさまじい音まである。具体的には、
・高速で舌打ちしづつける100人にミッシリ囲まれる
・後頭部の頭蓋骨の裏側を高速で爪ではじかれつづける
・小さい黒板を抱えて高速で引っかきまくる100人にミッシリ囲まれる(これが一番発狂しそうになる。拷問に使われたら機密も秒で吐くだろう)
 描写するとこんな感じ。ひどいものになると殴られたかのような衝撃で頭痛やめまいがしばらく残ることもある。しかも事前に察知することは不可能で、その場所を通りかかってはじめて痛みやつらさを感じて、ねずみさながらに逃げまどうことになる。
 私をよけてどうしようっていうんだ、おい。
 近所の家でセンサー式の超音波機のようなものを壁沿いに置いているところがあって(猫よけか何かだろうか)、人が通りかかるとセンサーが「カチ」と反応したあとに痛みをともなう高い音がまっすぐ飛んでくる。まるで縫い針を吹き矢かなんかのように耳に打ち込まれている感じなのだ。下校時間帯の小学生たちがよく「ウワッ! うるさい家だ!」「うるせえ!」などと言っているらしい。
 年をとるにつれて可聴域が狭まって聞こえなくなるという話はよく聞くけれども、いいかえれば子供や若者には高確率で聞こえているということだ(私は若者というほどの年でもなくなったが、必ず聞こえるので外出時につらいことがある)。ちょっと検索しただけでもこの手の音が聞こえる人はけっこういることがわかる。そういう人にとって街中でいつ襲ってくるともしれない不快な音は脅威である。
 超音波のある環境に身を置くかどうか選択できる状況だったらまだいい、この店は超音波がうるさいから入らないとかそういうレベルで。だけど音の被害にあう瞬間のほとんどは公道で、超音波流してる建物の前なんかをただ通行してるだけのときだぞ? なんでただ道を通るだけなのにひどい頭痛を起こされたり、めまいや吐き気と闘わされたりしなけりゃならんのだ。違う道通れとか言われる筋合いもない、なにせ公道なのだから。
 ねずみの被害が深刻なことはわかる、なんらかの対策も必要だろう、でも超音波を流すという手法が案として浮上したときに「オッいいね! これで何もかも解決だねヤッター!」ってなる前に、ほんのちょっとでいいから立ち止まって考えてほしいんですが。「あれ? 人間には聞こえないってほんとかな? 全人類、絶対聞こえないのかな?」
 企業や組織で決定権をもつ立場の人とか、これ必須スキルだよ。今、たまたま人間の感覚をだいたい画一化して想定する悪習のある社会だけど、ほんとはめっちゃいろんな感覚の人がいるからね! とくに公共性の高いものにかかわる場合は誰もが安心して利用できるように最大の配慮をめぐらせなければならない、公共ってのはそういうことだから。
 もしかして自分とタイプの違う誰かをシカトしてるんじゃないか。
 誰もが同じように利用できなくちゃいけないものが利用できない状態に追い込まれる人がいるんじゃないか。
 立場を問わずいつもそんなふうに振り返りながら、見直しながらいろいろなことを考えたいものだ。そして自分が壁に直面したとき、改めて思い返されてくることがある。それはたとえば車椅子ユーザーであり、視覚や聴覚の障害者であり、その他さまざまの可視的または不可視的な障害や不自由を抱えている人である。あるいは見た目または内面が社会の規範と折り合わない人。社会が前提とする分類からこぼれた人。どちらでもある人、どちらともいえない人。
 超音波が聞こえるとかそんなもんとは比較にならないレベルでそもそも公道や公共施設から排除されかけているような人はたくさんいる。そんなことが思い返されてくる。どっちがよりしんどいとかじゃなく、システムの欠陥はみんなで修正していかないとね。
 でもとにかく超音波使うのはやめて! 痛い! うるさい!