見出し画像

人生で初めて冷蔵庫を買った

とは言っても別に冷蔵庫がない家に住んでいたわけではない。
一人暮らしで最初の冷蔵庫は当然親に買ってもらった。
社会人になってから知人が結婚するので一人暮らし用の冷蔵庫が不要になったということで引き取った。

それから20年。
20年の間、ちっとも壊れなかった。だから自分で冷蔵庫を買ったことがなかった。
冷えないということもなく、むしろ冬に間違って強冷にしてしまうとぜんぶ冷凍庫に変身してしまうくらいに冷えた。うどんに入れようと思って取り出したネギがカッチカチだったりする。
またその冷やし度を決めるスイッチがなめらかに動くんだ。何もひっかかることなく、肉やら野菜やらをギュイと押し込んだ先にあるから、知らないうちにスイッチが変わっていたりする。
まあ、冬に強冷になってしまうのは解凍すればいいけど、夏に弱冷になってしまうと全滅する。全部ではないけど、肉なんかはやめといたほうがいいねって臭いがする。
これが全部運任せ。
ちゃんとチェックしたり、冷蔵庫を整頓してものを詰め込まなければいいのは分かってます。言葉では分かってるけど、おいしそうと思ったものを保存したい気持ちは止められない。

ドアのところは汚しちゃったり破損しちゃったりしたので、中段を取り払った。結果として大きなペットボトルはもちろん、日本酒の一升瓶も入るようになってしまった。これがわたしの日本酒、それも生酒愛好に大きく寄与したことは疑いない。
なぜか住んでいる近く、または歩いて行ける距離(10km)圏内にいい酒屋があった。
大田区に住んでたときは、雪が谷大塚の橋和屋さんで「作」や「山本」「上喜元」を知った。平日は年配の男性が、休みは息子さんもお手伝いしていたみたいだけど、別に話しかけることも相談することもなく、淡々と毎週2本くらい一升瓶を買っていた。
このお店の日本酒で初めて「日本酒っておいしい」と思った。

この頃はまだ作もふつうの値段でした

多摩地区に住んでいたときには府中まで歩いて酒を買いに行っていた。
2時間近くかけて歩いた。
ひたすら住宅街の細い道をくねくねと進んでいくと、ふと広い道に出る。
果物を作っている農家があったりして、広い道なのにほとんどお店がない。
飴の工場には日本大好きな感じのポスターが貼ってあったりする。おかきにもそういう会社あったし、和菓子に携わるとそういう考え方になるんだろうか。
東京農工大学を過ぎると栄屋長谷商店が見えてくる。
このお店が信用できると思ったのは、橋和屋さんと同じく山本があったこと。キュンとした甘酸っぱさがくせになる。
ここでは町田酒造の雄町や上品な甘みの田光、ずっしりとした鍋島を知った。いつ行っても鍋島並んでるのはここしか知らない。
後の方になるとうちゅうエールも時々入荷していた。
「争奪戦が激しくてなかなか仕入れられないんですよ」って仰有ってたな。
個人的にはとにかくハズレがない。並んでるお酒は全部おいしい。
だから、駅から遠いのに車やバスで来るお客さんがたくさんいる。
今は苦労しないで立派な日本酒が手に入る環境だけど、このお店ほどの揃えはどこにもない。

町田酒造、近所にぜんぜんなくて哀しい

新しい冷蔵庫は2段の棚だけど、前の冷蔵庫みたいに卵を置く浅い棚はないので、ドアに一升瓶が入らない。
前よりも30リットルほど大きくなって、他のものはたくさん収納できるけれども、一升瓶だけは入らないのだった。
そろそろアルコールを控えよというお告げなのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?