表現者の湿度管理能力

日本の夏の不快指数が高いのは、湿度の高さのせいだ。じとりと肌にまとわりつく暑さは重苦しくて、心身を消耗させる。せめて湿度が低ければ、暑さはエネルギーを与えてくれる存在にだってなり得るのに、なんて思う。


「歯に衣着せぬ」ということに対して、悶々と考えていた。

同じように「歯に衣着せぬ」物言いであっても、その発言・言葉は、多くの人からの反感を集めるものと、好感をもって受け止められるものとに分かれる。

「わたし、毒舌だから」と表明するひとの発言も同様だけれど、これはどちらかというと反感系が多いかもしれない。

「わたし、毒舌だから」を隠れ蓑にしていると捉えられるからだろう。毒舌だろうが素直だろうが、何でもかんでもそのまま言えばいいってものじゃないだろうとわたしは思うのだけれど、同じように感じるひとが多いのかもしれないね。


ただ、同じように丸裸の歯で言葉を発していても、その発言が気持ち良いものだと捉えられて好かれるひともいる。もちろん、すべてのひとに好かれることは不可能だ。しかし、その発言が反感系なのか好感系なのかは、何となく分かれていると感じる。


歯に衣着せぬ発言を、相手を不快にさせず繰り出せるひとは、湿度の扱いがうまいのだと思う。感情の生っぽさを、適度に乾燥させることができるのだ。

だから、はたから読んでいる・聴いているひとはもちろん、言及されている枠組に入るひとたちも、自虐的に「あるある(笑)」と笑いをもって受け止められるのではないかな。

一方で、反感を毎回集めてしまうような「歯に衣着せぬ」発言は、本人の思惑は別として、どこか、じとりとした湿り気を含んでいるのだと思う。好感系がカラリと表現するところを、ねちねち攻撃するような表現にしてしまうというか。


心はナマモノだから、温度と湿度を含んでいるのは自然なことで、だからこそ、わたしたちは心震わせることができたり、誰かの痛みに寄り添おうとできたりする。

温度があまり高くないものであれば、湿度の管理能力は大して問われない。エネルギー量がそれほど高くない言葉は、たとえじめじめしていたとしても、せいぜい「あ、このひと鬱陶しいな」と思われて終わりだ。

反感もエネルギーだから、抱かれるには、それ相応のエネルギーが元の言葉にも必要なのだろう。


しかし、これが熱量のある言葉になると、如実に湿度管理能力の有無が明るみに出てしまうのだと思う。うまく湿度を管理できるのであれば、気風の良さにつながることすらあるのだけれど、管理ができない場合は悲惨なことになる。

反感を表面化してもらえればいい方で、大概のひとは面倒なことになりたくないから、遠巻きに眺めて立ち去るばかり。気づけば、周りにはそんな自分をそれでも好いてくれるひとや、とりあえずお世辞を並べ立てまくるひとだけになってしまっていた、なんてこともあり得る。


実際にどう思われているのかはわからないけれど、わたしは「歯に衣着せぬ発言」はできないタイプだ。対面コミュニケーションでも、文字でも、オブラートを駆使する傾向にある。それは、わたし自身が傷つきやすいからだという理由もあるのだけれど、やっぱりできるだけ無用にひとを傷つけたくはないなと思っているからだ。……注意していても、傷つけてしまうことはあるのだから。

なお、これは「好かれたい」とは少し異なる。好かれたいのではなく、傷つけたくないのだ。

そして、歯に衣着せぬ発言ができないのは、湿度管理能力がそこまで備わっていないと自覚しているからだ。

感情的になると自制があやしくなるから、ストレートな物言いはできるだけ避けたい。思いは吐き出すけれど、客観視できる冷静さを保てる温度でしか書けないし、言わないようにしたい。(だから、ある程度冷めるまで待つことも多い)

「歯に衣着せぬ」って、表現方法ではかなりの高等技術なのだ。

個人的に好むひとにこの技術に秀でているひとが多くて、その潔さに憧れることもあるのだけれど、わたしはその域に達せられるとは思えない。

これは才能の一種だ。恵まれなかったことを残念がってもしかたがないので、じめっとした心でもやっていける文章を、今日も書いている。



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