空気公団のライブに行ってきました。



 11/22(水)、京都磔磔で行われたLIVE 空気公団2023『Hello! 今日の街、今日の君。』に行ってきました。

 空気公団は高校(20年近く前‥)の頃からファンで、ファンと言いつつ個人的に波長が合う時と合わない時の落差が激しく、聴いたり聴かなかったりしているうちになんとなく今日まで来てしまった(でも結局全アルバム聴いてるし曲もだいたいわかる)というなんとも言えない距離感で聴き続けているバンドです。

 そしてファンになった時から1回ライブ行ってみたいなとぼんやり思っており、その「ぼんやり」が20年経ってようやく成就したという形になります。



<ライブ会場>



 ライブ会場は京都の磔磔でした。

 磔磔は元々酒屋の酒蔵か何かだった場所を改築して建てられたライブハウスで、京都では結構有名な場所です。くるりがデビュー前にどうこうとかとにかくなんかそんな感じの尾ひれがいっぱいついてる場所です。
 見た目は「ライブハウス」というより本当に「酒蔵」「土倉」といった感じの場所で、初見だと駐車場の奥にポツンとある感じが少し気付きにくかったり入りづらかったりするかもしれませんが、中に入ると結構リラックスしたアットホームな空間になっています。また、ライブがスタンディングの時とテーブルが出てて飲食できるようになっている時があり、飲食できる時は結構普通のレストラン然とした場所になるのが面白いです。
※今回は飲食可能でした。

 立地が阪急烏丸と河原町の間と地図で見ても死ぬほど簡単な場所にあるのも、阪急沿線民としては非常に助かります。


<客層>


 「京都」というなんか文化程度が高そうでフワッとした芸大生がいっぱいいそうな場所なので、若者が多いかなと思いつつ、けど今時の若者って空気公団聴くのかな?と疑問に思いつつ、答え合わせする気持ちで客層を見てみたのですが、意外とアラフォー、アラフィフくらいの方が多かったように思います。

 ジャンル的には今海外で流行ってる(流行ってた?)シティポップとかそういうジャンルの琴線に触れる音なので外国人もいるのかな?と思いましたが、パブで1000杯くらいビール飲みそうなガタイのいいアイリッシュ系の兄貴が彼女(奥さん?)を連れて隅っこでビールを飲んでいるだけで、他には5人程度しか外国の方はいませんでした。

 男女比は女性の方が多いかな?と思っていたのですがこれも意外と男も結構いて、蓋を開けてみれば芸大生っぽい若者が比率的には一番少なかったのでは無いかと思います。むしろ若年層の方が女性が多いような気がしました。なお若年層と言ってますが一番若くて20代くらいで、唯一10代後半かな?という見た目の着てる服から何まで存在に関わる全細胞が「サブカル」でできてそうな男子芸大生みたいなのが1人いただけで、他は本当に(客席暗くてあまり顔立ちが判別できないこともあってか)年齢層高めに見えました。


<演奏メンバー>


 僕もライブのチケット買って公式サイト見るまで知らなかったのですが、空気公団は最新作からメンバーがボーカルの山崎ゆかりさん1人の「第3期」に突入しており、今回のライブは「山崎ゆかりと愉快なメンバー」みたいな感じの特別なラインナップで行われました。

 メンバーは・・

山崎ゆかり <vo.>
田中佑司 <key.>
厚海義朗 <ba.>
五味俊也 <dr.>

の4名で、ギターレスの少し変則的な編成になっていました。
※調べると全員最新作の録音に参加されている方のようです。

キーボードの田中佑司氏はくるりやbonobosで活動されていた方で、趣味でパン焼いてそうな見た目をされていました。ベースの厚海義朗氏はceroのサポートだったり何かと界隈で名前を聞くタイプのミュージシャンの方のようで、北野武の『BROTHER』に出て来そうだな、と思いました。最後にドラムの五味俊也氏はオリックス・バファローズの中川圭太選手にしか見えず、「中川圭太ってドラムも叩けるんだな。」とライブ中何度も錯覚に陥りました。



