文化ホールからの大衆酒場。
本日はわが家の次女JKちゃっかりの吹奏楽コンクールに行ってきた。
憧れていた高校への入学が叶わず、どうしても入部したかった吹奏楽部へ所属する夢も散った春。
涙涙の季節を乗り越え、ちゃっかりが自分で探し出してきた次の道というのが、現在お世話になっている地元の社会人楽団である。
大人の中でたった1人の高校生。
同世代の子は居ない楽団であるが、美しい音色を奏でられる素晴らしい環境に身を置かせていただき、とても充実した日々を送らせていただいていることに感謝である。
週末は昼から夜まで練習を重ねながら迎えた本番のステージで演奏するちゃっかりは、やはり少し大人の顔つきになり、素敵な演奏を無事やり遂げたことを嬉しく思う。
ちゃっかりの演奏を聴き終え、コンクール会場を出た私とスナフキン。
「暑いなー!美味しいもの食べに行こう!」
駅地下の1番奥にあるそのお店は、とても活気があり、席は満席でものすごく繁盛していることが一目でわかった。
「なぁなぁ、なんでこのお店選んだわけ?」
スナフキンに訊ねてみると。
「ここまで歩いてる途中でおっちゃんが連れの友達みたいな人に、'あっこは旨くて安くて最高なんや!行こうや!'ってめっちゃこの店のことを話してるのが聞こえてきたからおっちゃんについて歩いてきた。」
やはりな、スナフキンよ。
こういう抜け目ない感じ、娘のちゃっかりにソックリだと感心してしまう。
しかしクラッシックを味わった文化ホールから大衆酒場に移動して乾杯ってのもいいじゃないかと大賛成の私。
店内に入るとキビキビ働くお兄さん達が美味しそうな料理を手際よくお客さんに運んでいる。
キンキンに冷えた生ビールを飲みながら楽しそうにお喋りし、旨そうにタバコを吸うおっちゃんやお兄さんやお姉さんがいっぱい。
休日の、しかもランチの時間帯に喫煙可能のお店なんて今のご時世では珍しい。
さすがは大衆酒場だと嬉しくなってきた。
嫌煙家の方やガヤガヤした雰囲気が苦手な人はまず選ばないお店であるが、その分わかりやすく安心して入れるってお客さんもいるはず。
ふと視線を上げると、さきほどまで私たちがいた場所、文化ホールで演奏していたと思われる女性のグループが楽器を片手に持ちお店に入ってくるのが見えた。
かしこまった場所から寛げる場所を選んで乾杯ってのも大人だけにできる楽しみではないか。
嬉しくなってニヤニヤしてしまう私とスナフキン。料理は想像以上に美味しいし、生ビールの入ったグラスはキンキンに凍らせてあるし、ご自由にどうぞ!って無造作に置かれているアルミの灰皿で遠慮なくタバコも吸える。
しかしである。
私たちの隣に家族連れが入ってきて座ったのだ。
3歳くらいの女の子と小学生くらいの男の子を連れているのを見てほろ酔いから現実に引き戻された気がした。
えっ⁈
この場所に⁈
なんで⁈
目でスナフキンに合図を送ると、スナフキンもえっ!?って顔をしていたので、アイコンタクトがまだ通じる夫婦なのは確認できた。
いやいや、そんなことは別にいいのであるが、その家族連れというのが、おじいちゃんおばあちゃんまでご一緒であり、場にそぐわない言動を繰り返す何が何やらぶりだったのだ。
「白いご飯ください。小さいスプーンと器もありませんか?」
はぁ!?
ここは大衆酒場だぞ。
小さいスプーンやら白いご飯をリクエストするならファミレスへ行け!
心の声が思わず小声で漏れてしまった私。
「まぁそうよね。ウチはドカ弁もちゃっかりも居酒屋は連れて行かんようにしてたからなぁ。」
スナフキンも小声で同意してきたので、2人でボヤキ酒モードに突入してしまったではないか。
「じゃお皿にいっぱいのフライドポテト入れて持ってきてくれない?」
チビちゃんたちの母親と思われる女性がメニューにない注文を更に続け、リクエストを受け付けてあげたお店の方が皿いっぱいのフライドポテトを3歳児の前に置くやいなや、家族全員が手を叩いて喜びながら言ったのだ。
「かーわいい!!おいちい⁈ポテトおいちい?おいちいねー!嬉しいねー!!」
iPhoneをチビちゃんに向けてパシャパシャ写真を撮り始めたのだ。
@大皿料理を食べるわが家のアイドル
インスタかツイッターでそんな写真をアップするつもりかーい!!
キンキンに冷えた生ビールを飲むピッチは上がるばかり。
ボヤキ酒なんてちっとも旨くないのに、図らずもお店の売り上げに貢献するスナフキンと私。
私たちは人様に偉そうなこと言えるほど立派な大人とは言えないアホな夫婦である。
しかしもし、いつの日か娘たちが子宝に恵まれ、おじいちゃん、おばあちゃんと呼ばれる時が来たらと想像して。
孫たちを連れて食事する時は、大人たちだけが楽しむ場所へは立ち入らないことを誓う乾杯をした。
時代おくれ夫婦のちっぽけな休日の誓いである。
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