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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2019 Summer Selection(7月8日〜8月25日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

いよいよ夏本番、限られた季節の素敵な思い出が、素晴らしい音楽とともにありますように、と願いをこめ、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲した。
Spring〜Early Summerと2クールにわたって特集をお届けしてきた、“平成フリー・ソウル”のコンピレイションCD『Heisei Free Soul』も遂に7/31にリリースされるが、夏の夕暮れを彩る金・土・日トワイライトタイムの選曲は“2019年上半期ベスト・セレクション”。豊作だった半年間を振り返り、今後「usen for Cafe Apres-midi」の定番になっていくだろうエヴァーグリーンな輝きを宿した名作を6時間にまとめてみたので、楽しんでいただけたらと思う。
新譜も引き続き大充実、このSummer Selectionで特に重要な役割を果たしてくれた推薦作(グルーヴィーからメロウまで曲単位でリストアップした2019サマー・クラシック間違いなしの逸品も含む)のジャケットを28枚掲載しておくので、ぜひその中身の音楽の素晴らしさに触れてもらえたら嬉しい。

V.A.『Heisei Free Soul』
Bonobo「Linked」
Irondale & BrandonLee Cierley feat. Jonny Tobin「High Five」
Free Nationals feat. Mac Miller & Kali Uchis「Time」
Erykah Badu & James Poyser「Tempted」
Common feat. Daniel Caesar「HER Love」
Mateo Kingman「Tejidos」
Kofi Stone feat. Ady Suleiman「Talk About Us」
Joe Hertz feat. Barney Artist, Sam Wills & Blue Lab Beats「Rain In Cuba」
Hope Tala「D.T.M.」
Raveena『Lucid』
Jordan Rakei『Origin』
Manatee Commune『PDA』
Brijean『Walkie Talkie』
Daniel Caesar『CASE STUDY 01』
Philip Bailey『Love Will Find A Way』
GoldLink『Diaspora』
Resavoir『Resavoir』
Brandee Younger『Soul Awakening』
Emma Frank『Come Back』
Maga Bog『Dolphine』
Kate Bollinger『I Don't Wanna Lose』
Erin Durant『Islands』
Bill Callahan『Shepherd In A Sheepskin Vest』
Tarun Balani『Dharma』
Alexandre Andres & Andre Mehmari & Bernardo Maranhao『Ra』
Carlos Aguirre『La musica del agua』
Gaston Poirier『Nudos』


Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
Twilight-time 月曜日16:00~18:00
Twilight-time 火曜日16:00~18:00
Twilight-time 水曜日16:00~18:00
Twilight-time 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

ここ何年かはアルゼンチンからのインディー・ロック~ポップ・バンドでよくお気に入りに出会う。2019 Summer SelectionにピックアップしたIndios(インディオス)もそのひとつ。共通しているのは、80s調の曲とチープなシンセやギターのサウンド。決して深みや味わいがあるとは言えないのだが、なぜか自分の琴線をくすぐってくる絶妙なセンスと抜け具合。スペイン語の響きもどこか切ない。真夏の暑く気だるい日中や夕暮れに聴きたい。

Indios『Besos En La Espalda』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

1998年のリリース当時は4ビート・ジャズ「Tigershark」を目当てに購入した気がするWarp Records からのEPだが、現在の気分には「Midsummernight」が断然しっくりくる。メイル・ヴォーカル(特にクレジットがないのでこれもジミ・テナー本人か?)にホーンとブリージンなオルガンが絡む、真夏のアフター・アワーズにぴったりの哀愁ワルツだ。約20年もの間、自宅の棚で眠らせていたことを本当に申し訳なく思う。これからは夏が訪れるたびに、毎夜こうして針を落とし愛でることになるだろう。

Jimi Tenor『Venera EP』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

LAを中心に活動するプロデューサー、D MillsことDanny Millsのセカンド・アルバム。アルバム通して良質なR&Bを聴かせてくれますが、白眉はマーヴィン・ゲイのオーラを纏ったTJ Wilkinsの歌声が素晴らしい「Good To You」。極上のヴィンテージ・メロウ・ソウルに仕上がっています。

D Mills『Agape』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

ケルト・フォークの若き雄、ファーンヒルの2009年作。ウェールズ語で唄ってはいるが、ブルターニュやアイリッシュがそちこちに薫り立つ、静かなクロスオーヴァー・フォーク。ミュート・トランペットが切ない「Bredon Hill」は、イギリスのフォーク・ミュージックを専門とするインターネット・ラジオから聴こえてきて、身動きが取れなくなった。台北のホテルをチェック・アウトする、蒸し暑い朝の記憶。

