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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2018 Early Autumn Selection(8月27日〜10月14日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

夏の終わりから秋の始まりにかけて淡い感傷と共に感じられるサウダージやメランコリーを大切に、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に計34時間分を新たに選曲した。

金・土・日トワイライトタイムの特集もそんな季節に相応しく「夏の果て〜初秋の夕暮れのメロウ・ブリーズ」。そのフラッグは前回のコラムで詳しく紹介した、この夏アプレミディ・レコーズから日本盤CD化が実現した21世紀版シュギー・オーティス×マイケル・フランクスという趣きの極上ベッドルーム・ソウル〜チルアウト・AOR、マイケル・セイヤーの『Bad Bonez』だ。揺らぐエレピのメロウネスもひたすら気持ちよい、スウィート・サイケデリアに溶けだす甘美な“ひとり感”にたまらなく惹かれてしまう。

残暑が続く今日この頃、しめきり間近に届きエンドレス・サマー気分に拍車をかけてくれているのはディスクロージャーの新曲「Where Angels Fear To Tread」(フォー・フレッシュメン「Fools Rush In」のサンプリングが最高すぎる)だが、ひと夏を通して夜眠る前によく聴いたのが、南インド出身の歌手であり作曲家であり学者でもある女性Ganavyaがジョージ・ガーシュウィン作のジャズ・スタンダード「Summertime」を素晴らしい解釈で聴かせる「Nithakam」。ジャズと南アジアの音楽を融合した彼女(グレッチェン・パーラト好きな方にもぜひお薦めしたい)のファースト・アルバム『Aikyam: Onnu』は、「Afro Blue」や「La Vie En Rose」をそれぞれアダプトした「Indo Blue」や「Vazhkai, En Rose」なども絶品。その歌声には神々しささえ宿るほどの、心震わせる音楽だ。ドラム&パーカッションを担当しているのはキューバ出身で在スペインの名手マイケル・オリヴェイラで、Ganavyaは彼の盟友と言えるキューバのピアニスト、アルフレッド・ロドリゲスの「Tocororo」にもフィーチャーされ、イブラヒム・マーロフの美しいトランペットと素敵な相性を示していた。

アルバム単位でよく聴いたのはやはり、今のところ2018年のマイ・ベストと言っていいマック・ミラーの『Swimming』だ。前クールで先行カットの「Small Worlds」を推薦したときにも書いたが、アリアナ・グランデとの恋仲が終わって初めての作品ということが、創作の内省的な起点になっていると思う(男はいつだって恋愛における未練を尊ぶし、心のどこかに自己憐憫をかかえているのだ)。そんな中で僕のとびきりのフェイヴァリットは、おととしの夏にヘヴィー・プレイしたアンダーソン・パークとの「Dang!」も手がけていたPomoがプロデュースし、デイム・ファンク/スヌープ・ドッグ/シド/サンダーキャットも集結したメロウ・ファンク「What's The Use?」だが、敢えて全曲最高と強く言いたい。サンダーキャットも迎え「What's The Use?」や「Small Worlds」も披露するNPRのTiny Desk Concertもお観逃しなく。

※この文章は大変長文になっているため、続きは8/29に公開させていただきます。

Ganavya『Aikyam: Onnu』
Mac Miller『Swimming』
The Internet『Hive Mind』
Choker『Honeybloom』
Tirzah『Devotion』
OSHUN『Bittersweet Vol.1』

Jenny Penkin『Him, On The Other Hand』
Louis Cole『Time』
Maxwell Young『Daydreamer』
Conner Youngblood『Cheyenne』
Big Red Machine『Big Red Machine』
Astronauts, etc.『Living In Symbol』
Okay Kaya『Both』
Punch Brothers『All Ashore』
Reginald Chapman『Prototype』
Flor Giammarche『Tallovolar』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
Twilight-time 月曜日16:00~18:00
Twilight-time 火曜日16:00~18:00
Twilight-time 水曜日16:00~18:00
Twilight-time 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

日本ではまだそんなに知名度は高くないですが、デビュー・アルバム『Don’t You』で海外の各方面から注目を浴びたユニットWet(ウェット)。セカンド・アルバム『Still Run』が7/13にリリースされたことを遅れて知って慌てて購入して聴きました。1曲目のStarchild & The New Romanticをフィーチャーしたタイトル曲からとても気に入っています。『Don’t You』はRhyeの女性ヴォーカル版のような洗練されたサウンドと雰囲気でしたが、今作ではそこは変わらずに多様性を増している印象で、またしても魅了されています。この洗練されたサウンドと女性ヴォーカルのケリー・ズートラの儚げな歌声を聴けば、自分と同じようにファンになる人も結構いるのではないでしょうか。今回のEarly Autumnの選曲では、デビュー作『Don’t You』と新作『Still Run』から何曲か選んでいますので、ぜひ聴いてみてください。決して盛り上がるタイプの音楽ではありませんが、いつか来日ライヴで生でじっくり聴いてみたいグループですね。

Wet『Still Run』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

プレイヤーにセットした瞬間に訪れた、「Dream In」の衝撃。希望と絶望が交錯するようなこの特異な世界観と中毒性の高いメロディーこそが、タンの真骨頂。ソングライター/ヴォーカリストのサム・ジェンダースが11年ぶりに復帰したという『Songs You Make At Night』には、かつての『Mother’s Daughter And Other Songs』や『Comments Of The Inner Chorus』と同じ血が通っています。そしてまた、柔らかなアコースティック・チューン「Battlefront」や「Crow」も、秋の始まりを告げる本セレクションにふさわしい。

Tunng『Songs You Make At Night』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

個人的に夏の終わりの夕暮れ時って好きなんです。海辺を涼しくなってきた風を感じながらボケ〜っと散歩する感じなんて最高ですよね。Teen Dazeなど様々なエイリアスを持つJamison IsaakがPacific Coliseum名義で昨年リリースした作品がまさにそんな景色にピッタリ。中でも「Sunset Melody」はDurutti Columnを想わせるギターの残響に包まれる美しい一曲です。

Pacific Coliseum『Ocean City』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

