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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2019 Early Summer Selection(5月27日〜7月7日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/


橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

夏の訪れを心待ちにしながら、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲した。
金・土・日トワイライトタイムの特集は、前回に引き続き、元号が変わったの機に平成レトロスペクティヴとして企画された、7/10リリースの僕のコンピレイション『Heisei Free Soul』拡大版という感じで、“平成フリー・ソウル”と題して。時代を彩った名曲の数々を、様々な思い出を胸に楽しんでいただけたらと思う。
新譜も相変わらず大充実、本当にここに書き切れないくらい豊作で、このEarly Summer Selectionで特に重要な役割を果たしてくれた作品のジャケットを32枚、(ほぼ)よく聴いた順に掲載しておく。その中身の音楽の素晴らしさにも、ぜひ触れてみてもらえたら嬉しい。

V.A.『Heisei Free Soul』
Loyle Carner『Not Waving, But Drowning』
Intellexual『Intellexual』
Kota The Friend『FOTO』
Jamila Woods『LEGACY! LEGACY!』
Tyler, The Creator『IGOR』
Seba Kaapstad『Thina』
Rhye『Spirit』
Teotima『Weightless』
Jordan Rakei『Origin』
Flwr Chyld feat. James Tillman「Luv 2 U」
Raveena「Mama」
Jitwam『Honeycomb』
Reginald Omas Mamode IV『Where We Going?』
O Terno『<atras/alem>』
WOLKEN『WOLKEN』
Anderson .Paak『Ventura』
Quantic『Atlantic Oscillations』
Erika de Casier『Essentials』
Flying Lotus『Flamagra』
Theo Croker『Star People Nations』
Tank And The Bangas『Green Balloon』
Schemes『Schemes』
Emma Frank『Come Back』
Daniel Tashian『I Love Rainy Day』
14KT『For My Sanity』
Ricardo Valverde『Xire de Vibrafone』
Aldous Harding 『Designer』
Vampire Weekend『Father Of The Bride』
Tiago Frugoli Ensemble『Casa』
Ari Lennox『Shea Butter Baby』
Matt Martians『The Last Party』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
Twilight-time 月曜日16:00~18:00
Twilight-time 火曜日16:00~18:00
Twilight-time 水曜日16:00~18:00
Twilight-time 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

令和元年の夏の始まりに紹介したいのは、4ADからの新世代のシンガー・ソングライター、オルダス・ハーディングの3枚目となるアルバム『Designer』。2017年のアルバム『Party』ですでに話題をさらっていたニュージーランド出身の注目の女性SSWです。なんでもその頃、Rough Trade Shopにて、ビョーク、サンダーキャット、サンファ、ケレラの時代を象徴する名だたる傑作を抑え年間ベストを獲得したとか。そして今作も好きな曲が並ぶ、前作に負けず劣らず、いやそれ以上に好みの素晴らしいアルバムで、今回のEarly Summer Selectionにも絶対合う、と思いましたので選んだ次第です。
初夏の雨のシーズンは、オルダス・ハーディングのようなメランコリックな曲がイイ感じで馴染みます。

Aldous Harding 『Designer』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

やはり天才だと思う。先行シングル「Curls」がふいにラジオから聴こえてきたときに、イントロの3秒で「ビビオの新曲だ」と感じた。本セレクションに選んだのはアルバム最終曲「Under A Lone Ash」だが、おそらく今後ゆっくりと時間をかけて、全ての曲を緩やかな流れの上にのせることになるだろう。

Bibio『Ribbons』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

バルセロナを中心に活動するOso Leoneのサード・アルバムがR&Sのサブ・レーベルApolloから到着。全編マヨルカ島で録音された心地よい浮遊感に包まれたバレアリック・フィールな一枚。新しいEPが素晴らしかったRhye周辺が好きな方にもオススメです。

Oso Leone『Gallery Love』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

ノルウェイのピアニスト、エスペン・エリクセンの3枚目。歌心のあるピアニストは世界中にひしめきあい、それぞれのフォロワーが目を(耳を?)細めているが、エスペン・エリクセンの描くメロディーは“美メロ”というのとは少し異にしている。ECM的な叙情性と繊細なタッチ、と書くと誰しも異論はないと思うが、彼らはより深窓に北欧の空気を表現し伝えようとしているのだろう。この姿勢は伝統工芸に携わる職人に極めて近しい。「ストイックに個性を殺すが、どうしても滲みでる個性」が彼らの持ち味であり、至宝の北欧ジャズを味わう特権を我々に担保している。

