葬儀屋さんのよもやま話

母が旅立ってから2日目。自宅で安置しているので、火葬日まで毎日、葬儀屋さんがドライアイスを交換に来る。

ドライアイスは、ひとつがレンガほどの大きさで、ガーゼのようなやわらかい白い布で包まれている。1日目は、母のお腹の上に2つ並べて、さらに顔の左右にも1つずつ置いていたが、髪の毛に霜ができ、顔にも少し水滴がついていたので、今日はそれははずして、代わりに胸元あたりに2つ乗せて、太ももの左右にも1つずつ置かれた。幸い、気温もさほど上がっていないので、夕方からは冷房をつけておく必要はない。

ふと、もし夏に亡くなった場合はどうされているのだろうと、葬儀屋さんにきいてみると、夏は自宅での安置は厳しいですね、とのこと。こんなエピソードを話してくれた。

あるご裕福なご家庭のお父様が、8月に病院で亡くなった。お父様は最期まで家に帰ることを希望していたので、家族で相談し、家に連れて帰ってあげることにした。家は、生前お父様が建てたという立派な6階建てで、その6階部分がお父様の部屋だった。ご遺体を部屋に入れると、なんと天井が斜めのガラス張り。一見オシャレだが、お父様に直射日光がどうやっても当たるような状態で、冷房を最強にしたところで、追いつかない。葬儀屋さんは心配だったが、大量のドライアイスを置いて、ひとまず、何かあれば連絡くださいと伝えてその日は帰った。翌朝一、家族から「もういいです、気が済みました。暑くてダメです。早く移動させてください!」と電話があったそう。

だから、ご遺体安置には、冬のほうがいいですね、と話す葬儀屋さん。でも、冬は冬で…。ある家でお爺ちゃんが亡くなり、そのまま安置していたが、それまで同じ部屋で寝ていたお婆ちゃんが、寒かったのでついいつもの癖でカーペットの電源を入れてしまった…。ドライアイスが溶けいるのを発見したお嫁さんが、慌てて葬儀屋さんに電話してきた。葬儀屋さんが駆けつけると、カーペットの電源が赤く光っているのがチラッと見え、あれ?電源入ってますけど?と言うと、お婆ちゃんなんでお部屋あっためてるの?!とお嫁さん激怒。ご遺体だけ別の部屋にして、そこは暖房をいっさい入れないようにすべし。当たり前だけど…。

葬儀屋さんのエピソード、まだまだいっぱいありそうだ。下手な映画やドラマよりはるかに面白い。



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