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【ラジオ】フリーフォークを中心に考えるゼロ年代のサイケデリック感覚特集.mp3 <前編>

*ポッドキャスト番組「アーバンぱるNEW」の文字起こし記事です。

後編はこちら

<メンバー>
店長 / ダモリ / ファグ






 

<オープニング>


店長「今回のテーマは、フリーフォークを中心に考えるゼロ年代のサイケデリック感覚特集、です!」

全員「はい。」

ファグ「長いですね、今回もタイトルが。」

店長「(笑)。今回は、これはどういう事なんですかね?」

ファグ「どういう事なんですかね?フリーフォークは、我らの世代では音楽雑誌が取り上げて話題なったジャンルではあるんですけど、今になると意外と顧みられないカテゴリーだなというところで、一体フリーフォークとは何だったのか?というのを、振り返ってみようという企画でございます。」

全員「はい。」

ファグ「で、今回はアシッド・フォークに関して、結構一家言あるという店長と、アメリカン・プリミティブというフリーフォークと関連のあるサブジャンルにお詳しいダモリさんと、当時多分一番フリーフォーク的なものをちょこちょこ聴いていたファグ、この3人でお送りしたいと思います。」

全員「はい。」




<フリーフォークとは何だったのか?>


ファグ「フリーフォークとは何か?っていうと、ゼロ年代に主にアメリカで興った、まあ、大まかに言うとフォークのリバイバルっていう感じかな、と思っていて。で、リバイバルっていうので例えば、1940年から1960年ぐらいのリバイバルやと、1900年から1920年代ぐらいのものの中から、特定の傾向をピックしてリバイバルするっていう感じやったと思うねんけど。ゼロ年代のフリーフォークに関しては、割と1900年から直近のゼロ年代まで、そこまでのフォークっていうのをひとつに畳んでしまおう、みたいなムードがあるのがフリーフォークなんかな、という感じですね。」

ダモリ「うんうんうん。」

店長「はい。まあ、当時フリーフォークって紹介されてた代表的なアーティストは、デヴェンドラ・バンハートとかアニマル・コレクティブ、ジャッキー・O・マザーファッカーとかジョアンナ・ニューサムとか色々いたけど。割と傾向が結構バラバラで、総体としてよく分からないまま来てしまったところもあるのですが。まあ、いくつかの流れがありますよね、やっぱり。」

ファグ「うんうん。」

店長「まあ、アメリンカン・フォーク・リバイバル、50年代から60年代にかけてグリニッチ・ビレッジとかを中心に、フォークがリバイバルした訳ですが。でね、その後アシッド・フォークなるものが出てきて…」

ファグ「うんうん、そうですね。」

店長「ESPの作品とかね。」

ファグ「そうね。だから、結構グリニッチ・ビレッジっていうとNYの方の土地やからさ。ESPレコーズ、The Godzとかさ。The Godzが最初に出てくるのはアレやけど (笑) The Holy Modal RoundersとかThe Fugsとか。あの辺のポスト・ビート的な人達っていうのが結構いっぱいいた、っていう感じっすね。その辺が割とリバイバルしていると。」

店長「うんうん。エリカ・ポメランスとかエド・アスキューとかもね。大好きでしたからね、はい。」

ダモリ「フリージャズのレーベルでフォークも出てたっていうのも、重要なとこじゃない?」

ファグ「そうですね。」

店長「で、まあこのシーンの代表的な人と言えば、やっぱりボブ・ディランが象徴的な人なんですが。色々、結構周辺におもしろい人がいてんな、っていうのはありますね。」

ファグ「うんうん。ただ、やっぱりフリーフォークからの観点でいくと、ピート・シーガーとかボブ・ディランっていう流れの左翼的なメッセージ性っていうよりは、もうちょっと抽象化されたメッセージが多いのかな、って感じはしますよね。」

店長「うんうん。」

ファグ「で、それとは別にアメリカン・フォーク・リバイバルっていう大きい枠組み・流れの中で、別の流派というか。ハリー・スミスのアンソロジー・オブ・アメリカン・フォーク・ミュージックから影響を受けたジョン・フェイヒーのアメリカン・プリミティブ・ギターの流れっていうのも、ありますわな。」

