見出し画像

Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2019 Winter Selection(1月14日〜2月24日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

冬の街並みをハートウォームに彩ることができたらという思いをこめて、メロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、今回は計30時間分を新たに選曲した。
金・土・日のトワイライトタイムの特集は、昨年12/26にリリースされご好評をいただいている僕の最新コンピ『Free Soul ~ 2010s Urban-Breeze』の拡大版というコンセプトで、惜しくもCDへの収録からはもれた曲も含めて6時間を構成している。
例年のWinter Selectionと同じように、年末年始はニュー・アライヴァルが少ないこともあって、去年のベスト・セレクションに選んだ作品もちりばめながら全体を組み立てているが、新譜のフェイヴァリットを挙げるなら、El Buhoとピーター・ブロデリックだろう。前作からはUjiとBarrio Lindoも参加したナイス・フォルクロリック・バレアリカ「Xica Xica」をヘヴィー・プレイした前者は「Camino De Flores」(3月のヴァイナル・リリースが待ちきれない)、予想をはるかに上まわる素晴らしさのアーサー・ラッセル・カヴァー集となった後者は「Losing My Taste For The Nightlife」が、特に絶品。
usen for Cafe Apres-midiでは2017年の『The Silver Veil』が各セレクターに大重宝されたフランスのリヨン出身のシンガー・ソングライター、Raoul Vignalの『Oak Leaf』が次点だろうか。ニック・ドレイクやホセ・ゴンザレスからキングス・オブ・コンヴィニエンスやデヴェンドラ・バンハートまでの名を引き合いに絶賛されたアコースティック・フォーキー新星だが、今回はソプラノ・サックスの柔らかな響きも印象的な「No Faith」をとりわけ気に入っている。
曲単位では、新年早々に届けられたディアンジェロ「Unshaken」にも歓喜したが、Moonchildの「Get To Know It」もまさしく僕好みで、ニュー・アルバムへの期待を募らせずにいられない。同様に「The December-ish You」という好曲が先行公開されたLambchopも、3月予定という新作が楽しみでならない。そして来週、ジェイムス・ブレイク待望の『Assume Form』が発表されたら、いよいよ2019年が始まったという実感が湧いてくるだろう。

画像1

V.A.『Free Soul ~ 2010s Urban-Breeze』
El Buho『Camino De Flores』
Peter Broderick『Peter Broderick & Friends Play Arthur Russell』
Raoul Vignal『Oak Leaf』
Steve Spacek『Natural Sci-Fi』
David F. Walker『David F. Walker』
Moonchild「Get To Know It」
Lambchop「The December-ish You」
Angelo De Augustine『Tomb』
Private Agenda『Affection』
Earl Sweatshirt 『Some Rap Songs』
Julia Branco『Soltar Os Cavalos』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~6:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
Twilight-time 月曜日16:00~18:00
Twilight-time 火曜日16:00~18:00
Twilight-time 水曜日16:00~18:00
Twilight-time 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

2019年のスタートであるWinter Selectionは、昨年秋冬リリースの新作の中で最も気に入っていたAstronautica『Death Valley』をピックアップします。全く知らないアーティストでしたが、国内レーベルASTROLLAGEがCD化してくれたおかげで知ることができました。女性トラック・メイカーの3作目なのですが、ドリーミーでミステリアスで、そして絶妙なヌケ感もあるサウンドが最高でした。冬にも合うし、夏の夜にも重宝しそうな心地よさです。

画像2

Astronautica『Death Valley』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

あけましておめでとうございます。他のセレクターの皆さんや各媒体の年間ベストのリストに目をやりながら「まだまだ全然チェックできていない」とクラクラしておりますが、2018年の日々の暮らしの中でよく聴き、よくプレイした楽曲に、昨年12月19日にリリースとなったBar Musicの最新コンピレイションを加え、一筆書きのような感覚で組み上げた2019年最初のセレクションです。ヴァージョンを常にアップデイトしつつもスタンスと思いは変わることなく丁寧な選曲を心がけて参りますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

画像3

V.A.『Bar Music 2018 ~ Melodies In A Dream Selection』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

今年最初のセレクションはInternational FeelやNuNothern Soulといったバレアリック系レーベルからリリースするベルリンの男性デュオ、Private AgendaのEPをピックアップ。カーティス・メイフィールドの「Tripping Out」を下敷きにしたような「Instinct」を始め、透明感のあるヴォーカルが美しい全編心地よい一枚です。

