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【感想】映画「科捜研の女 -劇場版-」ネタバレあり~「いつも通り」が最高に良かった~_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0009

「科捜研の女とは」なんてわざわざ説明するまでもないくらい、圧倒的な知名度を誇る科学捜査ミステリードラマ「科捜研の女」が、遂に劇場版になった。

実は、あの相棒よりも歴史が長かったりもするが、相棒はスピンオフ含め何本も映画化されているのに対し、科捜研の女は今回が初の映画化。
昔っから好きだったアイドルが、何回も後輩たちにセンターを取られ続けて、でもようやくセンターを勝ち取ったみたいな、そういうカタルシスがある。
映画化がすべてではないし、「映画化=センター」という分かりやすい成功の図式は成り立たないけどね。
でもやっぱり、感慨深さは一入よね。

祖父母の影響で、幼い頃から科捜研(と相棒)を見ていたので、これは観に行かねばということで、行ってきました。
感染対策で客席は半分しか使用できないようになっていたが、その半分がほぼ埋まっていた。
客層は40代以上が大半。70代以上に見える方もそこそこいらして、改めて年齢層の高さを感じた。
私みたいな学生は少数派。もっと若い世代も観ればいいのに。
そんな中でも、小さなお子さん同伴の家族連れが2~3組ほど。素晴らしい英才教育です。こんなしょうもない大学生にはならないよう気を付けてね。(私がこんなしょうもない人間に育ってしまったのは、決して祖父母のせいではないし、科捜研のせいでもないよ)

映像は派手で美しくなっていたけれど、中身はいつも通りの科捜研の女でした。
でも、その「いつも通り」が最高に良かった

以下、ネタバレありの感想です。


冒頭これでもかというくらい、モミジが京都上空を彷徨う様を見せつけられる。
「お、相棒が始まったか?」と思う程の過剰演出で、一気にこれが劇場版であることが分かる。
気合の入り方が違うぞ、とんでもない事件が起こりそうだぞ、という観客の興奮を高めながら、遂にモミジが、カフェで読書をしていたとある女性の肩に落ちる。
それを摘まんだのは伊東四朗(友情出演)
そしてその女性にナンパを仕掛ける。
「待ち合わせをしていた芸者さんに袖にされてしまってね。良かったら食事でもどうかと思ったんだが、とても熱心にそれを読んでいるね。」
「ええ、新しい保存液の論文なんです!」

きたー!
いつもの榊マリコだ!!!
カフェで新しい保存液の論文(しかも紙媒体)を読んでいる人なんて、京都どころか世界中探しても榊マリコしかいない。

そして、科捜研ファミリーの日常がトントン拍子に描かれていく。
この序盤で既にいつもの科捜研って感じがして最高でしたが、まだまだらしさは止まらない。

カナダにいる元科捜研メンバーの相馬くん、マリコの元夫で警察庁勤務の倉橋、父親で科学鑑定監察所監察官の伊知郎、元所長でSPring-8勤務の宮前、元刑事部長の佐久間などなど、昔の主要キャラが勢ぞろい。科捜研オールスターズ
こういうキャラクターの幅広さが、長寿シリーズならではの良さだよね。

そして、このキャラクターたちにもいつも通りのテンションで無茶ぶりを要求するマリコ。
警察庁にはカナダ警察から捜査資料を一日で取り寄せるよう要求して、様々な依頼が舞い込んでいるであろうSPring-8には付着物の検証をねじ込んでいく。
科学捜査員の域を超えている

いつもの小芝居だって、きちんと盛り込まれている。
犯人に事件の鍵となる液体をかけられたマリコ。
この時点でマリコたちは真相に辿り着いているので、液体の対処はばっちりなのだが、犯人をおびき出すために、敢えて液体の効果が出ているフリをする。
そのときのお芝居が、もう完全にバレバレというか、明らかに犯人騙すためのものだよねって感じの演技で、科捜研の神髄を見た気がしました。
あと、土門さんの「ちょうど京都に撮影所があって」とか、蒲原さんの「アカデミー賞ものだったとか」というセリフがメタっぽくて笑っちゃいましたね。
こういうところでも笑いが取れるのが科捜研。

事件の細かいところを言ってしまうと「それはどうなの」ってところはあったけどね。
服に付着していた液体、明らかに誰かにかけられたような付き方してるのに誰も終盤まで気付かなかったり、衆人環視の実験中って設定なのに飲むべきカプセルを飲まずにくすねておけたり、都合良すぎない?って思う箇所はあった。
まあでも、それも含めて科捜研だよねって変に納得してしまったりもする。

ちなみに脚本は櫻井武晴さん。
私は相棒の脚本家として認識しているけれど、今だとコナン映画の方が有名なのかしら。
インタビュー『今回の映画は「お祭り」のつもりで書いた』と仰っており、深く頷いてしまった。
20年以上続いてきたドラマの初の劇場版で、レギュラーも昔のキャラも総出演。お祭り気分、堪能しました。

完全に余談だが、相棒の尊くん(ミッチー)の正体が明らかになるシーズン8の「SPY」と「神の憂鬱」は櫻井さんが手がけた物語。
この2作が本っ当に名作。尊くん初登場から広げまくった風呂敷を、こんなに鮮やかに畳んでいくのかと感激しながら見ていた。未見の方は是非。

映画ならではの映像美としては、ラストの東福寺、通天橋がとても美しかった。
鮮やかな紅葉と美麗な沢口靖子さん、大変マッチしておりました。
このシーン撮影しているときのスタッフさん、きっと楽しかっただろうなあ。

科捜研の女だが、今秋の放送も決定している。
シーズン21、初回の放送は10/14(木)だそうだ。
レギュラー放送もきっと、いつも通りの科捜研、いつも通りの榊マリコが楽しめるのだろう。
心待ちにしています。

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