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USBケーブル1本で音質は向上する話

先日、USBケーブルを友人の伝手でメーカーさんから拝借できる機会があり、ケーブルが何本か大集合したので、弊社スタジオで音質比較試聴会をしてみました。せっかくなので、忘備録的に検証結果を綴っていこうと思います。

結論として、

・いいUSBケーブルは値段や材質、技術に応じて、音の解像感が増し、聴感的に心地よく明瞭に聴こえました。音質が向上したといえます。

・USBケーブルでの音質向上の変化よりも、スピーカーまでの経路、AD/DAコンバーターの品質、再生ソフトの品質、デバイス間のノイズ除去などで、音質クオリティが格段に変わってくる。

どこの目線から、音質向上への文脈を捉えているか?

僕はクラブDJなので、いわゆるクラブ箱のサウンドシステムにおいて、音質変化が望めるか?、四つ打ちのジャンルに対して、どのような音質的向上が得られるか?、です。箱のDJミキサーの入力までに、僕らDJができるハードウェア面の音質向上はどこまでできるのか?


音質向上への興味を持ったきっかけは?

DJというのは、バンド演奏に例えると、会場に常設されている同じ楽器で、みなさんパフォーマンスしてくださいというニュアンスと一緒です。再生するメディアとして、レコード、CD、mp3、などの選択肢はありますが、 僕は単純にカタログ数、リリース速度、手に入りやすさ、管理のしやすさ、の観点からmp3で、PCDJをしています(元々はアナログDJ→PCDJ)。DJは、音質向上へのアプローチができない。。と、思っていたんですが、ここ近年は、DJそれぞれのやり方によって、選択肢の幅が広がってきました。2011年に発売されたクラブ箱の業界標準的なDJミキサー Pioneer DJM900 nexus。このDJミキサーでは、PCからUSBケーブル1本でダイレクトに接続できる機能が搭載されました。発売からちょっとずつ都内のクラブもインストールされるようになって、オーディオインターフェースをいちいち経由しなくてもUSBケーブル1本さすだけなんて、めちゃくちゃ楽じゃんという理由で、DJM900nxsのある箱では、このお手軽接続を試していました。そこから、廉価版の後継機(DJM850,DJM750)などもリリースされ、だいたいの箱でUSBケーブル1本で接続できるようになりました。

でも、それでも、USBケーブル1本でで接続できない箱は以下のような配線で、オーディオインターフェース(DAC)、デジタルからアナログ出力に変換してRCA接続しています。(*後述しますが、ここのプロセッサで音のクオリティがものすごく劣化します。)

機材が入ってない箱がいけないということではなく、その箱それぞれの入力に応じてDJは適応する機材を持ち込まないといけないというお話です。プレイさせていただいているのは我々なのだから。

で、まあ僕は、このどちらかの繋ぎ方でPCDJをしているのですが、うっかり気づいたのが、USBケーブル1本で直繋ぎしている時の音質めちゃくちゃいい。。。ということで、DJが音質向上のためにしてやれるハードウェア面のアプローチって、あるかもしれないと気づいたんです。で、ちょっといい材質のUSBケーブルでも手に取ってみようと、ヨドバシのポイントで、オヤイデのD+シリーズのオレンジ色のUSBケーブルを購入してみました。d+USB class Aってやつ。3種あるうちの、真ん中のスペックです。5千円くらい。

そしたら、あれぇ、こんなに変わるの?ww、とちょっと笑っちゃうくらい解像感が上がって、確実に音質が向上してしまったので、USBケーブルで、どれほどのクオリティのものを投入すると、どれほどの音質向上を獲得できるのかと興味が湧いた次第です。


そして、USBケーブル音質比較視聴会

↑こちら弊社スタジオにて。各種機材のセットアップ。

メインの比較システムは、PC(macbookAir2013mid) → USBケーブル → DJM900nexus USBinのルートで、スタジオのPAシステムへ。備考ですがスタジオのサウンドシステムはチャンデバで、3つの帯域ごとでスピーカーに送っています。HI,MIDあたりを4発のスピーカーで、グライコデで少し味付けもしています。MID LOWあたりを2発のスピーカー。46cm サブウーハーを1発。アンプもスピーカーも全てRAMSAで統一されています。サウンドシステム的に、高品質な伝送素材云々よりも、帯域ごとに割ってそれぞれのスピーカーに出力することは音質向上のためにダイナミックかつシンプルにアプローチできることの一つなのでおすすめです。音像の輪郭、明瞭感が確実によくなります。

グレード順に並べてないのが申し訳ないのですが、普通のどこにでも売っているUSBケーブル、オヤイデのD+シリーズ3種、d+ USB classB d+ USB classA rev.2 d+ USB ClassS rev.2 表記した順に性能もお値段も上がってゆきます。とはいえ、ClassSでも1万円を切るお安さ。

そして、

今回の主役、AudioQuest Diamond 72v DBS AudioQuestのUSBケーブル最上級モデルで、1.5mで15万円ほど。素材は純銀で、ケーブルの周りを電流を走らせることで、ノイズを徹底的に遮断して、歪みを最大限までカットするという特許技術なので、これはこのメーカーでしかなし得ない機構となっています。もっと詳しいことは、インターネットで検索してみてください。もっと上手に説明できている方がいるはず。