Espen Eriksen Trio『Never Ending January』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

曲名の頭文字を並べて“EARLY SUMMER”と綴るのがこの時期の恒例行事。
ライブラリーの引き出しを限定することで予定調和や手癖を遠ざける目的もある。思いがけない曲が思いがけないタイミングで登場して、別人の選曲とまではいかないが、新味は確実にある。
芸風を大きく変えずともさりげなく新しさを醸す。ベイビーフェイスの素晴らしさがあらためてわかった気がする。

Babyface『Grown & Sexy』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

フリー・ソウルでおなじみなジョン・ルシアンの1991年リリースのアーバン・コンテポラリーなアルバム『Listen Love』。タイトル曲の「Listen Love」の再演も素晴らしいですが、今回はジェフ・ローバー・プロデュースの「Nothin' Lasts Forever」が最高なアーバン・メロウ・トラックです。ホワイト・デニム・クラシック認定いたします(笑)。

Jon Lucien『Listen Love』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

ロイル・カーナーの新しいアルバムに収録された「Dear Ben」からスタートする2019年Early Summer Selection。前半はイギリスのシンガー、アディー・スレイマンの新作から爽やかなギターの音色が印象的な「Best Friends」、躍動感あふれるリズムが心地よい「Been Thru」等、アコースティックなモダン・ソウルを中心にセレクト。そして後半は可憐なヴォーカルが魅力的なアルゼンチンのカタリーナ・テレルマンをはじめ、フォルクローレ系のシンガー・ソングライターの作品にフォーカスしてセレクトしました。草や木が新緑に覆われ、爽やかな風が吹く5月末から7月にかけては、一年の中でもひときわ気持ちよく過ごせる季節。心地よい風とともに音からも初夏の香りが感じられるような選曲を心掛けました。ぜひ耳を傾けていただければ幸いです。

Loyle Carner『Not Waving, But Drowning』
Ady Suleiman『Thoughts & Moments Vol.1 Mixtape』
Catalina Telerman『Madreagua』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

今年も無事に終了した、熱いFree Soul MHz & Free Soul STEREOの2デイズ、素晴らしい夜でした。
橋本さん、お疲れ様でした。そして毎年ありがとうございます。
忘れてはならないFree Soul感覚。福岡だけでなく、この感覚をいつまでも伝えていきたい所存であります。
そんな熱いフリー・ソウル・パーティーが終わると本格的に灼熱な夏が目の前。その前にジメジメな梅雨もありますが。

数年前にリリースされたPrefab Sprout の『Steve McQeen』のレガシー・エディション、2枚目のCDにアコースティック・ヴァージョンが収録されていて、本当に嬉しい音源でありました。そんな『Steve McQueen Acoustic』が今年のレコード・ストア・デイにてLP化。
そこまでは良かった。
しかし圧倒的に数が少なく、入手困難。オークションで倍以上の値段で売られている。「それならCDでいいわ」とへこませられる。
レコードに目を向けてくれそうなチャンスにこんな残念な状況。
改善策を考えなければ。
とりあえず、追加プレスを熱望します。
こんな素晴らしい音楽をレコードで聴ける喜びをスルーするわけにはいきません。
と、今年の夏の暑さより熱くなってしまった私。
クールダウンするようなアコースティックなソウルやジャズそしてネオアコで初夏金曜の夜をお楽しみください。

Prefab Sprout『Steve McQueen Acoustic』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

