見出し画像

マイナス評価を基準にしすぎない

どこへ行っても優秀でいられるほど、できた人間はほとんどいない。もちろん、わたしも例外ではない。

ところ変われば平均点が上下する学校のように、場所によって及第点の位置付けは異なるから、ある場所では合格でも、別の場所では赤点になるなんてことは、当たり前のように起こりうる。

わたしの通っていた中学校は、その当時市内の中学校のなかでレベルが低く、そのなかでわたしは「賢い」部類にいた。「賢い」立ち位置にいられたのはこの中学校だったからで、別の中学校だったら取るに足りない成績の生徒だったろう。

小学校からずっと携えてきた「優等生」キャラが崩壊したのは、背伸びして入った高校でのこと。わたしの母校は当時その学区内のトップ校だった。なお、その後学区制度は撤廃されたので、今の立ち位置は知らない。

2番目以下の高校は、自然と学力の下限と上限が一定範囲に存在するけれど、トップ校の上限は2番目以下よりも天井が高くなる。合格者発表のとき、主任教師が「第4志望でうちにくることになった人もいるだろうけれど」と話したことを今でもはっきり憶えている。

国立高校など、さまざまなハイレベル高校を受けては落ち、流れついた第4志望が学区トップ校というわけだ。ちなみに、ほかの学区と比べて、わたしの学区はレベルが低い方だったので、尚更「もっと上」を目指して挫折した人は多かったのかもしれない。ただ、指先を引っかけてギリギリ滑り込んだわたしは、その言葉に「ひええ」となった。

そんな高校で、わたしは見事に落ちぶれる。得意な国語や歴史はよかったけれど、理数科目のお粗末さはとんでもなくて、自他共に「おバカちゃん」キャラになった。わたしと同じような子のなかには、中学校までに築いてきたプライドがへし折られてしまったために病んでしまう子もいたのだけれど、わたしは楽になった。分不相応な「優等生」ラベルが取れたから。

「頭いいよね」と言われるたび、「そんなことない」と思ってきた。そしてその思いは間違いではなかった。高校では、多くの「えー、頭よすぎて意味がわからないんだけど…」という「賢い人たち」との出会いに恵まれたから。頭がよすぎるからか、一周回っておかしい人もたくさんいた。卒業させてもらえるよう数学教師に泣きつく3年間だったけれど、出会いに恵まれた点では、いい学校に入れたのだろうと思っている。

褒められたり認められたりするとき、わたしは素直に喜びながら、どこかで「いやいや、そんなことない」と思っている。逆に、結果が振るわなかったときには、「ほらね、やっぱりね。これが本来のわたしだよなあ」と思う。

「“本当の”基準で照らし合わされたら、実力なんて全然ない」とか、「たまたまこの場の求める基準に合致しただけで、“本当に”力があるわけじゃない」とか。言葉にすると、なんだかとても卑屈な気がしてくるのだけれど、そんな風に思っている自分がいる。

ただ、“偏差値”とわかりやすい基準があった時代とは異なり、今は基準自体があいまいだ。客観的な数値をもってして「できる」「できない」をふるいわけているわけではない。だから、わたしの思う“本当”なんて、実は全然確固としたものとしては存在していないのだろう。

今の仕事を始めて3年目。いまだにダメだったときの評価を自分の力だと思いがちだ。でも、「向いてなかったんだなあ」と受け止められることも増えた。ご縁がなかっただけのことだって大いにある。向いていない=スキルと実力が全然ない、と言い切れるケースばかりではないのだ。(もちろん、力が見合わなかったというケースもあるけれど)

成長思考という点では、「ダメダメだー」と思い努力し続けることは自分のプラスになるだろう。しかし、褒められ認められた仕事が、そうではなかった仕事よりも求められているレベルが下だというわけではない。仕事が認められるか否かと必要とされるレベルとに、因果関係は必ずしもあるわけではないのだ。

いろんな仕事をさせてもらうなかで、価値判断の基準の多様さを体感できているのは、思い込みの激しいわたしにとってよいことなのだろう。

どこかでダメだったとしても、別のどこかでは絶賛されることもある。もちろん、褒められようが貶されようが成長意欲は持っておかねばならないのだけれど。社交辞令やお世辞だってあるわけだから、ただただバカ正直に喜んでばかりではいけない。

認めてくれている仕事には思いに報いるために、力が見合わなかった仕事には次に似た仕事があれば応えられる力をつけるために、揺らぎすぎずにフラットな気持ちで向き合いたい。褒めてくれた言葉を信じられないのも相手に失礼だから、褒められたときにはもう少し素直に受け止められるようになりたいとも思う。

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけました暁には、金銭に直結しない創作・書きたいことを書き続ける励みにさせていただきます。