「夏の終わり」とか「始まりの秋」とか。これほどマジカルな時節の表現が他にあるだろうか。あかるい太陽を惜しみつつ、こころでは梳毛の感触を確かめる日々。こんなタイミングにふさわしい音楽なんて山ほどあるけれども、ここではプリファブ・スプラウトを。このアルバムが発表されてもう20年余。「擦り切れるほど」なんてものではない。「孔があくほど」聴いた一枚だが、未だ飽きることがないのは彼らのソングライティングの素晴らしさもさることながら、こういうバンドがこの世に存在することのありがたさが身体を支配しているからに他ならない。パディ・マクアルーンとウェンディ・スミスの歌声に英国ジャズ・シーンの重鎮、トミー・スミスの歌ごころある管楽器が絡む。これだけで私の秋がやってくる。

Prefab Sprout『Andromeda Heights』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

残暑が長引くことを想定も期待もして、身も心も夏に残したまま選曲した。気温25℃以上をベースに30℃を超えてもフィットするような曲をちりばめてある。気温より先に湿度と空気が秋を迎えるはずなので、遅れてきたサマー・ソングも聴こえ方が違ってくるだろう。季節を先取ることはあっても引き摺ることはまずないので、このちょっとしたチャレンジを楽しみたい。

Caetano Veloso『Livro』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

今年に入って、待望のアナログ盤がリリースされたElectric Empire。針を落とすと、改めて珠玉の楽曲が集められた素晴らしいアルバムであることを再認識でき、聴きいってしまう。そういえばアルバム・リリース時の2011年、札幌の野外ライヴにElectric Empireが出演決定し、行くことを待ち望みながら都合つかず直前で断念した悲しい思いを思い出し、失恋でもしたような喪失感に襲われる。ライヴに履いていくつもりだった、おろしたてのホワイトデニムも、カレーこぼして泣く泣く家着に……。しかし最近、友人の情報により天日干しで見事に復活しました(笑)。

Electric Empire『Electric Empire』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

今回は、今年の初め頃から橋本徹さんが大プッシュしていたサウス・ロンドン・シーンの期待の星、ジェイミー・アイザックのセカンド・アルバム『(4:30) Idler』をあらためてご紹介させていただきます。幼少の頃からピアノに親しみ、チェット・ベイカーをはじめとするジャズのほか、レア・グルーヴ等から影響を受け、盟友キング・クルールと共にエイミー・ワインハウスやロイル・カーナーらを輩出したブリット・スクールで学んだ経歴を持つジェイミー。この秋、来日も控えている彼ですが、そのレイドバックしたメロウなサウンドと抑制の効いたソウルフルなヴォーカルは、ちょっぴり切ない気分にさせる秋の夜にぴったりではないかと思います。セレクトした「Wings」をはじめアルバムを通して素晴らしい作品ですので、ぜひ聴いてみてください。

Jamie Isaac 『(4:30) Idler』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

もう夏という言葉を変えたほうがいいのでは? というぐらいの猛暑だった。そして初秋をも食いつくしてしまいそうな猛暑。秋という切ない時間が短くなってきているのは非常に寂しいもの。気づけば、寒いが一気に訪れてしまう。日本の情緒ある四季春夏秋冬。音楽空間だけでも初秋を感じていただきたいのであります。ということで、今年素晴らしいアルバムをリリースした大阪のWallflowerというバンド。それもイギリス・ブリストルSarahレーベル愛が強い、心地よく美しく繊細でポップな作品。数年前に、Sarahレーベルのみで1時間選曲したあの頃が懐かしい。この80年代後半からのSarahレーベルは、フリー・ソウルやサバービアぐらい忘れてはならないシーンだと思ってます。ので久々0時から1時はSarahレーベルを中心としたネオ・アコースティック特集にしております。ぐんと体感温度が下がり人肌恋しくなるはず。こんな言葉も秋ならでは。
こんな気持ちが高めてくれたのか、九州ではじめてThe Smithsナイトを開催することにしました。UKロックのイヴェントは数知れずありましたが、The Smithsを通じて青春を過ごしてきた皆さま、そして最近知ったという皆さまに捧ぐ、クラブで爆音でThe Smithsを存分楽しめるDJパーティー。こんなパーティーを開くのは、私世代が最後かもしれません。ぜひクラブに足を向けたことのないネオアコ/The Smiths好きの皆さま、10/13(土)は20時より福岡キース・フラックに集合お願いします!

Wallflower『Ever After』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

記録的な猛暑が続いた2018年の夏。強烈な夏の記憶が、いまだ身体にも心にも残るこの季節。毎年のことだけど、あんなに暑い暑いと文句ばかりを言っていた「あの夏」が、まんまと恋しくなってしまう今日この頃。2018 Early Autumn Selectionは、そんな「あきらめきれない夏」をイメージさせる楽曲を中心に、夏から早秋へと移り変わる、ほろ苦くも甘酸っぱい感覚を大切にセレクトしました。選曲の前半だけを聴くと、もしかしたら「ん? Summer Selection?」と思ってしまうような、サマー・ブリーズ感溢れる(私の中での裏タイトルは「夏をあきらめない2018」なので)、Mondo Gascaro「Naked」、Rasa「Questions In My Mind」、Fabulous/Arabia「Henry」、Amber Mark「Love Is Stronger Than Pride」、Walmir Borges「Labios de Mel」、Andre Luz「O Brasil Precisa Balancar」をセレクト。中盤は、Manceau「Waiting For Nothing」を皮切りに、Tom Gallo「Never Ending」、The Moons「The Best Thoughts About You」、Michael Seyer「Weekend At Santa Cruz」、秋休み「153cm、フラットシューズ」など、早秋の爽やかな空気によく馴染む、アコースティック・ギターの響きが心地よいSSW的サウンドを中心に。そして後半からラストにかけては、The Shoeshiners Band「Love」、Diana Panton「September In The Rain」、Don Glaser「Strawberry Jam」、Marc Deschamps「Rosalie」など、親しみやすく心弾むジャズでフィニッシュ。ラスト8曲は、黄金色に染まりはじめた秋の散歩道をイメージして選曲をしました。なかでも早秋の選曲になると毎年必ずセレクトしたくなるお気に入りの一曲が、ラストを飾るJim Ferguson「Early Autumn」。もともと「Early Autumn」の楽曲自体が猛烈に好きなのですが、数多ある「Early Autumn」の中でもこの曲が「一番かも?」と思ってしまうほど大好きな作品なのです。今まで「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」の中で、何度もピックアップしたかった作品だったのですが、正直ジャケがほんとイマイチで(失礼ですね)どうしてもこの作品一本でご紹介するのをためらっていました。今回は幸い多数のジャケに紛れているので(またまた失礼)、こうして数年の時を経て、やっとご紹介することができました(笑)。柔らかなドラムの響きを合図に導かれる、きらきらと零れ落ちるような瑞々しいピアノの音色と、ゆったりと伸びやかなサックス。優しく包み込むような味わい深いベース・ラインと、ヒューマニティー溢れる穏やかな男性ヴォーカルが、早秋の青く澄んだ空に心地よく溶け込むよう。素敵な秋を迎えられそうな、心透き通る爽やかな一曲です。ご興味のある方は、ぜひ聴いてみてくださいね。個人的なお話をさせていただくと、選曲をしていて一番楽しく喜びを感じられるのが、Early Autumn~Winter Selectionだったりします。みなさま、今後の選曲に乞うご期待! と、自らハードルを上げてみました!(笑)

