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デジタルゲームとアナログゲームを同時に作った話

こんにちはuraconです。破局ダイスについて語るnote第4回の話題はアナログゲームです。

破局ダイスは元々モバイルゲームとして開発されていたのですが、リリースとほぼ同じタイミングでアナログゲームも頒布しました。アナログ版もダイスを振ってお守りを集めるゲームなのですが、デジタル版と違って本物のダイスを振り、お守りの収集も1人で集めるのではなく皆で奪い合うゲームです。

今回のnoteではアナログ版を作ることになった経緯と、どういう意図でデザインしたのかについて書きます。

破局ダイス、対戦モードの試み

筆者はゲームの中でも特に「複数人で協力・対戦する」という遊びに強く惹かれています。学生の頃は友達と徹夜でモンハンし、社会人になった今でもスプラトゥーンのプレイ時間は1000時間を超えるほどです。

当然、自分の作るゲームでもプレイヤが他プレイヤとどう関わるかというのは常に意識しています。例えば前作の「勇者、独身、27歳」ではtwitter上での友達をゲーム内のキャラにしたり、匿名で誰かとボトルメッセージを交換する機能がありました。

破局ダイスも、元はダイスを振って出目の大きさで勝負していたところからスタートしているので、対戦モードを作るのは自然な発想でした。企画中のラフは以下のような感じです。

ですが、最終的にこれは実現されませんでした。

マルチプレイの問題

マルチプレイを諦めた原因は主に2つあります。

①デザインの問題
上記で企画していたようなマルチプレイを遊ぶ場合、同じ場所に集まって対面で遊ぶときの楽しさは想像できました。ちょうど、友達と教室でモンハンやモンストを遊ぶ感覚に近いと思います。

逆に、オンラインで知らない人と遊んでもそこまで楽しくはないだろうというのも想像できます。例えばどうぶつタワーバトルやシャドウバースのように、競技性があったりアクション自体が面白かったりするといいのですが、破局ダイスはそうではないため、ランダムマッチやレーティングのシステム等が提供されていたとしてもプレイヤの楽しさに寄与しません。

マルチプレイで遊べるという機能の提供だけでは不十分で、友達と一緒に遊べるきっかけや仕組みも合わせて初めて意味があります。

②実装の問題
もう一つは、サーバーとして検討していたFirebaseが中国で利用できないというのが大きな原因です。

Firebaseはモバイルアプリのバックエンドに必要な機能を丸ごと提供してくれるmBaaSです。

ノンゲームのアプリで採用される事例が多いですが、今回のゲームでは大量のユーザーが一気に接続するという状況は考えにくかったため、実装の容易さや料金を考慮してFirebaseを採用するつもりでした。

ですが、FirebaseはGoogleのサーバー上に配置されているため、中国では通信が禁止されます。別のサービスやインフラで回避する案も考えたのですが、どれもそれなりにコストがかかり中国版の専用対応になるのが大変そうでした。


上記の2つの理由により、実装が大変な割にはゲームをそこまで良くしないだろうという判断に至り断念しました。

ですが「ダイスを振りあって出目の大きさを競う遊び」が楽しいのには確信があり、ゲームの世界観とも一致するためなかなか諦められずにもいました。

そこでふと「アナログゲームなら実現できるのでは?」と考えました。

ビルドとシナジー

デジタルで考えていた対戦ゲームをアナログとして実現するのは簡単でした。というのも、ダイスを増やす・お守りを集めるというアクションはアナログゲームでよくあるギミックなのでそのままコンポーネントとして実現すれば良く、また判定値を他プレイヤと競う形にすればほぼ同じルールで遊べます。最終的には以下のようになりました。

1. 欲しいお守りに同時に投票する
2. 他プレイヤと投票が被ったらダイスの出目で勝負
3. 勝つとお守りが貰える
4. お守りを持ってると出目勝負が有利になる

デジタル版の遊びに加え、投票・バッティングによるプレイヤ間インタラクションを追加しています(詳細はこちら)。

ダイスとお守りにはシナジーがあります。例えばRUMというダイスは出目が①④④④④④で、期待値は通常ダイスと同じなのですが偶数に反応するお守りと相性が良いです。

これはデジタル版の仕組みを踏襲しており、楽しさのコンセプトの一つである「ビルドとシナジー」を実現しています(このコンセプトについて前回の記事に議論があります)。

アナログ版ではさらに、プレイヤキャラのチップにそれぞれデメリットを持たせるようにしました。例えばキノ子は「偶数の目が2個以上出ると-5」なので、先程のRUMを取ってしまうとリスクが上がります。

良いシナジーを集めるだけでなく、悪いシナジーを回避する・他プレイヤに押し付けるというのもまた「ビルドとシナジー」の実現です。

また、デジタル版がダメな勇者達の集まりなので、プレイヤキャラごとにデメリットがあるのは元々の世界観とも噛み合っています。

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以上です。アナログ版の破局ダイスは元々デジタル版からの派生でできたことと、「ビルドとシナジー」というコンセプトを踏襲していることについて書きました。次回は世界観やシナリオについて書きます。

アナログ版の破局ダイスは以下で発売中です。


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