2019 Early Summer Selection、今回も新旧問わず、ジャズやブラジル、ソウルやR&B、ダブなどを織り交ぜながら、メロウ・フィーリンなアコースティック・サウンドを中心に、いつもより少しだけヴィヴィッドな色合いの選曲に仕上げました。このプレイリストにサブタイトルを付けるなら「夏への胸騒ぎ」という感じでしょうか。あくまで「胸騒ぎ」の段階なので、ハッとする瞬間はあっても、決して弾けすぎない(はしゃぎすぎない)爽やかな高揚感を大切に選曲をしました。今回、個人的に気に入っている流れが、前半戦では Pip Millett「Try A Little Tenderness」~Garth.「Can I Follow You There?」~Mariana Nolasco「Big Yellow Taxi」、後半戦ではSilva & Illy「Nos Dois Aqui」~Quentin Moore「Natural Sista」〜Anderson .Paak feat. Smokey Robinson「Make It Better」~Vanilla「Swept Away」という感じです。その中でもピックアップしたいのが、NYを拠点に活動する、現代版プリンスと評される実力派ヴォーカリストGarth.の「Can I Follow You There?」。2018年にリリースされたソロ・デビュー作『Human Nature』の中からの1曲です。涼やかなアコースティック・ギターの爪弾きと、ハートフルなコーラスに導かれる、Garth.の甘くほろ苦い柔らかなヴォーカル。Al Green「Let’s Stay Together」を彷彿とさせる、胸しめつけるソフト&メロウな秀作。夏本番を前に、アペリティフ気分で味わえる、リラックスしたスウィート・ソウル・ミュージックをお楽しみください。

Marcelo Jeneci「Ai Sim」
PJ Morton『Emotions』
Bjorn Gordsby『On The line』
Jeremy Passion『For More Than A Feeling』
Fabulous/Arabia「Henry」
Amber Navran Band『Amber Navran Band』
Pip Millett「Try A Little Tenderness」
Garth.『Human Nature』
Mariana Nolasco「Big Yellow Taxi」
Silva & Illy「Nos Dois Aqui」
Quentin Moore『You Forgot Your Heart』
Anderson .Paak『Ventura』
Vanilla『Origin』
J. Lamotta Suzume『Suzume』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

メルボルンのアンビエント/ハウスのレーベル、Analogue Attic Recordingsから、個々で活動するThomas GrayとLiam Ebbsがタッグを組んだファーストEP。夏の旅の多くの思い出からインスパイアされたという極上のアンビエント・ブレイクビーツ・トラックの「Heatherbrae」をセレクトしました。旅の途中でフィールド・レコーディングされた音とエレクトロニクスをミックスした疾走感あるこの曲は、静けさと躍動感にあふれて、今にも溶けだしてしまいそうな大好きなサウンドです。

Thomas Gray & Liam Ebbs『3 Days, 2 Nights - EP』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

もうすぐ夏ですね。晴れた日に通す半袖のシャツが心地よくなってきたこの季節にあわせて、来たる夏への期待感を掻き立ててくれるドリーミーな現代シティ・ポップを集めました。そんな中から、まずはこの季節までキープしていた、とっておきの1曲、Parekh & Singhの「Summer Skin」を紹介します。「usen for Cafe Apres-midi」リスナーなら真ん中ストライクな歌声と、ドリーミーでロマンティックなワルツ・サウンドは、すでに今年のベストに選出決定です。ジャケットの後ろ姿に惹かれたAurora Shields「Swimming Away」は、リヴァーブの効いたどこか懐かしいアレンジが抜群で、夏空の下で遊んでいた若き日を想像させてくれます。ここ最近新譜は必ずチェックしているStill Woozyの最新作「Lava」は、期待通りのクオリティーで今回もはずせない必聴トラックです。最後に紹介するCarmody「Summer Rain」は、スピリチュアルで独特なヴォイスの質感と現代的なベース・ラインが絡み合う夢心地あふれる1曲です。

Parekh & Singh「Summer Skin」
Aurora Shields「Swimming Away」
Still Woozy「Lava」
Carmody「Summer Rain」

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

英国ブライトンのレーベル、Tru Thoughtsからこの夏にデビュー・アルバムがリリースされるロンドンのR&BシンガーのBryony Jarman-Pintoによる先行シングル「As I've Heard」。その気怠くメロウな歌声に夕刻から夜にかけて街のイルミネイションが静かに瞬き始めるような時の移ろいを感じる。夜が明けるとそこにはもう夏の太陽が輝いている。