画像4

Private Agenda『Affection』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

仏国と英国を隔てる白い壁=ドーヴァー海峡。ラテン語で「白い」を意味するアルビオンとは、かつての英国の呼称。両国を隔てる「白」は精神的な壁をも象徴していたのだろう。ジュリアン・ウォーターフォール・ポラックはクラシック畑でも引っ張りだこ、マルチな才能を輝かせるアメリカ出身のピアニスト。本作が『アルビオンの波』と題された経緯には想像を掻き立てられるが、冬のドーヴァー海峡の厳しさの中にある美しさを濃厚に抽出し、その素材をシンプルな編成(ピアノ・トリオ)で聴かせることに注力したのではないか。フランスのパッションとイギリスのオーセンティックが混在したような彼のピアニズム、また「Fresno Interlude」を聴く限り、私の想像はますます確信を帯びてくる。

画像5

Julian Waterfall Pollack Trio『Waves of Albion』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

2019年もたくさんの音楽との邂逅に期待します。最新であることにはあまりこだわりません。古今東西の心の一曲を融通無碍にしなやかに線で繋ぐ作業に没頭したいと思います。どんな一筆書きができるのか、自分でも楽しみです。

画像6

Weldon Irvine『Weldon & The Kats』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

あけましておめでとうございます。本年も引き続きよろしくお願いいたします。
ニール・セダカ御令嬢のデラ・セダカのデヴィッド・フォスター・プロデュースが全編に冴え渡るアルバムの中で、一番好きな「Just Say I Love You」。心地よいミッド・テンポの良曲。ジャケットやアルバムの中のポートレイト含めてキュートなデラ・セダカに、“MAJIで恋する3秒前”になりそうです(笑)。

画像7

Dara Sedaka『I'm Your Girl Friend』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

昨年はジョーイ・ドォシク、ベニー・シングス等の作品でも大活躍だったカナダ出身のソングライター、モッキーの新作。プロデューサーにベック等を手掛けたジャスティン・スタンリーを迎え、前述のジョーイ・ドォシクをはじめ、ミゲル・アトウッド・ファーガソン、ニア・アンドリュース 、マーク・ド・クライヴ・ロウ等、現在のロサンゼルスのジャズ・シーンを代表するプレイヤーが参加。ワン・テイク録音に細かな編集を施した本作はシンプルの中にも職人の技が見事に詰まった逸品です。2019 Winter Selectionでは「Sweet Beat」を取り上げさせていただきましたが、アルバムを通して素晴らしい作品ですので、皆様、ぜひ聴いてみてください。

画像8

Mocky『A Day At United』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

皆さま、あけましておめでとうございます。
福岡という街は元旦から博多駅、2日から天神、で初売りスタートします。九州〜山口から帰省客のお客様を含め福岡市内に買い物にお越しいただいております。STEREOは2日から天神に沿って開けてます。

幼少の頃は、大晦日夜更かしして、初詣に行き、昼すぎに起きて、おせちを食べて、祖父母のところへ行き、正月挨拶そしてまたおせちを食べながら漫才をTVで観て笑い(B&Bの時代……古い)、祖母と神社に行きながら、別にお年玉をもらう。もちろんレコードを買うために。そんな祖母も昨年他界して、そのわがまま放題だった自分の幼少期のダメさを実感し、祖母のやさしさに包まれて育ったことに感謝しながらの2019年春を待つ選曲。

初日の出レコード・ジャケとしては少し眩しいですが、Twilightの1981年デビュー・アルバム『Still Loving You』。僕の中でスタイル・カウンシルのデモ・トラック集と表現すると友人に怒られる奇跡なフォーキー・ソウル。CD化もされているみたいなのでぜひ。セカンド・アルバムも完璧なアーバン・メロウ作品であります。
そしてToto Bona Lokua。3人のアフリカン多国籍ネオアコ・アルバム『Bondeko』2018年。アフリカの大地の感覚を身につけたフランスからリリースされた、今のヨーロッパ/日本のミュージシャンならPCでサンプリングしそうなオーガニックで天然な声にアコースティックなサウンド。PCで世界がひとつの音楽になる危機を防ぐべく、彼らの素晴らしいアフリカン・テイストがポップスに溶け込む。トーキング・ヘッズほど力強くないところが魅力的。ジャケットで惹かれたならば、そのままの気持ちで聴いてみてください。
では、今年も時代国境問わず素晴らしい音楽を。

画像9

Twilight『Still Loving You』
Toto Bona Lokua『Bondeko』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

新しい一年の始まりですね。今年一年も、usen for Cafe Apres-midiを聴いてくださる皆さまが、澄みきった冬の青空のように、晴れやかな気分になれる選曲を心がけていきたいと思います。2019年もどうぞよろしくお願いいたします。

Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crewに毎年書いているような気もしますが、雪国生まれ&冬生まれの私は、冬の匂いを感じる音楽に強く心を惹かれます。なのでこんなこと言ってはアレですが、毎回Winter Selectionの選曲は、他の季節よりも正直力が入ってしまいます(笑)。それでは、今回のセレクションでポイントとなったいくつかの作品をピックアップさせていただきますね。

