みんなが35歳のテリーを捜して躍起になっている頃、夜の倉庫街では、見ようによっては金髪でロン毛のイケメンが物思いにふけっていた。

ギース
　……この世界の怪人どもは、純粋な戦闘力としては非常に優秀だが、中身は単純な連中が多い上に、外見的にも目立ちすぎる……。それに、連中の能力を感知するためのセンサーのようなものも存在するらしい。やはり使い捨ての兵隊と割り切って使うにとどめておくべきか……。
カキメシ怪人
　こらこら、そこのあんちゃん！　このへんはワシらの縄張りだモジ！
オイスター怪人
　これからここにワシらの基地を作るモジ！　邪魔だからどっかへ消えるモジ！
ギース
　……単純を通り越して愚かにすぎるな。相手の力量すら推し量れんとは……。
オイスター怪人
　ああっ!?　よく分からんけど、今こいつ確実にワシらをバカにしたモジ！
カキメシ怪人
　許せないモジ！　アツアツの牡蠣めしを口いっぱいに押し込んでやるモジよ！
ギース
　たまには運動するのも悪くはない、か……。――飛翔日輪斬！
オイスター怪人
　ほんげぁ～っ！
カキメシ怪人
　こ、こいつぶち強いモジよ！　みんなでいっせいにかかるモジ！

　広島の誇りを胸に、多人数で若いギースに襲いかかる怪人たち。そこに颯爽と現れるこれまたそこそこロン毛の金髪イケメン。

テリー
　ＨＥＹ！　そいつはアンフェアじゃないか？
カキメシ怪人
　誰モジか!?
テリー
　ただの通りすがりさ。だが、さすがにこいつはハンデがありすぎだろ？　ってことで、俺も混ぜてもらうぜ！　――パワーチャージ！
カキメシ怪人
　もんぎゃぁ～っ！　おっ、おどれら覚えとくモジ！　牡蠣めしは永遠に不滅モジよ！
テリー
　ＯＫ！　ランチをご馳走してくれるならこっちはいつでも大歓迎さ！
ギース
　ふっ……。
テリー
　……ひょっとして余計なお世話だったか？　確かにおまえさんのその強さなら、俺のアシストなんかいらなかったかもな。
ギース
　いや、助かった。……ここの住人か？
テリー
　俺はただの旅人さ。あてもなく旅をして、最近この街に流れ着いたばかりでね。
ギース
　そうか……。
テリー
　ん？　何だい？
ギース
　……私はずっと腕の立つ部下を捜していた。おまえさえよければと思ったのだが……。おまえはひとつの場所にとどまれない、根なし草のような男だな……私には分かる。
テリー
　特に意識したことはないんだが……確かにそうかもしれないな。何となく思うんだが、俺とおまえさんとは、進む道があまりに違いすぎるんじゃないか？
ギース
　だろうな。おまえはお人よしすぎるようだ。腕は立つが、私の側近には向かない。
テリー
　好き勝手いってくれるぜ。……おい、もう行っちまうのか？
ギース
　ああ。……私は私の居場所を作る。……私自身の手でな。
テリー
　なあ！　もし次にまた会うことがあったら、その時は俺とひと勝負どうだい？
ギース
　……考えておこう。
テリー
　…………。……どことなくあの男に似てたな。名前くらい聞いておけばよかったか……。

　この世界に飛ばされてきたばかりのテリー（35）にとっては、もう10年くらい前にギースが死んでいるため、さっき出会った若者（この時点では年下なんだよ）が、ジェフを殺す前のギースだとは思いもしていない。「何となくギースに雰囲気が似てるな」と感じたようだが、それも自分がよく知る40代のギースに似ている、ということなのだろう。
　一方の若ギースは、『龍虎２』の時代から来ているため、おそらくまだジェフを暗殺していない。ということは、子供時代のテリーとすら面識がない。そういうすれ違いの結果、上記のようなやり取りになっているのだろう。
　そんな奇跡の邂逅があった翌日、同じ倉庫街へとやってきたみなのんたち。