V.A / Anthology of American Folk Music

店長「うんうん。ロビー・バショーとかね。」

ファグ「レオ・コッケとかね。」

ダモリ「うん。ジョン・フェイヒーのタコマ・レーベルから出てきた面々。」

店長「うん。で、その辺がジム・オルークと繋がったりとか、ジャック・ローズとかベン・シャスニーとか、その辺に受け継がれていく感じになるのかな?」

ファグ「そうですね。アメリカン・プリミティブの流れっていうのは、ポスト・ロックの時代に音響的な側面で取り上げられる。まあ、ジム・オルークとかがやってたような事。それは、だからオルタナ・カントリーとかの方にも流入していくんやけど。それとは別に、もうちょっとピッキング・スタイルを強調したような、アメリカン・プリミティブのアーティストっていうのがフリーフォークには結構いる、という感じっすね。」

店長「そうですね。ダモちゃんが特に好きな分野ではありますが。」

ダモリ「そうなんですよ。」

店長「で、90年代後半ぐらいからリイシューというのが、結構進んできた流れがあって…」

ファグ「うん、なんかアメリカのフォーク、さっき言ったハリー・スミスのアンソロジー・オブ・アメリカン・フォーク・ミュージックとかも、97年~98年に再発されてて。で、再発されてるのはアメリカの音楽だけじゃなくて、結構イギリスのアシッド・フォークっていうカテゴリーに括られるような音源も再発されてて。それも結構フリーフォークに影響を与えてる、と。で、まあ再発に関わった人間として、アポカリプティック・フォークとかで有名なデヴィッド・チベットが結構関わってるよ、っていう。で、出たアーティストですよね、サイモン・フィンとか。」

店長「ヴァシュティ・バニヤンとかですよね。」

ファグ「そうそう。この流れの中で一番重要なのは、ヴァシュティ・バニヤン。ヴァシュティ・バニヤンは、フリーフォークのゴッドマザー、みたいな感じで言われてなかったっけ?」

店長「そうなの?」

ファグ「うん、そう。で、再発が確か97年にブートかなんかで出て、オフィシャルが00年に出たのかな?」

店長「うんうん、そうですね。」

ファグ「ヴァシュティ・バニヤンっていうと、やっぱりデヴェンドラ・バンハートと一緒にやった音源が有名やったりとか。あとはフォー・テット、フォー・テットはイギリス人やねんけど、フォー・テットがアニマル・コレクティブにヴァシュティ・バニヤンを紹介したり、とか。ここでも、イギリスとアメリカの交流、みたいなんがあったっていう事ですね。」

Vasti Bunyan / Just Another Diamond Day (1970)

店長「はい。あとは、90年代のUSインディ・シーンからの流れみたいなのもあって…」

ファグ「そうですね。結構、アメリカン・プリミティブの流れの中に入ってしまっているといえば、入ってしまってんねんけど。ちょっと支流があるから。ジャンク・ロックとかの系統でサン・シティ・ガールズ、アラン・ヴィショップとかもアメリカン・プリミティブのギターを出してたりとか。あとは、Sublime Frequenciesっていうレーベルを2003年から始めて。で、そのレーベルっていうのは結構、トライバルな音楽の再発レーベルとしてやってて。そういうのが、ゼロ年代のシーン全体に影響を与えてて。もちろん、フリーフォークももれなく影響を受けている、っていう感じっすね。」

店長「うんうん。」

ファグ「で、まあそれ以外の支流としては、ノー・ウェイブのシーンから出てきたスワンズが、ゼロ年代はバンド活動を休止して、Young Godっていうレーベルをやっていた、と。そこで出てきた有名なアーティストといえば、デヴェンドラ・バンハート。その他にも、Akron/Familyとか。」

ダモリ「あとね、James Blackshawとかもね、いるし。」

ファグ「フリーフォーク・シーンの中でも、ちょっと違うテイストのアーティストが多かったのかな、っていう感じですね。で、あとはさっきもちょっと言ったけど、ポスト・ロック方面からジム・オルークがアメリカーナを取り上げて、そういう風にジョン・フェイヒーをリバイバルさせたっていう流れの中で、その後のフィンガー・ピッキング・スタイルのアーティストがたくさん出てきたっていう。そういう繋がりも、作ってきたという感じ。」