こんな環境の中、課題曲は、Rej / Ame 。ソムリエのようなテイストノート語彙力は持ち合わせてないので、乏しい日本語でしか書けませんが、USBケーブルのグレードを上げていくごとに、聴感的にもどんどん音質が上がってゆきました。解像感、明瞭感、レースのカーテンが一枚一枚取れていくような感じです。オヤイデさんのD+最上級モデルは、聴く前の先入観としては、必要な情報まで角を落としてツヤを出したり、痩せてしまったりするんじゃないだろうかなんて心配があったのですが、LOWの帯域もしっかり太くなってくれて、純粋にノイズを削ぎ落として、音が綺麗に洗浄されている印象を受けました。素晴らしいです。 

そして、AudioQuest Diamond 72v DBS 素晴らしい。これ以上のクオリティのケーブル聴いたことないので、わかりませんが、スペック通りに、僕が聴いてきた中では、最大限の音質向上。余計な味付けもなく、綺麗に音場があり、丁寧に各帯域が明瞭に鳴ります。極限までノイズをそぎ落として、歪みなく音源データを伝送しているのがはっきりわかります。宇多田ヒカル米津玄師なんかを聴くと、いいマイク使ってるなとか、いいスタジオでミックスしてるな、っていう印象がすごくわかります。いわゆるDTM系トラックのボーカルワークなんかと比較すると、声の立体感が全然違って聴こえてくる。帯域ごとの味付けはないと思いましたが、ボーカルモノは、聴感的に傍で歌われているような印象。若干の定位感の変化はあるようです。まさしく、価格、性能、順当に音質向上がはっきりと知覚できた結果となりました。

他にも、オーディオインターフェイスを経由して、RCAの接続をAudio Quest SKY72V DBS(2本で40万)ケーブルにして、比較するなど、贅沢な比較実験をしてみました。当然普通のRCAケーブルと比べれば団地の差ですが、やはり、PCからダイレクトでUSBケーブル接続した場合とでは劣化が激しいです。他にもアナログシンセでサイン波を出したり、UREI1620を経由したりなど、いろいろ比較してみました。この辺は割愛。

うっかりUSBケーブルよりも音質向上に貢献してしまったアイテム

AudioQuestのノイズフィルターJitterBugです。ケーブルと繋ぐだけで、ノイズを除去してくれるという眉唾物ですw。今まではパソコンスピーカーの出音で聴いていたのものあって、正直聴感上の変化はわずかでしで、、つけないよりかはつけとこうか、くらいの感想でした。が、AudioQuest Diamond 72v DBS ケーブルとの組み合わせで、比較視聴してみたところ、鳴らした瞬間、聴いていた全員が"えっ?"って言葉が出るほどに、澄んだ音が鳴りました。これ、5千円くらいの代物なんです。これは驚きの変化。。しかもPCのUSBソケットに挿せばさすほどノイズ低減できるということで、もう一個、二個、の勢いで調達したい代物です。これはどのグレードのUSBケーブルでも、音質向上が見込めます。すごい変化です。PCから音を出すってことは、まずは徹底的にノイズを減らしていくアプローチ。こっちのほうが音質向上の近道かもw。

オーディオインターフェースの話

いわゆるAD/DAコンバータ。アナログ入力をデジタル入力にかえたり、デジタル入力をアナログ入力に変えたり。このプロセッサの品質によって、音の入出力の良し悪しは全然違います、当然。USBケーブルよりも懸念する部分です。ただ、僕のクラブDJとしての立場でいうと選択肢はあまりないのです。現場への携行性、機材を置くスペースなどの懸念、DJ交代時の1曲程度の間で転換すること、などいろいろと懸念事項があります。今クラブ業界のスタンダードでNativeInstrumentsのAudio2Audio6などの、External出力で、2系統以上出力できるDJ用途向きのオーディオインターフェースが主流です。RANEのScratch Liveなども、いろいろあります。

DAW方面へ目を向けてみると、値段相応にさらに高品位なオーディオインターフェースが豊富にあります。ApogeeやProtoolsHD、UniversalAudio上げればキリがないですね。リッチーホーティンなんかがUrackサイズのオーディオインターフェースでPCからDJミキサーで送っているのは、この辺の高品位なプロセッサを積んでいるのを選択しているからですね。