オープニングを飾るのは、ルイヴィル出身のSSW、Joan Shelleyの「Brighter Than The Blues」。ジョニ・ミッチェルを想わせる歌声と、穏やかなノスタルジーを漂わせたアコースティック・ギターに心ほぐれる、冬に聴きたいフォーク・ミュージックです。ポートランド出身のSSW、Peter Broderickの「Guilt's Tune」は、毎年冬の気配を感じると、ふと聴きたくなる一曲。はらはらと舞い降りる粉雪のような、滑らかなエレクトリック・ギターの爪弾きと、雲の切れ間から零れ落ちる冬の柔らかな陽射しのようなピアノの旋律、音の隙間に滲むセンシティヴなポエトリー・リーディングが心の奥に染み入ります。usen for Cafe Apres-midiのセレクター仲間の添田さんから教えていただいた、フランスはリヨン出身のSSW、Raoul Vignalのアルバム『Oak Leaf』は前作同様、冬にしっとりと馴染む、控えめだけど味わい深いフォーク・ミュージックです。「フランスのKings Of Convenience」と称されるのも頷ける、儚さを湛えた親密な歌声が魅力です。もう何度針を落としたか、わからないほどの愛聴盤、Michael Johnson『Ain't Dis Da Life』からも「Lucky Star」をセレクト。爽やかなギターの爪弾きに寄り添う、ほんのり切なさを漂わせたエレピの音色と、Michaelの穏やかに語るような歌声に胸を締めつけられます。ドイツのピアニスト/作編曲家、マックス・グレガー・ジュニアが、1980年に残した幻の傑作『Thursday Night』から、まさに今の季節にぴったりな一曲「Snowflowers」を。きらきらと乱反射する雪の結晶をイメージさせる、清らかで可憐なピアノに心が透き通ります。トロント出身カリフォルニア拠点のプロデューサー/アーティスト、Odieが昨年の4月にリリースした「North Face」も冬の一曲としてピックアップ。少し枯れたディープ・ヴォイスと、甘くスウィートなファルセットを併せ持つ、Odieの歌声に一瞬で恋に落ちた好曲。イントロのギターのカッティングから心をグッと引きつけられたJulie Byrne「Sleepwalker」は、透明感と包容力に満ち溢れた歌声を聴いて、あまりの素晴らしさに物理的にその場から動けなくなってしまった傑作。Beady Belle「I Run You Ragged」、寒い冬はこういうとろみのあるメロウ・チューンと甘い歌声が欲しくなりますね。昨年usen for Cafe Apres-midiでも大いに話題をさらったAdy Suleimanは、2018年11月にリリースされたSingle「Been Thru」。極々シンプルで爽やか、そしてオーセンティックな印象を受けるアコースティック・サウンドですが、どこかそれだけでは収まりきらない懐の広さを感じます。Ady Suleimanのこれからの更なる活躍を予感させる、輝きを湛えた一曲。2018年のベスト・セレクションにも選んだ、大好きなシンガー Raveenaが、昨年秋にリリースした「Temptation」は、凍える冬も溶かしてしまいそうな、ホットでスウィートな極上のメロウ・ソウル。ワシントンDC出身、名門ジュリアード音楽院でジャズ・サックスを学んだブラクストン・クックのアルバム『No Doubt』から「We Major」をラストに。軽やかに滑らかに、歌うように奏でられるブラクストン・クックのサックスは心をどこまでも広げてくれるよう。ジャズ、フュージョン、R&B、ネオ・ソウル、ビート・ミュージック、様々なジャンルの境界線を気持ちよく行き来する、優れたニュー・チャプター・サウンド。

画像17

Joan Shelley『Over And Even』
Peter Broderick『How They Are』
Jessica Risker『I See You Among The Stars』
Raoul Vignal『Oak Leaf』
Lambert & Nuttycombe『At Home』
Michael Johnson『Ain't Dis Da Life』
Max Greger Jun. Piano And Orchestra『Snowflowers』
Mac Ayres『Something to Feel』
Odie『Analogue』
Charlotte Dos Santos『Cleo』
Julie Byrne『Sleepwalker』
The Milk Carton Kids『All The Things That I Did And All The Things That I Didn't Do』
Grey Reverend『To Be Here』
Beady Belle『Dedication』
Ady Suleiman『Acoustic』
FKJ「Is Magic Gone」
Jamie Isaac「Fool'n」
Raveena「Temptation」
Braxton Cook『No Doubt』
Mocky『A Day At United』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

本年も新曲をメインに、大好きな曲を、気持ちを込めて、厳選して選曲しますので、どうぞusen for Cafe Apres-midiをご贔屓ください。今回はオーストラリア・メルボルンからLachlan Mitchell a.k.a. Laneousによる最高のメロウ・チューンをご紹介します。昨年末に発表されたこの曲は前回のセレクションにも入れましたが、とても大好きな曲なので今回も選びました。同じくメルボルンのハイエイタス・カイヨーテのネイ・パームが天才と呼ぶ、この寒い季節を暖めてくれる美しく甘美なメロディーやヴォーカルと、ヴィンテージなメロウなロウ・グルーヴをどうぞお楽しみください。