店長「そうですね。あと、ちょっとズレるけどゼロ年代の象徴的なアルバムとして取り上げられる、ウィルコの"Yankee Hotel Foxtrot"とかもね、ちょっと近いところがありますよね?流れとしては。」

ファグ「そうですね。オルタナ・カントリーって当時は言われてたけど。ちなみに、フォークの流れの中でさ、フォークとカントリーが分かれるっていうのが、40年代から50年代ぐらいにあって。チャートを作るためかなんか、っていう理由やったと思うねんけど。その流れを、合流させようかなっていうムードがあったりすると。で、オルタナ・カントリーっていう言葉は今も生きてて、それこそ最近話題になったリル・ナズ・Xとか。そういう方向まで波及してると考えると、チャレンジングなカテゴリーとして今も続いている、とは言えますね。」

店長「うん、そうですね。まあ、なんかこんな感じですかね?ざっくり流れとして見えてくるのは。」

ファグ「うんうん、そうですね。こういう流れの合流地点が、フリーフォーク・シーンであった、と。」




<当時の認識>


ファグ「みなさんは、フリーフォークを認識したのはいつぐらいとか、ご記憶ございますか?店長!」

ダモリ「店長、どうですか?」

店長「俺はですね、普通にやっぱり当時読んでたスタジオ・ボイスとかで、フリーフォークっていう言葉がなんか出てきて。それと一緒に、デヴェンドラ・バンハートとかアニマル・コレクティブとかが、紹介されてて。まあ、なんかゼロ年代当時のアシッド・フォークに新しいネーミングを付けた、みたいな認識やったな。っていう感じですかね。なんで、スタジオ・ボイスの影響です、はい。」

ファグ「あー、なるほど。ダモちゃんは?」

ダモリ「私は、まあフリーフォークっていうよりは、アメリカン・プリミティブ・ギターをよく聴いてたんやなって。今、思うと。」

店長「フリーフォークは聴いてなかった、と。当時は。」

ダモリ「そういう感じっすね。」

ファグ「へー、フリーフォークっていう用語自体は、どっかで知ったっていうのはあるの?当時から全く、意識の俎上にはのぼってなかった、っていう感じっすかね?」

ダモリ「うーん、インターネットとかで見て、意識はしてたんやと思うねんけど。デヴェンドラ・バンハートも知ってたし。」

ファグ「俺は、05年に出たremixっていう雑誌の特集で、初めてフリーフォーク…、初めてかな?あんまり定かじゃないけど、一応ちゃんとまとまったものとして認識したのは、その号かな。で、最近もele-kingでフォーク特集をしたけど、その時にフリーフォークの記事を書いてたのもremixの編集長をされてた野田努さん、という事で割と野田さんの印象が強いですね、フリーフォーク。」

店長「うんうん。」

remix / 2005年11月号のフリーフォーク特集

ファグ「まあ、音的には結構グチャグチャしてたのを聴いてたから、なんとなくポスト・ボアダムス的なイメージがあったかな、当時は。」

ダモリ「あーそうなん、フリーフォークに?」

ファグ「なんか、集団即興的なものを俺は割と好んで聴いてて。」

ダモリ「なんかアニマル・コレクティブも、初期とかちょっとジャンクっぽいっていうか。ブラック・ダイス的というか。」

ファグ「そうね。なんかあの辺の区分けが、よく分からんまま受容してた感じっていうのはあったかなぁと思うね。あとで喋るけど、ブルックリン・シーンとか、ノイズ・ロックとか、あの辺り。」