Bryony Jarman-Pinto「As I've Heard」

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

世の中知らないことだらけな自分ですが、自ら“ギャングスタ界のナンシー・シナトラ”と名乗り、今では世界のポップ・アイコンとして知られているラナ・デル・レイのことは、彼女の名前以外全くと言っていいほど知りませんでした。しかし偶然にYouTubeで彼女の2012年に発表された「Lolita」という作品を聴いてとても気に入り、このテイストが自分の選曲センスの新たな扉を開けてくれるのではないかと思い、今さらですが今回はこの作品を軸にディナータイム選曲を構成してみました。そして出来上がった選曲ですが、まずはマイ・セレクションにおいてお馴染みになったスリーピング・アット・ラストの作品から、今回は太陽系を題材にしたアルバム『Space』に収録されている「Pluto」(冥王星)のインストゥルメンタル・ナンバーをイントロに、9月に東京と大阪で初来日公演が決定しているロンドンのシンガー・ソングライター、アンバー・ベインのソロ・プロジェクト、ジャパニーズ・ハウスが3月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Good At Falling』より、爽やかで疾走感のある「You Seemed So Happy」をピックアップしました。続いてテキサス州はフォートワース出身の若きアーティスト、スローン・ストラブスのプロジェクト、デイグロウのこちらもとびきり爽やかな笑顔が弾ける青春ポップス「Can I Call You Tonight?」に繋げ、ここでラナ・デル・レイの「Lolita」をセレクト。この作品はタイトルからもわかるように、スタンリー・キューブリックによって映画化もされた、ロシアの作家であるウラジーミル・ナボコフの小説を題材にしたものですが、とてもクールでカッコいい作品ですね。そしてカナダはトロントを拠点に活動するエレクトロ・ポップ・アーティスト、ローズマリー・フェアウェザーの甘美でクールな「Once In A While」、オーストラリアはブリスベン出身のジェイミー・フライヤーを中心に結成されたプール・ショップのきらめき感のあるドリーム・ポップ「Shooting Star」、少しだけレディオ・デプトにテイストが似ているロシアはモスクワを拠点に活動するSergey Khavroのプロジェクトであるパークス、スクエアズ・アンド・アリーズの2月にリリースされたニュー・シングル「Lucky 9」など、ラナ・デル・レイ効果で疾走感強めのロック・テイストな作品を続け、その後、ニューヨーク出身のティム・グッドウィンのレコーディング・プロジェクト、ナンズ・ハニーの4月にリリースされたデビューEP『Steep Action』収録の「Colors And Shapes」、カリフォルニア州オークランドを拠点に活動するイアン・ウォルターズのプロジェクト、ヘッドフォン・ヘアーの2月リリースのニュー・シングル「If You Feel It」、カリフォルニア州サンタバーバラ出身のシンセ・ポップ・バンド、ガーデン&ヴィラが昨年リリースした「Underneath The Moon」、4月に国内盤CDもリリースされたオースティン出身のサマー・ソルトの「Speaking Sonar」など、メロウでドリーミーな作品も選曲のアクセントとして織り込み、レバノンはベイルートでなんと14歳の若さながら良質な音楽を配信しているLaeticia Acraの音楽プロジェクト、ジャパン・マンの「Stop Staring」や、カナダはトロントのトラック・メイカー、ソフト・アイズの子守歌のようなチル・トラック「Lullaby」、そのソフト・アイズの作品でゲスト・ヴォーカルとして参加していたアラスカ出身で現在はロサンゼルスで活動しているラルフ・カステリのメランコリックなチル・フォークの「Better Things」、ミネソタ州ロチェスター出身のJosh AugustinとSam Winemillerによるドリーム・ポップ・バンドVansireのこれまた美しい「Lonely Zone」などをピックアップして、前半の疾走感のあるセレクションから徐々に緩やかで柔らかなグルーヴに選曲の流れをシフト・チェンジしていきます。
ディナータイム後半はカナダ出身のLev Snoweによる夢見心地なベッドルーム・エレポップ「Could Be」から、フェンスターというバンドに所属しているドイツはベルリン出身のアーティスト、ジョン・ムーズの昨年リリースされたソロ・アルバム『The Essential John Moods』より、ほんのりとしたサイケデリックな響きが静かに揺れる「Leap Of Love」をセレクトし、前半でもセレクトしたVansireがカナダはウィニペグ出身のFelicia Sekundiakによるプロジェクトであるフロア・クライをゲストに迎えて制作された美しくも儚い光のような「Nice To See You」や、カリフォルニアで活躍するくぐもったヴォーカルが魅力のヘンリー・ノーウェアの「Weighing On Me」、イギリス出身の4人組のサイケデリック・バンド、トーキョー・ティー・ルームの最新シングル「Forever Out Of Time」、2011年から音楽活動を始め、今年3月に待望のデビュー・アルバム『The Cure To Loneliness』を発表したバングラデッシュ出身のアーティスト、Jai Wolfの「Your Way」などのソフトで幻想的な響きを放つ作品をアクセントに、こちらも前半に紹介済みのデイグロウの、キーボードの音色や木霊のように共鳴するコーラスがノスタルジックに響く「Fuzzybrain」や、カリフォルニア出身のTrevor Beld Jimenez とTim Ramseyのユニット、パーティング・ラインのネオアコを感じる3月にリリースされた新曲「Break Free」、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、サム・エヴィアンのニュー・シングル「Cherry Tree」、オレゴン州ポートランド出身のコビー・アッシュの涼しげなギターの音色が心地よい風のように流れる「Better Days」、清涼感のあるウィスパー・ヴォイスが心を柔らかな気分にさせるローズマリー・フェアウェザーの「Superstar」、イスラエルの人口第2位の都市であるテルアヴィヴ出身のYogev Glusmanによるプロジェクト、iogiの曲全体を包む80sテイストが心に響く「Delicate Creature」などの作品をひとつの物語のように紡ぎ、この初夏のセレクションに柔らかな風を運んでみました。
