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【SNK】大人はずるい【SNK】

 今回もほんのりカップリング話。
 前回ぼくは、「かつてのぼくは公式カプしか許容できない狭量で頑迷な人間だった」といったな? だが、そんなぼくでも、公式では提示されていないが「ここがくっついたらいいなあ」と思うカップリングはある。ラルフ✕レオナとかもそうだが、一番好ましいのは紅丸✕ちづる
 突然の姉の死という不幸、それによって神器を束ねなければならなくなったという重い宿命――そんな彼女をささえてあげられるのは、さりげない気遣いのできる男だとは思わないか? 思うよな? じゃあ紅丸で決まり! みたいな、『96』の頃からび、び、び、びびびーっと来るものがあって、ぼくは心中ひそかに紅ちづ勢となった。
 が、公式にはどこにもそんな要素はない。もちろん紅丸はああいうキャラだから、美女や美少女には相応のふるまいをするだろうが、個人的には、ちづるに対してはもっとスペシャル感が欲しい。しかし公式からの燃料投下はない! さあどうする!?

「そうだ……自分で書けばいいんだ!」

 と考えるのは二次創作をやる人間ならふつうに思いつくことだが、ぼくがずるかったのは、それを『98』のノベライズでやろうとしたことだった。

2024年1月現在、某密林では中古価格3万円。さすがに高すぎ。某駿河屋なら700円。

 あれは98年の夏、この先のゲーム本編の展開がどうなるかまったく判らない時点で大阪に取材に行き、当時のスタッフさんたちの、
「可能なら、京と庵はもうこのままそっとしておいてやってもいいんじゃないかと思わなくもない」
 みたいな発言を受けて、庵との決着を望む京に置いていかれてしまった真吾を主人公に据えて書いた作品だった。しかし同時に、本来のライバル枠であったはずの紅丸と、神器の中でひとりだけ生還したちづるという、やはり京に置いていかれてしまった思いの強いふたりもまた、メインキャラとして描いていた。だからこその、『遺された者たち』というサブタイトルなのである。
「これはもう、京の喪失をきっかけにした強固な関係性がこのふたりにはある! ならこのふたりの距離を近づけたって不自然さはねえよなあ! むしろこのふたりが同病相憐れむってのは当たり前だよなあゲヘヘ!」
 とまあ、ぼくのそんな崇高な思いに突き動かされて完成した作品だったわけだが、それでもこれはあくまでノベライズ。公認ではあっても公式とはいえない。

 なのでその後、『MI2』からテキスト関係でゲーム製作にかかわるようになったぼくは、『XII』のキャラクタープロファイルでさらに一歩、ぼくの趣味を全面に押し出してみた。今度は公式
 さいわい、ここまでやっても偉い人からは怒られなかった。もっとも、ぼくのほうでも、これで完全にふたりをカップルにしたかったわけではない。
 紅丸としては、ちづるにさかんにモーションをかけているが、もともとのプレイボーイ気質のせいであまり本気にしてもらえず、それがややもどかしくもあり、同時にこの関係もそれなりに楽しくもあり、しかし自分で自分につけたカラーのせいで、カッコつけずに真摯にちづるに告白することもできないジレンマをかかえているという状況(あくまでぼく個人の感想)。
 一方のちづるは、紅丸からの好意を当然理解しているものの、どうしても色恋うんぬんよりも神器としての使命のほうを考えなければならないので何とも答えようがない。が、紅丸が自分の感じている重圧も理解してさりげなく気遣ってくれているのも判っているし、実際、今の距離感は心地いいので誘われればドライブや食事くらいはつき合うわよ、という状況(あくまで、あくまでもぼく個人の感想!)。
 はっきりくっついて「カップルです!」ってやってる京✕ユキみたいなふたりより、何となくほら、こういうほうがちょっと大人って気がしないか? どっちがいいとかではなく、そのほうが紅丸やちづるに似合っているというか……いや、冷静に考えれば、このふたりだってまだ年齢的には大学生なのだが、あくまで相対的に、京✕ユキより大人なカップル像を目指したというか……何だろうな、テリーとマリーの関係と似てるけどちょっと違う感じ?

 もちろんぼくも、ストーリー的な盛り上げポイントとして、異母兄に道ならぬ思いをいだくシャオロンとか、両親の仇であるデュークに愛憎なかばする感情を持つリアンとか、最初からそのへんを意図したキャラ、恋愛関係というものを用意したことはある。しかしだからといって、毎度毎度ぼくが自分好みのカップリングを公私混同して推しているわけではない。
 たとえばニノンは、ロックのことを「わたしのタイプだし」みたいなセリフをいうが、あれも別にあのふたりをカップルにしたくて用意したわけではなく、何ならニノンにはロックに対する恋愛感情はいっさいない。ニノンにとっては、人形にして手もとに置いておきたいタイプがクーラとロックだっただけのことで、もし『MI』にクリスや明天君が参戦していたら、彼らにも「タイプだし。お人形さんみたいだし」とかいっていたはずだし。ニノンが好きなのはドジを踏むおねえちゃんだし。

 ともあれ、ぼくのそんな地道な布教が功を奏したのか、『XV』では紅丸とちづるに対戦前の掛け合いが実装されている。……いや嘘、別にぼくの布教のせいではないが、何にしてもぼくとしては眼福である。
 この先このふたりの関係がどうなっていくのか、ニヤニヤしながら見守っていきたいと思う。

この手のナルシストはピエロになる危険性をはらんでいるが、彼はそこをうまく突き抜けたのだ。

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