本屋にて。
正月にお年玉で財布が膨らむのは子どもたちの特権である。金があるから物欲に拍車がかかるのも無理はない。
JKドカ弁はチャラチャラと友達と遊ぶのに忙しい。
対して妹のJSちゃっかりは暇である。暇と膨らんだ財布の中身を持て余しているから、買い物に連れて行けとうるさい。
夫スナフキンは元旦からちゃっかりの長い買い物に付き合わされることを察知し、先に焼酎を飲み、「あっ、残念‼︎運転できんくなったわぁ。」などとニヤニヤしている。
「ママっ!ママはお酒飲んでないよね?偉いわぁ。パパとは違うわぁ。」
運転手を確保したとばかりに媚びを売りはじめるちゃっかり。ほんまちゃっかりしてる奴め。
やれやれと車を出し、2人で買い物に出かけた。
「これ可愛い!これ買ったらいいよ!」
私の服を全部コーディネートしてくれるのはいつものことであるが、私に選ぶ服を自分が借りるつもりなのがバレバレである。
服を買ったら次はファンシーショップ。可愛い文房具をいっぱい買い、本屋さんにも寄りたいという。
「30分後にここに集合ね!」
そう約束して本屋の前で解散した。
大きな本屋さんをじっくり回るのは久しぶりである。
今は何が人気があるのだろうと様々なジャンルの棚をゆっくり回ってみる。
本屋さんに来る楽しみは、好きな本を探すだけではなく、本を選んでいる人を見ることである。
いっけんチャラい感じの男の子がビジネス書の棚の本を一生懸命読んでいたり、小学生の男の子が女の子の水着姿の表紙に目を奪われ、おじさん向けの週刊誌の棚の辺りを行ったり来たりしていたり。
面白いのが、女性向けに作られたと思われる家計簿の棚とか、モテるため、痩せるためなどのハウツー本のコーナーがガラガラだったことであった。
主婦層は、正月ぐらいゆっくりしたいだろうから本屋に足を運ぶ人が少ないせいなのかもしれないが、初売りにやって来た若い女性はたくさん見かけるのにもかかわらず、モテ本、痩せ本に興味を示す年齢層の女性がいないのは何故なんだろうと店の中の女性たちがどのコーナーにいるのか見渡してみた。
新刊の人気小説の棚あたりにポツリポツリと女性を見かけるが、男性の方が圧倒的に多い。
そして店の奥側にあるライトノベルというアニメ小説のコーナー、漫画コーナーに行ってみると。
いるいる‼︎若い女性がいっぱいである。
free!とか薄桜鬼とかわが家の姉妹の部屋で見慣れたアニメのポスターやポップが貼ってあるコーナーに10代、20代の女性が集まっていた。
アニメイトだけじゃなく、本屋さんでも人気アニメの漫画に集まる女性がたくさんいるようだ。
そこにはJSちゃっかりの姿もあった。
「何買うの?」
「ヘタリア!」
「面白いの?」
「可愛くて面白いの!」
そう言われてもアニメは何が何やらな私にはよくわからない。
ちゃっかりは一冊1000円の漫画を二冊買っていたが、レジにはそんな漫画を束にして5冊、10冊と抱えて並ぶ女性がいっぱいであった。
自分磨きや、異性を振り向かせることが書かれた本ではなく、架空の世界にいる美しい男の子が女の子に優しい言葉をかけてくれるようなアニメ本に心を奪われ、お金を使う人が多くなっているようである。
ブスとかデブとか女の子にイランことを言うような現実の男の子のために自分を磨く必要はなく、ひたすら美しく、優しい二次元の彼にうっとりするのだろうか?
帰宅したドカ弁にそんな話をしてみた。
「アニメ本が売れるのは、綺麗な男の子やってのもあるけど、それだけじゃない。アニメの声優さんを好きな人も買うからやわ。」
なるほどなるほど‼︎
絵だけではなく、声を好きになり、好きな声優さんが出ているアニメをさらに好きになるというわけか。
好きな声優さんが優しい言葉を放つことで、アニメの登場人物への気持ちも特別なものになっていくのかもしれない。
アニメで疑似恋愛をして満たされるのだとすれば、小説の中の登場人物や、現実の異性に対しての接し方への興味は薄れていっても仕方ないのだろうか。
なんとなく若い女の子たちのアニメ本人気の理由に合点がいった。
そういえば。
遠い昔、シティハンターの主人公、冴羽 獠の声が好きで、現実にこの人がいれば絶対好きになると思ったことを思いだした。
うぉーっ‼︎
思わず恥ずかしい過去を告白してしまったではないか‼︎
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