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風の時代と冷酷無常なソードの世界

占星術と小アルカナ

 タロットカードの小アルカナはそれぞれ西洋占星術の四つのエレメント、つまり火、地、風、水をあらわしています。
 ワンドは火、ペンタクルは地、ソードは風、カップは水です。
 各サインがどのカードに当たるのかをご紹介します。
 ホグワーツ魔法学校、組み分け帽子のイメージでお読みください。

 牡羊座、獅子座、射手座 勇猛果敢でチャレンジ精神に富むワンド!

火のサイン 小アルカナ ワンド

 牡牛座、乙女座、山羊座 富と豊かさ美しさ!エレガントなペンタクル!

地のサイン 小アルカナ ペンタクル

  蟹座、蠍座、魚座 あふれる愛と限りないやさしさ!カップ!

水のエレメント 小アルカナ カップ

 双子座、天秤座、水瓶座 陰惨、悲惨、冷酷無情!仁義なきソード!

風のサイン 小アルカナ ソード

 ・・・風のサインだけひどくない?
 双子座、天秤座、水瓶座ってそんなに冷酷無情なん?それとも双子座、天秤座、水瓶座って不幸な星のもとに生まれついてるの?

 タロットカードをお使いの方はこんな疑問を持ったことはありませんか。
 私は長年どういうことだろうと考え続けてきました。

 風のサインがソードをあらわすなら風の時代はソードの世界です。

 風の時代とは2020年の暮れに風のサインの水瓶座に土星と木星が入り、いわゆるグレートコンジャンクションが起こりました。ここから約200年、風のサインの特徴が顕著な時代が続くといわれています。2023年の年明けに冥王星が水瓶座に入り、2024年5月には木星が双子座入り。いよいよ本格的に風の時代がはじまります。

 風の時代は情報化!IT革命!自由に!軽やかに!縛られない!
 そんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
 しかしソードの世界に自由さや軽やかさはない。むしろ縛られてる。
 一言で言うとGTO、ゲーム・オブ・スローンズの世界。

風のサイン 小アルカナ ソード

 地の時代が終わり、風の時代は目に見えないものの価値が高まると聞いた人もいると思います。モノよりコト。しかしソードのカードに登場する人物は明らかに貴族と彼らに仕える人々です。ペンタクルの人々は富裕層ですが、ソードの人々は特権階級、権力層。強者でありエグゼクティブ。

 双子座、天秤座、水瓶座をあらわすソードのカードが地のサインをあらわすペンタクル以上の富を手にしているのはなぜでしょう。

  今回はなぜ風のサインはソードなのか、風の時代の特徴とは何かを西洋占星術の仕組み、エッセンシャルディグニティからお話します。前回に続いて豚汁の話です。


双子座と乙女座はどこが違うのか

 サインの特徴はサインを構成する惑星の特徴を反映します。
 真夏の太陽が支配する獅子座は中心人物として輝くオーラを持ち、真冬の厳しさを象徴する土星が支配する山羊座は最悪を想定して転ばぬ先の杖を探します。

 サインを支配する惑星はひとつではありません。
 ケーキを選ぶとき一番に目につくのはトッピングですが、一口に桃のケーキといっても土台がスポンジなのか、タルトなのか、はたまたババロアやゼリーなのかでケーキの構成は変わってきます。

 同じ惑星が支配するサインの特徴が違う気質を持つのは、そのサインを構成するその他の惑星、つまりケーキでいえばクリームや土台の部分に使われている惑星が違うからです。

 双子座と乙女座はどちらも柔軟宮、どちらも水星が支配していますが、土台にあたるトリプリシティが違います。双子座のトリプリシティは土星と水星、乙女座のトリプリシティは金星と月です。

(C)uranaisu @ackey_t  商用利用不可

 双子座は土星が象徴する秩序と枠組み、そして水星が象徴する知覚、認知を土台に持ち、物事の仕組みに興味があります。時計を分解する、列車のダイヤを比較する。これらは秩序と枠組みを知性によって解析する風の要素が好む分野です。

 一方、乙女座は金星が象徴する喜びと月が象徴する感情(あるいは金星が象徴する快楽と陶酔、そして月が象徴する肉体)を土台に持ちます。五感を心地よく刺激するものに満たされたい、苦労せずに暮らしたい、そのための創意工夫に励む、これが乙女座の特徴です。

