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「注文なんかいらない料理店」 32

人によっては自分のやりたいことをやれても楽しくないこともあります。

例えばアスリートですと日々の過酷な練習があって初めて競技者となりますし、その練習が必ずしも自身の望む姿を約束してはくれません。
音楽が好きで仮に成功したとして、常にいい作品が書けるのか、この先自分が満足できる活動ができるのかという不安に苛まれないとは限りません。
何かをするということは、大抵不安や困難と背中合わせなものなのです。

年明けに休載していた2本の連載を各々4話書いたのですが、そもそも才能の持ち合わせなどない訳で、その都度ない脳ミソを絞っては物語をひねり出さなくてはいけない。

で、よく考えたら「なんでこんな面倒なことやってんの?」って、今さらながらに思ったのです。
すごく自分自身が不思議に思えて、なんだか可笑しくなりました。

もう40年近く前、ムーンライダーズの鈴木慶一は「マニアの受難」で

ぼくは運べない 交換できない ものが好き
売りものにも 何にもならない ものが好き
ポケットにも 入れられない ものが好き
戦争になっても 持って逃げられない ものが好き

って、歌ってたんですよね。

それを思い出して、そうそうムダなことって魅力があるんだ、そういうことかって得心しました。

今日はぶりの照り焼きとけんちん汁を作りました。
奥さんに「けんちん汁って出汁に醤油味で良かったよね?」(そんなレベルなんですよ僕は)って聞いたら「そんなもの作らずに味噌汁でいいから!」と言われました。
レシピを見ないで勝手に作る自分への不信感ハンパない(笑)

もちろん慇懃に無視してけんちん汁を作りました。
おいしくいただきました。
ごちそうさま。

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