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菊池雄星の轍

このnoteでは2019年から2022年にかけての菊池を1年ごとに分析していきます。
最初にことわっておきますが、筆者は野球未経験であり、メカニクス等は一切勉強していません。
素人が偉そうに講釈垂れ流しています。
また、このnoteはBaseball Savantを情報源としています。
(https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/yusei-kikuchi-579328?stats=statcast-r-pitching-mlb)
数値等は上記のサイトを参照していますので、併せて読んで頂ければ幸いです。
また、このnoteは球種に焦点を当てることが多いので、Savantの表を参考に読んでいただけると助かります。

自分で表作れないので甘えました

2019


目を見張るような部分はなく、四球率とチェンジアップ以外は軒並み低水準で、Marco Gonzalezや後に獲得するChris Flexenのようなストライクスロワーとしての活躍を見込んで獲得したものの、早々に頓挫してしまったといった印象です。
(書くことあんまりないです)

2020

2020年は短縮シーズンで防御率などのスタッツでは前年よりはマシ程度の成績ではあったものの、菊池にとっては大きな収穫があったシーズンと言えるでしょう。

1 平均球速の上昇

全体的に球速が向上しました。
        (19年)→(20年) (単位はmph)
4シーム     92.5→95.0
スライダー    75.0→82.5
チェンジアップ  84.5→86.8
カッター     86.0→92.1
(日刊スポーツ曰く、この年からカーブはスライダー、スライダーはカットボールとして分類されるようになったようです。一方、Savantでは2020年からカーブの項目が無くなり、カッターを新しく習得したように表記されています。このnoteではSavantの19年のカーブを2020年以降のスライダー、19年のスライダーを20年以降のカッターと同じ球種として扱います。) 
日刊の記事 
https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202009120000745.html

2 カットボール(スライダーの球速向上)の習得

19年のスライダーもx系の指標は悪くなかったものの、実際には打ち込まれてしまっていました。
20年は変化量が小さくなり、前述の通り球速が上がった結果、空振り率を維持しつつ打球角度を小さくすることに成功しました。
長打率(SLG)は1割近く減少しており、後述する4シームと共に投球の軸となる球種へ成長を遂げました。 

3 4シームの球質

球が速くなっただけではなく、2019年と比べてスピンレートが上昇しました。
(19年は2096回転だったのが、20年は2172回転)
この変化が功を奏したのかハードヒットは著しく減少し、空振りも取れるようになりました。
特に空振り率は倍近くに跳ね上がっています。
運が悪かったのかwOBAこそ奮わなかったものの、xwOBAは前年から大きく改善しました。

4 スライダー(カーブ)の改造とゾーン

球速の上昇は前述した通りですが、それだけではなく、縦方向への変化も大きく変わっており著しく変化量が小さくなっています。
また、2019年の菊池はカーブを高めに集めて痛打されていましたが、2020年は低く、そして際どい場所へ投げ込むという意識があるように思えます。
これら二つの変化の影響からか、劇的な改善を遂げています。

            Fangraphsのヒートマップ↓

2020年
2019年

5 チェンジアップの改造

19年のチェンジアップは被打率(BA).200、長打率(SLG).374と一見上々でしたが、xBAは.259、xSLGは.426とx(期待値)系の指標とは乖離が生じていました。
20年は変化量に大きな変化は無かったものの、スピンレートが大きく減少した影響か、平均打球角度が−27と異次元の数値を叩き出し、被打率=長打率ととにかく長打を打たれませんでした。
また、空振り率も大きく上昇しました。
なお、被打率は運の寄り戻しもあったのか悪化しました。

6 四球が増えた

四球率は19年は6.9%だったのが、20年は10.3%と激増。
ストライクゾーンに投げる割合が大きく減ったわけではなく、ボールゾーンの空振りが大きく減ったわけでもないのでどうしてこうなったかはわかりません。
出力向上の影響でしょうか。
短縮シーズンだったので多少偏った数値が出たのかもしれません。

