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【SNK】おたふく風邪【KOF】

 チームストーリーと若干の後悔の話。
 格ゲーとしての『KOF』の基本コンセプトはチームバトル、3on3というのがまずベースにあるのはみなさんもご存じの通り。そして、一部の作品を除いて、おおむねデフォルトのチームが設定されている。俗にいう主人公チームだの女性格闘家チームだのライバルチームだのいうアレである。
 そういう仕様のため、ほとんどの格ゲーではキャラごとに用意されているストーリーが、『KOF』ではチーム単位で用意されている。この手のストーリーは、たいていはそのキャラが闘いに身を投じる参戦動機を説明するのだが、『KOF』の場合はそれに加えて、この3人(もしくは4人)がチームを組むにいたった理由の説明も必要になることが多い。

 ただ、ぼく個人は、公式から提示されるストーリーによって、そのキャラクターの解像度を上げていきたいという欲求がある。要するにキャラを深堀りしてもらいたいのである。
 だからそういう観点で見ると――名指しするのは申し訳ないのだが――餓狼チームや龍虎チーム、韓国チームなどといった、メインストーリーからややはずれたところにいることの多い、しかしその反面、プレイヤー人気の面ではずしにくいキャラが籍を置くチームのストーリーには、物足りなさを覚えることが多い。これらのチームはほとんどの場合、いつものメンバーがいつもと同じようにチームを組むわけだから、チームストーリーにもエンディングにもマンネリ臭が強くなる。それも仕方のないことだと判ってはいるのだが、ファンとはぜいたくな生き物であり、毎年のことであっても新鮮な驚き、発見が欲しいものなのである。

 ――というようなことを感じていたぼくなので、いざ自分がそういうものを仕事として書くことになった時には、やはりいろいろと考えざるをえなかった。
 単純に順番でいうなら、ぼくが初めてチームストーリーのようなものを書くことになったのは某『EX』からなのだが、あれは何というか……引き受けた時には、すでにチーム編成も中ボスもラスボスも変更できない状態だったため、もともとのキャラの色を変えないようにどうにかごまかすような作業だったというか……。あの仕事でぼくが得た教訓は、常連チームのストーリーを考える上では、これまでにあったストーリーとかぶらないようにする、ということだった。
 ……でもだからって何なんだよ、ユリがおたふく風邪にかかって参戦できなくなったとか、馬鹿か、ぼくは! ほかに何かもっとマシな理由があっただろ!

 ハァハァハァ……あぁあ……。

 それとくらべると、『EX2』はずいぶんとやりやすくなったというか、一応はチーム編成を考える段階から情報をもらうことができたので、時間的な余裕もあり、それなりのものができたように思う。あの時はド定番ともいえる編成のチームが傭兵組と韓国組くらいだったし、その傭兵組にしても、ラスボスがゲーニッツ絡みとなれば、レオナとも関連づけやすいという利点があった。

 ただ、自分で書いて、そしてあとで読み返しても納得がいくという意味では、やはり『XIII』のチームストーリーのほうができがいいと思っている。あれに関しては、K’チームと女格チーム以外はすでにエンディングが決まっている状態で仕事が来たため、そこから逆算してチームストーリーをひねり出すのが基本的なスタンスだった。
 もちろんどのチームも同じように力を入れて書いたつもりだが、結果的には、龍虎チームのストーリーがもっとも満足の行くできに仕上がったと思う。みんなが忘れかけているサカザキ一家の重い過去やタクマの親心を中心に、何より突然ショートになったユリのキャラデザ変更も絡めて、ふだん何かとお笑い担当にされやすい彼らを少し真面目に描くことができた。エンディングが毎度お馴染み(?)ともいえるコミカルなものだったので、それを薄めたかったというか、「この前はおたふく風邪をひかせてすまんかったのう」というお詫びの意味もある。

まあ、毎度毎度お笑い系のストーリーばっかりじゃあれですし、たまには真面目なのもね?

 とまあチームストーリーに関して語った以上、チーム単位ではなくキャラクター個々人単位の話もしたいので、それはまたいずれ。

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