 もっとも使いやすい時計を設計して作業効率を図る乙女座と、正確に動いている時計をわざわざ分解して歯車をみたい双子座。
 二つのサインはどちらもサインを支配する水星の特徴を反映していますが、そのあらわれ方は土台であるトリプリシティの違いによって区別されます。

トリプリシティは4種類しかありません。

 火のサインは太陽と木星
 地のサインは金星と月
 風のサインは土星と水星
 水のサインは火星

 サインのエレメントによる気質の違いはこのトリプリシティにあらわれます。


風のサインのトリプリシティ

  エッセンシャルディグニティを知ると小アルカナの世界がいかに各サインのトリプリシティと一致しているかに驚かされます。

双子座、天秤座、水瓶座 小アルカナ ソード

 ソードの世界はエースの王冠に象徴される政治と権力争いの世界。
 彼らは趣向を凝らした見事な玉座や寝台を使い、もっとも立場の低い者ですら鋳造された剣を持っています。しかしこれらの富はソードの世界の住人を幸せにするどころか、残酷な戦いを後押しする火種になっています。ソードのナイトは疾駆する馬の背で剣を振り上げ、いまにも敵に襲い掛かろうとしています。

 風のトリプリシティは秩序と枠組みをつかさどる土星、知覚認知の象徴である水星です。土星と水星はどちらも地の惑星で、現状を把握する冷と差異を明確にする乾の働きを持っています。数値化しうるデータ、明文化しうる規約や法令は風が得意とする分野です。

 風のサインである双子座、天秤座、水瓶座は再現性のある情報と普遍的な法則にしたがった理性的な判断を重んじるサイン。悪法もまた法なりです。

 ソードの世界は王政なので、王となるものが法を支配します。法を変えるには権力を手にするしかありません。風のサインは好戦的なわけではありませんが、世界を変えたいなら人ではなく構造を変えなければならないことを知っています。

 天秤座は水瓶座に次いで土星が強力に働くサインです。天秤座はデザインのサイン、また法のサインでもあります。

 デザインするとは秩序だった構成を作ること、構造を作ることです。事故が多発する道の建物と車線の構造を作り替える、表記の色や形を識別しやすい構成にする、争論を繰り返す問題に法を整備して決着をつける。
 これらはすべて土星がつかさどる問題です。
 図面であれ、法であれ、構造を構成するには数字や文字を使った共有できる情報が不可欠です。これらはすべて水星がつかさどります。

地の時代から風の時代へ

 地の時代は金星と月の安楽さと阿吽の呼吸が有利に働く時代、いわば「気は心」「言葉はいらない」時代でした。
 地の時代には美しいもの、便利で快適さをもたらすものが数多く生まれ、医療技術が発達し、食糧生産が飛躍的に伸びた時代でもあります。
 しかし地の時代では贈り物や見た目の美醜が大いに物をいうので、貧富の差や生まれついての身体の特徴などで大事なことが伝わらなかったり、大きな誤解や問題が起こることも少なくありませんでした。

 風のサインは熱の力を持っており、熱は未来へ向かう力、内から外に発揮される力の象徴です。風の時代はこれまでの法や秩序が一新される時代、またそうした決まり事が明文化される時代になるでしょう。
 乾いた惑星である土星と水星は脅しにも情にも流されることがありません。個人の力量やお金の力で1+1を10にできた地の時代は終わります。

 法の力は強力です。どんなに富を蓄えても、法はそれらを一瞬で没収することができます。深い絆も高い理想もそれらを違法と定められれば圧倒的な力で粉々にすることができます。
 そうした法が人権を定義し、奴隷労働や不当な搾取に遭っていた人々が正当な権利を取り戻す助けになることもあります。

 しかし法が最優先されるとなればその法は自分に有利な法であってほしいと誰もが望むでしょう。できることなら法を作る側に立ちたいと思うでしょう。その権力さえ握れば敵対者を法の力で失脚させることもできます。

 これがソードの世界、どんなに富みを蓄えても安心できない権力争いの世界です。

 でもこのような変化をむやみに怖がることはありません。
 私たちはソードの世界の住人と違って王政に生きているわけではないのです。私たちが持つ主権を活かして個人として選挙に参加すること、各種規約に意見を述べること、正されてほしいと思うことは言葉にして伝えること、これが風の時代に個人が手にする剣です。