Fernhill『Na Pradle』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

久しぶりにTRAMAレーベルを聴き直している。何度目の再評価だろうか。旧譜のアナログ盤ばかりを追いかけていた時期に「コンテンポラリーなブラジル音楽も聴け」とばかりに首根っこを五指の跡が消えないくらいに強く鷲掴みにされ、今なおその衝撃が鮮明なまま20年近くが経過した。
ジョアン・マルセロ・ボスコリ、ジャイール・オリヴェイラ、ウィルソン・シモニーニャ、マックス・ヂ・カストロら、二世アーティストたちが残した初期作品群はイマの耳で聴いてもアーバンそのもの。日本の夏にさえも魔法をかけてくれる。

Max De Castro『Balanço Das Horas』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

夏になると聴きたくなる音楽はたくさんありますが、マルコス・ヴァーリもそのひとり。
時代問わず良曲多い中、特に好きなのはレオン・ウェアと共作していた時代なんですが、今回の新譜はその頃を彷彿させる素晴らしい楽曲ばかりで、最高な気分になります。今年のホワイト・デニム・クラシック認定盤です(笑)。
私の住む釧路で、アルコールも提供する喫茶店「JOYOUS」を6/30にオープン致しました。オープン日は同じ「usen for Cafe Apres-midi」セレクターの富永珠梨さんにお手伝いいただき、無事開店することができました。
お近くにお立ち寄りの際はぜひお待ちしております。
https://joyous-fatmasa.com/

Marcos Valle『Sempre』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

イザベラ・エッフェンベルクによるアフリカの民族楽器、アレイ・ムビラの美しい音色でスタートする2019 Summer Selection。前半は暑い夏に聴くと涼しくなりそうなダウンテンポの曲を中心にセレクトしてみました。まずトム・ミッシュの姉、ローラ・ミッシュの新しいミニ・アルバムに収録された「Blue Dot」。スティール・パンのようなイントロが涼しい気分にさせます。そしてカナダ、モントリオールの天才クリエイター、ピーター・セイカーによるソロ・プロジェクト、ホームシェイクの4作目『Helium』から「Just Like My」。ヒップホップのビート感に甘く切ないヴォーカルがとてもクールです。次にダウンテンポを代表するUKのユニット、ゼロ・7の2001年作から「In The Waiting Line」。乾いたビートに女性ヴォーカルが優しい一曲。いよいよ夏本番ですが、涼しさを感じられるような選曲を心掛けました。ぜひ耳を傾けていただければ幸いです。

Laura Misch『Lonely City』
Homeshake『Helium』
Zero 7『Simple Things』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

集中豪雨という台風より恐ろしい梅雨のジメジメした季節はどこへいったのでしょうか? そして毎年記録更新していく夏の気温。
もはや、食と音楽でしか、季節を楽しめない。四季という味わいが、幻になりつつあるこの日本。
そう、音楽も一瞬にして現れ忘れられていく。音楽は溢れデータ時代になり、もはや考察する時間もなく次々と素晴らしい楽曲に出逢える。しかし、ジャケットも盤もなく、すぐ忘れてしまう。レコードで欲しいなと思っても、忘れた頃にレコードに。こういうところは、まだまだ遅いんですよね。
と、ぼやきつつ、この夏は、久々に買ったMursの奇跡的なCDですね。レコードはリリースなし。フォークとラップを突き詰めた楽曲は圧巻。今年の夏の1曲目を飾ります。
他、あらゆるジャンルの夏らしさを時代も幅広く融合させて違和感のない、心地よい選曲で金曜夜の夏をお過ごしください。
今年の秋は早く来てほしいものです。

Murs『A Strange Journey Into The Unimaginable』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

2019 Summer Selectionのベストワンは、パリ在住のブラジル人トランペッター、Solon Gonçalvesが1972年に制作した、知る人ぞ知る極上のメロウ・カリビアン『En Direct Des Antilles』をセレクトしました。ミニマルな編成で奏でられる、ソフト&ジャジーな夏にうってつけの一枚。甘くトロけるエレピの音色、心弾むラララのフレーズ、アンリ・サルヴァドールを思わせる、味わい深くも親しみやすいヴォーカル。温かみのあるローファイ・サウンドが、耳に心地よく響きます。ピースフルな空気に満ち溢れた、多くの人に愛されるであろうアルバムです。まるで旅先で出会った、路地裏のおじいちゃんミュージシャンのように、思わず笑顔がこぼれてしまう、陽気で愛らしい作品です。身も心もとろけてしまいそうな、暑い暑い真夏の昼下がりに、キリッと冷えたモヒートと一緒に味わえたら、もう言うことなしですね。みなさま、どうぞ素敵な夏をお過ごしください!