そして初夏の夜にお届けするミッドナイト・スペシャルは、ピアノがメインの作品だけを集めて2時間のプログラムを構成してみました。まずはイントロにヘリオスやミント・ジュレップの名でも作品を発表しているキース・ケニフが、ピアノ・アンビエント/ポスト・クラシカル系の作品を発表するときに名乗るゴールドムンド名義で2015年に発表したアルバムから「Sometimes」というアルバム・タイトル曲を配し、3月に11年ぶりというバンド編成での来日公演を行ったルーファス・ウェインライトの、彼の持つ美しい声の魅力が爆発する「14th Street」をピックアップして華やかにミッドナイト・スペシャルの幕を開けてみました。続いて夏の時期の自分的定番ソングであり、いつもこの作品を聴くたびに感傷に浸り、ノスタルジックな気分になってしまうR.E.M.の「Nightswimming」に繋げ、さらにベン・フォールズ・ファイヴが恋愛関係にあった男女間の心のすれ違いをテーマに歌った「Brick」でミッドナイトにしっとりとした雰囲気を作ります。そして大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』に続けと言わんばかりに(笑)音楽史に歴史を刻んだ半生を描くミュージック・エンターテインメント映画『ロケットマン』の公開が控えている、ピアノ・アーティストの御大エルトン・ジョンの大名曲「Tiny Dancer」をセレクトし、続いてペット・ショップ・ボーイズとルーファス・ウェインライトの共演ライヴより、ペット・ショップ・ボーイズの名曲「Casanova In Hell」をピアノ主体のアコースティックなアレンジで披露した作品や、2000年代に現れた優れたピアノマンのひとり、イアン・アクセルのデビューEP『I’m On To You』より「Afterglow」をセレクト。この作品を初めて耳にしたときに感じた想いは、1994年にベン・フォールズ・ファイヴのデビュー曲「Jackson Cannery」を聴いて感動した感覚に似ていたと記憶しています。そしてカナダはトロント出身でアーケイド・ファイアの『Reflektor』からテイラー・スウィフトの『Red』まで大ヒット作のストリングス・アレンジも手掛ける奇才ミュージシャン、オーウェン・パレットの「E Is For Estranged」から、ベル・アンド・セバスチャンの素朴な初期作品より、シングル「I'm Waking Up To Us」にひっそりとカップリングされていたピアノ主体の小品「Marx & Engels」をセレクトしたのに続き、こちらもエルトン・ジョン同様ミュージック・シーンにおいてのトゥルー・レジェンドであり、誰もが認めるミスター・ピアノマン、ビリー・ジョエルの歴史的名盤『The Stranger』より「She's Always A Woman」をピックアップしてみました。さらにミュージシャンとしての才能とアイドル並みのルックスを併せもつ、英チェスター出身のシンガー・ソングライター、トム・オデールによるシンディ・ローパー「True Colours」のピアノ弾き語りカヴァーや、キャット・パワーの2006年作「The Greatest」、そして大ファンが故にまたしてもセレクトしたルーファス・ウェインライトの「WWIII」などでミッドナイト・スペシャルの前半を構成しました。
ミッドナイト・スペシャル後半は2018年のベスト・セレクションでも取り上げたスリーピング・アット・ラストの「I'll Keep You Safe」から始まり、イギリスはブライトンの音楽集団であるウィルコメン・コレクティヴ周辺のアーティストのひとつ、ミゼラブル・リッチの哀愁感漂う「Ringing The Changes」、忘れちゃいけないトレイシー・ソーンの2010年リリースの名曲「Oh, The Divorces!」、ノルウェイはオスロを拠点に活動していた5人組バンド、マイ・リトル・ポニーの2009年発表のデビュー・アルバムより、ボードヴィルの雰囲気漂う「A Song For You (On Your 40th Birthday)」や、跳ねたピアノ・サウンドが心地よいエド・ハーコートの2006年作「Visit From The Dead Dog」などをセレクト。そしてスミスの作品からは、モリッシーが敬愛するオスカー・ワイルドに捧げられたと思う、印象的なピアノの旋律から始まるインストゥルメンタル・ナンバー「Oscillate Wildly」を選び、エヴリシング・バット・ザ・ガールの「Driving」のピアノ弾き語りヴァージョンや、前回の平成を振り返る名曲集でもピックアップしたアルバム・リーフの「Wishful Thinking」などもピックアップ。そしてまたしてもセレクトしたのがルーファス・ウェインライトの同郷カナダを代表する偉大なアーティスト、ジョニ・ミッチェルの名曲カヴァーとなる「Both Side Now」です。この素晴らしく凛とした響きを放つカヴァー作品が収録されている『Northern Stars』というアルバムは、カナダのアーティストの作品だけを取り上げたライヴ・アルバムなのですが、残念なことに一般には流通されておらず、ライヴ会場のみで売られていて、限られた人しか手に入れることができない作品です。そしてその情報を知っていながら私事の事情で前述した東京公演のライヴに行くことができなかった自分は、ライヴ当日地団駄を踏みながら悔しい想いをしていたところ、なんと奇跡的に橋本さんから直前にこのライヴに行くと連絡があり、無理なお願いをしたところ快く聞いてくれて、自分の代わりにこのCDを手に入れてくれたのです。ルーファス・ウェインライト・ファンとして胸をなでおろすと共に、橋本さんには感謝してもしきれません。そして今回のピアノ特集は、終盤にスミスのピアノ弾き語り名曲「Asleep」や哀しげなエド・ハーコートのピアノ・インストゥルメンタル「Empress Of The Lake」で凛とした雰囲気を保ち、最後に映画『戦場のメリークリスマス』のために書き下ろされた「Merry Christmas Mr. Lawrence」にデヴィッド・シルヴィアンが歌詞を付けた「Forbidden Colours」をセレクトして、幕を閉じるのでした。

