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【カルデア猫食堂】浪漫あふれる野菜炒め

 深夜、カルデア、食堂で。
 
「みたらし団子が食べたいんだけど、作れるかな?」
「お安い御用だワン」
「すごい! ここでこんな美味しいみたらし団子が食べられる日が来るなんて!」
「ふっふーん。万物万象我が肉球にあり。何でも頼むが良いぞ」
 
「今日はオハギが食べたいなあ」
「任せるが良い!」
 
「苺大福」

「カステラ」

「草餅」

「水羊羹」
 
「いい加減にせぬか!」
 注文されたは桜餅。
 タマモキャットがテーブルに叩きつけたトレーには野菜炒め定食。
「注文したものと違う⁉︎」
「ドクターが御主人の為に日々頑張ってるのは猫でもご存じ。キャットも労うことやぶさかでなし。だがな、甘味ばかりでは酒池肉林まっしぐら。ちゃんと食事を摂らねば星見の長に死兆星が輝くぞ!」
「いや、一応必要な栄養はサプリで摂ってるんだよ?」
「ええい! そんなものが何の役に立つ! いいか! 美味しいものを食べてこその人生なのだ!」
「人生」
「今のドクターは、今を生きる人間である。英霊では、ない。そして美味しい食事こそが人を生かし、美味しい食事が待ってるからこそ、人は明日も生きようと思えるのだワン」
「……ああ、うん、そうだね。人間だものね。君の言うとおりかもしれない。いただくよ。今日と明日の為に」
「うむ、残すでないぞ! そしてなるべく早く寝ろな!」
 
 
 
 
「う~ん……むにゃむにゃ……玉藻地獄をお見せしよう……」
「キャット?」
「ぐっもーにん⁉︎ ……おやご主人」
 昼下がり、食堂のテーブルに伏してお昼寝をしていたタマモキャットが目を覚ますと、そこには愛するご主人と可憐なデミサーヴァントが並んでいた。
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「私は一向に構わぬ。昼寝は好きだがご主人はもーっと好きだからな!」
「キャットさんは深夜も食堂にいらっしゃることが多いですし、お昼寝も必要かと」
「そういえばそうだね。でもあんな時間に誰か来る?」
「んー……たまにな。物好きがな」
 少し前まで常連がいた。ろくに食事も摂らずに働いて、深夜になってようやく一息つきに来る常連が。そういえば、深夜に食堂を開けるようになったのは、そもそも彼のためだった。
「ところで二人はランチがまだであったな。ご注文は?」
「今日はね、きつねうどん!」
「では私も先輩と同じものを」
「ヨロコンデー!」
 
 カルデアの食堂は今日も大繁盛。でも、その日その時、誰がいるかは運次第。
 赤い弓兵は大当たり。不味い飯など出るはずもなく。
 深夜の常連は甘いの大好き。そんなことばかり思い出す。
 狂気のケモノはサブチーフ。料理の腕は確かだが……注文したものが出てくるとは限らない。
 
 懐かしい夢を見たことだし、今日はこれから問答無用で全員に野菜炒めを出してやろう。ドクター・ロマンとの思い出溢れるあの野菜炒め定食を。

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