小説[この冬でごちそうさま]

2019年冬
「この冬でごちそうさま」
私は去っていた。我ながらいいセリフだと思った。祥くんはそのまま崩れ落ちた。


2019夏
「ねえ、今キミ1人かな?」友人との約束をすっぽかされて新宿駅の6番出口で立っていた私は、初めビックカメラの店員さんの呼び込み声かと思った。「いえ、友人待ちです。」如何にも女の子泣かせな男性が話しかけてきたので、そう断わった。「うそだー、さっきから1時間も待ってるじゃん!
友達にドタキャンされたんでしょ?俺、祥って言うだけど、飲み物飲みに行こうよ!美味しいワインとハイボールだったらどっちがいい?」しかし圧倒されてしまった私は思わず、「ハイボール」と言ってしまった。
祥さんに連れて行かれたバー『レーミモン』でオススメのハイボールとやらを頼んでみた。
「君名前は?」
「奈津です」
「いいねぇ!」
「じゃあなっちゃんに出会えたこの夏に乾杯!」
訳の分からない乾杯の後の1口は本当に「美味しい」「今日のオススメは竹鶴ウイスキーだね。普段、角とか飲んでると新鮮な感覚じゃないかな?」このセリフが堰を切ったように私たちは意気投合した。


2019年季節は捲られる
ここから私たちは月に2~3回ほど飲んだ。祥くんは相変わらず夏場には「この夏に乾杯」秋や冬場には「あの夏に乾杯」なんて言っていた。
私はいつしか彼に恋していた。


2019年冬
そんなある日、祥くんが別の女の子と一緒に歩いてる場面に遭遇した。
すると、「…いや、この子はかえでちゃんって言うんだけど、その、あー、だって、お前なかなかヤらせてくれなかっただ!だから仕方ないだろ!」と何も言ってないのに言い訳してきた。私こそ我慢してきたのに、そんな言い方しなくてもと思ったから、もう我慢しなかった。
「お酒によって美味しくなったあなたを…この冬にいただきます!」


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