Solon Gonçalves Et Son Orchestre『En Direct Des Antilles』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

充実の新譜の中から夏に似合う曲をピックアップしました。
最近めまぐるしい進化をとげている南アフリカから、ロバート・グラスパー以降のジャジー・ソウルを展開するSeba Kaapstad。以前先行シングルを紹介しましたが、素晴らしい完成度のアルバムから「Don't」を選曲。
続いて以前デビュー・シングルを紹介したLaneousのアルバムから「My Song」を。ジャズ、ロック、ポップなどいろいろな音楽がミックスされたプログレッシヴな曲ですが、リスニング向けにしっかり完成された個性のある1曲。
続いて夏に心地よいブラジリアン・ポップスを展開するCarwyn Ellis & Rio 18のカシンによるプロデュースのアルバムからメロウ・ポップな「Duwies Y Dre」と琴線に触れるメロディアスなサンバ・チューン「Tywydd Hufen Iâ」を選曲。
続いてはManatee Communeによるニュー・アルバム『PDA』からアーバン・メロウでチルアウトな「Growing Pains (feat. Samuel Eisen-Meyers)」「Meet Again」「PDA」をピックアップ。
そして夏にぴったりなバレアリックなナンバーを2枚から、Mark Barrottの『Sketches From A Distant Ocean』から「Low Lying Fruit」とBlair Frenchの『Patio Pastels Mini LP』から「Patio Pastel」「Lounsbury Gardens」をセレクト。
全体を通して清涼感がありメロディアスで心地いい選曲にまとめているので、ぜひリラックスしてお聴きください。

Seba Kaapstad『Thima』
Laneous『Monstera Deliciosa』
Carwyn Ellis & Rio 18『Joia!』
Manatee Commune『PDA』
Mark Barrott『Sketches from a Distant Ocean』
Blair French『Patio Pastels Mini LP』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

2010年代のラスト・サマーとなる今年の夏選曲の最初に紹介するのは、最近の注目株として紹介したいトロント出身のSSW&セルフ・プロデューサーMorMorの最新作『Some Place Else』から「Days Like This」を。イントロのメロディーとバック・トラックに過ぎ去っていく夏へのサウダージを感じるでしょう。その曲につなげたYUNOの『Moodie』は、波音のゆらぎのように感じるメロウなビート・メイキングが印象的な最近のお気に入りのチルホップ・トラック。Vansireの「That I Miss You」は、どこか懐かしさを感じるベース・ラインに裏打ちのスカ・ビートの和音で展開される4つ打ちリズムが心地よくて、ひとまわりして現代の街にもフィットするおすすめトラック。ラストは、ニュージーランドのプロデューサーBAYNKが実力派ディーヴァSinead Harnettをフィーチャーした最新作「Settle」を。繊細なエレクトロニカのスパイスが効いたインテリジェントなダンス・ビートにSSW的メッセージ要素が融合したサウンド・センスに、21世紀の街音の新潮流を感じます。

MorMor『Some Place Else』
YUNO『Moodie』
Vansire「That I Miss You」
BAYNK『Someone's II』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

“Subtropical Love, Breezin'”陽射しが眩しい朝のグラス一杯のミネラル・ウォーター。昨夜の高揚感を肌に感じながらいつしかまた微睡の中へ。台湾は台北の6人組のシティ・ポップ・ユニットSunset Rollercoaster(落日飛車)は、そんな夏の甘酸っぱい一日の記憶を呼び覚ましてくれるよう。

Sunset Rollercoaster『Vanilla Villa - EP』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