Mondo Gascaro『Rajakelana』
Rasa『Everything You See Is Me』
Fabulous/Arabia「Henry」
Jesse Fischer feat. Jaime Woods「Creepin'」
Amber Mark『Conexao EP』
Ginger Root『Mahjong Room』
Sven Libaek『The Set』
Walmir Borges『Melhor Momento』
Andre Luz『Tempo』
Manceau『I Wanna』
Tom Gallo『Tell Me The Ghost』
Moons『Songs Of Wood & Fire』
Michael Seyer『Bad Bonez』
秋休み『三回目の季節』
The Shoeshiners Band『The Shoeshiners Band』
Diana Panton『Solstice - Equinox』
Don Glaser『Don Glaser』
Moses Taiwa Molelekwa『Genes And Spirits』
Marc Deschamps『Sucre Sale』
Jim Ferguson『Not Just Another Pretty Bass』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

ニューヨークを拠点にするビート・メイカーRudemannersのフル・アルバムが到着。夏から秋にマッチするメロウなミドル・テンポのビートが甘く切なく夏の郷愁を誘う。「Darling, Take It Slow」と「SoulFortyFive」と「Sensation Wave」をセレクト。ジャケットも自身の作品。
そしてもう一枚、こちらも夏から秋にかけて無性に聴きたくなるOusman Danedjoの『En el Medio』。ウォロフ語、バンバラ語で歌うシンガー・ソングライターは、コラ、ンゴニなどの伝統打楽器を操るマルチ・ミュージシャン。実はフランス人がアフリカに憧れ作った音楽で独自なサウダージ感が漂う。これもまた遠く過ぎ去った夏の日を思い起こす音楽。「Saana」と「Mwassi Ye」をセレクト。

Rudemanners『Avant Garde』
Ousman Danedjo『En el Medio』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

今年の夏から秋に向かうこの季節、個人的には新しい挑戦への真っ最中で何かと多忙な中でしたが、ヘッドフォンの中には常に新しい音楽を欠かさないようにしています。そんな中で偶然出会った終わりゆく夏にぴったりの一曲が、Tom Gallo 「Never Ending」。後で知ったのですが、何とこの曲はアプレミディ・レコーズですでに世界初CD化されていたのですね(さすが橋本さん!)。続いて紹介するのは、60年代のフォーク・バンドを想わせるアナログ質感のサウンドと繊細なヴォーカルが耳心地よいSam Evianの「Apple」。インターネットで音楽が発信できる今の時代だからこそ、こういう一期一会の素晴らしいSSWと、聴けば聴いた分だけ出会えるものですね。サマー・セレクションでも紹介したチル・ホップのお気に入りアーティストAsoからは、秋味なガット・ギターの音色を使ったループに新しいサウドシズモの方向性を感じた「Waking Up Late.」を。ジャケット買いならぬジャケット聴きで出会えたGYVUSの「Venice」は、そんなジャケットの風景をそのまま音にしたかのような、心地いいインストゥルメンタル・ブレイクとしてお薦めしたい一曲です。

Tom Gallo『Tell Me The Ghost』
Sam Evian『You, Forever』
Aso「Waking Up Late.」
GYVUS「Venice」

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

夏の名残を感じる黄昏のプールサイド。風の匂いと気怠い太陽が少しばかり感傷的なムードを誘う。インドネシアのRrefal Afif Fiqriantoによる遠い夏の記録。