画像11

Laneous「Modern Romance」

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

2019年、今年も、世界中のいい音楽の中から、純粋な耳を傾けて選りすぐった楽曲だけをお届けしていきますので、何卒ご愛聴よろしくお願いします。
さて、そんな新年の最初に紹介するのは、その類まれな作曲の才能と絶妙なサウンド・センスで独自の世界観を感じさせてくれる注目のSSWアーティストBenjamin Lazar Davis の「A Love Song Seven Ways」を。インターネットで音楽を自由に発信できる時代となった2010年以降、彼のようにマルチに楽器を奏でられる宅録系アーティストの活躍が一層目立つようになりましたね。
ベルリン在住の Niklas Kramer(ニクラス・クレイマー)率いるStill Paradeの「Circle Song」は、アナログ時代のソフト・ロック的な要素と、現代的なオルタナティヴ・ポップのセンスが融合した秀作。
ノルウェイの新鋭Jakob Ogawaの「Velvet Light」は、ピンクに照らされた夜の窓辺のジャケットが象徴する、ノルウェイ産と思えないソウルな色気を感じるサウンド・センスがナイス。彼の作品は今後も要チェックです。
そして最後に紹介するのは、昨年の来日公演で日本でも話題となったサウス・ロンドン発の気鋭のサウンド・プロデューサーJamie Isaacの最新シングル「Fool'n」。Sade好きの方なら絶対に好きなメロディー・ラインを、抑制の効いた天性の唄声と最小限の美しい音数で奏でていく現代的チル・トラックに、誰もが心穏やかに解かれていくことでしょう。

画像12

Benjamin Lazar Davis『Nothing Matters』
Still Parade『Soon Enough』
Jakob Ogawa「Velvet Light」
Jamie Isaac「Fool'n」

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

冬の冷たい空気の中にキラキラと輝く粒子の細かい光の粒のような音のきらめき。ミシガン州グランドラピッズの3人組によるアコースティックでドリーミーな楽曲が日曜日の真っ白な冬の扉を開ける。

画像13

Major Murphy『Lafayette - EP』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

年が明け、新たな一年が始まりました。今年は平成という元号が2019年4月30日をもって幕を閉じるので、個人的には何か特別な予定というものはありませんが、2019年が特別な年であることに間違いありません。昨年を表す漢字が「災」だったそうですが、この特別な年に災害も起こらず、皆が穏やかに生活できたらいいですね。
さて、今年一発目の選曲、まずはチルウェイヴとヒップホップを融合させたというオランダのレーベル、チルホップ・レコードから昨年リリースされた、来日経験もあるプロデューサー、ジュリアン・ミアーのサイド・プロジェクト、サントポールトの『Mudflat Hikers』より、クールなインストゥルメンタル・ナンバー「The Great Ocean Road」からスタートし、ディナータイムの選曲は全体的にライトなR&Bテイストの作品でまとめてみました。続いて、本国オーストラリアでは人気を不動のものにしているシンガー・ソングライター、マット・コービーの2018年作のセカンド・アルバム『Rainbow Valley』より、柔らかなグルーヴとスウィートな歌声が清々しい風を運ぶ「No Ordinary Life」や、ボストンはマサチューセッツを拠点に活躍するティム・ハリントンとポール・ライトからなる2人組、トール・ハイツの2015年作EP『Holding On, Holding Out』より、優しさの中にも力強さを感じる「Spirit Cold」をセレクト。そしてロサンゼルスで活躍する2人組のJomeというアーティストが昨年リリースしたデビュー・アルバム『Tunnels』からファースト・シングルとして発表された「Cinnamon」、ニューヨーク在住のシアトル・マリナーズ好きな(笑)レンスこと、ジャクソン・レンス・ハーシュのライトなヴォコーダー・サウンドが心地よい「Baby Blue」、エミリー・ウォーレンという女性アーティストをゲスト・ヴォーカルに迎えたロサンゼルスを拠点に活動するJT・ローチが2017年にリリースしていたアコースティックな響きを放つR&Bサウンドが爽やかな「Symmetry」、そのアコースティックな流れでイギリスはブリストル出身のフォリアが2016年にリリースしたデビュー・アルバム『Volition』より子守歌のように優しく響く「Saving Us A Riot」などをセレクト。そしてシカゴ出身のアーティスト、ボビー・ロードのプロジェクトであるJagged Jawの2016年にリリースされたデビュー・アルバム『Tonight Is』から90sフィーリングなサイケデリック・ポップを聴かせるタイトル曲「Tonight Is」をピックアップしたのに続き、ロサンゼルスを拠点に活躍し、昨年7月にデビュー・アルバム『Lake Tear Of The Clouds』をリリースしたコーネリア・ムルのドリーム・ポップ「Different This Time」や、軽やかなベース・ラインにハンドクラッピングが心地よい、こちらもロサンゼルスで活動するジョシュ・コンウェイとプエルトリコの血を引くマリアなる女性とのネオ・ソウル・ユニット、マリアスの「I Don't Know You」などのソフトなダンス・ナンバーを続け、さらに昨年のEarly Spring Selectionから配信オンリーで2016年にリリースされたデビューEP『Snow In October』の楽曲を使用しているニューヨーク出身の若き女性アーティスト、チェルシー・カトラーが昨年発表した初のフィジカル作品となる『Sleeping With Roses』より、キュートなR&Bナンバー「The Reason」をセレクト。続いてこちらも昨年初となるフィジカル作品『EP1: Sad Girl』をリリースしたボストンに生まれロサンゼルスで活動するサーシャ・スローンのウィスパー・ヴォイスがセクシーに響く「Ready Yet」や、スウェーデン人とイギリス人の男女デュオ、ガール・クラッシュによるどこかノスタルジックな「Past Life」といったソフトなR&Bテイストの作品に繋げました。そして全体的にしっとりした雰囲気のディナータイム前半の締めに、片やアコースティック・ギター、片やピアノの弾き語りというシンプルな作品のウィル・キレン「Write You Out」とLauvの「The Story Never Ends」を続けてディナータイム後半に移ります。