今回のディナータイムは何と言っても5月にデビュー・アルバム『Happy To Be Here』をリリースした、NYブルックリンを拠点に活動する、ボルティモア、ボストン、ニューヨーク、ロンドン、ブラジル出身のメンバーから成る男女5人の多国籍ドリーム・ポップ・バンド、バリーの作品がとても素晴らしく感動したので、彼らの作品を軸とした選曲で構成してみました。オープニング・ナンバーとして、まずは全作曲を手がけるバリー・リンジィのソングライターとしての才能が弾ける心も躍るポップなナンバー「Darjeeling」をセレクトし、続いてジャパニーズ・ハウスの2016年リリースの「Face Like Thunder」をピックアップしてセレクションの骨格を作ります。続いてアメリカはウィスコンシン州マディソンを拠点に活動する4人組バンド、スロウ・パルプのこちらも5月にリリースされたばかりの新作EP『Big Day』より、エコー&ザ・バニーメンの「Lips Like Sugar」を連想させるイントロが心を揺さぶる「New Media」を選び、女性ヴォーカルの涼しげなナンバーを続けます。そしてボルトフィッシュ・レコードの親玉であるマレイ・フィッシャーのプロジェクト、ミントの作品では珍しいヴォーカル入りのナンバー「The Boy With The Star」や、前回の選曲で初披露してとても気に入っているミネソタ州ロチェスター出身のJosh AugustinとSam Winemillerによるドリーム・ポップ・バンドVansireが、カナダはウィニペグ出身のFelicia Sekundiakによるプロジェクトであるフロア・クライをゲストに迎えて制作された「Nice To See You」をセレクトして柔らかな流れを作り、ワシントンを拠点に活動するシンセ・ポップ・アーティスト、Banchoが2016年にリリースしたソフトなリズム・トラックに絡むハスキーなウィスパリング・ヴォイスが柔らかなグルーヴを包む「Don't Be Mad」や、またしてもバリーによるメロウでシティ・ポップな感覚も併せ持つ「Geology」をセレクト。そしてムカイ・ススムという日本人メンバーが一員にいる、ロンドンを拠点に活動する5人組バンド、ヴァニッシング・ツインの、メロウな楽曲の中にほんのりとサイケデリックなテイストが漂う「Magician's Success」を選曲のアクセントに配置し、こちらもとびきりメロウなナンバーの、アメリカはウィスコンシン州ケノーシャ出身のアーティスト、L・マーティンの4月にリリースされたニュー・シングル「Bluff」や、ニューヨークのアーティスト、クラムによる虚ろなヴォーカルが白日夢へと誘う「Ghostride」、そして音楽の他にもアートなどいろいろな分野で作品を発表しているSomeoneと名乗り素性を明らかにしない謎めいた女性アーティストの「From Here」を挟み、今回3度目の登場となるバリーの「Dark Tolopical」を投入します。いやはや本当に彼らの作品はどれも素晴らしいですね。さらにカナダはモントリオールを拠点にドリーム・ポップを奏でるJosie Boivinのプロジェクト、Munyaの3月にリリースされた3枚目のEPとなる『Blue Pine』より、浮遊感のあるドリーミーなEPのタイトル曲「Blue Pine」をセレクトし、ロサンゼルスのアーティスト、キャサリン・ローズ・スミスのプロジェクト、ハニークラフトの彼女が“ドリーム・ディスコ”とカテゴライズしている「Inside」でディナータイム前半は終わります。
ディナータイム後半は前半とはちょっと趣を変えてしっとりとした落ち着いた雰囲気を作るように心がけ、キャット・パワーの昨年6年ぶりにリリースされたニュー・アルバム『Wanderer』より、どこか神々しい響きを放つ「Horizon」をセレクトしてスタート。それに続くのがもはや夏の定番曲となったベス・オートンによるジョナサン・リッチマンのカヴァー・ソングである「That Summer Feeling」。そして前述したキャット・パワーのニュー・アルバムにゲスト参加していたラナ・デル・レイのレア曲「Yes To Heaven」を挟み、ブライアン・イーノなどが参加しているレジャー・ソサエティの新譜『Arrivals & Departures』より爽やかな風のような「Overheard」をピックアップ。次に同じ楽曲をアレンジ違いで赤ジャケと青ジャケという形で2種類リリースしているシルヴァー・シーズの2010年作『Château Revenge!』から、アルバムのラストを飾る優しいワルツ・ナンバーの「Kid」を、今回はよりしっとりとした響きを持つ青ヴァージョンで。ウィーピーズのデブ・タランのソロ作品『Lucky Girl』から、少し物悲しい雰囲気の「Butterfly」、ファースト・エイド・キットの2012年作『The Lion's Roar』からは、こちらも優しさの中に仄かに見える物悲しさが存在する「Blue」をセレクト。そのファースト・エイド・キットですが、昨年リリースされた「Fireworks」という作品を2018年のベスト・セレクションに取り上げて以来、改めて彼女たちの素晴らしさを再認識している次第です。そして先日、登録しておいたBandcampのメールで7月にニュー・アルバムがリリースされると連絡がありすぐに予約をした、メッセージ・トゥ・ベアーズの2012年作『Folding Leaves』より「Mountains」という作品をセレクト。続いて前回のコメントで中村くんが絶賛していたビビオの4月にリリースされた最新作『Ribbons』より「Curls」を遅ればせながらピックアップ。それに繋げたのは2017年から活動し、幾度となく「usen for Cafe Apres-midi」で取り上げてきたシアトル出身のブライアン・フェネルのプロジェクト、SYMLの5月にリリースされた待望のデビュー・アルバム『SYML』より、清涼感のあるアコースティック・ギターの響きが美しい「Girl」。前回のディナータイムのイントロで使用したスリーピング・アット・ラストの「Pluto」を今回はヴォーカル入りのヴァージョンでセレクトし、ディナータイムの選曲終盤にはウィーピーズの名曲「World Spins Madly On」やテリー・エムの「Summer」、そしてスフィアン・スティーヴンス「Death With Dignity」といった柔らかなアコースティックの響きを放つ楽曲を紡ぎ穏やかな波のような流れを作り、最後にもう一度、SYMLのデビュー・アルバムから「Everything All At Once」という、凛としたサウンドが心の柔らかい部分に優しく触れるナンバーを選んで、ディナータイム選曲のアウトロにミントの「Lie Back, Hands Down」を流してセレクションは終焉を迎えます。