総括すると、2020年の菊池は大きな変貌を遂げ、19年とはまったく違う投手になったと言えます。
GB率が50%を超え、空振り率も10%近く上がりました。
最初にも書いた通り、この年は旧来のスタッツでは大した成績ではなかったものの、いわゆる期待値系の指標は短縮シーズンとは言え大きな改善を見せ、来季以降の飛躍への足がかりになる年………のはずでした。

2021年

この年の菊池は前半戦は16先発中12先発で6イニング以上を投げ、イニングイーターとして覚醒。
その活躍からオールスターゲームに選出されました。
しかし、後半戦はその面影は消え去り、シーズン終了間際には先発失格の烙印を押され、当時AAで先発として好成績を残していたMatt Brashをコールアップさせる事態にまで至らしめました。

1 4シームの球質が変わった

回転軸が12時方向から11時方向へ傾くようになりました。
一般的に左腕の4シームの回転軸が左側へ傾くと、シュート方向へボールが動くと言われています。
菊池も例に漏れず、横方向への変化が4インチほど増えています。
この影響からか、Hardhit%は増加。
シュート回転=球質が悪いとは言いませんが、少なくとも菊池にとっては良い変化を得ることはできなかったようです。
この年は運が良かったのか、前年よりも被打率は下がっていますが、長打率は上がっています。
x系の指標ではxBAは前年と大きく変わっていませんが、xSLGは1割4分悪化しています。

横方向の変化量
2021年の回転軸
2020年の回転軸

2 スライダーのゾーン

この年は前年と比べて甘いゾーンに投げ込むようになり、数値が悪化しました。
運が味方しなかった部分もあります。

2020年
2021年

3 カットボールの悪化

こちらも悪化しました。
強いて理由を上げるとすれば、横方向の変化が少し小さくなったことと、ゾーンが若干甘くなったことでしょうか。
いずれも目立った変化ではないと思うのでよくわかりません。

4 四球の減少

20年は四球率が10%越えだったのが、21年は9.3%と多少は四球が少なくなりました。

2021年は20年と打って変わって運には恵まれたものの、実態は成績とはかけ離れている印象を受けます。
特に昨年の強みだった打球管理能力が消え去り、Barrel%は2.6%から7.2%へと上昇。昨年は実際の数値がついて行かずに、昨年のままだとダメだという気持ちで変わったのがこのシーズンなのかもしれません。

2022

この年、マリナーズからブルージェイズに移籍した菊池。
3年36MMの契約には、ブルージェイズの菊池への大きな期待と菊池を改造してみせる自信が垣間見えます。
しかし、その期待を裏切り、お世辞にもコンテンダーの先発投手とは思えないピッチングを見せたことは、読者の皆さまの記憶にも新しいことではないでしょうか。

1 四球が増えた

20年から四球が増えたと記載しましたが、この年は輪をかけて増えました。
21年は9.3%だったのが、22年は12.8%に増加。
要因としては、21年まではストライクゾーンに投げる割合はどの年も51から52%の間を推移していますが、この年は48.7%になっており、ストライクに投げなくなった分四球が増えたのだと思われます。

2 カットボールの割合が減った

昨年は投球の40%近くを占めていたこの球種は、芳しい成果を見せなかったためか大幅にその割合を下げ、5.4%ほどに。

3 スライダーの割合が増えて、球質が変わった

カットボールの代わりに割合が増えたのがスライダー。
縦方向への変化が小さくなっており、
去年までのカットボールとスライダーの中間くらいのイメージを受けます。
ただ、成果は散々だったようで、長打率は6割を超え、xwOBA.344と球種改造は全くの裏目に出てしまいました。

縦方向の変化量

4 運のより戻し

21年は4シームのx系指標と実際の成績が大きく乖離していたものの、22年は期待値通りに収束しました。

2022年は昨年からのボロが表面化し、新たに悪癖を身につけるという二重苦に陥ってしまいました。
とはいえ、ここまで見ていただいた方には分かると思いますが、彼は柔軟に変化することができるピッチャーです。
来年以降どんな変化をするのか、そして、その変化が一体どんな影響をもたらすのか。
そんな期待を馳せこのnoteを締めさせていただきます。


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