Rrefal『Oversized Love』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

今年の夏は世界各地で記録的な猛暑が続き、我が街名古屋でも40℃を超える日が観測されるなど、30年に一度よりも発生確率が低い異常気象と言われた夏でしたね。そんな猛暑の最中に今回の初秋選曲作業を行っていたのですが、自分のセレクトした音楽の調べで少しでも涼しげな気持ちになってもらえるように心がけ、清涼感を意識した選曲をしてみました。
まずはディナータイム・セレクションのイントロとしてスリーピング・アット・ラストの太陽系の惑星をテーマにした『Space』というアルバムの中から「Venus」のインストゥルメンタルをセレクト(このアルバムはヴォーカル・ヴァージョンとインストゥルメンタル〈カラオケ〉・ヴァージョンが収められた2枚組仕様となっています)。それに繋げたのが今年の1月にセルフ・タイトルのデビュー・アルバムを発表したオランダ出身のAnne van den HoogenとDolf Smolenaersによるユニット、ローズマリー&ガーリックの「I'm Here」です。この風のように流れる牧歌的で美しい作品は先に述べた清涼感を意識したセレクションの軸になるナンバーとしてふさわしい作品だと思います。そしてオーストラリア・ブリスベン出身のインディー・バンド、バブガニューシュやゴー・ヴァイオレッツといったバンドでプレイしていたハリエット・ピルビームがHatcie名義でリリースしたソロ・デビューEP『Sugar & Spice』より、青春の1ページを切り取ったかのように淡くて切ない響きを放つ「Bad Guy」をセレクト。この作品を聴いて思い出したのが、アヴァランチーズの元メンバー、ダレン・セルトマンの奥様としての顔も持つサリー・セルトマンが2010年に発表した「Harmony To My Heartbeat」でした。PVも素敵なサリー・セルトマンの作品を聴いたときに感じた、胸がキュンと締めつけられる感覚がこのHatcieの作品にも存在し、記憶の遠いところに行ってしまった青春の思い出を蘇らせてくれます。また、この2作品の共通点として、彼女たちは2人ともオーストラリア出身のアーティストであり、両作品のドラム・フレーズがジーザス&メリー・チェイン「Just Like Honey」に引用されたロネッツの「Be My Baby」を彷彿とさせます。そしてカリフォルニアを拠点に活動するマニュエル・ジョセフ・ウォーカーによるソロ・プロジェクトFoliageが今年の4月にリリースした通算3作目となるアルバム『Ⅲ』より、ローファイなジョニー・マーといった感じのギター・サウンドが心地よい「Value」や、ウィーピーズのデブ・タランがステージ3の乳癌を克服し昨年発表した、2003年以来となるソロ名義のアルバム『Lucky Girl』より「The Wrong Impression」などを挟み、チルウェイヴ/グローファイ系ではコーラル・ピンクの「Another Year」や、ノルウェイはオスロ出身のソロ・アーティストJakob Ogawaがリリース当時19歳だった女性シンガーClairoを迎えて昨年発表したベッド・ルーム・ミュージック「You Might Be Sleeping」などをセレクト。他にはそのClairo自身の作品で、レトロな電話の呼び出し音から「ハロー」の一声で始まるオールド・スクールな流れがおじさんの心には嬉しく響く(笑)「Hello」や、アメリカのインディー・ロック・バンドHoopsのメンバーであるKevin Krauterが先の6月にリリースしたファースト・ソロ・アルバム『Toss Up』より、ライトなシンセやギターの音色に「シャラララララ~」なコーラスが聴き手に笑顔を運ぶ「Suddenly」(なんと彼はシュガー・ベイブをきっかけに山下達郎や大貫妙子といったジャパニーズ・ポップスが大好きになり、このソロ・アルバムもその影響下で制作されたそうです)、そして2016年にリリースされたアンディ・シャウフの傑作アルバム『The Party』より、トニー・コジネク・ミーツ・サーフズ・アップといった印象の「The Magician」などもこのセレクションの中で爽やかな風となって流れます。
ディナータイム・セレクション後半は2011年から活動するアメリカのインディー・ポップ・バンド、クラフト・スペルズの2016年に制作されたセカンド・アルバムの冒頭を飾る「Nausea」から、浮遊感のあるメロトロンのようなシンセの響きが夢見心地な気分にさせるストロベリー・ガイの「Without You」、ベルリンで活動するバンドFensterのメンバーであるジョン・ムーズの今年4月にリリースされたデビュー・ソロ・アルバム『The Essential John Moods』(フィジカルは今のところカセットテープのみ)より、カナダ人シンガー、ショーン・ニコラス・サヴェイジをゲスト・ヴォーカルに迎えて制作されたサックスの音色も涼しい「Take It Home」や、こちらも浮遊感のあるサウンドに優しいヴォーカルが寄り添うChristian Besa Wrightの「Cherry Blossom Oak」をセレクト。そしてシガレッツ・アフター・セックスの新作「Crush」や、またしてもローズマリー&ガーリックのデビュー・アルバムからどこか神聖な響きを放つ「Take This Hand」を挟み、ペイパー・カイツの新作「Deep Burn Blue」もセレクト。この曲は9/21にリリースされる彼らのニュー・アルバム『On The Corner Where You Live』からの先行シングルですが、前回のサマー・セレクションで紹介した彼らの現時点での最新アルバムである『On The Train Ride Home』がリリースされてからほんの数か月しか経っていないのに、彼らの創作意欲はすごいですね。ちなみに『On The Train Ride Home』は配信リリースだけで前回のコメント欄でフィジカル・リリースを切に希望していましたが、ニュー・アルバム『On The Corner Where You Live』のデラックス・エディションとして『On The Train Ride Home』をカップリングした2枚組アルバムがリリースされるという嬉しいアナウンスがありました。シガレッツ・アフター・セックスの新作「Crush」の話題にも少し触れておきますと、この作品も今のところ配信オンリーのリリースとなっていますが、ペラペラのジャケットにCD-Rという形態のプロモーション盤がリリースされており、それがあるサイトで25ポンドという高値で売り出されていたのでびっくりしましたが、これは彼らの現在の人気を裏づけるものですね。それとひとつ余談ですが、某大手通販サイトで彼らを検索すると、彼らの名前に問題があるのかアダルト商品を検索したと間違えられて年齢確認をされてしまいました(笑)。話を選曲に戻しますと、ペイパー・カイツをもう少しロック寄りにした感じの、フィンランドはヘルシンキ出身のディレイ・ツリーズが昨年リリースした4枚目のアルバム『Let Go』収録の「Hope」や、以前はハニームーンズと名乗っていたイギリスのアーティスト、サッド・ラヴの「Home」をディナータイム・セレクションの終盤に配し、そしておそらくこれがファースト・リリース作品と思われるJaguar Sun(カタカナ表記で書くとどうしても千葉のあのお方を想像してしまうのでここは英語表記で・笑)の3曲入りEP『That Night』より、ひんやりとしたサイケデリックな世界が淡いトリップ感を生む「Cold Wind」をディナータイムのハイライトとしてセレクトしてみました。