変わって今回のミッドナイト・スペシャルは「Back to 90s」と題し、90年代に自分の周りで輝いていた素敵な音楽を中心に、それ以降の90sテイストの作品も交えつつ、収集しているCDシングル・コレクションを使用するという縛りを設けて選曲をお届けします。
まずはジャイルス・ピーターソンとノーマン・ジェイによって設立された音楽レーベル、トーキング・ラウドの主要アーティストであったガリアーノの、ヨーデル唱法が印象的なレオン・トーマスが参加したファラオ・サンダースのスピリチュアル・ジャズの傑作である「Prince Of Peace」をカヴァーした作品のインストゥルメンタル・ナンバーをイントロに、アメコミから飛び出してきたようなルックスとポップでキュートな楽曲で90年にデビューしたベティ・ブーが、そのアメコミ部を脱ぎ去りちょっとだけ路線変更をした92年リリースの大好きな作品「Let Me Take You There」をセレクトして、ハッピーにミッドナイト・スペシャルの幕を開けます。続いて87年にダイアナ・ブラウン&ザ・ブラザーズ名義でリリースしていたJB'sのベーシスト、スウィート・チャールズのソロ作品でレア・グルーヴ〜フリー・ソウル・クラシックの「Yes It's You」を、90年にダイアナ・ブラウン&バリー・K・シャープ名義のシングル「The Masterplan」に再収録してリリースされたCDシングルからセレクトし、04年に届けられたバーバラ・アクリン「Am I The Same Girl」ヤング・ホルト・アンリミテッド「Soulful Strut」ネタのジョス・ストーン「Don't Cha Wanna Ride?」と、その「Am I The Same Girl」を華やかにカヴァーしたスウィング・アウト・シスターの作品を繋げてみました。さらにソウル・ミュージックのクラシック・ソングのひとつであり、フリー・ソウルのおかげで90年代の日本でもさまざまな場所で光り輝いていたジョニー・ブリストルの大名曲「Hang On In There Baby」を、こちらもスウィング・アウト・シスター同様に多幸感溢れるカヴァー・ソングに仕上げたキュリオシティ(a.k.a. キュリオシティ・キルド・ザ・キャット)や、ポール・ウェラーが当時のアシッド・ジャズ・ムーヴメントに反応したポール・ウェラー・ムーヴメント名義の91年の名曲「Here's A New Thing」を、ブロウ・モンキーズのフロントマンであるドクター・ロバートの92年と91年にリリースされた「A Simpler Place And Time (Ambient Mix)」と「I've Learnt To Live With Love」で挟んでみました。そしてハウスマーティンズ解散後にベースのノーマン・クックが発表した、間奏のギター・ソロがアズテック・カメラのファースト・アルバム期を彷彿させることで当時自分の周りで話題となったノーマン・クック・フィーチャリング・レスター名義の「For Spacious Lies」をピックアップ。このレスターという人物はネオアコ・ファンにはおなじみのマリン・ガールズ周辺のグループ、グラブ・グラブ・ザ・ハドックやノース・オブ・コーンウォリスのメンバーだった黒人青年のレスター・ノエルというのは、ネオアコ・トリヴィアのひとつです。そしてフレイザー・コーラスがイアン・ブロウディとタッグを組んで90年にダンスにシフト・チェンジしてリリースした「Cloud 8」や、ドリーム・アカデミーの黒人キーボーディスト、ジルベルト・ガブリエルがケヴィン・エアーズの娘、レイチェル・エアーズらと組んで92年にリリースした、まさにタイトル通りのドリーミーなカラー・オブ・ラヴの「England's Dreaming」で、セレクションにネオアコ・テイストも注入し、現在は個性的な芸名を持つ日本人女性と結婚しているマイク・スコット率いるウォーターボーイズの代表曲「The Whole Of The Moon」をインディー・ダンスにアレンジしたリトル・シーザーの作品へと繋げ、ミッドナイト・スペシャルの前半最後にグラウンド・ビートの名曲で、リリースされた当時はフリッパーズ・ギターの二人もお気に入りで彼らのラジオ番組でプレイしていたイノセンスの「A Matter Of Fact (7' Mix)」と、ヨー・ヨー・ハニーの91年のデビュー・シングル「Get It On (Radio Mix)」をセレクトして、ミッドナイト・スペシャル後半へ突入します。
ミッドナイト・スペシャル後半は、まずマッシヴ・アタックの92年にリリースされたストリングスの響きも荘厳でファルセット・ヴォイスを特徴とするレゲエ歌手のホレス・アンディがヴォーカルを務めた「Hymn Of The Big Wheel (Nellee Hooper Mix)」、次にスティーヴ・パークスの「Movin’ In The Right Direction」がサンプリング・ソースとして使用されているノマド・ソウルの「Candy Mountain」を、こちらもマッシヴ・アタック同様ネリー・フーパーのミックスでセレクト。この作品に関してCDシングル・トリヴィアをひとつ言いますと、デジパック仕様のUK盤とプラケース仕様のドイツ盤の2種類が存在していますので、コレクターの方は要チェックです。続いて映画『ブルー・ヴェルヴェット』に歌手として出演もしていたジュリー・クルーズが、その監督を務めたデヴィッド・リンチのプロデュースで92年にリリースした「Rockin' Back Inside My Heart」や、エリック・サティの「ジムノペディ」をモティーフにしたムーヴメント・98のキャロル・トンプソンをフィーチャーしたラヴァーズ・ロックの名曲「Joy And Heartbreak」をピックアップ。07年リリースと今回のセレクションの中では比較的新しい作品ですが、ミッドナイト・スペシャルのテーマと相性が良い、レニー・クラヴィッツの91年発表の名曲スウィート・ソウル「It Ain't Over 'Til It's Over」をサンプリング使用したムティア・ブエナの「Real Girl」もセレクト。そしてビーツ・インターナショナルの創設メンバーの一人であるリンディ・レイトンの90年作「Echo My Heart」に続き、ここから前半のようにネオアコ・テイストをアクセントで取り入れます。まずはエリザベス・フレイザーをゲストに迎えたエコー&ザ・バニーメンのフロントマン、イアン・マッカロクが90年にリリースした柔らかなグルーヴを放つ「Candleland (The Second Coming)」を選曲し、当時ネオアコ・ファンからサバービア周辺まで、音楽マニアを驚かせたファズボックスによるジェーン・フォンダ主演でロジェ・ヴァディムが監督したお色気SF映画の主題歌「Barbarella」の完璧カヴァー・ソングにバトンを渡します。ここでまたトリヴィアをひとつ言いますと、この楽曲のCD収録は「International Rescue」のCDシングルだけで、当時この情報を自分に教えてくれたのはセレクター仲間の吉本くんでした。続いてフレイザー・コーラスの初期の名作「Dream Kitchen」をセレクトしたのに続き、キャンディ・フリップが90年にリリースしたビートルズの「Strawberry Fields Forever」と、こちらも同じ90年にリリースされたワールド・オブ・ツイストのローリング・ストーンズ「She's A Rainbow」という、ロック・クラシックのカヴァーを続けます。そしてこの特集の最後にカラフルなボトルが並ぶジャケットにも清涼感を感じるシドニー・ヤングブラッド「Anything」をセレクトし、アウトロに95年作のトニー・リッチ・プロジェクトのファースト・シングル「Nobody Knows」のインストゥルメンタル・ヴァージョンを流してミッドナイト・スペシャルは閉幕するのでした。