The Japanese House『Good At Falling』
Dayglow『Fuzzybrain』
Lana Del Rey『Born To Die』
Rosemary Fairweather「Once In A While」
Pool Shop「Shooting Star」
Parks, Squares And Alleys「Lucky 9」
Nuns Honey『Steep Action』
Headphone Hair「If You Feel It」
Summer Salt『Happy Camper』
Japan, Man「Stop Staring」
Soft Eyez『Pink Paradise』
Vansire『Angel Youth』
Lev Snowe『Faded Blue』
John Moods『The Essential John Moods』
Henry Nowhere『Not Going Back』
Tokyo Tea Room『Forever Out Of Time』
Jai Wolf『The Cure To Loneliness』
Sam Evian「Cherry Tree」
Prating Lines「Break Free」
iogi『The Ceiling』
Goldmund『Sometimes』
Rufus Wainwright『Want One』
R.E.M.「Nightswimming」
Ben Folds Five「Brick」
Pet Shop Boys『Concrete』
Ian Axel『I’m On To You』
Belle & Sebastian「I'm Waking Up To Us」
V.A.『Anthems Acoustic』
The Miserable Rich『Miss You In The Days』
Tracey Thorn『Love And It's Opposite』
Rufus Wainwright『Northern Stars』
David Sylvian & Riuichi Sakamoto「Forbidden Colours」