イケメン
　――つまりこれからは、ロックさんの捜索をメインにおこなうわけか。
ギャル
　ついでに謎のパツキンイケメン捜しもね。学園長が気にしてるんだってさ。
エコ
　何なの、光ちゃん？　その、謎のパツキンイケメンて……。
みなのん
　ああ、最近よく聞くようになった噂だよ。怪人たちを倒して回ってるんだって。
トリ
　なあ礼司。もしかするとそのイケメンて、異世界から来た格闘家じゃねーのか？
イケメン
　その可能性はあるが、今のところ、ほとんど手がかりがない状態だからな。
ウサタロー
　数少ない目撃者の証言によると、長身で金髪、ロンゲのイケメンらしいぜー！
ギャル
　ねーねー、どうよ、エコちゃん？　がぜん興味出てきたっしょ？
エコ
　……それ、テリーさんじゃないの？
みなのん
　確かに長い金髪とか背が高いとか強いとか、条件に合うといえば合うけど……。
イケメン
　いや、確かあの人は、今はバイトでアキバまで荷物を届けにいってるはずだ。
エコ
　じゃなくて！　ロックさんと暮らしてた、３５歳になったテリーさんのほう！
ギャル
　そっか……ろっきゅんが来たってことは、テリボガ３５も来てる可能性はあるか。
ジェニー
　ねえ、そこのぼうやたち。
みなのん
　はい……いぃ!?

ジェニー
　あなたたち、テリーのこと話してたわよね？　おねえさんにも詳しく話してくれる～？
みなのん
　だっ、だ、誰ですか、あなたは!?　て、テリーさんの、お、おしりっ――。
ジェニー
　あらぁん？　わたしのお尻がそんなに気になっちゃったのかしらぁ？
みなのん
　ちっ、違います！　テリーさんの、お、お知り合いなのかなって……。
ジェニー
　知り合いっていうかぁ、ん～……。わたしが一方的に知ってる？　みたいな？
ギャル
　うげ……ウチこういうタイプ苦手……。すごくアッタマ悪そう……。
ウサタロー
　ちょっと意外だぜー！　おまえにも苦手なものがあったんだな、名雲ー！
ジェニー
　やだ!?　なにこのウサちゃん!?　可愛い上に人の言葉しゃべってるじゃない！
ウサタロー
　うぎゅう!?
エコ
　ウサタローちゃん!?　――やめてください！　その子はぬいぐるみとかじゃないんです！
ジェニー
　そんなケチケチしないでよくなぁい？　世界のお宝はわたしのお宝♪　正義の海賊リーリンナイツがいただきよん♪
ギャル
　海賊!?　海賊に正義も悪もないじゃん！　さっさとウサタローを放しなよ！
ジェニー
　あらん？　あなたちょっとナマイキね。これはオシオキが必要かしらん？
ギャル
　てかさー、アンタ、オトナのオンナを演じてるつもりなのかもしんないけど、ぶっちゃけスベりまくりだし、マジで。がんばって背伸びしてる感ハンパないし。
ジェニー
　はあ!?　あ、あなた何いってるわけ？　さてはこのわたしの美貌に嫉妬してるのね？
エコ
　そういうセリフしか出てこないところが背伸びしてるっていうんです！
ギャル
　そうそう。……ほら、男子たちも！　黙ってないで何かいってやれし！
イケメン
　い、いや、俺からは特に何も……。みっ、皆野はどうだ？
みなのん
　ぼ、僕!?　僕はほら、人様にあれこれいえるような人間じゃないので……。
トリ
　おまえら……照れるのは仕方ねーけど、ウサタローのことも少しは考えてやれよ。
ギャル
　ウチ、こういう展開もう飽きてきたし。……仕方ない、エコちゃん、トリ頭！　ここはウチらががんばって、性悪女からウサタローを取り戻すよ！

　珍しくやる気を見せるギャル！　女の戦いはどちらに軍配が上がるのか!?
　……それにしてもウサタローは節目節目で踏んだり蹴ったりだな。