「なんとなく」で起業しちゃった"ママ起業"の立場から物申す

この記事は過去にブログに掲載していた記事の転載です。


「なんとなく」で起業しちゃいけませんか? "ママ起業"の立場から物申す | さいとうサポート 

東洋経済オンラインで話題になっていた記事を読み、モヤモヤしたので書きました。
初の短編小説仕立てになっています。

なお、便宜上有料設定していますが、内容は最後まで無料でご覧になれます。

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A子さんの場合

わたしは、東京都内のブライダルプロデュース会社に勤めて5年目。
10数人の小さな会社で、社長を含めてほとんど女性スタッフだ。

今年3歳になる娘を、生後4ヵ月の頃から保育園に預けている。

仕事は多く、家庭との両立は大変だったが、やりがいはあった。
忙しい日はぎりぎりまで残業し、駅まで走って電車に飛び乗り、保育園で最後の1人になっていた娘を迎えて、ばたばたと早朝に仕込んだ夕食を食べた。

昨年、知人の紹介で仕事を依頼された。

初めての受注で責任は重かったが、新婦と好みのセンスが似ていたのか、打ち合わせもすんなり進み、考え抜いた提案も喜んでもらえた。

だけど、問題はあった。

娘の保育園の運動会と、挙式の日が重なってしまっていたのだ。
新年度に園の行事予定表が渡された時には、すでに日取りが決まっていた。

もちろん、スタッフの都合で挙式の日をずらしていただくわけにはいかない。 
お客様には事情を伝えて謝り、他のスタッフに引き継いだ。

社長はいい顔をしなかったが、2ヶ月前から引き継ぎができたので、挙式当日もつつがなく進み、お客様からは感謝の言葉をいただけた。

そして今年、昨年のお客様の式に参加された方から、自分の式のプロデュースもして欲しいと依頼があった。

うれしい。喜んで引き受けさせていただいた。

今回は運動会の日ではなかったが、雨天順延の場合の予備日となっていた。

お客様にもその事は伝え、もしもの時にはこちらのスタッフが対応しますと、顔合わせをしておいた。

(雨が降りませんように!)

あれだけ祈り、娘と作ったてるてる坊主もむなしく、運動会の日はどしゃぶりの雨だった。

運動会は延期になった。

数日後、代理のスタッフが挙式を担当し、わたしは娘の運動会に参加した。

次の日、代理をしてくれたスタッフにお礼を伝えていると、社長に呼ばれた。

「A子さん、前にもこういうことあったよね? お客様にとって一生に一度の大事な式を担当するのに、そうやって子どもを理由にして仕事を放棄するなら、もう辞めてくれないかな」

ショックだった。

普段からわたしが退社した後で、どれだけ他のスタッフが仕事をしてきたか、子どものインフルエンザで一週間欠勤した時に、どれだけ周りに迷惑がかかったか、
こんこんと話されていたが、耳の奥がガンガンしていてよく聞こえていなかった。

会社を出てから、どうやって帰ったかわからない。
電車で誰かが席をゆずってくれた。気がついたら涙が流れていた。

あれほど頑張ったのに、すべては会社に迷惑をかけただけだったのか。

深夜に帰宅した夫と話し合い、結局辞表を提出した。

あれだけの事を他のスタッフの前で言われて、とても勤め続ける気になれなかった。

再就職活動は難航した。小さい子どもがいる、とわかると面接官の態度が一転した。

離職後3ヵ月経っても就職は決まらなかった。

自主退職だったので、その間は夫の収入のみで貯金が減っていく日々だった。

そして、失業給付を受ける頃、娘は保育園を退園した。

母親が無職である期間が3ヵ月を過ぎると、「家庭で保育ができない」要件から外れたためだった。

まだまだ待機児童が多い街で、また認可保育園に入れるのは絶望的だった。

前回も、自分が産育休中で復帰することが決まっていて、年度替わりで入所しやすい時期に復帰を決めたから入所できたのだ。

両方の実家は遠く、再就職活動をすることも難しくなった。

もう、何もできないのかな。

あの時、土下座してでも許してもらって、子どもの行事も全部欠席してでも仕事を続けたらよかったのかな。

行き詰まっていると、家の中もよどんで、勤めていた時よりも荒れてきてしまった。

これではダメになってしまう!