24時からのミッドナイト・スペシャルはネオアコ裏街道と題して、ネオアコのアーティストのあまり注目されていない(であろう)一度解散して再結成後に制作された作品や、バンド解散後に発見された発掘音源、アルバム・ヴァージョンとは違うラジオ・セッション音源やデモ音源などを集めて、メインストリームからちょっと視点を変えた選曲をしてみました。まずはエヴリシング・バット・ザ・ガールの1991年に発表されたアルバム『Worldwide』に収録されていた「Politics Aside」のインストゥルメンタル・ナンバーをイントロに配置してミッドナイト・スペシャルをスタート。このインストゥルメンタルは同アルバムからシングル・カットされた「Old Friends」のカップリング・ナンバーとして収録された作品です。2013年にはエドセル・レコードからリリースされた『Worldwide』のデラックス・エディションにも収録されましたが、このレアな音源を多数収録したデラックス・エディション・シリーズはどれも素晴らしい内容なので(今ではちょっと入手しづらくなっておりますが)オススメです。そのイントロに続くのがドゥルッティ・コラムのヴィニ・ライリーとモリッシーの『Viva Hate』収録曲「I Know Very Well How I Got My Name」の失敗アウト・テイク「I Know Very Well How I Got My Note Wrong」です。この作品はドゥルッティ・コラムが1989年にリリースした『Vini Reilly』の初回特典としてCDにはミニCDシングル、LPには7インチ・シングルという形で付けられていたもので、ヴィンセント・ジェラルドとスティーヴン・パトリックという2人の本名名義で発表されました。そして先ほど述べたエヴリシング・バット・ザ・ガールのデラックス・エディション・シリーズの中からもう1曲、今度は1994年作の『Amplified Heart』のデラックス・エディションより、素朴な雰囲気が完成版とは違った新たな魅力を発信する「Back At Square One」のホーム・デモを選び、ロータス・イーターズの2001年に発表された当時としては17年ぶりとなるセカンド・アルバム『Silentspace』から「Can Your Kisses Fly」をセレクト。正直セカンド・アルバムは、名盤の誇り高いファースト・アルバム『No Sense Of Sin』と同等のレベルを期待してしまうと、そこまでの期待には応えられていない作品かもしれませんが、これはこれで小粒な良品が揃った素敵な作品だと思います(笑)。そしてブルーベルズの中心的メンバーであるケンとデイヴィッドのマクラスキー兄弟がブルーベルズ解散後にマクラスキー・ブラザーズ名義でリリースした1996年発表のサード・アルバム『Wonderful Affair』からは、アズテック・カメラの「Killermont Street」などの作品に雰囲気が似ている(声質もロディ・フレイムそっくり)「Sooner Or Later」を選び、1983〜4年に3枚のシングルを発表しただけで解散してしまった、ワイルド・スワンズのポール・シンプソンと、ビッグ・イン・ジャパンやオリジナル・ミラーズの元メンバーであり、エコー&ザ・バニーメンやペイル・ ファウンテンズのプロデューサーとしても才能を発揮し、後にライトニング・シーズとしても成功を収めたイアン・ブロウディによって結成されたケアーの、1997年に発掘されて発表された未発表ナンバー「Cymophane」に続けました。トラッシュ・キャン・シナトラズの2003年にリリースされたレア・トラック集『Zebra Of The Family』からは、ネイキッドな荒々しさが新たな魅力を放つ「Even The Odd」のデモ・トラックを選び、2000年になってようやくヴィニール・ジャパンからリリースされたジム・ジムニーのお蔵入りアルバム『The Thatcher Years』からは、初めて聴いたときによくぞ発掘してこの世に出してくれたと感激したヤング・ソウルな「Impetuous Girl」をセレクトしてみました。ライラック・タイムの作品はアドヴェンチャーズ・クラブというアメリカはダラスのたぶんラジオ番組でのセッションより、1985年にステファン・ティンティン・ダフィ名義でリリースされた「Kiss Me」とプリンスの「Raspberry Beret」をメドレーで繋げたナンバーを選び、ビリー・ブラッグの作品の中で一番好きなジョニー・マー参加の「Greetings To The New Brunette」は、1999年にリリースされたレア・トラック集のためにロック色を強めて再録された「Shirley (Greetings To The New Brunette)」をセレクト。ファンタスティック・サムシングの唯一のアルバムでありこちらも名盤の誇り高い『Fantastic Something』の冒頭を飾る「The Night We Flew Out The Window」は12インチ・シングル・ヴァージョンで収録し、1992年にやっとリリースされたブルーベルズのお蔵入りセカンド・アルバム『Second』からは郷愁感のある優しいナンバー「Better Days」や、ドラムのシャッフル感が心地よいBBCセッション・ヴァージョンでお贈りするマイティ・マイティの「One Way」などもセレクト。そしてブリリアント・コーナーズの1988年リリースの傑作シングル「Why Do You Have To Go Out With Him When You Could Go Out With Me」に収録された「Goodbye」も選曲しているのですが、ここでマニアックな話をしますと、この曲は前述した「Why Do You Have To Go Out With Him When You Could Go Out With Me」のナイスなジャケ写に変更された1995年にカナダで再発された1989年のアルバム『Joy Ride』のCDでは「Goodbye (My Love)」と若干違ったタイトルが付けられています。そしてシングル「Why Do You Have To Go Out With Him When You Could Go Out With Me」に収録されたもうひとつの名曲「Shangri La」は、1989年のオリジナル盤『Joy Ride』のCDとそのカナダ盤再発CDにボーナス・トラックとして収録されていますが、コンピレイション・アルバム『Creamy Stuff : The Singles 84-90』と『Heart On Your Sleeve (A Decade In Pop 1983-1993)』に収録されているヴァージョンはオリジナルより1分ほど短いエディット・ヴァージョンで収録されているので、コアなファンの方はチェックしてみてください(笑)。エドウィン・コリンズの作品は彼のソロ・アルバム第1弾として1989年にリリースされた『Hope And Despair』より、デニス・ボーヴェルやロディ・フレイムがゲスト・ミュージシャンでエドウィン・コリンズを引き立てる、骨太でアーシーな「If Ever You're Ready」をミッドナイト・スペシャルの前半のハイライトとしてセレクト。この作品は1987年にコクトー・ツインズのロビン・ガスリーのプロデュースでリリースされたシングル「Don't Shilly Shally」のカップリングとして発表されたものの再録ヴァージョンですが、素晴らしい作品にもかかわらずこの曲はCDのみの収録で、なぜかLPには収録されておりません(なので自分もリリースされてから随分後になってこの作品の存在に気づきました)。さらに1995年に発表されたエドウィン・コリンズの大ヒットしたサード・アルバム『Gorgeous George』のオーストラリア限定でリリースされた2枚組CDにはバーナード・バトラーと共演した再々録ヴァージョンが収録されているのでコアなファンの方はこちらも要チェックです(笑)。ちなみにロビン・ガスリーのプロデュースという夢のようなコラボレイションのシングル「Don't Shilly Shally」の全曲は1995年に日本でのみリリースされた『Elevation Days』というコンピレイション・アルバムでCD化されていて、このようなかゆいところに手が届く日本人の仕事はとても素晴らしいと思います(笑)。そしてマーティン・スティーヴンソン率いるデインティーズの名作「Crocodile Cryer」をプリファブ・スプラウトのパディ・マクアルーンがより牧歌的にリミックスした作品と、イングランド・アンダー・スノウの小品「Stanley」を挟み、ミッドナイト・スペシャル後半はBBC放送のラジオ音源であるジョン・ピール・セッションやキッド・ジェンセン・セッションなどのスタジオ・ライヴを中心に選んでみました。
