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【SNK】俺僕私問題【SNK】

『餓狼伝説』を嚆矢とするSNK格ゲーは、すでに30年を超える歴史を持っている。しかもそこに登場したテリーをはじめとするキャラクターたちは、現在も『KOF』の常連として参戦し続けており、さらに今後は本家ともいえる『餓狼』新作に登場することもほぼ決定している。
 というわけで(何が?)、今回は長い歴史があるからこそ噴出する、キャラクターたちの人称や口調にまつわる問題。具体的にはアンディの口調ぶれすぎ問題

 イベントを実装するたびにあれこれ(ぼくの中で)話題になる某おるすたくんが、先日、またもややらかした。

 リリーって誰だよ。ビリーがビリィだったらおかしいだろ。

 人の名前を間違うのがかなり失礼なことであるように、他社から借りた版権のキャラの名前を間違うというのはかなりやばいことだと思う。しかもこれ、どこか1か所だけタイプミスしたとかいうのではなく、今回のストーリー内でリリィと書くべきところをすべて間違っていた。要するにこのゲームのスタッフは、リリィのことをガチでリリー・カーンだと思い込んでいたのだろう。まあ、よほどたくさんの指摘があったからか、すぐに修正されたが。
 がしかし、ぼくはここをあげつらいたいわけではない。某世界的有名ゲームの公式だって、しばしばウインディをウィンディと表記してしまうことがあるしな、うん。
 今回ぼくが気になったのは、どちらかといえばこっち。

まあ、ここももう修正されてるわけだが。

 ちょっとでも『KOF』や『餓狼』に触れたことのある人なら、アンディはこんなしゃべり方をしないとすぐに判るだろう。これはむしろジョーが口にしそうなセリフである。では、本来のアンディはどんなしゃべり方だっただろうか?
  実をいうと、これがまったく安定していない。K’の髪型かというくらいに毎回少しずつ違う。一人称でいうなら「俺」、「僕」、「私」。テリーのことは「兄さん」といったり「兄貴」と呼んだり。ついでに養父ジェフのことも「親父」だったり「父さん」だったり。
 そもそも初代『餓狼伝説』の頃には、アンディに静寂を好む生真面目な美青年というイメージはなかった。何しろテリーとの再会直後に「俺と勝負してくれ、兄貴!」とかいい出す戦闘狂である。あの悟空だって、頭身が上がって再登場した際に、クリリン相手に「さあ、まずはひと勝負すっか、クリリン!」なんてことはいわなかったのに。
 確かにアンディは初代から長い金髪+碧眼の持ち主で、そういった外見的記号だけ見れば美青年だなのが、実際には、

この見た目と虚無を覗いたかのごときまなざし……これは全身凶器だわ。

 これである。ちょっと美青年には見えないし、静寂を好むとも思えない。というか、生真面目で静寂を好む全身凶器という言葉のアンバランスさはすごいな。

 総じて見ると、アンディのように多くの出番がありながら、それでいて人称が落ち着かないキャラというのも珍しい。
 これはおそらく、作品ごとにテキスト担当のスタッフが違っていたせいではないかと思う。おのおのの担当が自分のイメージでアンディにしゃべらせた結果、毎回ビミョーなズレが生じていたのだろう。テリーやジョーにこういった表記ぶれがなかったのは、誰がイメージしても「俺」以外の一人称がまず考えられない、ある意味で判りやすい性格のキャラとして最初から完成していたためだろう(とぼくは思う)。
 彼らふたりとくらべると、アンディはやや判りにくい。不知火流に弟子入りして幼い頃から修行してきたという設定は、『2』で舞が登場した際に追加されたもので(初代での格闘スタイルも単なる「骨法」だった)、このあたりから、アメリカ出身だが侘び寂びを知る物静かな性格、恋愛面では積極的な舞に対してやや気後れしているところがあり、それよりむしろ今は修行に専念したいストイック性など、現在のぼくたちにも馴染み深いアンディ像が形成されていくことになる。
 要するに、アンディの人称や口調にぶれがあるのは、テリーやジョーのように、最初からパキッと判りやすいキャラクターとして確立していたわけではなく、続編での舞との掛け合い、エンディングなどを通してキャラが完成するまでに時間がかかったせいだろう。……たぶん、いやきっと。

 近年は(あくまで『KOF』においては)、一人称は「俺」、テリーのことは「兄さん」で安定しつつある。
 ただ、『餓狼』新作でのアンディは30代のなかばにさしかかっているはずで、すでに北斗丸という弟子もいる。舞との関係が明記されてはいないものの、いつまでも若者っぽいノリであるはずもない。というか、『MotW』の時点で一人称は「私」になっている。

これもはやただのストーカーなのでは?

 なので、さすがにもう「俺」とか「僕」とかいうことはないと思う。
 ちなみに、『MI』の世界線での30代のアンディはこんな感じ。一人称が「私」でテリーに対し「兄貴」と呼びかけるのは、ぼくが『3』準拠のアンディをベースにして書いたからである。

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