 3人のサポートメンバーは3人とも、「THE プロミュージシャン。」みたいな大変素晴らしい演奏を披露してくださいましたが、MCで山崎氏が「最初で最後の編成」と言っていたのでおそらく二度とこのラインナップで演奏されることはないのかもしれません。個人的にはこのメンバーをベースに1人ずつ楽器を足していって最終的に10人くらいの多所帯になってほしいなと感じるくらい、「しっくり」したものを感じました。



<セットリスト>

空気公団のライブって、

・「ベストヒット+最新作から2、3曲」系
・「最新作メインで定番曲5、6曲」系

どちらの系統なのかな、とライブ前少し不安に思っていたのですが、かなりいい感じのバランスで定番曲と新曲を演奏してくれました。

また、1曲とんでもなく意外な・・でも聴いて世代とか考えて見ると「なるほどな・・」と深く頷かざるを得ないカバーを披露してくれました。

このカバー曲については曲名を書くと(もうライブで何回もやってるのかもしれないけど)少し面白みが減ると思うので割愛させていただきますが、やっぱり90年代のJ-POPって凄いなと感動しました。

結果セットリストについてはファンの聴きたいものをきちんと演奏してくれる感じなんだなと感じました。


<レポート>


 会場は18時開場、河原町には16時半頃には着いてしばらく寺町通りなどをぶらぶら歩きました。

昔は寺町通りとか毎週のように京都に行く時期があったのですが、今年は正月あたりに1回行ったきり2回目くらいで、河原町をおりて八坂神社へ向かう通りの天下一品が消えてたい焼き屋になっていたり、八坂神社へ向かう道に外人多すぎて活気があるのか下品になってるのかわからない、少なくとも趣の無い悲しい世界になってしまった京都を2時間ほど散策しました。

 磔磔には18時20分頃について入場、事前にスタンディングかテーブルあるパターンか調べておらず、なんとなくスタンディングだろうと思って行ったらもうすでにテーブルが8割方埋まっている状態で非常に後悔しました。しかし後ろの方の椅子だけの席がまだいい感じに空いていたので迅速に確保しました。

 磔磔はテーブルが出ている時は飲食ができるのですが、全ての椅子に対してテーブルがあるわけではなく、その事について特に何も明記していないっぽいので、なんか来るたび文句言ってるお客さんを見る気がするのですが、この日も椅子だけの席に座ってしまったせいか、15分くらい前に入って来た熟年カップルが「ここって飲食できるって聞いたけど?」みたいなことを店員さんにネチネチ言ってるのを聞いてすごく空気公団らしくないメンタルになってしまいました。でもこれは単純に磔磔側も悪いのでなんとかすべきだと思いました。(もしかするとチケットとかHPの注意欄見ると「飲食希望の方は早めに来ないとテーブル無いですよ」的なことが書いてあるのかもしれませんが・・)
カップルは結局ポテトフライみたいなやつを頼んで、頼んだあと(頼んだくせに)また「皿を直接手で持って食えってこと?」とか意味不明なことをネチネチ言っていました。

こういう人にも伝わる空気公団の音楽の力って本当に凄い!!と改めて感動しました。

 開演前の場内のBGMはジョニ・ミッチェルで統一されていました。

 空気公団のメンバーは全員が白いシャツという出で立ちで登場しました。メンバーは全員着席、面前に譜面台置いての演奏でした。(これが空気公団の定番スタイルなのかもしれません)

 最初の音が鳴るまで、僕はやっと空気公団を見にこれた、という高校時代からの負債を果たせたような静かな達成感と、最近ずっとNapalm Deathとかデスメタル系の音楽を聞いていたので、今空気公団聞いても全然波長合わないんじゃないかな?という諦観に近い気持ちが混ざり合ったどちらかというと盛り上がりに欠けた精神状態だったのですが、十数年聴き馴染みがあるメロディと山崎ゆかり氏のボーカルが空気に乗って生で聴こえて来た途端、一気に心揺さぶられてしまい、自分が予想していたより何十倍も感動してしまいました。
ライブ序盤のグレイテスト・ヒッツ的な曲の連なるセットリストの中で、ほぼ落涙寸前まで心がガタガタになりました。