まずはディスロケイション・ダンスのBBCセッション集より70年代の洒落たイタリア映画のサウンドトラックに収録されていそうな「San Michelle」と、オリジナル・ヴァージョンは初期オリジナル・ラヴ(やはり初期はラブでなくラヴですよね)作品のような雰囲気を持った「You Can Tell」をセレクト。BBCセッションの「You Can Tell」はブラス・パートがユーモラスなコーラスに置き換えられ、思わず笑顔が零れる可愛らしいヴァージョンに仕上がっています。2014年にリリースされたジャザティアーズの脅威の発掘音源集『Don't Let Your Son Grow Up To Be A Cowboy - Unreleased Recordings 1981-82』からは、初代ヴォーカルのAlison Gourlayがソフトに優しく歌うライト・ジャジーな「Don't Worry About A Thing」をピックアップ。彼らのラフ・トレイドからのデビュー・アルバムはオレンジ・ジュースやジョセフ・Kに似た骨太な男性ヴォーカルをフィーチャーしたスコティッシュ・ポスト・パンクなサウンドだったので、この初期エヴリシング・バット・ザ・ガールやウィークエンドなどに通じるネオアコ・ジャジーな発掘音源集を聴いたときにはとても驚きました。そして優美なオリジナル・ヴァージョンと違って簡素な魅力を発信する、ペイル・ファウンテンズのBBCのTV番組『The Old Grey Whistle Test』出演時のライヴ音源である「Thank You」を挟み、アズテック・カメラの大傑作ファースト・アルバム『High Land, Hard Rain』の、今のところ再発盤としての決定版といえる、2014年にドミノ・レーベルからリリースされた30周年記念エディションに収録されたBBCラジオ音源である「Back On Board (Kid Jensen Session)」や、ロータス・イーターズの同じくラジオ音源である「Can You Keep A Secret (Peel Session)」、ミッドナイト・スペシャル後半にも入れてしまったエヴリシング・バット・ザ・ガールの1986年発表のサード・アルバム『Baby, The Stars Shine Bright』のデラックス・エディションからピックアップした「Cross My Heart」のホーム・デモや、オリジナルより少し落ち着いたテンションで演奏されるトラッシュ・キャン・シナトラズの傑作デビュー・シングル「Obscurity Knocks」のデモ音源に続き、またしてもペイル・ファウンテンズのBBC『The Old Grey Whistle Test』出演時のライヴ音源から女性ソウル・シンガー、デニース・ウィリアムスが1976年に発表したメロウ・ソウルの名曲「Free」のカヴァー作品もセレクト。このカヴァーはドイツのマリーナ・レーベルが1998年にリリースした編集盤『Longshot For Your Love』で聴く以前にYouTubeにアップされた動画を観て初めて知ったのですが、その動画を観たときは口から心臓が飛び出るくらいに驚いたことを覚えています(笑)。そしてアリソン・スタットン率いるウィークエンドのラジオ音源である「The End Of The Affair (David Jensen Show)」や、素晴らしいアレンジを聴かせてくれるハウスマーティンズ「Think For A Minute (Single Version)」、スミスの「Back To The Old House (BBC Session)」などに続き、ミッドナイト・スペシャル後半のハイライトとしてフェルトの作品を3曲セレクトしたのですが(間にコクトー・ツインズの最高傑作である『Treasure』期のラジオ・セッション「Ivo」と、フェルト脱退後モーリス・ディーバング唯一のギター・プレイが聴けるセイント・エティエンヌの1992年リリース作「Paper」などを挟み)、最後にまたマニアックな話をすると、今回ピックアップしたうちの1曲、1986年リリースのシングル「Ballad Of The Band」収録のマーティン・ダフィによるソロ・ピアノ・ナンバー「Candles In A Church」は未だにCD化されておらず、本来は「A compilation box set of the first fifty singles」との謳い文句通り、リリースされている最初の50枚のシングル全てを収録しているはずのクリエイション・レーベルが1991年リリースした5枚組コンピレイション・アルバム『Creation Soup』にもこの曲は収録されませんでした。さらにこの『Creation Soup』はディスク5に収録されているフェルトの曲名に誤表記があり、正確な曲名をここに記しますと、25曲目(誤)「There's No Such Thing As Victory」 → (正) 「Fire Circle」、26曲目(誤)「Buried Wild Blind」 → (正) 「There's No Such Thing As Victory」となります。そして誤表記となった「Buried Wild Blind」という作品も未だにCD化はされていません。ここまで書いたらついでに言っておきますと(笑)、フェルトの未CD化作品は3曲あり、もう1曲は1983年リリースのシングル「Penelope Tree」のカップリング曲「A Preacher In New England」です。この曲はアルバム『The Splendour Of Fear』にも収録されていて、アルバムはCD化されておりますが、そちらのヴァージョンはシングルより2分ほど長いヴァージョンです。さらについでに他のレア曲が収録されているCDを紹介しますと、まずはファースト・シングル「Index」のB面「Break It」はMade in Japanの海賊盤(これは有名なCDなのであえて正規CD盤のカテゴリーに入れてしまいました:笑)『The Absolute Felt』に収録。「A Preacher In New England」と同じく1983年リリースのシングル「Penelope Tree」のカップリング曲である「Now Summer's Spread Its Wings Again」は、チェリー・レッド・レーベルの30周年コンピ『I'll Give You My Heart I'll Give You My Heart (The Cherry Red Records Singles Collection 1978-1983)』に収録されており、傑作シングル「Primitive Painters」に収録された「Cathedral」もアルバム・ヴァージョンと違いますが、こちらは「Primitive Painters」の1988年版CDシングルに収録。フェルトの事実上のラスト・シングルである(1989年のフレキシ「Get Out Of My Mirror」除く)1988年リリースの「Space Blue」に収録された「Female Star」と「Tuesdays Secret」は、1990年にクリエイション・レーベルからリリースされたフェルトのコンピレイション・アルバム『Bubblegum Perfume』を、2011年にチェリー・レッド・レーベルが少し収録曲を変えてリリースした再発盤にめでたく収録されました。そして最後に、かなり入手が困難なものですが、1993年にチェリー・レッド・レーベルからリリースされたCD4枚組の『Felt Box』の目玉となるディスク4に、1981年リリースのセカンド・シングル「Something Sends Me To Sleep」B面に収録された「Something Sends Me To Sleep 」と「Red Indians」の別ヴァージョン、そして今回のセレクションに収録した1984年リリースの「Sunlight Bathed The Golden Glow」の女声コーラスを加えて全体に厚みを付けたシングル・ヴァージョンとそのインストゥルメンタル「Sunlight Strings」というヴェリー・レアな音源が収録されています(フェルト作品のアーカイヴ話は、このコメントを書く直前に一緒に呑みに行った、1997年から2004年まで渋谷にあった伝説のレコード屋「Maximum Joy」のオーナーで友人の薄田育宏くんに喜んでもらうために書きました:笑)。