ディナータイム後半は、昨年から自分の選曲では大活躍しているイリノイ州出身のアーティスト、スリーピング・アット・ラストの「All Through The Night」からスタート。この作品はカヴァー・ソングで、オリジナルはアメリカのシンガー・ソングライターであるジュールズ・シアーが1983年にリリースしたデビュー・アルバム『Watch Dog』に収録されていたものです。しかしこの作品が広く世に知れ渡るようになったのはなんといっても、シンディ・ローパーの大ヒットしたデビュー・アルバム『She's So Unusual』(邦題『N.Y.ダンステリア』)にカヴァー・ソングとして収録され、そこから第4弾シングルとしてシングル・カットされて、その年のビルボード・チャートで5位を記録したからだと思います。自分は1984年に留学してフロリダの高校に通っていたのですが、当時シンディ・ローパーのこの作品がラジオから流れると高校生だった自分の心の奥に何かわからない切なさを感じ、胸がキュンとしていたことを鮮明に覚えています。ディナータイム後半、他には2009年公開のアメリカ映画『ニュームーン/トワイライト・サーガ』に収録されていたボン・イヴェールとセイント・ヴィンセントの共演曲「Roslyn」や、久しぶりに選曲に取り入れた2010年リリースのセバスチャン・ブランクの唯一作『Alibi Coast』収録の「Thunder」などもピックアップ。こちらはブルックリンのデュオ・ユニット、チェアリフトのメンバーでありソロとしても活躍するキャロライン・ポラチェクとの共演曲ですね。そして選曲に初めて使用した作品では、昨年リリースされたスウェーデンはストックホルム出身のアーティスト、エリーナのハートフルな響きのR&Bナンバー「Here With Me」や(調べてみると彼女はR&BシンガーのSZAを迎えて2017年に大ヒットしたマルーン・5の「What Lovers Do」にコンポーザーとして名を連ねていました)、こちらもスウェーデン出身の男女デュオ、フローラ・キャッシュの「You're Somebody Else」、フォーキーな作品ではブルックリンのシンガー・ソングライター、ジェシ・リューベンのハートウォーミングな「This Is Why I Need You」や、スフィアン・スティーヴンスにも通じるメランコリックなフォーキー・サウンドを聴かせるミュンヘン出身のアイクライマーというアーティストの「The Open Road」などをセレクトしています。

