見出し画像

【Poke】え……?【SV】

 2023年12月14日、『ポケモンSV』のDLC後編『藍の円盤』が配信された。前編に当たる『碧の仮面』は、ボリューム面ではやや不満だったが、主人公とスグリ、オーガポンをめぐる三角関係(?)を描いたストーリー部分は、これまでの『ポケモン』ではあまり見られない不穏な空気をただよわせたまま後編へと続いており、その後の展開が非常に楽しみであった。
 そういう意味で期待度の高かった後編は、よかった点も悪かった点も含めてボリュームたっぷりだった。以降、ネタバレ回避のためにストーリー部分はふんわり表現で。

 さて、前編で不満だったボリュームという面では、まずマップ部分がかなり広くなった。あくまで体感としての話になるが、後編のおもな舞台となるブルーベリー学園(のテラリウムドーム)は、前編の舞台であるキタカミの里の倍はあるように感じた。水平方向の広がりがあるのはもちろんだが、4つに分かれたエリアの地下に大規模な洞窟(その名も電気石の岩窟)があり、そこも合わせるとかなりの広さになる。ここをすべて踏破するだけでもそれなりに時間がかかるだろう。
 このマップにあえてケチをつけるとするなら、ストーリー上、この広さにはそれほど意味がないということだろう。実際、ストーリーを進めるだけなら、学園の四天王が待ち受ける各エリアのスクエア(拠点)と、4つのエリアの中心に位置するセンタースクエアの周辺に行くだけですむ。どこに行って何を捜すとか、何をしてくるとか、そういったお使いイベントがほぼないからである。基本、4か所に散らばっている四天王のところまで行き、彼らを倒すだけ。
 もちろん、ブルベリ版ポケモン図鑑を完成させるためにはもっと探索範囲を広げなければならない。前編にも登場したサザレさんのサブイベントを進めるにも、ポケモン図鑑の充実は必須である。がしかし、ぼくのように過去作から『HOME』経由で大量のポケモンを密入国させられるユーザーにとってはその必要もないため、特に何をしなければならないという目的もあたえられずに用意されたテラリウムは、むしろ持てあますほどの広さだった。
 せめてキタカミ鬼面衆のように、テラリウム各所に特別なトレーナーが数多くひそんでいる、とかいう展開であれば、それを捜すために走り回る気にもなれたのだが……。
 ただ、おそらくこのテラリウムという箱庭を用意したのは、過去作に登場してきた多くのポケモンを自然な形で再登場させるのが目的であって、それはぼくのようにGBA世代から継続してポケモンを溜め込んできたユーザーのためではなく、それこそ『剣盾』あたりから始めた若いユーザー、もしくはいったんは『ポケモン』から離れたが、Switch世代になって戻ってきた復帰組のためのものなのかもしれない。その観点で見れば、確かにこの広さは必要だった。というか、広いこと自体にはぼくも文句をいうつもりはない。ポケモンをうじゃうじゃ動かす現行の方式なら、マップはせまいより広いほうがいいからである。

 次に、ストーリー面に関していえば、プラスとマイナスが混在しているといった印象だった。
 前編から引っ張ってきた三角関係には、とりあえずは決着がついたような形にはなっている。ただ、このゲームはエンディングを見てそこで終わり、となるようなものではなく、さらにその後も続いていく。実際、クリア後に開放される要素も少なくない。となると、「エンディングのあと、主人公とスグリはどうなっていくのか? この学園で楽しくやっていけるのか?」と疑問に思う人は少なくないと思う。
 ところが、肝心のそういった部分はまったく描かれない。おそらく大半のユーザーは、つらい経験をしたスグリが立ち直り、主人公やリーグ部の仲間とも和解してゼロからやり直していく姿を見たいと思っているだろうに、このゲーフリとかいう集団は、なぜかその部分を微塵も描かない! それどころか、スグリは休学したということになり、ゲーム内から存在そのものが綺麗さっぱり消えてしまった(ついでになぜかゼイユも消滅)。
 また、ともっこのトレーナーらしき存在、ともっこが復活した理由、てらす池にもテラスタル結晶が存在する理由など、前編であらたにばらまかれた謎についても、結局は何も判らずじまいだった。特に、前編は明らかに昔話の『桃太郎』をモチーフとした作りになっていたことから、「桃太郎に相当する何者かがともっこのトレーナー、もしくは彼らの首魁として後編に登場するのでは?」などの推測も飛び交っていたが、本当に何もないまま終わってしまったのである。
 振り返ってみれば、これまでにもゲーフリは、ゲーム中で振りまいた謎、思わせぶりな伏線、匂わせ要素などを回収しないまま次の世代に移行する、みたいなことをさんざんやってきた。ソフト内に用意されていたにもかかわらず、ついに使われることなく終わった要素すらある(AZにゃんのフラエッテとかな)。
 ただ、今回の放置プレイは過去作品とくらべてもダントツにひどい。スグリやゼイユといったキャラのその後も放置なら数々の謎も放置である。そんなあつかいに絶望し、逆に「いやいや、これはさらなるDLCが出るフラグなのでは……?」みたいな淡い期待すら湧いてくるほどだった。

PVで意味ありげにクローズアップされてたこの結晶の木、これもただそこにあるだけ。哲学的。

 最後はマップやストーリーとはまた別の、遊びに関する部分。
 今回追加された新要素の中でも特に目玉と思われるのは、やはりリーグ部だろう。主人公はブルーベリー学園のリーグ部の一員となり、ブルレクと称されるミニゲーム(?)で稼いだポイントを使って部室をカスタマイズしたり、パルデア地方の面々を特別講師として招いたりといったことができる。これには「本編クリア後にチリやポピーと会えなくなった!」と嘆いていたユーザーもにっこり。各キャラたちの意外な素顔や関係性、過去などが垣間見えて、会話を見るだけでも面白い。親密度がアップすれば、彼らとポケモン交換もできる。

侵略性外来種をしれっと交換に出すパルデア屈指の問題児。むしポケじゃなくてすまんな。

 逆に、対戦勢が夢見ていたバトルフロンティアやバトルタワー的なものは追加されなかった。第2世代以降、規模はともかくかならず存在していたバトル施設がないというのは初めてのことで、そのこともあって、「さらなるDLCが……?」と思ってしまうのである。まあ、ぼくのような色厳選勢にはあまり関係のない話なのだが。
 そのほかにも、その後のスター団を描いたサブイベント、それにともなうかなり阿漕な追加コスチュームなどもあって、それらをすべて確認するにはそれなりに時間がかかると思う。

太ったジジババが交ざると価格がどんどん高騰していく。シュウメイのお手製コスなのに……。

 ということで、ネタバレ回避のために何かもうふわっとしたことしか書いていないが、まあ、トータルで見ればもちろん楽しい。たぶん周囲にリアルなポケだちがいるならもっと楽しい(ユニオンサークル必須のフラグがあるんだ……)。
 願わくば、来年の夏頃に、パルデアバトルパス! みたいに銘打ち、バトル施設の追加と放置されたままのスグリたちのその後を描くDLC第3弾が出てくれると嬉しい。バトルタワーの最上階でスグリに再会、とかね!

これは正直スマンかった。ぼくも弱者への配慮がちょっと足りなかったと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?