Rosemary & Garlic『Rosemary & Garlic』
Hatcie『Sugar & Spice』
Foliage『Ⅲ』
Deb Talan『Lucky Girl』 
Coral Pink「Another Year」
Clairo「Hello」
John Moods『The Essential John Moods』
Cigarettes After Sex「Crush」
The Paper Kites『On The Corner Where You Live』
Jaguar Sun『That Night』
Vincent Gerard & Steven Patrick「 Know Very Well How I Got My Note
Wrong」
Everything But The Girl『Amplified Heart (Deluxe Edition)』
The Lotus Eaters『Silentspace』
The McCluskey Brothers『Wonderful Affair』
Billy Bragg「Shirley (Greetings To New Brunette)」
The Brilliant Corners『Joy Ride + 6』
The Trash Can Sinatras『Zebra Of The Family』
The Pale Fountains『Longshot For Your Love』
Felt「Ballad Of The Band」
Felt「Sunlight Bathed The Golden Glow」

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

酷暑の日々を抜けて、暑さが和らぐひとときが心地よく、旅行やショッピングなどお出かけするにも積極的な気分になります。選曲も、少し爽やかな秋風を意識して、アコースティックなサウンドを集めてみました。特に、フォーキーなシンガー・ソングライターを多めにセレクトして、夏から秋へ移りゆく、季節感を感じていただければと思います。冒頭に用意したのは、ベン・ゴートメイカーです。以前、クワイエット・コーナーのコンピレイションCD『Quiet Corner – a collection of pastoral music』に、「Hold On, Sister」という曲を収録したこともある、大好きなシンガー・ソングライターです。今回は、届いたばかりのアルバム『Bird』(ジャケット・デザインも素敵)から、「The Weekend」を選んでみました。イントロの一音から引き込まれる、名曲の風格さえ漂う一曲だと思います。

Ben Gortmaker『Bird』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

だんだんと空が高くなっていき、陽が落ちる頃合いにはこの夏の記憶(個人的には今年も何もなし!)が寂寥とした気分をいざなう季節のかわりめ。そんな思いに寄り添うように、少し寂しげな初秋に相応しい楽曲をEarly Autumn Selectionとして連ねてみました。
では今回も選曲の流れに沿って、8枚の作品をご紹介させていただきます。
Stones Throwらしいマッドリブ的なエクスペリメンタルでスモーキーなトラック・メイクの前作から7年ぶりに、同じく7インチを放つBryant K。今作はヒップホップに軸足を置くピアニストDylan Maidaを迎え、スティーヴィー・ワンダー〜ロータリー・コネクション〜ラムゼイ・ルイス〜ヴィンス・ガラルディにインスパイアされたという、場末の酒場で弾き語られているような温かく味わいのあるメロウ・ナンバーを聴かせてくれる。
シカゴのシンガー・ソングライター、Spencer Radcliffeによるインストゥルメンタル・プロジェクト、Blithe Fieldの新作は、実験的なコラージュの手法も取り入れながらもスウェーデンのミュゼットあたりに通じるような親しみやすさを感じさせる作風が、生楽器編成によってより音の色彩が輪郭をもって際立ち、ペンギン・カフェ・オーケストラ的とも言える映像感覚にすぐれた響きを奏でる。
The Lemon TwigsやWhitneyなどを手がけたご存知ヴィンテージ・ロックなサウンド・アプローチを施す異才プロデューサー、FoxygenのJonathan Radoとのレコーディングということでとりあえず興味をひかずにいられなかったサウス・ロンドンの若きシンガー、Matt Malteseのデビュー・フル・アルバムは、やはりJonathan Radoらしいアイディアが随所に盛りこまれた粒よりのポップ・チューンが並ぶさすがなサウンド・プロダクション。ここでは最も好きなナンバー「Like A Fish」をピックアップ。
Bandcampを通じて28タイトルに及ぶ多彩な作品を発表してきたブルックリンの宅録アーティスト、Paco CathcartのエイリアスThe Cradle。内省と哀切を兼ねそなえた歌が、NNA Tapesからのリリースとなる今作では牧歌的でフォーキーなオーケストラル・ポップなアンサンブルをまとい、よりソングライティングの素晴らしさが強調された傑作に。
そしてこちらもブルックリン出身、Celestial ShoreのSam Owensによるソロ・プロジェクト、Sam Evianのセカンドも、今回の選曲にどの曲をあてようか迷うほどの充実ぶり。ファルセット風の透明感のある中性的な声質とまどろむように柔らかなメロディー・ライン。パーフェクト。
2010年に独Tomlabよりリマスター再発され話題を呼んだ、リズム・マシン〜シンセ・ドラムのチープなビート感が最高のベッドルーム・シンセ・ディスコのカルト的名盤、Jeff Phelpsの1985年作『Magnetic Eyes』(Chocolate Industriesからリリースされた名コンピ『Personal Space: Electronic Soul 1974-1984』の1曲目を飾っていたのは本作収録の「Excerpts From Autumn」)。ここではEarly Autumnらしい一曲として、ティミー・トーマス〜シュギー・オーティス感満載の密室メロウ・ソウル・チューン「Wrong Space, Wrong Time」をピックアップ。
そして今年復刻されたWaak Waak Djungiは、オーストラリア電子音楽界の草分け的存在というPeter Mummeとアボリジニ・ヨルング族の3人のシンガーがコラボした1997年のアンビエント作品に未発表曲を加え再編された、あのアンドラス・フォックスも讃辞を贈るアルバム。カリンバ風の音色のシンセも心地よいミニマル・アンビエントの「White Cockatoo」が特に素晴らしい。
最後は同じくオーストラリアはメルボルン在住のピアニストでシンガーであるEvelyn Ida Morrisを。ピアノと歌の弾き語りでありながらドビュッシー〜ラヴェルを参照して制作されたという本作は、パティ・ウォーターズからメレディス・モンクをも連想させる現代音楽的なアプローチが刺激的。今回ピックアップした「The Body Appears」は、同地のダンサーであり振付家として高く評価されているDeanne Butterworthを迎えたMVにも引きこまれるのでぜひ。ちなみに、若くして亡くなったオーストラリアのコンテポラリー画家アダム・カレンの伝記本を題材にした映画『Acute Misfortune』のサントラはEvelynが手がけ、現地での公開と共に今年8月にリリースされたばかりです。
それでは。