そして2019年一発目のミッドナイト・スペシャルは、昨年末に公開されたイギリスのガールズ・パンクの先駆者的存在であるスリッツの伝記映画『Here To Be Heard』や、現在でも精力的に活動しているガールズ・カウパンク・バンド、ヘレン&ザ・ホーンズやシェフスのフロント・ウーマン、ヘレン・マックーケリーブックや、レインコーツのジーナ・バーチらによって制作が進められているガールズ・パンクのドキュメンタリー映画『Stories from the She-Punks』に触発されて、主に自分が学生時代だった80年代半ばから90年代初頭にかけてリリースされていたガールズ・パンクに関連した作品を集めて特集を組んでみました。もちろんusen for Cafe Apres-midiなのでソフトな障り心地の作品を選んでいますが、精神的にはパンクなセレクションになっていると思います(笑)。
まずは伝説のUKガールズ・バンド、ドリー・ミクスチャーの「Welcome Home」~「Dilly Dolly Dally」という流れでスタートし、アズテック・カメラのロディ・フレイムやドリーム・アカデミーのケイト・セント・ジョンなどをバックに制作されたストロベリー・スウィッチブレイドのデビュー・シングル「Trees And Flowers」に続けました。以前にもこのコメント欄で書きましたが、この作品のオリジナル・7インチ・ヴァージョンが収録されているCDは、1986年に徳間ジャパンからリリースされていた日本独自企画盤『クリア・カット・ファイナル』という作品だけです。徳間ジャパンそして「クリア・カット」と聞いてピンと来る方がいると思われますが、これはラフ・トレード所属のアーティストの作品や周辺レーベルの音源を集めた日本独自編集の『クリア・カット』シリーズ初となるCDという媒体でリリースされた作品なので、気になる方は探してみてはいかがでしょうか? そして現在は女優としても活躍する他に、コンテンポラリー系フォーク・シンガーとしても多くの作品を発表しているレベッカ・ピジョンのアーティスト活動の原点といえる、1986年にスコットランドで結成されたルビー・ブルーというユニットのサード・シングル「Bloomsbury Blue」に続き、コクトー・ツインズの傑作シングル「Love's Easy Tears」にカップリングされていた「Sigh's Smell Of Farewell」や、先に挙げたストロベリー・スウィッチブレイドのローズ・マクドールが1993年から2001年頃までロバート・リーなる人物と組んでいたソロウというユニットのファースト・アルバム『Under The Yew Possessed』より、ローズのウィスパー・ヴォイスがドリーミーな作品をさらに幻想的なものにする「Emptiness」をピックアップ。他に自分の中では今回の特集を象徴する1曲だと思う若きトレイシー・ソーンによるヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァー・ソング「Femme Fatale」、ニュージーランドの隠されし至宝、デッド・フェイマス・ピープルの名曲「Postcard From Paradise」、ヘレン・マックーケリーブックの牧歌的ドゥーワップ・ソング「Hermitcrab」、エル・レーベルの歌姫アンソニー・アドヴァースが、ピーター・フランプトンやアンディ・ボウンが在籍し1960年代後半に活躍したイギリスのポップ・ロック・バンド、ハードの作品をカヴァーした「Our Fairy Tale」、そしてコケティッシュなルックスがキュートで魅力的なクレア・グローガン率いるオルタード・イメージの「Love To Stay」や、1984年にLAネオ・サイケデリック・シーンを代表するバンドのメンバーが集結し、レイニー・デイ名義で制作した唯一のアルバム『Rainy Day』より、バングルスのスザンナ・ホフスがヴォーカルを担当したボブ・ディランのカヴァー・ソング「I'll Keep It With Mine」などもセレクトしています。