Barrie『Happy To Be Here』
Slow『Pulp Big Day』
Bancho『Bancho』
Mint『Fable And Fantasy』
Vanishing Twin『The Age Of Immunology』
L. Martin『Bluff』
Crumb『Jinx』
Someone『Orbit』
Munya『Blue Pine』
Honeycraft『Inside』
Cat Power『Wanderer』
The Leisure Society『Arrivals & Departures』
The Silver Seas『Château Revenge!』
First Aid Kit『The Lion's Roar』
Message To Bears『Folding Leaves』
Bibio『Ribbons』
SYML‎『SYML』
Sleeping At Last『Space』
The Weepies『Say I Am You』
Terry Emm『White Butterflies』
Galliano「Prince Of Peace」
Betty Boo「Let Me Take You There」
Diana Brown & Barrie K. Sharpe「The Masterplan」
Joss Stone「Don't Cha Wanna Ride?」
Curiosity「Hang On In There Baby」
Dr. Robert「I've Learnt To Live With Love」
Norman Cook feat. Lester「For Spacious Lies」
The Colour Of Love「England's Dreaming」
Innocence「A Matter Of Fact」
Massive Attack「Hymn Of The Big Wheel」
Nomad Soul「Candy Mountain」
Mutya Buena「Real Girl」
Fuzzbox「International Rescue」
Frazier Chorus「Dream Kitchen」
Candy Flip「Strawberry Fields Forever」
Sydney Youngblood「Anything」