ダモリ「うんうん。」




<フリーフォーク・フェスティバルの話>


店長「はい、まあフリーフォークの代表的なトピックとして挙げられるのは、2003年に開催されたブラトルボロ・フリーフォーク・フェスティバルですね。」

ファグ「うん。バーモント州のブラトルボロ、ですね。」

店長「で、やったフリーフォーク・フェスティバルっていうのが…」

ファグ「まあ直接的にね、フリーフォークっていうのの名前の由来になったっちゅう事ですな。」

店長「うん、そうですね。この辺もele-kingの野田さんの記述とかを読むまで、出来事としては知らなかったので、新鮮でしたね。」

ファグ「新鮮?こんな事があったのか、っていう事?」

店長「そうそう。」

ファグ「あー、この世にこんな事があったのかっていう (笑)」

店長「いや (笑) 当時こんな事があったのか、っていう感じですね。」

ファグ「うん、確かに。でも、ちゃんと見てたら書いてたかもしれへんけど。」

店長「うん、そうね。スルーしてたのかもね。で、フリーフォーク・フェスティバルっていうのがあった訳ですけど。」

ファグ「ありましたねぇ。」

店長「2003年にね。」

ファグ「2003年に一度だけ行われた、という事らしいですよ、なんか調べてたら。」

Brattleboro Free Folk Festival のポスター

店長「はい。で、それを観たWireのデヴィッド・キーナンが、New Weird Americaっていうのを提唱した、という事ですよね。」

ファグ「あー。なんですか?そのNew Weird Americaっていうのは?」

店長「それは、そのー…」

ファグ「(笑)」

店長「そのー、50年代・60年代におきたフォーク・リバイバルが、Old Weird Americaって呼ばれてた事に対して、新しいフォークの運動としてNew Weird Americaって言った、っていう事ですよね、確か?合ってます?こんな感じで?」

ファグ「いや、まあ正確にはOld Weird Americaっていう本があって。それをもじった、と。」

店長「そうそう。そうなんですよね。」

ファグ「でも、なんか結構フリーフォーク・フェスに関して言うなら、どのくらい当てはまってるか分からへんけど、フリーフォークの総体を言うなら結構いい言葉なんじゃないかな、と個人的には思ってますね。それこそ、最初に言ったみたいに、1900年から90年代ぐらいまでのフォークの歴史、アメリカのフォークっていうのを改めて畳みなおそうっていう時に、やっぱりどうしても奇妙なものを含んでしまう。なんかそういう感じの、New Weirdっていうのがしっくりくるなって、調べていくうちに思うようになった。」

店長「そうですね。で、まあそのフリーフォーク・フェスティバルに出てたのは…、マット・ヴァレンタインが主催に関わってんのかな、これは確か?」

ファグ「うん。一応、MV&EEが主催なんかな?エリカ・エルダーとマット・ヴァレンタインのユニット。」

店長「夫婦のデュオですよね。とか、サンバーンド・ハンド・オブ・ザ・マンとかザ・タワー・レコーディングスとか。カジワラトシオさんが日本人から出てたりとかしてたと。」

ファグ「うん。まあ、カジワラトシオさんフォーカスするのはそうなんかな?っていうのはよく分からんけど。なんかブルックリン・シーンの名物レコード店員やったから、っていうところで出られてたんかな?なんかインタヴューで、その話をしてるのがあったような気がしたけど、ちょっと探してたけど見つからなかったんで。また、見つかったらシェアしたいですね。」

店長「うん。チケットが10ドルやった、と。」

ファグ「うん、やっぱりアンチ資本主義的な。」

ダモリ「10ドルは観たいですね。行きたい!」




後編に続く


【REFERENCE】

〇ディスカホリックによる音楽夜話
https://hiroshi-gong.hatenablog.com/

世界のインディ、アンダーグラウンド音楽を掘り続けているhiroshi-gongさんのブログ。日本語でフリーフォークについて調べようとすると避けては通れない。お世話になります!

〇英米フリーフォークの幽霊的地図
https://note.com/hirayamakun/n/n7593d0a23a3b

『ナース・ウィズ・ウーンド評伝』でお馴染み、平山悠さんによるフリーフォーク評。フリーフォークをネオフォークの流れと絡めて読み解く視点は氏ならでは。主催のFEECO別冊『MUSIC + GHOST』では憑在論の流れの中にフリーフォークを位置づける関連記事あり。必見。

〇It Still Moves
https://pitchfork.com/features/article/7174-it-still-moves/

Pitchfolkのフリーフォーク関連記事。Amanda Petrusich『It Still Moves』からの抜粋。The Golden Apples of the Sun以前のフリーフォークがどのようなものだったかを伝えている。

〇New Weird America
http://new-weird-america.aawilson.co.uk/index.php

Andrei Sfetcuによる個人サイト。フリーフォークの全体像を把握するのに最適。図が見やすい。

〇r/freefolk
https://www.reddit.com/r/LetsTalkMusic/comments/tekb9f/lets_talk_free_folk_or_new_weird_america/

redditのフリーフォークスレッド。現地でリアルタイムで聴いていた人たちのコメントが希少。

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