ミッドナイト・スペシャル後半は、1987年制作のヴァージニア・アシュトレイの名作『Hope In A Darkened Heart』より、デヴィッド・シルヴィアンをゲストに迎えた「Some Small Hope」から、近年ではC・ダンカンによるナイスなカヴァーもお気に入りのコクトー・ツインズの名曲「Pearly-Dewdrops' Drops」、ジャムのトリビュート集『Fire & Skill - The Songs of The Jam』に収録されていたエヴリシング・バット・ザ・ガールによる「English Rose」のカヴァーと始まり、前半ではそのエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンのヴァージョンで収録した「Femme Fatale」を後半ではヘレン・マックーケリーブックが在籍していたスカットというバンドのヴァージョンでセレクト。ポール・ウェラーが立ち上げたレスポンド・レーベルの歌姫、トレイシーの清々しいヤング・ソウル「Fingers Crossed」や、同じくレスポンド・レーベルから作品を発表していたA・クレイズの多くの未発表曲を含む2009年にリリースされたコンピレイション『Such Bliss 』から、このコンピレイションのために新たに録音された「July Run Away」、ドリー・ミクスチャーのデブシー・ワイクスやへスター・スミスらも参加していたカミング・アップ・ローゼスのソウル・フィーリング溢れるスロウ・バラード「I Don't Know What It Is」など、仄かなブルー・アイド・ソウルのテイストを選曲に織り込み、インタールードとしてアリソン・スタットン率いるウィークエンドの南国ムード漂う「Weekend Off (Instrumental)」をここに挿入。細野晴臣のノンスタンダード・レーベルから作品をリリースしていたフレンチ・エレクトロニック・ポップ・ユニット、ミカドの「Anita」に続き、トット・テイラーが主宰していたコンパクト・オーガニゼイションの女スパイ、ヴァーナ・リントのキラー・チューン「Attention Stockholm」もピックアップ。これは1981年の作品ですが、1997年に(おそらく)レーベル初のCDシングルとして再発されていることをマメ知識としてここに記しておきます(笑)。そしてミッドナイト・スペシャルも終盤となり、さらにガールズ・パンクにまつわる選曲の本質に近づく作品を続けます。まずは1978年から83年にかけて活躍した、スイス出身のガールズ・ポストパンク・ バンド、リリプット(前身はKleenex)の「Blue Is All In Rush」、エックス・レイ・スペックスのメンバーだったローラ・ロジック率いるエッセンシャル・ロジックのキュートな小品「No More Fiction」、4ADから1980年に唯一のシングルを発表し、後にディス・モータル・コイルやビッグ・ブラックなどにカヴァーされたイギリスのインダストリアル・バンド、レマレマのメンバーだったドロシー・マックス・プリオールがドロシー名義でサイキック・TVのジェネシス・P・オリッジとアレックス・ファーガソンの協力を得てリリースした唯一のシングル「I Confess」などをセレクト。このドロシーの作品はサイキック・TVの主要メンバー2人が絡んでいる作品なのですが、そこで聴けるサウンドはとてもキュートなもので、歌詞も「私はビートルズみたいなブーツを履いている男の子や、素敵な洋服を着たスリムな女の子、そしてフィリップ・マーロウと同じブランドのバッグや、アメリカの南部の川で演奏されるケイジャン音楽が大好きなの」と歌われるとてもチャーミングな作品です。そしてレインコーツの素敵なレゲエ作品「No One's Little Girl」を挟み、ミッドナイト・スペシャルの締めとして、前述したガールズ・パンクのドキュメンタリー映画『Stories from the She-Punks』制作の資金集めのためにヘレン・マックーケリーブックやジーナ・バーチなど、総勢20名を超える女性アーティストが集結して昨年リリースされた「Women Of The World」という作品をセレクトして今回の特集は終わります。もちろん自分はこのドキュメンタリー映画に興味があるので、バンドキャンプを通してこの作品を購入しましたが、このプロジェクトに少しでも興味を持った方は、ぜひ検索して協力してあげてください。自分がよくこのコメント欄で言っている、「レッツ・サポート・ミュージシャン」ってやつですね(笑)。最後にひとつ情報を付け加えておきますと、この作品にはディスロケイション・ダンスやペイル・ファウンテンズで活躍したトランペット・プレイヤーのアンディ・ダイアグラムも数少ない参加男性アーティストのひとりとして加わっているので、ペイル・ファウンテンズ関連の作品を集めている人は買わなきゃダメです(笑)。

画像14

Santpoort『Mudflat Hikers』
Matt Corby「No Ordinary Life」
Tall Heights『Holding On, Holding Out』
Phoria『Volition』
Cornelia Murr『Lake Tear Of The Clouds』
Chelsea Cutler『Sleeping With Roses』
Sasha Sloan『EP1: Sad Girl』
Sleeping At Last『Covers Vol.1』
Dolly Mixture『Everything And More』 
V.A.『Clear Cut Final』
Sorrow『Under The Yew Possessed』
Dead Famous People『Arriving Late In Torn And Filthy Jeans』
Virginia Astley『Hope In A Darkened Heart』
Helen McCookerybook『Helen And The Horns Etc.』
Coming Up Roses『I Said Ballroom』
Virna Lindt「Attention Stockholm」
Liliput『Liliput』
Essential Logic『Fanfare In The Garden: An Essential Logic Collection』
Dorothy「I Confess」
Story From The She-Punks「Women Of The World」

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。平成最後の年、新年一発目の選曲でございます。今回は、フォーキーなシンガー・ソングライターを中心に、冬から春へ向かう、穏やかな季節の移ろいを感じさせるセレクションになったのではと思います。中でも、昨年にリリースされた、ケイト・マクギャリーの『The Subject Tonight Is Love』が素晴らしい内容で、フォーキーなブラジリアン・チューン「Secret Love」と、ビートルズのカヴァー「All You Need Is Love」の2曲をエントリー。どちらもゆったりと心地よいドリーミーなナンバーです。ジャケット写真も素敵なので、ぜひアルバム単位で手に取ってみるのをおすすめします。
日々、音楽をとりまく環境が変化していますが、自分自身の大切な価値観は忘れずにしたいと思います。また、usen for Cafe Apres-midiのセレクターの一員として、今年も良き音楽と出会い、皆さんにお届けできれば嬉しいです。

画像15

Kate McGarry, Keith Ganz & Gary Versace『The Subject Tonight Is Love』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

