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ラグビー日本代表、幸せな時間をありがとう

Brave Blossomsー

勇敢な桜の戦士と称される、ラグビー日本代表。彼らのラグビーW杯における活躍に多くの人が感動し、熱狂した1ヶ月が過ぎました。

私も一応学生時代にラグビーを経験したラグビーファンとして、試合は全て観戦し、感動、熱狂、そして時に落胆しながらラグビーに夢中になった1ヶ月を過ごしました。

そこで感じたのが、「なぜラグビーはこれだけ人々の心を掴んでやまないのだろう」という疑問でした。そこで今回の感動を忘れないために、日本代表の敗退が決まった今、感じたことを記して残しておこうと思います。

改めて、今回のラグビーW杯における日本代表の活躍について。

言うまでもなくベスト8進出と言う、日本ラグビー史上最高の成績を残しました。これはアジアでも初のことです。加えていわゆるティア1と言う、強豪国を2チーム(アイルランド、スコットランド)を撃破しました。これだけでも素晴らしいことですが、スコットランド戦については特に意味が大きかったです。前回、スコットランド戦を落としたため、3勝したのに決勝トーナメントに進めなかった初めての国になったから。そして今回はグループリーグの最終戦で、端的に言えば勝った方が決勝トーナメントに進出すると言う、お互い負けられない、ガチンコ対決でした。この時点で世界ランクは日本が上でしたが、大会前のランキングはスコットランドの方が上であり、実績から言っても格上の相手。そのスコットランドを破ってのベスト8進出はあまりにドラマティックだった。

ラグビーは危険なスポーツです。よく「あかんスポーツ」と言われます。確かに怪我が多い。私も靭帯2回切ったし、脊髄損傷を起こしてしまう人もいます。一方で、本場のイングランドでは紳士のスポーツとされ、中流および上流階級の子息が好んでプレーすると言われています。また、元フランス代表キャプテン、ジャンピエールリーブの残した「ラグビーは少年を最も早く大人にさせる。そしてラガーマンはいつまでも少年の心を忘れない」や、「世界平和実現の最も簡単な方法は、世界中の政治家にラグビーをやらせることだ」(出典忘れた笑)と言った名言が残っています。

ラグビーは確かにきつい、そして痛い、泥まみれになって汚い。

けど、だからこそ試合中はプレーヤー全員がルールを理解し、それを守る自制心を求められます。試合の進行を止めたり、危険だったりするプレーにはペナルティが与えられます。ともすればただのストリートファイトをスポーツに昇華させるのは、ルールとそれを守って勝負する、そんな自制心、ジェントルマンシップだと思うのです。

そしてぶつかって、走って、転がって、起き上がって・・・本当にしんどい。だからこそ、チームとして助け合い、また頑張っているチームメイトに勇気をもらう。人は一人でなく、仲間と頑張ることで本来持っている以上の力を出せると教えてくれたのがラグビーでした。

また、ラグビーでは前にボールを投げられません。だからパスを放る時、ギリギリまで仲間の姿が見えないんです。そこで信じるのが仲間の「声」この声に時に励まされ、時に叱咤され、そして試合中は、その声を信じパスを放るのです。きっとあいつは、ここに来てくれる。そうやって最後の一人のためにパスをつなぎ、トライをとる。自分は一人じゃない。自分は主役じゃなくてもいい。信じる仲間のために。。。ラグビーは目標を仲間と共有し、それに向けて自分が何ができるか考える、そんなことを教えてくれました。

Brave Blossomsはそんなラグビーの魅力を、余すところなく予選プールで見せてくれました。今大会前の通算成績、4勝23敗2分。うち3勝は前回大会です。ある意味で負けて当たり前。一方で地元開催でベスト8進出が必須というプレッシャー。そんな中で彼らは最高のプレーを見せた。チーム一丸となって、自分より大きい相手も、格上の相手にも恐れることなく、勝利だけを信じた。多分見ている我々よりも勝利を信じていた。

堀江選手が試合後のインタビューで「いや、めっちゃ練習しましたもん」と言っていたのが印象的で。どんな不可能なことも、努力すれば叶うと。そしてその自信を持つには努力するしかないと。汗を流し、しんどい思いをした時間こそが、極限状態で自分を支えるのだと教えてくれました。

万感の思いで迎えた南アフリカ戦。前回大会で日本に破れた相手です。この試合はラグビーどころではなく、スポーツ史上最大のジャイアントキリング、と言われました。それだけ衝撃的だった。それだけ地力に差があるチームなのです。