Bryant K「Dreams/Rooms」
Blithe Field『Days Drift By』
Matt Maltese『Bad Contestant』
The Cradle『Bag Of Holding』
Sam Evian『You, Forever』
Jeff Phelps『Magnetic Eyes』
Waak Waak Djungi『Waak Waak ga Min Min』
Evelyn Ida Morris『Evelyn Ida Morris』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

他のセレクターの方も書かれているのではと思うのですが、今年は全国的に記録的な猛暑で、Early Autumn Selectionのイメージを描くスウィッチを入れるのに少々苦労しました。とはいえ、Early Autumnと題されてはいても、実際の放送は8月最終週から。例年の天候を見ていても、まだまだ残暑の厳しい時期ですよね。ということで、晩夏~初秋を感じさせる曲たちを、バランスに気を遣いつつ構成していきました。

そんなテーマにぴったりだったのが、Calmの新作『By Your Side』からの「夏の終わりと言うべきか、秋の始まりと言うべきか」です。他にも「夜の始まりと最初の星」「刻々と変わる空の色」など、いつもに増してトワイライト・タイムに似合いそうな曲ばかり。今回はタイトルとアトモスフェリックなムードを決め手に「夏の終わりと言うべきか、秋の始まりと言うべきか」を選びましたが、アルバム通してオススメです。限定版のハンドメイド・パッケージも素敵なので、気になる方はぜひお手に取ってみてください。ジョン・コルトレーンの未発表録音集に収められていたメロディアスなナンバーや、カマシ・ワシントン待望の新作からの「Testify」(「usen for Cafe Apres-midi」のニュー・スタンダードと言える「The Rhythm Changes」の続編のような仕上がりです)などと組み合わせ、季節感を演出してみました。

続いては恒例(?)の1,000円CDコーナーです。橋本一子のサティ「Je Te Veux」(邦題は「きみがほしい」)のカヴァーを。往年の音楽ファンの方にとってはYMOや六本木WAVE、アール・ヴィヴァンといったイメージが強いかもしれませんが、この曲が入っている『Mood Music』は、アプレミディ的なセンスでも切り取れる個性を持った一枚です。
もう一曲、ブレッカー・ブラザーズの「What Can A Miracle Do」も紹介しておきましょう。ディスク・ガイド『City Soul 1970s-2010s』に冨田恵一さんのインタヴューとプレイリストが載っていたので、Spotifyにある曲を探して可能な限り再現しました。そこで耳を惹かれた中の一曲がこれです。秋の訪れを感じさせる、落ち着いたメロウなナンバー。こういうちょっとしたマイ・ディスカヴァリーを入れられるのが「usen for Cafe Apres-midi」の醍醐味ですよね(村上春樹なら「小確幸」と表現するでしょうか)。ちなみにヴォーカルはセッション・ヴォーカリスト時代のルーサー・ヴァンドロスが担当しています。

15時からの1時間は、黄昏から夜空へと移っていく、まさに「刻々と変わる空の色」という雰囲気の選曲になりました。マイケル・セイヤーやジャック・アドキンスが個人的なハイライトです。前者はアプレミディ・レコーズから日本盤CD化が実現した、LAの若き才能による甘美なベッドルーム・ソウル〜チルアウト・AOR。その『Bad Bonez』は、夏の終わりを彩るのにぴったりな一枚で、僕の周囲でもすでに大きな反響を呼んでいます。ジャック・アドキンスは1984年にリリースされた『American Sunset』が再評価の声を受け、CD再発されました。こちらもサンセット・タイムを思いながら聴きたい、バレアリック〜ニュー・ウェイヴ的な手触りを持ったシンガー・ソングライター作品です。
また、Early Autumn Selectionは中秋の名月の時期でもあるんですよね。今年は15年ぶりに火星が地球に大接近しています。最も近づくのが7/31ということで、ニュースなどでも盛んに取り上げられていましたが、僕はその日旅行先にいました。夜中にホテルのバルコニーから海上に浮かぶ赤い光を眺め、限りない時間と空間に想いを馳せました。火星はまだまだ地球に近いので、空気が澄んでくるこれからの時期は月や星とともにより美しく見えるはずです。

最後にお昼のクラシックに触れて、今回のコラムを終わりにしようと思います。晩夏〜初秋に合う作品を探していて、ピンときたのがブラジルを代表する作曲家、ヴィラ・ロボスのギター作品でした。音色や編成のせいもあり、あまりクラシック臭を感じないかもしれませんね。思いつきで始めたお昼のクラシック縛りでしたが、回を重ねるごとにクラシックの奥深さや幅広さを感じることが多くなっています。リスナーの方が、そんな音楽の魅力を発見できるようなセレクションを今後もめざしていきたいと思っています。

Various Artist『Villa-Lobos: Complete Guitar Manuscripts』
Calm『By Your Side』
Kamasi Washington『Heaven And Earth』
橋本一子『Mood Music』
The Brecker Brothers『Back To Back』
Jack Adkins『American Sunset』
Michael Seyer『Bad Bonez』
R.E.M.「Nightswimming」

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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