別日で、高品位なオーディオインターフェース比較で、AudioQuest Diamond 72v DBS ケーブル接続での視聴をしてみました。

Apogee Symphony I/O Mk IIProtoolsHD I/O。こちらは、市販音源前の、DAWのプロジェクトデータからの再生です。2chミックスで書き出しされる前の元素材を鳴らすので、再生する情報が最大限劣化のない状態です。うちのスタジオのmichitomo先生のレコーディング部屋にて視聴実験。ちなみに、ApogeeもProtoolsHDも筐体的にクラブに持っていけるような代物ではないです、重いですw。まずは、このオーディオインターフェース違いでも音の解像感の鳴りが若干違い、Protoolsのプロセッサの方が当然優秀。そして、普通のUSBケーブルとAudioQuest Diamond 72V DBSとの比較。結果、違う、端的にいうと音が良くなっちゃったw。これはブラインドテストをしてみて、どちらがどちらの音か当てつつの感想ですが、普通のUSBケーブルの場合、音はちゃんときっちり全部鳴る。吉川友ちゃんの楽曲を聴いてたんですが、ボーカルのハスキーな感じ、ギターのピッキングなど、高いところの耳に少し刺さってくる印象の部分も含めてしっかりデータを再生している。AudioQuest Diamondで聴くと、そういった部分が綺麗になるツヤが出る。情報が落とされているのとも違うと思うんですが、確実に音の変化が生まれて、聴感的に心地よいと感じました。解像感も上がった。ただ、ボーカルの定位が前に出ていると。これは作曲者談。冒頭に、僕はクラブDJの立場として、音質向上の良し悪しを捉えると表明したように、オーディオ的な評価とエンジニア的な評価は、少し勝手が違うのかなと思いました。視聴したスタジオでは、このままマスタリングスタジオで鳴らしても同じ聞こえ方になるとおっしゃっていたので、エンジニア的観点でいうと、この良さ、変化をどう捉えるかが難しいようです。忠実に再生されることとは、、、禅問答ですね。

USBケーブルが高品位なことはもちろんですが、再生するAD/DAコンバータが高性能であるということも大事ですね。

DJ現場の話に戻りますが。DJM900nexusのAD/DAプロセッサは悪くないんですよね。曇りがない。NIのAudio2などと比べたら雲泥の差です。値段がそもそも違いますしね。さらに、現在のフラッグシップモデルのDJM900nexus2は、さらに音質が良いです。Pioneerのミキサーはどんどん音質が向上しているんですよね。今聴くと、00年代のスタンダード機種であったDJM800や、DJM600なんて、もうほんと音聴けないですよ、ひどすぎて。書き方悪いですね。ほんとに年代ごとにPioneer製品の音質は手に取るように向上してます。だからこそ、PCからDJミキサーをシンプルにUSBケーブルのみで繋ぐということができるようになって初めて、じゃあこのケーブルの品質をよくしたら、どこまで音質上げれるのか?。DJユースではなく、高級オーディオカテゴリーのケーブルにも手出しても、恩恵受けれるんじゃなかろうか、と。

再生するソフトウェアで音質の違いがあります

僕はPCDJ用のソフトはTraktor pro3を利用しています。2からアプデした時に、音の解像感がめちゃくちゃ上がりました。さらにAudioQuestケーブルでの音質比較もしましたが、iTunesがこれらよりとても曇ったサウンドになってました。多種多様のソフトウェアで比較できたわけではないので、なんとも言えないですが、音源を再生するソフトウェアによって、出音変わるので、この辺も音質向上のために模索するのはいいことだと思います。昔、Scratch Liveは音が悪いーなんて話とかも現場で良くありましたね。今のverは知らないですけど。Traktorよりも、よりよい再生能力を持ったソフトウェアもあるかもしれませんね。Recordboxとかどうなんだろ?w

まとめ

DJをするための使用機材のスタイルは様々なので、とても狭義的な用途での内容になってしまいましたが、PCDJとして、DJが箱のDJミキサーまでに持っていく音をどこまでよくできるかという模索でした。今回のような視聴比較を青山ZEROさんでも、させていただきました、音は明確に良くなりました。箱のサウンドエンジニアの皆さんも、日々サウンドシステムのアップデートに努められていますし、僕らDJとしてもなるべくいい音を鳴らしたい。それには、高いケーブルを買う以前に、ミックステクニック、DJミキサー上でのEQの振る舞い、いろいろなところにスキルアップのノウハウが隠されてますので、そちらの鍛錬がまず先というのは、言うまでもありません。アーティストの作った素敵な音楽を、そのまま感動を、お客さんに忠実に届けたいですね。今後も精進します。

個人的に、忘備録的な意味合いが強いので、テキストで、これを使ったら音が良くなった、なんて納得のいく書き方はできないので、皆さんにはどこかで視聴比較する機会作っていただいて、ご自身の耳で実感していただきたいものです。より良いものを知るというのは大事なことです。そして、そのクオリティの環境でなければいけないとも思いませんし。今回とりあげた製品のものにオカルトな類は一切ないですねw。材質のもつ伝送力、歪みを生まない、ノイズを取り除く、それらが作用した結果です。

で、音質向上セットアップは?

DJソフトはTraktor3pro、DJミキサーとはUSBケーブル1本のみで接続、AudioQuestは男のロマンとしてw、2万で収まる範囲のUSBケーブルでかなりポテンシャル引き出せると思います。そして、ノイズ除去のJitterBugは確実に装着してほしいところ。これくらいの支出なら費用対効果抜群かとおもいますw。

P.S 音楽スタジオの経営者なので、これ以上は沼らないように気を引き締めていきたいとおもいます。

DJ Y-park (URBAN SOUL RELAX)



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