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ライター脳トレマガジン

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ライターの七尾なお、卯岡若菜が脳を鍛えるために始めたマガジンです。毎週日曜夜にひっそり公開。
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記事一覧

久しぶりに実家に帰った。あれもこれもうまくいかないことが続き、何とか支えていた最後の一本…

卯岡若菜
4年前
8

【小説】肉屋のガチャガチャ

授業が終わって、学校を出て、家へ帰る途中でさびれた商店街を通る。本当は、一本隣の大通りを…

岩崎尚美
4年前
5

スヌーピーは帰ってこない

記憶にないほど幼い頃、わたしはスヌーピーのぬいぐるみがお気に入りだったらしい。アルバムの…

卯岡若菜
4年前
11

くじで当たったぬいぐるみ

昔から、くじ運がなかった。「抽選」「応募」と名のつくものはほとんど外してきた結果、「どう…

岩崎尚美
4年前
4

【小説】映写機の月

 カタカタカタと音を立てる映写機。暗闇のなか、背後から真正面を静かに照らすほの白い光は、…

卯岡若菜
4年前
7

【小説】お月さまが見ている。

湿気が肌にまとわりついて離れない。まるで世界にぴっちりとふたをするように、真っ黒な空を分…

岩崎尚美
4年前
6

晩夏を知らせるコンサート

子どもの頃、夏の終わりに気づかせるのは網戸の隙間から聞こえてくるツクツクボウシの鳴き声だった。ミンミンゼミだかニイニイゼミだかわからない夏の蝉の声が、ある日を境にツクツクボウシに変わっていることに、ふと気づく瞬間があるのだ。 ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、のあとにツクツクボウシは鳴き声を変える。その鳴き声が、「もういいよ、もういいよ」に聞こえていた。 ツクツクボウシが鳴き始める頃には虫の音も響き始めていて、森を開拓して作ったニュータウンに

体験が刻む強烈なワンシーン

コンサートやライブとは、とんと縁がなかった。 初めて行ったコンサートは中学生のとき。まだ…

岩崎尚美
4年前
8

【小説】今宵、図書館で逢いましょう

『夜の図書館探検ツアー☆ランプを持って集合しよう!』 まるっこいフォントでそう大きくタイ…

岩崎尚美
4年前
6

【小説】図書館の檻をさがして

 ぼおおっと鈍い音が響く。影が揺らめき、少女は微かに肩を震わせた。しばらくあたりを伺うよ…

卯岡若菜
4年前
7

貴重だったはずのお盆休み

運動や根性。そうしたものとは無縁に見えるのだろう、「中学の時はテニス部だったんです」と話…

岩崎尚美
4年前
6

お盆休み、未経験

世間はお盆休みだ。世間の一部分なのか大部分なのかはわからないけれど、とにもかくにもお盆が…

卯岡若菜
4年前
14

【小説】くるりくるくるワンピース

 ワンピースの裾から、生ぬるい空気が太ももに絡みつく。夏の空気は、ピントがずれた写真のよ…

卯岡若菜
4年前
11

【小説】ひまわり色のワンピース

「おはよう」 鈴を転がすような声がした方へちらりと目をやると、クラスメイトの女子が登校してきたところだった。すぐに数人の女子が近寄っていって、「おはよう」合戦が始まっている。 輪の中心で微笑んでいる彼女は他の女子と比べるとやや大人びていて、整った顔立ちをした美少女だ。カラフルなTシャツにデニムを合わせたカジュアルなスタイルが多い同級生たちの中で彼女は一人、裾がふわふわと揺れる紺色のワンピースを着ていた。小学生が着るにしては少し大人っぽいデザインだが、彼女には似合っていた。