 これからの時代に必要なことはゲームのルールをよく知ることです。そして利用できる制度やサービスは遠慮なく活用し、そうした仕組みがよりよい成果を生むように、ユーザーとして声をあげていきましょう。
 その際に大切なのは「最高です」「最悪です」といった言葉よりも土星と水星に関係する言葉、5W1Hを意識すること。そしてどのような結果を望むのかを明白にすることです。

 そして家庭の中で、友人やパートナーとのあいだで、大切なことを言葉にしながら互いに役立つ秩序を作り上げていくことができれば、風の時代は生まれや育ちが足枷になる時代を終わらせ、公正なルールに基づいて進んでいきます。風は湿と熱のサインですから、絶えず意見を取り入れながら変化することも大切です。

 めでたし、めでたし。

 それじゃ、ここから先は火と地と水はタロットカードとどう関係しているのかをお話しますね。

火のサイン 太陽×木星 ワンド

牡羊座、獅子座、射手座 小アルカナ ワンド

 ワンドの世界は前向きな挑戦に満ちています。ワンドの2の富んだ人物とワンドの3の質素な人物は身なりに違いはありますが、大海原を前に人生を掛けた勝負をしている点で対等です。コートカードの人物たちは威厳を感じさせますが、宝石のついた笏ではなく芽を吹いた杖を持っているだけです。黒猫を連れて向日葵を持っているクイーンが可愛いですね!

 ワンドの世界の住人は華美で豪奢な暮らしより、自主独立、名誉と精神性に重きを置いています。ときにはぶつかることもありますが、互いを認め、成功を祝いあう団結心もあります。

 火のサインのトリプリシティは誇りと尊厳を象徴する太陽と繁栄と幸運の象徴である木星。おめでたい惑星を土台に持つ火のサインの牡羊座、獅子座、射手座に共通するのは楽観的な挑戦力と高い精神性です。

占星術からワンドのカードを読む

 太陽と木星はどちらも熱の惑星です。熱は未来に向かう力、アウトプットの力を司ります。ワンドのカードが出たらこれまでではなく、これからに目を向けましょう。過去のカードにワンドが出た場合は「挑戦しようとした」「新しい展開があった」現在のカードにワンドが出た場合は「挑戦しようとしている」「新しい展開が起きている」と読めます。

ワンドのカードが象徴する人物

 ワンドが象徴する人物は太陽が象徴するユニークな個性と木星が象徴するおおらかさを持っています。
 大きな夢を持ち、楽観的で、自分の力で物事を成し遂げることに誇りを持ちます。木星の希望的観測が詰めの甘さに繋がることもありますが、失敗もまた経験。過去の苦労をもとにさらに大きく成長し、その姿で太陽のように人々を元気づけ、奮起させます。
 人生の成功はお金や権力では測れない。自分の夢を信じて、世界でただひとりのユニークな個性を生きること。これがワンドが目指す成功です。

 しかしこの気性が裏目に出ると、太陽がほかの星の輝きを消してしまうように、周りに気遣いができず悪目立ちします。

 木星のどんぶり勘定気質で予算や時間配分を考えない計画を立てたり、熱の力で「俺の話を聞け」とばかりに一方的に自分の言い分を唱えたり。

 他者と繋がる湿の力を持つ木星、あくまで自分を保つ乾の力を持つ太陽の合わせ技が、自分語りのうざがらみで根も葉もない話を繰り返すようになると最悪です。
 話を盛って適当な嘘をついたり、自分を誇示することに夢中になって人を軽く見たりすれば評判もガタ落ち。誇りも尊厳も台無しです。

地のサイン 金星×月 ペンタクル

牡羊座、獅子座、射手座 小アルカナ ペンタクル

 ペンタクルの世界は富と豊かさに包まれています。人々は熱心に働き、見事な工芸を施した建物や品々を作り出し、それぞれの立場でさまざまな商売をしています。コートカードの人物たちは手にした宝を見つめながら、乳と蜜の流れる領土に目を配っています。ワンドのナイトの馬は広々とした畑を背景に、大地に足をつけて大人しくしているのがわかりますね。

 地のサインのトリプリシティは魅惑と陶酔を象徴する金星、肉体そのものをあらわす月です。牡牛座、乙女座、山羊座は身体を満足させるもの、生きる喜びをあじわわせてくれる感覚を重視するサイン、まさに地に足の着いたサインです。

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