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

春が終わり、雨の時期を経て、輝く夏へ。移りゆく季節の流れを感じるのが好きです。その合間に立っていると、ゆったりと心が落ち着いていくような感覚になります。
平成最後に、bar buenos airesの2年ぶりの新作がリリースされました。テーマは“プリマヴェーラ”、春を意味する言葉ですが、初夏に聴いても心地よいのではと、ここに紹介させていただきます。今回は、その中に収録された楽曲を中心に、ジャズ・ヴォーカルやオーガニック・ソウル、ソフトなエレクトロニカをちりばめています。
ランチタイム~カフェタイムといった、みなさんの会話が弾む時間帯にもぴったりの流れになったのではと思います。ぜひお楽しみください。

V.A.『bar buenos aires - Primavera』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

新緑の葉をより色濃くするような夏へと向かう雨に打たれる木々を、何も考えずただみつめながら公園を散歩するのが僕にとってこの時季をすごす楽しみ方のひとつだったりするのですが、今年はその公園内に併設された水族園の年パスを購入して、魚一匹みることなくここの静かなレストランのデッキに佇みぼーっとビールを飲んですごす、なんて贅沢使いをすることをおぼえてしまいました(敬愛してやまないさかなクンにはギョえらく叱られそうですが……)。
それでは初夏の風景を切り取るように配置してみた今回のセレクション、いつものようにポイントとなった曲が収録された8作品にしぼって、並び順にそって紹介していきたいと思います。
お馴染みアーキテクチュアルなアートワークも今作では永井博化し、ヨット・ロックに寄り添ったような内容となったグラスゴーのSSW新作、ノースカロライナからのメロウでドリーミーなベッドルーム・ソフト・サイケデリア良作、細野晴臣Swing Slow的エーテル・サウンドが奏でられる名プロデューサーによる新作ソロ、スナーキー・パピーのキーボード奏者によるピアノとエレクトロニクスがとても美しくふくよかに配合された、雨の日にこそ耳を傾けたくなる詩情豊かなアンビエント作品、女性SSWを中心とするブルックリン発の注目バンドによる楽しみなデビュー・アルバムからの、80sニュー・ウェイヴ感あふれるノスタルジックな翳りを帯びた脱力メロウなシングル・カット曲、LAの男性デュオによる遠く甘い記憶のような浮遊感に包まれるアコースティックでローファイなドリーム・ポップ・アルバム、モーゼス・サムニー以降と云えそうな透明感あふれるアコースティック・ソウルEP、ウルグアイの至宝Diane Denoir & Eduardo Matteo「Senora Diana La Vi」の素描のようなヴァージョンに惹かれた、デヴェンドラ・バンハートが編んだヴァシュティ・バニアンからアーサー・ラッセルまでをも網羅する未発表デモ音源コンピ──といったところでしょうか。
それでは梅雨の季節もどうか心地よく過ごせますように!

C Duncan『Health』
computer science『Burial Club』
Mitchell Froom『Ether』
Bill Laurance『Cables』
Crumb「Part III」
Golden Daze『Simpatico』
rum.gold『yaRn - EP』
V.A.『Fragments du Monde Flottant』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

令和という新しい時代が始まりました。僕が子供のころ、「三つの時代を生きた」といったらすごくお年寄りに感じたものですが、自分もそういう立場に近くなってしまっているのね……と考えると、それなりに感慨深いものがあります。新しい時代も自分らしい切り口で心地よい時間を演出できるよう、頑張っていこうと思います。

さて、新緑の季節を彩る令和最初のEarly Summer Selectionは、かなり夏先取りという感じにしてみました。「usen for Cafe Apres-midi」のセレクターの方のセレクションを聴いていて、ロング・ホット・サマーという感じのレイジーだったりチルだったりな曲調はSummer Selectionに、ブリージンなそれはEarly Summerにという傾向があるように感じたことがあるからです。
前回はwaltzanova流のAOR〜ヨット・ロック解釈がひとつのテーマでしたが、結果的に今回もそれをある部分で引き継ぐようなセレクションになりました。もうひとつの裏テーマとして、「シーサイド・ウィークデイ」(僕の担当が水曜日の午後なので)というのがあったので、自然と海の近くで聴きたいような曲が多く選ばれることになりました。

