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本日のウニ:タコノマクラ⑦後期原腸胚


受精後34時間後のタコノマクラ胚

だいぶ久しぶりになってしまいましたが、タコノマクラの正常発生シリーズ第7弾の後期原腸胚です。受精してから34時間経過したものになります。前回の記事同様に色素細胞が外胚葉上皮の中を遊走し全身に散らばっている様子が見て取れると思います。この写真は背腹軸方向から見ているものになりますが、色素細胞は背側の外胚葉のみに存在しており、腹側には一切見られません。これは我々が育てているバフンウニやハリサンショウウニにおいても全て同じ特徴になります。なぜ、腹側には移動できないのかという点に関しては一切報告がありません。

原口から陥入した原腸は真っ直ぐと体の前端部まで伸びきります。この伸長は細胞分裂をほとんど伴わず、各細胞が形を変えたり、細胞同士の配置を変えたりして前後に長くなる現象で、convergent extensionと呼ばれています。日本語では収斂伸長運動(しゅうれんしんちょううんどう)といいますが、日本語にしても意味はさっぱりわかりませんね。収斂という言葉・漢字は進化の場面でも使われる日本語ですが文字として全然ピンとくる感じじゃありませんね。自分が不勉強なのもありますが、誰か別な言葉を考えてもらった方が学問が発展すると思います。。。脱線しましたが、この原腸の伸長はウニの種類によって全然違っていて、我々のメイン材料であるバフンウニやここで紹介しているタコノマクラではまず真っ直ぐ伸びるのですが、アメリカのモデルウニであるStrongylocentrotus purpuratusなどは最初から口の開く方向へ伸びていき、体の前端部に着くタイミングはありません。この原腸伸長の違いが何から生じるのかを研究するのも面白いかもしれません。

この時期の特徴として体の左右に骨片が伸び始めます。他のウニの時の説明でも書いているかもしれませんが、骨片は一次間充織細胞が融合した中に袋状の構造を作って、その内部に炭酸カルシウムの結晶を沈着させて作られていきます。最初の三又構造は外胚葉で発現しているVEGF receptor細胞の位置と決まっており、一次間充織細胞は自身が発現しているVEGFが受容体と反応することで将来的に骨片を作る場所に落ち着く仕組みとなっています。タコノマクラの幼生は透明度が非常に高いため、タイムラプスなどで観察すると一次間充織細胞の細胞の動きもかなりクリアに見ることができます。顕微鏡にカメラをつけて学生や生徒に見せるのに非常に適した材料ではないかと思われます。

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