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うんちは週に何回以下だと便秘と言えるか

「1日に何回食事をするのが良いか」と聞かれたら、ほとんどの人が「1日3回」と即答するでしょう。

でも、「うんちを1週間に何回するのが良いか」は答えに困ってしまうのではないでしょうか。

誰も教えてくれませんし、ほとんどの人は、うんちはしたくなったときに何となくしているだけのような気もします。

しかし、それでは困ります。

うんちは、食や運動、睡眠など、日々の生活の結果であり、体にとって不要なものを排出してくれる大切なものなので、何となくではダメです。

野菜不足、運動不足、睡眠不足、ストレス過多の現代社会においては、どう考えても便秘の人が増えると思います。実際に厚生労働省の国民生活基礎調査によると、便秘の有訴者(病気やけが等で自覚症状のある者)は、人口千人あたりでみると、平成19年は男性24人女性16.5人だったのが、平成28年には男性24.5人女性45.7人と増加しています。

今のところ、便秘だと大腸がんになりやすいという医学的根拠となるデータは無いようですが、うんちを体内にずっと溜めておいて、いいことなんてあるわけないと思います。うんちが大量に溜まって腸が詰まったら腸閉塞ですし、ずっとうんちを腸に溜めていると腸内環境が悪化して悪玉菌が増えるので腐敗物質も生まれます。免疫力が低下し、さまざまな病気を起こすことにつながります。

そこで、今回は便秘について知ることで、うんちの健康的な回数を探りたいと思います。


便秘の基準を知っていますか?

まずは、便秘の基準です。

たとえば、風邪であれば「鼻水がでる」「咳が出る」「熱が出る」など、とても分かりやすい症状がありますよね。

「こういう症状の時は、こんな風邪薬」というコマーシャルがたくさんあるほど、薬のラインナップも豊富です。つまり、情報が充実しているのです。

かたや便秘は、「あっ、もしかしたら便秘かも」と感じたとしても、なんとなくそのままにしておくことがほとんどではないでしょうか?

誰かに相談したとしても、「便秘でしょっ、そのうち治るわよ」という反応も少なくないと思います。

しかし、冒頭で触れたように「うんちは、日々の生活の結果」です。それが出ないということは、何かしらのサインかもしれませんし、特に子どもの便秘に関しては早めの対応をしないと悪化しやすいと言われています。

ちょっと、遠回りしましたが、連載の第2回で紹介した便の形状のように、便秘にも国際的な基準が存在します。それはRome委員会(注1)で定めたものが使用される場合が多いです。その診断基準をRome基準と言い、2016年に発表されたRomeⅣが最新のものになります。

RomeⅣの診断基準をもとに翻訳改変された内容が『慢性便秘症診療ガイドライン』(編集:日本消化器病学会関連研究会、慢性便秘の診断・治療研究会)に掲載されているので、それを紹介します。

1.「便秘症」の診断基準
以下の6項目のうち、2項目以上を満たす
 a.排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある
 b.排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便である
 c.排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる
 d.排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある
 e.排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である
 f.自発的な排便回数が週に3回未満である
2.「慢性」の診断基準
6カ月以上前から症状があり、最近3ヵ月間は上記の基準を満たしていること

ちなみに子ども版については、RomeⅢをもとに翻訳された内容が『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン』(日本小児栄養消化器肝臓学会 日本小児消化管機能研究会)に掲載されているので紹介します。

発達年齢が少なくとも4 歳以上の小児では,以下の項目の少なくとも2 つ以上があり,過敏性腸症候群の基準を満たさないこと
1.1 週間に2 回以下のトイレでの排便
2.少なくとも週に1 回の便失禁
3.便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往
4.痛みを伴う,あるいは硬い便通の既往
5.直腸に大きな便塊の存在
6.トイレが詰まるくらい大きな便の既往
診断前,少なくとも2 か月にわたり,週1 回以上基準を満たす

これらを見てみると、便秘と判断されるうんちの回数の目安は、1週間に2回以下、ということが分かります。

うんちが出たとしても、強くいきまなきゃいけないとか、痛みを伴うとか、うんちをし終わった後に残っている感じがするのはよくありません。ちょっとずつポロポロと出るのも良くないということです。

つまり、1週間に3回以上はうんちをした方がよいということです。

もちろん、最終的には病院で診断してもらうことが必要ですが、これらの項目を見ると、便秘の兆候に注意することはできますよね。


良い排便に必要なもの

さて、ここまで難しいことを書いてきましたが、前述の慢性便秘症診療ガイドラインでは、便秘を一言で言うと「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」としています。

乱暴ではありますが、さらにわかりやすく言い換えると、「良い排便にはスッキリ感が必要だ」ということだと思います。

言われてみれば当たり前のような気もしてしまいますが、「たかが便秘」、ではなく「便秘は大事」として、正しい知識を身に着けて日頃からケアすることが必要です。

注1:Rome委員会は、1996年に「機能性消化管障害診断のための作業部会」として組織された委員会で、科学者や臨床家等で構成され、2003年にRome財団となりました。機能性消化管障害とは、過敏性腸症候群や機能性の便秘・下痢・お腹の張りなどの疾患のことを言います。これらは検査では分からないため、診断基準がバラバラでした。それを解決するためにRome委員会が診断基準を検討することになったのです。Rome基準にはさまざまな基準があり、その1つに機能性の便秘に関する基準があります。


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