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23世紀

私は今日、200回目の誕生日を迎えたよ

君が眠っている間に 不老不死の薬ができて
あっという間に23世紀を迎えた

君が眠っている間に 心がデータになって
愛情はUSBメモリに保存した

君が眠っている間に 空中飛行が主流になって
通った小さな駅はなくなった

数え切れない程の始まりと終わりが世界を作ること、その終わりとともに終われないのがたまらなく惨めなこと、散り際が綺麗というのは案外道理にかなった美徳だったこと。

少しは 大人になれただろうか
いつまで経っても身体に追いつけなかった心が
幼いまま保存された身体に見合うくらいには
大人になれただろうか

君が眠っている間に
体内に目覚まし時計を埋め込んだから
もう布団に潜って困らせる朝はこない

君が眠っている間に
ロックミュージックは時代遅れになったから
バンドにお金を溶かすこともない

君よりも大人になってしまった
迷惑をかけることを わがままを 愛情と解釈してくれた。きっと、勇気が要った

君は、眠っているだけ。
私のために毎日早起きをしてくれたから
取り戻すように 眠っているだけ。

いつか目を覚まして 私を子供に戻すから
バーチャルになった墓石の前で
君が好きだと言ったワルツを弾きながら
待っているね

際限の無い未来に安堵できたのは
君がいたからなのだと 思い知らされる
23世紀

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