オープニング・クラシックはリストの『巡礼の年』から2回目のエントリー、「エステ荘の噴水」。ラヴェルの「水の戯れ」(元タイトル「Jeux d'eau」には単に「噴水」という意味もあるそうです)にインスピレイションを与えた曲として知られているようで、光きらめく爽やかなこの季節にふさわしい曲想だと改めて感じます。Bibioの新作『Ribbons』も素晴らしいアルバムでしたね。初期はアマチュア感も自身の個性としていたアーティストが、キャリアを重ねるごとに成熟していくのを見るのはこれまた感慨深い気持ちになります。新緑とパープルを基調としたアートワークも選曲をしている時期にとても気分で、休みの日の午前中によく聴いていました(限定のカセットも思わず買ってしまいました)。
橋本さんのインターネット・ラジオ・プログラム「suburbia radio」では、「10年後の『素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』?」と紹介されていたフアン・フェルミン・フェラリスの『35mm』。ノスタルジックなジャケットのフォトグラフも、大切な何かを思い出させてくれるような気持ちになりますね。モノ・フォンタナやアヴィシャイ・コーエン、シャイ・マエストロに影響を受けたというのも納得の新名盤誕生です。南米系ではミルトン・ナシメントと並んでミナスを代表するアーティスト、ロー・ボルジェスの新作『Rio da Lua』も良作でした。
ブラック・ミュージック系だと、ようやくリリースされたと言っていいでしょう、シャフィーク・フセインのアルバムが素晴らしかったです。R&Bとヒップホップ、ジャズからビート・ミュージックまでを飲み込んだ一大音楽絵巻。ゲストも含め集大成的な作品に仕上がっています。もちろん、アンダーソン・パークの『Ventura』も会心の出来でした。前作よりもソウル・ミュージック色が強く、僕の周囲でも大絶賛ですが、前作の『Oxnard』も含め音楽的にとても深化していて、彼の代表作になるのではないでしょうか。

続いては自分内ディグというか、改めて聴いてその良さに気づいた音源を。これが「usen for Cafe Apres-midi」の選曲をやっている醍醐味でもあります。まずは最近LPと7インチが再発されたレムリア。いわゆる定番アルバムですが、このチャンネルの選曲をするまでは冒頭2曲と「Moonlight Affair」以外ほとんど耳に残っていませんでした(汗)。ところがここ数年でかなり再評価の対象となっています。ハワイもの、初夏感、適度なトロピカル〜アーバン・リゾート・フィーリングといったあたりが重宝する理由ですね。ハワイものと言えば、Aloha Got Soulレーベルから昨年アルバムも再発されていたアイナの「The Harmony Song」もセレクションに入れました。いかにもハワイ産らしい大らかなフォーキー・チューンで、MFQのサイラス・ファーヤーがハワイで制作したアルバムなどを連想する名曲です。特別なことがない限り、一回のセレクションに同じアーティストは2曲以上入れないと僕は決めているのですが、その禁を破ってしまった(笑)バーン・アンド・バーンズにも触れておきましょう。2001年にCD再発されたときは正直それほど引っかからなかったのですが、こちらも改めて聴いてみると、「usen for Cafe Apres-midi」的に使える“良い感じ”のAOR〜アーバン・ナンバーが並んでいます。ルーカス・アルーダやアンドレ・ソロンコを出しているフランスのFavoriteから数年前にリイシューされたのも納得の内容ですね。

選曲をしていると、録音物であっても音楽は生き物だと感じることがあります。時代の音の移り変わりと自分の感覚、それが重なったとき、その音楽は輝きをより増して聴こえる、そんなことを思います。
それでは改めて、21世紀のカフェ・ミュージックをめざしてこれからも選曲に精進していきたいと思いますので、リスナーの皆さま、よろしくお願いします。

Lazar Berman『Franz Liszt: Annees de pelerinage (Complete Recording)』
Bibio『Ribbons』
Lo Borges『Rio da Lua』
Shafiq Husayn『The Loop』
Anderson .Paak『Ventura』
Lemuria『Lemuria』
Byrne And Barnes『An Eye For An Eye』
Juan Fermin Ferraris『35mm』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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