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青い呪い

物心ついた時から、青色が好きだ。

SNSのアイコンも、歯ブラシも、愛用しているクリアファイルも、今着ている部屋着も、全部が青い。
おまけにバンドのイメージカラーも青い。
色のもつ呪力に操られて、時に操って生きているような気がする。

カメラロールを見返していたら、残しておきたい記憶には無意識に青色を置いていることに気が付いた。
大切な人たちとは海に行き、特別な日には青い服を着ている。青くない記憶に比べて、青のある記憶の方が簡単に、鮮明に思い出せる。

昨春の妹との関西旅行は、青のオンパレードだった。連日の快晴による青い空、凪いだ海、着付けてもらった青色の着物。だから、全部思い出せる。満員のバスでおばあさんと会話が弾んだこと、本場の抹茶の美味しさ、歩き回った後の心地よい疲労感、夜は治安の悪い郊外の商店街を、確かに覚えている。

もしかしたら私の空を晴らす力は、思い出と青を結びつけるためにあるのかもしれない。

でもそれはここ1年くらいの話だ。その前の記憶に置いた青は、暗い色になって私を呪い続けている。
小学生2年生くらいの私は、水色のジャージをよく着ていた。マラソンの練習を無断で欠席して先生に叱られた。みんなができる二重跳びをできなかった。
中学1年生、青色の部活Tシャツを着た私は、楽器をぶつけて先輩に叱られた。炎天下のマーチング練習で流した汗が気持ち悪かった。
青くしてしまったら最後、苦い記憶もすぐに取り出せてしまう。

今は、心地よく呪われている。不快な青色の記憶を塗り替えるほどに、バンドのアーティスト写真は青い。
きっと私はこれから何度も海に行くし、青色の服を着るし、次は青色の楽器を買う。その全部を幸せな思い出にしてしまえる気がするから、呪われたまま生きるのも悪くないなと思う。

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