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【SNK】リョウとのなれそめ【餓狼】

 あなたのSNKはどこから? と聞かれれば、ぼくの世代だと『与作』と答えざるをえないわけだが、創作という意味でいうと、ぼくの場合は作家デビューが決まる少し前くらいに応募した、『餓狼SP』コミック原作コンテストである。
 当時、今は亡き新声社の『コミックゲーメスト』で『餓狼SP』の連載が決定し、その原作(厳密にはシナリオか?)を読者から公募していたのを見つけて、それに応募するために書いたシナリオがぼくの初SNKである。
 残念ながら、というべきか、ぼくが送ったシナリオは最終選考で落とされた。のちに編集部の人に聞いたところ、編集部内での最後の選考で2作品が残り、どちらを選べばいいか迷った挙げ句、「どのみちメーカーチェックを通さなきゃダメなんだし」という理由でSNKの広報さんに判断を丸投げしたという。
 あのコンテストに賞金があったかどうか、はっきりとは覚えていない。もしかしたら、採用されればコミックの原作として使用される=その印税が賞金、というあつかいだったのかもしれないが、ぼくが1円ももらっていないことは確かなので、最優秀賞以外は賞金なしだったのだろう。……ちっ。
 ただ、あとになって振り返ってみれば、自分のシナリオがメーカーサイドの判断で選ばれなかったのも当然だと思う。何しろ、題材が『餓狼SP』だったのをいいことに、何かもうリョウとギースがやたらかっこいいだけのストーリーなのである。
 で、どんなストーリーだったかを大雑把に説明すると――。

 スペシャルにふさわしく、死んだはずのギースが復活し、サウスタウンに舞い戻ってくる。その知らせを聞きつけ、「今度こそぶちのめしたらァ!」と意気込んでサウスタウンに乗り込もうとするテリー、アンディ、ついでに舞。しかし、合流を約束していたジョーが現れない。するとそこにチンから、ジョーが謎の格闘家に倒されたとの衝撃の知らせが!

 ……みたいな感じで始まるのだが、我ながら恐ろしいことに、ゲームでは16人登場するはずのキャラが半分くらいしか出てこない! ギースなりクラウザーなりが大会を主催した、みたいな展開にしておけば全員出せたのだろうが、当時のぼくはなぜかその手法を無視し、サウスタウンに戻ってきたテリーたちがビリーらと闘ってギースタワーを目指すという展開にしていた気がする。
 ここにリョウがどうかかわるのかというと、ここでのリョウは『龍虎』時代から『餓狼』時代の時の流れに乗ってふつうに年を取っていて、つまりは30代後半のおっさんになっている。しかも、人並みの暮らしに背を向け、たたひたすら強さを追い求めて修行を続けた結果、すさまじい強さを手に入れたものの、その身体はすでに病魔に冒されており……みたいな?
 そうして自分の死期を悟ったリョウが、かつて一度だけ闘ったことのあるギースと真の決着をつけるために山から下りてきて、まずは自分の強さを確かめるためにジョーたちをはじめとする高名な格闘家たちに野試合を挑み、全員を病院送りにしてしまう。このへんは『鉄腕アトム』のプルートーを意識していたんだと思う。
 そしてついにギースタワーに向かおうとするテリーの前に現れたリョウは、テリーすら倒して自身がギースのもとへ向かう。主人公、ここで敗北。テリーの見せ場は本当にここで終わり。そして同時刻、都合よくタワーの門番ビリーはアンディと相討ちになっている。
 その後、リョウに負けてブッ倒れていたテリーが「はっ!?」と目を覚まして慌ててタワーに向かうと、すでにリョウはギースとの闘いの中で絶命している。それを見たテリーはリョウの遺志を継いで「行くぞギース、これが最後の戦いだ!」みたいに214+Pを入力したところでEND。
 今振り返ってもこれはダメだ! 重要キャラを勝手に老けさせて死なせる当時のぼく、ホントにヒドい! よそさまのIPで無茶苦茶やりすぎ! というか、こんなもん編集部で落としとけよ、メーカーを交えた最終選考にまで持ってくなよ!

 ハァハァハァ……あぁあ。

 でもまあ、あの時のぼくは、「死に場所を求めて闘い続けてるリョウってカッコよくね? その相手はやっぱギースしかいないっしょ!」って本気で考えていたんだろう。
 ゲーム中のストーリーだけで考えるなら、リョウはギースに勝っている。ただ、おそらくリョウはずっと、『龍虎2』での勝利が本当の勝利といえるのかと自問自答していたのだと思う。つまり、まだ余力があったのに、ギースはあえて自分の負けということにしてあの場から去っていっただけにすぎず、もしギースにとことんまでやるつもりがあったなら、負けていたのは自分だったのではないか? そんなことをずっと考えていたリョウが、その問いに決着をつけたくて、死ぬ前にもう一度ギースの前に立った――っていうのがカッコよく思えたんだろうな。いや、今でもカッコいいと思うけど。
 さすがにリョウを死なせるのはアレなので、かなり表現は変えたが、このへんのリョウの葛藤については、『MI2』の二代目Mr.KARATEのキャラクターストーリーで書いたので、ぼく自身の中ではオチがついているのだが、それでも、リョウが人並みに結婚して平和な家庭を作るイメージはいまだに持てない。リョウには闘いだけの殺伐とした人生を送ってほしい。
 ……何だかぼく、リョウに対してすごいゆがんだ愛情を持ってる気がするな。

 ちなみに、最優秀賞を逃しはしたものの、それがきっかけで新声社の編集部に出入りするようになって、『餓狼伝説3の謎』を作ったり、某ハンターのノベライズやったりした結果、ファミ通文庫で『KOF』のノベライズのチャンスをゲットしたので大満足です、はい。

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