 空気公団の曲ってCDで聴くとアレンジといい歌詞といい、「丁寧な暮らし」的な無意識のマチズモを押し付けられているような、無印良品の商品でしか生活できない地獄に叩き落とされているような息苦しさを感じることがあるのですが、実際生で演奏を聴いて見ると、曲そのものの志向している美しさはそういう領域のさらに先の普遍的な何かにあるんだな、ということに気づけた気がしました。
 それをパッケージングするとああいう形になってしまうところが空気公団の個性であり弱点なのかも知れないと感じました。

 また、恥ずかしながらこんなに演奏に重きを置いたグループだとは理解できておらず、作曲面の歌謡曲マナーとかそういう技術的な意味での「いい曲」志向もあるのですが、でもなんか根底はもっとそれ以上に、演奏含めた音楽全体の力でポップスとしてシンプルにみんなに普遍的に心に刺さるものを届けたいみたいな思いがあるというか・・。
 最近なんでも世の中みんなバカの一つ覚えみたいに何かあったらすぐGoogleで調べて、そこに出てきたものに従うのが正解なんだみたいな時代に、ちゃんと自分の感覚で感動しろ、と言っているようなそんなメッセージを感じました。


<演奏について>


 上の方で書いた通り、この日はギターレスの編成でしたが、「キーボードと歌」で十分楽曲は成立していて、そこにベースとドラムが立体感をつけて・・みたいな感じになっているように聴こえました。

 とにかくキーボードの田中氏の演奏がウキウキ感あり楽しく、他の演奏を引っ張りながらもちゃんと歌より目立たないというレコーディング中なのかライブ中なのかわからないクオリティがずっと続いていました。

 ベースの厚海氏の演奏もバチバチで、でもバチバチすぎて1回曲終わりに山崎氏に止められて「最後のところかっこよかったからもう1回やってみて?」みたいなことを言われてもう1回そこだけ1人でやらされていました。
 生まれて初めてライブ中にベーシストが直前に演奏した曲のパートを1人で再演する光景を見ました。

 ドラムの五味氏は僕の座っていた席がステージから遠かったこと、髪型が偶然似ていたこともあってか、ずっとオリックス・バファローズの中川圭太選手に見えていました。最初の方僕の席ではドラムの音が大きく聴こえましたが、後半ずっと音が絶妙になり、染み渡るような音を叩かれていました。最近ずっとメタルのアホみたいなドカドカドラムしか聞いていなかった僕の耳には、砂漠で見つけたオアシスのように綺麗な音に感じました。


<MC>


 MCは主に山崎ゆかり氏と隣に座った田中氏が担当しました。

 山崎氏が冒頭のMCで「MC慣れてないんだよね・・」見たいなことをおっしゃっていたので、もしかすると3期まではMC担当の方がいたのかもしれません。

 山崎氏のMCは終始気まぐれな、突然喋り出す感じでしたが、横の田中氏がいい感じに合いの手を入れたり話に脈絡を作って盛り上げてくれました。
どうにもならなそうな時は田中氏は「大きな声を出す。」で乗り切っていました。田中氏は全体的に趣味でパン作ってそうな元気さを感じました。

 ライブ中盤で名曲「青い花」が演奏されたのですが、演奏終わりとほぼ同時に田中氏が「やっぱりこれいい曲だよ〜!」と感嘆の声をあげていたのがとても印象的でした。


<総評>


 よかったです。(よかった為)
これからも自分は空気公団について色々葛藤しながらずっと「軽いファン」みたいな感じでズルズル付き合っていくんだろうなと思ったライブでした。


 ライブ終わり最後に物販の告知があり、山崎ゆかり氏がサイン書いてくれるとのことでレコード盤買ってサイン書いてもらいました。

 今までミュージシャンのライブ行って何かにサイン書いてもらおうと思ったこともなかったので大変嬉しかったです。
 
 というかこのブログを書きながら…そもそもチケット取る時から半信半疑だったんですが、僕は本当は軽いファンと言っているだけでこじらせてるだけの重度のファンなのかもしれません。でも、「丁寧な暮らし」マチズモが嫌いだから・・それがまん延する場所で自分が生きていけないことを知ってるから、受け入れることが出来ないのかもしれません。自分を偽らず真っ直ぐ生きていける人間になりたいです。


おわり


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