新しく届けられる音楽が楽しみでならない2019年。今回のWinter Selectionはそんな年に向け、昨年リリースされた作品の中からまだ取りあげきれなかった寒い時期に相応しい楽曲をちりばめながら、冬の凛とした澄みきった空気に馴染んでいくような曲の連なりを構成できるよう心がけました。それでは今回もポイントとなった作品を掲載したジャケの並び順に説明していきますと、デビュー作もピックアップしたヴァーモントのSSWのさらなる飛躍を感じさせるセカンドからの先行リリース曲、Gia Margaretがフィーチャーされた「Just For A Thrill」の愛らしいカヴァー収録のシカゴ音楽史に捧げられた作品、米インディー・シーンにおけるミュージシャンズ・ミュージシャンのナイスな新曲、その振れ幅の広い表現の柔軟性にアネット・ピーコックとの共通性も感じてしまう才媛のユニット、木管アンサンブルも素晴らしいミナス新世代、ミュージシャン2人がスペインの農場に1週間滞在しレコーディングを実現させるというコラボ・シリーズの注目第3弾、フロム・サウス・ロンドンのヌーヴェル・ヴァーグ的(?)ロリータ・パンク傑作、アメリカーナの深い森へと誘う女性SSWとハーピストの美しすぎる共演、といったところです。それでは、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

画像16

Henry Jamison「Ether Garden」
V.A.『On Big Shoulders』
Chris Cohen「Edit Out」
Chiquita Magic『It's Different』
José Luis Braga『Nossa Casa』
Haley Heynderickx & Max García Conover『Among Horses III』
Honey Hahs『Dear Someone, Happy Something』
Meg Baird And Mary Lattimore『Ghost Forests』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

usen for Cafe Apres-midiのWinter Selectionは1月上旬からスタートするのですが、選曲時期が重なっているせいもあり、2018 Best Selectionで漏れた曲を意図的に多く入れています。また、今回はいわゆる1999年開店当時のカフェ・アプレミディ的な選曲を意識した時間帯を作ってみました。昨年の9月、橋本さんのお宅でレコード大放出が行われたのですが(誰が言ったか「平成最後の奇跡!」・笑)、そこで購入した音源やそこからのインスピレイションを受けた選曲になりました。今、セレクションを聴きながらこの原稿を書いていますが、アニー・ロスの「Give Me The Simple Life」にリー・モーガンの「Candy」やドロシー・アシュビーの「Dancing In The Dark」、クインシー・ジョーンズの「Killer Joe」など、予想以上に新年の空気にフィットしていることを自画自賛しています(笑)。サブスクリプション・サーヴィスの普及のおかげで、世間全体は一時期から新譜中心に動いていると思いますが、バランスを取りながら選曲していくことの大切さを改めて再確認しました。

そして、Best Selectionという流れで言えば、昨年リリースされたリイシューものも多めに取り上げてみました。ビートルズのホワイト・アルバム(『The Beatles』)、ボブ・ディランの『Blood On The Tracks』という、僕の大好きなふたつのアルバムのデラックス・エディションが発売されたので、このあたりの音源を入れられたのも嬉しいですね。それにしても、ホワイト・アルバムのアンプラグド・ヴァージョンという風情のイーシャー・デモは本当に素晴らしいですよね。気になる方はぜひ一度耳にしていただきたい珠玉の音源集です。

さて、恒例のオープニング・クラシックは時期柄もあり、グレン・グールドと決めていました。最初にイメージしていたのは、冬のカナダで撮影されたジャケットのアルバムからかなと。雪の中、厚手のコートを着たグールドの姿が印象的なアルバムなのですが、収録曲はベートーヴェンの「悲愴」とか「月光」なんですよね。usen for Cafe Apres-midi、しかも昼下がりの時間帯にはいささかドラマティックすぎるかなということで、先述のジャケットのアザー・カットを使ったと思しき音源集からシベリウスの曲を選びました。セバスティアン・マッキのソロ・ピアノへと繋げ、冬の空気感を演出できたと思うので、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

もうひとつトピックを挙げておくとすれば、フォーキー〜ジャジーなブラック・ミュージックを中心とした時間帯を作れたことでしょうか。橋本さんの最新コンピレイション『Free Soul〜2010s Urban-Breeze』に収録され、カーティス・メイフィールドの「The Makings Of You」をサンプリングしてサンファと架空デュエットにしている「Close But Not Quite」が発想のきっかけだったのですが、スピリチュアリティーを宿したブラック・ミュージックはこの時期にフィットすると思っていたので、上手くプログラムに組み入れられて満足しています。中でもギル・スコット・ヘロン&ブライアン・ジャクソンの「A Prayer For Everybody / To Be Free」は、個人的なハイライトだと思っています。新しい年の始まるタイミングで、この曲がリスナーの方に特別な響きをもって届くといいのですが。

画像17

Glenn Gould『The Acoustic Orchestrations Works By Scriabin And Sibelius』
V.A.『Columbia Groovy Songbirds』
Dorothy Ashby With Frank Wess『Hip Harp』
Paolo Fresu, Dino Rubino & Marco Bardoscia『Tempo Di Chet』
Nicholas Krgovich『Ouch』
The Beatles『The Beatles (Super Deluxe Edition)』
Willie Wright『Telling The Truth』
Gil Scott-Heron And Brian Jackson『Secrets』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?