汚部屋になりかけている部屋をなんとかしたくて、ネットで検索して片づけの専門家に来てもらった。

娘を民間の一時保育に預けた数時間、整理整頓の考え方を教わり、いっしょに作業した。

作業しながら、自分のことを話していると、

「それは、本当に辛かったですね」
と言われ、思わず号泣した。

ずっとため込んでいたもの、気持ちをすっかり出して、部屋も心も見違えるようにすっきりした。

帰宅した娘も夫も、明るくなった部屋に喜んでくれた。

こういう仕事、わたしもしたいな。

1年後、わたしは整理収納の資格を取り、働き始めていた。

あの頃のわたしのようなお客様の自宅に伺っていっしょに片付けをしたり、心地よい暮らしをつくる為の講座を開いたりしている。

最初は抵抗があったけど、ブログでも自分の顔を載せて、日々発信している。

娘は近くの幼稚園に通っている。
だから、わたしが仕事するのはほとんどが平日の午前中だ。

たまに預かり保育もお願いするけれど、夏休み冬休みも仕事は控えめになる。
子育てを優先しても、周りに迷惑をかけない仕事の仕方を探した結果だ。

娘の病気でお客様からの依頼を延期してもらったこともあるけれど、お互いに子育て中ということもあり、すんなり了承していただけた。

逆に、お客様に伺う日程が、先方のお子様の体調不良で急きょ延期になったこともあるが、お互い様でキャンセル料などは頂かなかった。

収入は減った。

それでも、通勤や仕事をする為にかかっていた費用、ゆっくり食事やおやつを作れるようになったこと、焦って買い物をすることもなくなり、適量にものを抑えることができるようになったので支出が減り、なんとか貯蓄を減らす生活からは抜け出した。

来年には確定申告をしなければならないので、起業支援機関に相談して、青色申告できるように開業届けも出して、個人事業主にもなった。

整理収納の仕事の他に、前の仕事で身につけたテーブルセッティングや、ウェルカムボード、カードを作る技術やセンスが好評で、月に1度くらい小さな講座を開いたりもしている。

ある日、自宅でアロマ教室をしている友人から、
「ちょっと、こういう記事見たんだけど、ひどくない?」
と、URLがシェアされてきた。

「なんとなく」で起業する"ママ社長"に物申す | WORK AGAIN | 東洋経済オンライン

起業の質というか、スタンダードを下げているような気がします。本来、起業って新しい価値を生み出すものですよね。でも、今は簡単に会社を設立できるので、会社を作ってから何をやるかを考える人もいる。それで「女性支援がやりたい」と(笑)。
事業モデルは「クッキーを作ったので身近な人に売りたい」レベルで、たとえばセブン&アイホールディングスに売り込んで全国に広げようという発想はない。

ふーん、ずいぶん「起業」のハードル高い人だな、と読み進めていて、手が止まった。

以前、スタッフがブライダル関係の仕事を受注したのに、子どもの運動会と重なったからと言って降りたことがあったの。
今回だけは仕方ないと代役を立てて乗り切ったのに、同じことがまたあって。辞めてくれと伝えざるをえなかった。

ああ、これはあの人か。

当時の悔しさがよみがえってきて、暗い気持ちになった。

メディアも安易な持ち上げはしないでほしい。ある人材会社が2015年は「ママ起業」ならぬ「ママ喜業」が来ると予測したんだけど。

そうか。結局、勤めていても「子どものために」休むのは許されず、

迷惑をかけないようにできる範囲で仕事を始めても、こうやって嘲笑されるのか。

何をしても、自分の方が正しく、すぐれている、と人を下に置いておきたいだけの人だったのか。

「ママ、ブランコ押してー」

娘の声にスマホをしまった。

幼稚園からの帰り道、少し公園に寄り道をしていたところだった。

「ほら、こうやってこぐんだよー。前にー、後ろにー」

娘の隣でブランコをこいでみせた。

「あ、ひこうき!」

見上げると、青空をひこうき雲がよぎっていた。

ああ、なんか、わたし、今、ちゃんと幸せだ。

ブランコはぐんぐん加速していく。

(了)

※この物語はフィクションです。

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いきなりの小説もどき、いかがでしたか?