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00


山本勇樹 Yuuki Yamamoto

大好きな夏の選曲がやってきました。いつもよりグッとテンションを上げて、涼しげなサロン・ジャズやブラジル音楽~アルゼンチン音楽に混ぜて、エレクトリックなダンス・ミュージックからグルーヴィーなソウル・ミュージック、ヒップホップまで、多彩に揃えてみました。陽射しの強いランチタイムに、ビールとか炭酸水をグイッと飲みながら、BGMで流れていたらいいな、という気持ちをこめて。中でもおすすめは、ワシントンを拠点に活動するマナティー・コミューン。ドリーミー&チルアウトな好曲です。15時以降は、少しメロウな雰囲気でブルー・アイド・ソウルやシンガー・ソングライターを織り交ぜて、橋本さんのトワイライトタイムへバトンタッチ。どうぞお楽しみください。

Manatee Commune『PDA』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

例年のようにSummer Selectionは、室内ですごす静かな夏の午後、といったイメージを念頭に置いて、気持ちの落ちつくゆるやかなテンポと涼しげなトーンで心地よい楽曲がまどろむように連なるよう意識しました。
それでは、いつものようにポイントとなった楽曲が収録された8作品(最近のリリース作を中心に)をピックアップして、ジャケットの並び順に紹介していきたいと思います。
眩い光に包みこまれるようなメロウ・フローティンなサウンドに惹かれるトロントの黒人男性SSW最新EP、すぐれた牧歌的フォーキー・エレクトロニカ・ポップを奏でるオランダの男女デュオの待望のデビュー・アルバム、ノルウェイの弱冠20歳のアーティストによる夏の風景に甘く溶けだしてしまいそうなローファイ・ヒップホップ・チューン、良質なシングルを立て続けにリリースするカナダの人気ユニットのどこかヨーロッパ的な翳りを帯びたデイドリーミンな好シングル、選曲に重宝したフォーキーな前作からよりソフト・サイケデリア感が増したNYの男女デュオ新作、多彩なジャンルから受けたアイディアを柔軟な着想でカラフルに仕立てあげたエクレクティック・ポップを奏でるデュオのデビュー作、トム・ミッシュの作品にも参加していた女性シンガー擁する男女ユニットの夢見心地なメランコリック・ワルツ・チューンが抜群によかったアコースティック・ソウル風EP、以前このコーナーでとりあげたニュージーランドのバンドTiny Ruinsのドラマーによる過ぎ去ってゆく夏に思いを馳せたくなるミディアム・メロウな80s風シンセ・ポップ・ナンバー──といったところでしょうか。
それでは、みなさまの思い出の中に今年も素敵な夏の風景が描かれますように。

