ケラトアカント-マって何?最終回
恐竜図鑑にでも載っているような名前の病の正体にたどり着くまでの何が何やらとは。
マイナス196度世界、液体窒素でのイボ退治。
そして再び悪性腫瘍の可能性があるなんて一体どんな運気の悪さなんだよ!
最後は神頼みとか仏参りなのかとか。
ちょっともうよくわからない精神状態になっていった私。
インターネットでイボ治療だのケラトアカントーマだのと調べまくりながら、恐ろしいことが書かれているのを見つけると手術するなら早い方がいいのかとか、いやいや良性腫瘍だという医師もいるのだから経過観察で自然消褪するのではないかと思い直してみたりを繰り返していたのである。
そんな時見つけたのが、イボ地蔵について書かれていたブログであった。
今はもう医師を引退されているという皮膚科医の方が、全国のイボ地蔵を奥様と一緒に回りながら執筆されているというのだ。
イボは免疫を上げれば治癒するという。免疫を上げるためにイボ地蔵にお祈りし、自分のイボは無くなるんだ!消えるんだ!と強く念じることで、本当にイボが消えてなくなるという、嘘か本当かというお話が書かれていた。
痛い液体窒素の治療を繰り返しても治らない患者さんに対して。
「イボ地蔵さんにお願いしておいで。」
そんなことを仰っていたというからビックリしたが、自分自身がえらいこっちゃな局面を迎えているのだから、神頼みってやつをやってみたくなった。
「全国のイボ地蔵さんリスト」なるものを辿っていくと、なんと私の通う書道の稽古場のすぐ裏にある神社が、イボ神様として挙げられていたのだ。
こんな近くにイボ神様がいらしたとは!
早朝から神社に向かい真剣にお願いしてみた。
すると。
ものすごい強風が背後で起こり、まるで大きな龍か蛇がうねりながら私の後ろを駆け抜けていったような感覚になったのだ。
ゾクゾクゾク!!!
鳥肌が立つってこんな感じだったのかなってくらいに不思議な感覚だった。
その後、毎日とはいかなかったけど何度か神社に足を運び、必死でイボ神様にお祈りした。
そして8月のお盆も過ぎた頃、何とも言えない違和感を鼻の中に感じ、鼻の入り口辺りを綿棒で軽く押してみたのだ。
次の瞬間だった。
どんどんどんどん溢れるように大量の白い膿のような角栓が飛び出してきたのである。
へそのゴマのような、耳垢の塊のような得体の知れないかさぶたの塊みたいなものまで飛び出してくるのだから恐ろしい。
そんな状態にありながら、心はいやに冷静に。
「コレってあの憎きケラトアカントーマの中身じゃないのか!?」
打出の小槌ならぬ、打出の綿棒か。
溢れ出て止まらないのだ。
えらいこっちゃなおできの中身が。
随分と時間が経ち、ようやく溢れ出るものが止まった。
鏡をマジマジ覗き込んでみると。
鼻が本来の形に戻っていた。
蜂の巣みたいな巨大なおでき、憎きケラトアカントーマなるものは消えていたのだった。
翌日、病院に行くと。
「よかった!!よかったですねぇ!!」
担当医と責任者の医師、看護士さんにものすごい喜んでいただき、涙が出そうになった。
感動覚めやらぬ私に向かって、責任者の医師が言った言葉は。
「早く早く!写真写真!!」
ん⁇
写真⁇
「鼻の中見えるように上向いてくださーい!」
パシャパシャとシャッターを切りながら滑稽なポーズを要求されることになったのだから何が何やらだ。
そういえば。
初診の問診票に「今後のガン医療発展の為に協力しますか?」って質問があり、はいに丸を付けていたことを思い出した。
「ケラトアカントーマの自然消褪例」として、学会で発表する資料の一部になるのだろう。
現在、まだクレーター状の跡が鼻の中に残っているが、日にち薬という感じで、数ヶ月単位で受診し、経過観察という状態まで回復することができたことを心から嬉しく思っている。
今回の件で強く思ったことを記しておきたい。
1.小さなおできも侮るなかれ。
2.抗生物質で治らないおできは要注意。
3.ガンのプロフェッショナルでもわかりにくい病名はある。しかし、たくさんの経験を元に「この症状ならオペは見送っても大丈夫だ」と判断してくれるのもやはりプロしかいないという事実。
4.免疫力は大切。免疫力が下がると病がやって来る。
5.イボ神様の存在。信じる者は救われる。
終わりに。
聞いたこともない珍しい病気に罹ってしまった時、焦ってインターネット検索してみると、情報として出てくるのは恐ろし気な説明だったりします。
この病気になったことがあるという方々のブログを何件か見つけられたのですが、「オペをし、今は経過観察です。」という方しかおられませんでした。
実際に体験した患者さんの言葉で書かれているもので、自分と同じ病名で、どのような経過を辿ったのかを知ることができれば、より現実的で身近に感じ取ることができるかもしれないと今回の件で実感しました。
ケラトアカントーマというちょっと珍しい皮膚腫瘍の病気があることを書いてみたのは、もしかして私と同じような状況になっている方がおられるかもしれないと考えたからです。
そんな不安を抱えている方のもとへ、私が書いたこのちょっとけったいな経過報告のような文章が届き、「なんや、大丈夫な気がしてきたわ!!」と思ってくださることを心から願っています。
最後までお付き合いくださった方、ありがとうございました。
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