南アフリカにすれば、屈辱でしかありません。W杯で1勝しかしていないチームに負けるなんて。実際、前回大会で南アフリカは優勝したオールブラックスに敗れるだけで3位となっています。前回負けたのが、オールブラックスと、日本。

試合前から南アフリカのHCは「全力で叩き潰す」ということを言っていました。彼らからすれば前回大会の悪夢がずっと続いていて、W杯で日本を叩き潰されなければ、永遠の続く悪夢から醒めることができない、ということだと思います。

そして南アフリカ戦。まさに全力の南アフリカを目の当たりにします。冷静に日本の嫌がる攻撃をし(キックで陣地をとり、FWでプレッシャーを与える)、ディフェンスでは反則ギリギリの素早い出足で、日本得意の素早いパス回しをさせない。特に相手スクラムハーフのデクラークのプレッシャーは凄かった。それでも前半の日本はよく我慢した。しつこいタックルで接点で渡り合い、チャンスとなれば前にで続けた。日本のディフェンスのプレッシャーもあり、南アフリカにもミスが出て、なんとか前半は3−5で折り返す。後半に期待を抱かせる内容でした。

けど、本気の南アフリカはさらにギアを上げてきた。前半から有利だったモールやFWを使った突破でジリジリ日本を追い詰める。あれ、でかい相手にやられるとめっちゃ体力削られるんです。後半は日本はほぼ自陣に釘付けにされ、体力を削られたためタックルが高くなり、接点での反則が増えました。おそらく今大会で初めてハイタックル取られたんじゃないかと思います。内容的には、スコア以上の完敗でした。何より、南アフリカの勝利への執念が凄かった。ルーズボールへの反応の速さで日本が負けたの、初めて見ました。

けど、後半の後半、徐々に敗色が濃厚になってきてから。Brave Blossomsの誰一人も試合を諦めていなかった。向かってくるでかい相手に全力でぶつかり、トライを狙いに行った。そして、見ていた人たちもそうだったんじゃないかと思います。僕も、途中から勝敗とかではなく、この素晴らしい試合、素晴らしいチーム、素晴らしいプレーを1秒でも長く見ていたい。一瞬も見逃したくない。そういう思いでプレーに釘付けになっていました。

素晴らしい相手と素晴らしい仲間、それが揃った時に訪れるスポーツの幸せな時間だったと思います。自分の全力以上の力、集中力、知力、体力の限界を突破する感覚。それをあのフィールド上で全員が感じていたのではないでしょうか。見ていた僕たちも。

最後、南アフリカの選手がホーンが鳴ってもプレーを続けていました。試合を切ればそこれで勝利が確定するのに。ラグビーは最後のプレーが切れるまで試合が続きます。これは僕の想像ですが、あの瞬間、南アフリカチームもあの試合、あの素晴らしい時間を少しでも長くプレーしていたい、日本チームも勝敗関係なく、あの瞬間を永遠にしたい、そんな思いでプレーしていたんじゃないかと思っているのです。

そして思い出したかのようにボールが外に蹴り出され、Brave BlossomsのW杯が終わりました。その瞬間、南アフリカチームでもガッツポーズをとる選手はおらず、座り込む選手がいるくらい、南アフリカも消耗し、出し切った試合だったのだと思います。

終わった瞬間、涙が流れていました。負けた悔しさ、頑張ったBrave Blossomsへの誇りや感動、感謝、そしてもう見られないという寂しさ。。。全ての感情が一気に押し寄せ、涙としてこぼれました。最初のインタビューがトンプソンルーク選手で、インタビュアーは最初から泣いているし、最初の「さみしいね」の一言でもうダメでした。号泣。さみしいよ、でもありがとう。満開の花を咲かせ、咲き誇った後に、美しく散った・・・そんな今回の大会を忘れません。

単純かもしれないけど、今大会のBrave Blossomsの戦いを誇りに思うし、この思い出だけでなんでも頑張れそうな、不可能だって思っていたことを突破できそうな勇気、力をもらえました。多分、そういう風に感じた人も多いと思っています。

日本代表チームの試合は終わりましたが、まだ大会は続き、いよいよ準決勝、決勝と好カードが続きます。南アフリカ代表の活躍に期待したいし、一ラグビーファンとしてまだまだこの大会を盛り上げたいと思います!!

そして日本ラグビーが文化として根付くよう、自分ができることは試合に足を運ぶことだと思います。自分は大学ラグビーのファンなので、どんどん試合を見に行こうと思います。よければ一緒に参りましょう!!ルールの解説くらいはできます!!