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TBS報道特集の「持続化給付金事務」報道が酷すぎる

2020年8月8日放送のTBS報道特集の内容は酷すぎるものだった。メディアの役割として、政府、行政の批判はしっかりとしてもらいたいが、明らかに行政の責任でない内容までまるで行政が悪いような表現があったことについては検証しておきたい。

まず、とある申請者は申請してから振り込まれるまで2ヶ月以上かかった。確かに2ヶ月は長いと思う。具体的な報道内容を確認したい。

1)収受印がないことの不備

5月8日にオンライン申請をしたが、29日に不備の連絡があり、提出書類の一つの確定申告の収受印がないことを指摘された。「新型コロナウィルス拡大により郵送での申告を勧められていたにもかかわらず、申請書に収受印が必要とされたことに戸惑いを感じた」とのナレーション。

検証

気をつけないといけないのは収受印は、今回の申請に関係なく、確定申告時にもらっているものの話という点である。確定申告の資料を今回添付するにあたって、「戸惑いの」ナレーションの部分は関係ない。私も知り合いの給付申請を手伝ったが、添付資料の説明の中で「収受印がいる」と明確に明記されていたからだ。これを読み飛ばして申請していたのであれば、指摘されても仕方ないことである。確かに指摘は遅いが、同じ時期に申請をした私の知り合いは、2週間程度で入金がされており、指摘があったため、順次連絡するルートになったのだと思う。だから、収受印の確認を先にしていればこのような時期にはなっていなかったはずだ。

2)法人化による書類不備

収受印の代わりに証明書を6月5日に送付したら、6月17日に再度指摘があり、4月に個人事業主から法人化したため事業収入証明書が必要とのことだった。

検証

この方が苦労されたことは同情するが、まず、かなりイレギュラーなパターンと言えるのではないか。もちろんイレギュラーな人への対応もしっかりすべきだが、そう言った方に対する検証をすべてしてからスタートすると、全体の事業が遅れてしまう。まずは、スタートを切って、そこから出てくる様々なイレギュラーにその都度対応していくことが今回においては一番良い手法だと思う。例えばこういった方が1000人に1人なのであれば、他の999人の申請が遅れたとしてもスタートを遅らせるべきだったと言えるのだろうか。

3)下請けへの委託

持続化給付金の審査をしていた団体は、複数の派遣会社に委託していた。

検証

まるで下請けにお願いするのが悪いことのようであるが、期間限定の大量の仕事を緊急で委託するのには、多くの会社にお願いし、そこで派遣社員さんを雇ってもらうしかないだろう。他に方法があるのだろうか。TBSも様々な業務で派遣社員さんにお願いしているのではないだろうか。

4)審査基準がコロコロ変わる

派遣社員として審査されていた方のコメントによれば「審査基準が変わることがしょっちゅう。ひどい時は毎日更新。1日1時間は説明の時間。何で毎日コロコロ変えるのかなと疑問に思っていた」ということだ。

検証

これはまさに2)の方のようなイレギュラーなパターンがあるために、その都度マニュアルを改訂して、スムーズに仕事が進むようにしているのである。最初に作ったマニュアルで、たくさん不備が出る状況でも放置しておいた方が問題である。

5)不備審査がスムーズでない

同じ派遣社員の方のコメントで「20件に1件は不備があった」、「よくわからない農業申告が来たら不備で落としてくださいと言われた」、「不備審査担当の業務が回らないので、早退するように伝えられたりした」といったコメントがあった。

検証

正直、これだけ複雑な申請であるにもかかわらず、不備率が5%というのはなかなかの好成績ではないのか。また、名前は「不備審査担当」としているが、正確には「詳細チェック」担当で派遣社員の方が「単純チェック」担当なのだと思う。単純チェックでわからないことを詳細チェックに回すのは、どのような手続きでも行われている常識的な対応である。そもそも、持続化給付金の給付事務は我々の税金で行われている。だから、仕事がないのであれば当然帰ってもらうべきであり(労働契約に問題がなければ)、正しい対応をしていると思う。

6)韓国の制度の賞賛

韓国の給付金申請はスムーズに行われており、韓国では、申請者の負担を減らすため、行政機関がもともと持っている持っている情報は求めないようにしている。事業者が番号を打ち込むだけで申請が完了する。

検証

日本でもマイナンバーを収入、資産、納税にすべて紐づけていれば、可能であったことである。しかし日本では、マイナンバー制度を運用するシステムが、2008年3月6日のいわゆる「住基ネット最高裁判決」を踏まえて設計されていることでそれができない。詳しくは「10万円オンライン申請は「失敗」だったのか?自治体を混乱させた本当の要因」を参照いただきたい。この裁判を知った上で、日本でこれができていないことを行政の責任に押し付けるのだろうか。

最後に

普段ニュースをみているだけの私でも上記のような検証できる。報道特集のスタッフは一体何をしているのだろう

報道機関の役割は何なのか。調査して、より良い制度、より良い行政にしていくことである。批判の前にもっとしっかり検証してからしてもらいたい。

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