見出し画像

半導体メーカーの統合とマイコンシリーズ ~ルネサスエレクトロニクス編

組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業、株式会社ユー・エス・イー(USE Inc.)。組み込み業界と縁の深いマイコン、またそれを製造する半導体メーカーに関するトピックを解説します。

今回は国内大手メーカー「ルネサスエレクトロニクス」のマイコンの歴史を取り上げます。


ルネサスエレクトロニクスの成り立ち

現在の形になるまでに、このような企業統合の流れがある。

日本を代表する半導体企業の一つであるルネサスエレクトロニクス。半導体製品およびシステムソリューションを提供する世界的な企業です。

ルネサスエレクトロニクスは、2010年にルネサステクノロジNECエレクトロニクス(NECから半導体事業を分社化)が合併して設立。ルネサステクノロジは2003年に日立製作所三菱電機の半導体部門を統合した新会社として設立されています。日立製作所、三菱電機、NECの半導体部門をルーツに持つのがルネサスエレクトロニクスというわけです。

上記の3社は組み込み開発ともかかわりの深い「マイコン」を製造するメーカー。それぞれが独自に開発、販売していた広範なラインナップのマイコン製品が、企業の統合にともないどのように整理されていったのか。ここではその歴史を解説していきます。

3社の代表的なマイコンラインナップ

各社8ビット~32ビットのマイコンを販売、国内国外を問わず幅広く利用されていた。

日立製作所のマイコンシリーズといえばまず「H8」ファミリがあります。80年代後半に発表されてから8ビット(H8)、16ビット(H8S)、32ビット(H8SX)とラインナップの幅を広げ自動車、産業制御、通信、医療機器、テレビやオーディオなど家電製品といったさまざまな用途に利用されました。

同じく日立製作所で90年代前半に開発された「SH(SuperH)」は、高性能な32ビットマイコンアーキテクチャです。デジカメ、家庭用また業務用ゲーム機、電子楽器などのほか、携帯電話(ガラケー)、カーナビと高性能なマイコンが必要とされる場面で広く採用されました。

三菱電機のマイコンで代表的なものといえば「M16C」ファミリ。16ビットのコアを採用し、高速な命令実行と低消費電力で高性能を実現しました。家電製品、産業制御、オートモーティブ、センサーノード、制御アプリケーションなど、多くの組み込み制御アプリケーションで使用。特に低コストでありながら高性能の制御が必要なアプリケーション向けに設計されました。

NECの「V850」は、かつてNECが開発したマイコンファミリです。32ビットの高性能なリアルタイム制御アプリケーション向けに設計され、携帯電話ほか電化製品、カーオーディオなどなどのさまざまなアプリケーションで使用されました。「78K」ファミリは8ビット(78K0)、16ビット(78K0R)のラインナップで、特に低消費電力と高性能が求められるアプリケーションに適し、こちらも広い用途で使用されたNECの代表的なマイコンです。

マイコンシリーズ統合の流れ

3社のマイコンは図のように統合され、現在に繋がっている。

大手マイコンメーカー3社の8ビット~32ビットのマイコンラインナップとなるとかなりの数。会社の統合の後に取り扱いがなくなるということはありませんが、ルネサステクノロジ設立後、ルネサスエレクトロニクス設立後とマイコンラインナップも統合されていき、現行ラインナップに繋がっていきます。

ルネサステクノロジ時代に開発された、M16CのCPUコアをべースとした16ビットマイコンが「R8C」。頭文字の「R」は社名が「ルネサス(テクノロジ/エレクトロニクス)」になってからの開発であることを表しています。

NECエレクトロニクスとの合併時にはそのR8CとNECエレクトロニクスの「78K」ファミリを統合する形で「RL78」が開発されています。「78K0R」をベースとした、8/16ビットマイコンです。

NECエレクトロニクスとの合併後には、NECのV850と日立のSHを統合すべく「RH850」も登場。V850コアをベースとした32ビットマイコンです。もともとV850、SHのどちらもさまざまな用途に使用されたマイコンですが、RH850は現在のルネサスのラインナップの中では『車載用』と位置づけられています。

H8、SH、M16C、V850、78Kといったマイコンは現在もルネサスのウェブサイトに掲載されています。ただ「このファミリのすべての製品は生産中止となっているか、新規のデザインには推奨されていない製品です。」との注意書きがあり、保守のみの扱い。「長期製品供給プログラム(通称PLP: Product Longevity Program) 」の適用により2024年12月(状況により延長を行う)までは供給が維持される予定となっています。

H8ファミリのH8SとH8Sx、M16CファミリのM16C、M32C、R32Cの後継にあたる32ビットマイコン「RX」(ルネサステクノロジ時代に開発)のほか、RL78、RAといった現行ルネサスマイコンへの旧世代マイコンからの移行をサポートする内容のドキュメントも多数用意されています。

USE Inc.のマイコン統合への対応

今回取り上げたマイコンのUSE.Incでの開発例。

平成4年(1992年)に設立されたUSE.Incでは、これまでにここで紹介した日立製作所、三菱電機、NECエレクトロニクス各社の統合前のマイコンも取り扱ってきています。上の表はUSE.Incでのマイコンごとの開発の一部例。過去にはカーオーディオをメインにオーディオやその他のジャンルの開発を行ってきています。

もちろん、統合前のマイコンだけではなく公式ウェブサイトの「事業領域>技術情報」のページに掲載されている通り、現行機種への対応も万全。マイコンシリーズが過去から現在に繋がっているように、USE.Incが設立以来行ってきた組み込み開発も現在に繋がっています。

USE Inc. お問合せ先
https://www.use-inc.co.jp/contact/

USE Inc. 採用情報 \組み込みに興味のあるエンジニア募集中/
https://www.use-inc.co.jp/recruit/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?