文中にも登場している、こちらの記事を元に書きました。

「なんとなく」で起業する"ママ社長"に物申す | WORK AGAIN | 東洋経済オンライン

匿名の対談形式ですが、

・まだ少しの金銭を受け取っているだけの人と、開業届けを出して自営業になっている人と、法人を設立して会社経営をしている人をごちゃまぜにして、「サロネーゼ」「プチ起業」とレッテルを貼っている
・起業する女性を支援する立場の人たちが影で酷評をしている。
・会社を経営している人が、事前にわかるスタッフの休みを理由に退職をさせていて、それを自慢げに語っている。(本当なら不当解雇かパワハラ案件だ)

などなど、あまりにも居酒屋で語るオヤジたちのような内容で、腹が立ちました。

この記事は「WORK AGAIN」という「元キャリ主婦の新しい働き方」を特集した中に含まれています。

WORK AGAIN | 東洋経済オンライン

他の記事は、ランキング上位のものから読んでいくとわかりますが、子育てを障害とせずに働くあり方を模索する内容になっています。

子連れ出勤OKの授乳服メーカー・モーハウスに子連れ出勤してみたレポート

子連れ記者、「子連れ出勤」を実体験してみた | WORK AGAIN | 東洋経済オンライン

ワーキングマザーが半数の会社で、子どもがいる人もいない人も明るく勤められる会社にしようと奮闘した女性社長のインタビュー記事がトップ。

「女性が辞めない会社」は、全員17時に帰る | WORK AGAIN | 東洋経済オンライン

例の記事だけが匿名で顔を出さない対談で、話されている内容も不自然です。

これは、ライターさんの1人脳内会議ではないかと疑うレベル。

釣り針のような記事を前にしばらく悩みましたが、フィクションにはフィクションで対抗して書いてみました。

あなたが、どちらがお好みでしたか?

…「ママ喜業」はやめてくれ、とわたしも思いますけどね。大喜利じゃないんだから。

以上、かけ出し起業ママからの反論でした!

-------ブログからの転載終わりーーーーーーーー

noteはクリエイトがひとつのキーワードになっているので、普段のブログ記事とは異色なこの短編がこちらに合うのかも?と思い立ち転載しました。

これを書いた時の裏話は、有料の「フリーランス事務代行屋の舞台裏」マガジンに書きます。お楽しみに!

なお、有料マガジンにこのノートを収録しつつも、マガジン購読者以外の皆さんに読んでいただくために、100円の有料設定にしました。
この後にコンテンツはありませんのでご注意ください。

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コメント8件

初めまして、問題の記事を読んで、いいことも言っているのに最初の方で「ママ企業家どころか第二新卒までもおとしめている」ので、損をしているな~と思いました。社会の仕組みで悩んで起業や在宅を選んだ人にとってはそれこそ「そりゃないよ」という感じですね。私はまだ子供がいないのですが、色々と考えさせられる記事、面白かったです。
>さくらもちさん はじめまして。コメントありがとうございます。
そうですね、第二新卒も「プライドばかり高くて」って言われてしまってますね。
わりとNews Picsでも袋だたきだったようです。
なかなか働くママの立場のことは分からないので、色々と考えさせられる記事でした。個人的にクラウドソーシングは使っていて、働くママの選択肢を広げてくれそうだなあーと思っています。
>とみやすさん そうですね、わたしもたまにクラウドソーシングを使うことがあります。昔なら内職やテープ起こし、データ入力などでしたが、今は様々なスキルを使うことができますね。
外に働きに出る以上に稼ぐには、一定の習熟が必要でしょうが、在宅でできるのは大きな魅力です。
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