MorMor『Some Place Else』
Wolken『Wolken』
Jakob Ogawa「All I Wanna Do」
Men I Trust「Numb」
Olden Yolk『Living Theatre』
Honey Oat『Honey Oat』
Equal Echo『Dynamite』
A.C. Freazy「The Other Side」

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

今回、お昼のクラシックはいつもより時代を遡って、ハイドンの『水上の音楽』にしました。組曲の中で最も有名と言われている「アラ・ホーンパイプ」という曲です。ファンファーレに導かれ、繰り広げられる優雅な舟遊びの光景が眼に浮かぶようですね。この選曲をしてしばらく後、たまたま村上春樹の『海辺のカフカ』を読み返す機会があったのですが、星野青年(ちなみに中日ファンという設定・笑)が喫茶店でベートーヴェンの「大公トリオ」を聴いて感銘を受けるという場面で、ヘンデルの音楽も登場していることに気づきました(なお、喫茶店の主人はヘンデルのファンという設定)。こういうのもシンクロニシティーと言うのでしょうか。
続いてはオススメの新譜を何枚か挙げておきます。ハワイのAloha Got Soulレーベルから出ているマリアンヌ・イトウの『Live At The Atherton』。ほどよくレイドバックした琥珀色のアコースティック・メロウ・グルーヴが黄昏の時間帯にぴったり。ライヴ盤ということで、フェイス・ピロウのアルバムなんかを思い浮かべてしまいました。もちろん、リトル・ビーヴァーの『Party Down』なんかとも相性抜群です。日本盤CDも出たセシリーの『Songs Of Love And Freedom』。ミニー・リパートンを思わせる清涼ヴォイスがこの季節にぴったりです。アルバムの中で一番ミニー度数の高い「Pisces」をセレクト。Seba Kaapstad、ジョーダン・ラカイのメロウなネオ・ソウル・アルバム2枚も傑作でした。今回はサマー・ソウル・セクションを用意したのですが、そこでの重要曲のひとつとしてプレゼンしました。マーク・バロットの久しぶりのEPも良い出来でしたね。前回のEarly Summerでは敢えて使わず、満を持してのエントリーです。エメラルド・グリーンの海と島々が写るジャケットもリゾート気分満点で、僕は部屋の壁に飾って夏気分を先取りしています。
最後に、今回のセレクションで特筆すべき曲に触れておきたいと思います。“ヨット・ロック”のブームで注目を集めている(?)ロギンス&メッシーナの片割れ、ジミー・メッシーナのソロ作から「Seeing You (For The First Time)」。いわゆるAOR美学に貫かれたメロウ・フローターで、このジャンルのファンからの支持が厚い名曲。アルバム『Oasis』も、レゲエ風味の曲や軽快なブリージン・ナンバーなどが収められ完成度の高い一枚となっているので、まだ聴いたことがないという方には強くレコメンドしておきます。一昨年CDリイシューされて以来、毎年Summer Selectionにセレクトしているスティーヴ・ハイエットの『Down On The Road By The Beach』も、佐藤博の『Awakening』などと並んで定番化することを陰ながら期待しています(森は生きているのメンバーだった岡田拓郎もこのアルバムから「By The Pool」をカヴァーしています)。まだ1,000円で買えるようなので、気になる方はぜひ! そしてパット・メセニー・グループの「Minuano (Six Eight)」。言わずと知れた名曲ですね。僕は毎年、夏の朝になるとこの曲が聴きたくなるのですが、今回はやはりパット・メセニーが参加している、これまたこの季節の定番アルバムであるマーク・ジョンソンの『The Sound Of Summer Running』からの曲と並べ、夏休みの空気感を演出してみました。それでは皆さん、令和初めての夏を迎えますが、このセレクションをBGMに素敵な思い出をたくさん作ってくださいね。

Jordi Savall & Le Concert des Nations『Haendel: Water Music / Music For The Royal Fireworks』
Cecily『Songs Of Love And Freedom』
Maryanne Ito『Live At Atherton』
Mark Barrott『Sketches From A Distant Ocean』
Seba Kaapstad『Thina』
Jordan Rakei『Origin』
Jimmy Messina『Oasis』
Pat Metheny Group『Still Life (Talking)』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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