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仕事で、香港に来ています。

デモの取材とかではなく、たまたまなんですけど。。2年ぶりに来た香港でたまたま催涙ガス舞っちゃってました汗

今回のテーマは、

「日本の"日和り”は、メディアがコントロールするからこそ平和な空気感を維持できていると見るべきか。"頭の中お花畑”だから対岸の火事を見ている状態と見るべきか。」

現地で感じた空気をお伝えしつつ、「とにかく日本人にも、海外の人にも、このことを知ってほしい。拡散してほしい。」という道端で出会ったとあるコスプレグループの声を、この場を借りて届けることを目的に、書いてみたいと思います。

香港と日本の速報を比較してみます

香港メディアも、CNNも、ブレイキングニュースは全部香港デモでした。


8/5月曜日。 

私が現地に到着した当日、夕飯に香港グルメにありつこうと日和ったまま外出した日。

ちょっと先の道では催涙ガス充満する中、武装した警察隊と、香港市民が衝突してました。

香港の職場も、ガラガラ。同僚はほとんど在宅勤務という名の、暗黙の了解でみんなデモに参加していました。

同僚からは「この街と、この道では同時多発デモが起こっててガスも舞ってるから、絶対に近づかないで」

と、何度も何度も警告を受けました。ホテルから歩いて10分の最寄りの駅もその1つ。

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引用: (c)新聞台


その翌日8/6火曜日。

デモに行ってた同僚曰く「今日はデモ側も警察側も中休み。デモも休みながらやらないとね、お互い」なんて言ってました 笑

ちなみに約2年前の雨傘 (英語でUmbrella Momentと呼ばれたデモ)を余裕で超える規模だそう。


3日後の8/8木曜日。

まだ続いているようです(私はこの時既に台湾に移動済みだったので)



8/9金曜日。

今日は香港国際空港でデモが開かれるそう。台湾への移動があと1日遅かったら...危なかった。。

デモの人波と催涙ガスから間一髪で逃れた私は、今度は台湾で地震と台風にお出迎えされていますが。。

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ホテルロビーの窓から見た様子


片や、日本のYahooニュースとTwitterトレンドは

香港で一般市民の1/3が危険を顧みずデモに出ている最中、

日本はマスオさんの声優交代と、 日韓政府間のケンカ。

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こっちは香港現地に位置情報を合わせた時のトレンドランク。

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そして次期総理だからって国中からお坊ちゃま扱いされてる小泉氏と滝クリの結婚。

香港デモのことは検索しないと出てこなかったです。出てきてもRT数やコメ数はこれらの比じゃない。


大体この手のテーマが書かれる時は、「日本の日和りヤバイ」「さすがガラパゴス」「メディアは何やってんだ」という体の記事をよく見かけることになるわけなんですけど。

そう言いたくなる気持ちも、分かります。

そして香港はカンフー映画見る時ぐらいしか意識しないって人が対岸の火事としか見えないって気持ちも、分かります。

日和っちゃってるのは、私自身も含めて、みなさんご自身の意識の低さだけが原因ではないと思ってまして。

それは最後に書くことにするとして。


では、香港に国籍を持つ人々は、なぜ警察と衝突してまでデモという行動をとるのか。


香港人に実際に聞いてみた

香港の同僚に聞いてみました。

中国「そこ(香港)は元々オレのもんだ」

何人かの香港人は中国の中央政府のことをBeijing(北京)と呼んでました。

人口700万人中200万人もの香港の人々が、仕事を休んで

「ほら、こんなに人が休むと突然社会が機能しなくなるんだぞ。北京よ、その子分の香港政府よ。お前たちが強硬姿勢を貫いたところで香港を想い通りになんてできないぞ」

職場がガラガラだった理由は、人口の1/3もの人々が交代で2ヶ月間もの間抗い続けている意思表示は、こういうことなんだそうです。

多くの場合は非暴力で平和的に、会社を休む、電車が機能しなくなるぐらい人が駅に集まって交通機関をマヒさせる等、人を傷つけないようにしているやり方だと言います。

当然それだけ済まない激しい前線も存在していて。Youtubeでも沢山見つけられますが、ガスマスクを身につけ、目だけでなく肌も焼き付ける催涙ガスから身を守るために猛暑の真夏に腕をラップで巻いて、投げつけられたガス弾を手慣れた様子でお皿や交通整理用コーンで煙を封じ込めて、水をかけて煙が散布されないように処理します。

その人々は、もはや警察を敵とみなしています。

「2ヶ月前までは自分たちを守ってくれる存在だった警察が、今や北京のマリオネットだ」


こんなことがありました。

夕飯を済ませ、地下鉄はそんな状態だから動かないかもしれないと思い、全然バス停ダイヤの仕組みが分からないまま、運転手さんに降りたい駅名を伝えて、ようやく見つけたとあるバスに乗りました。

乗ってる最中、トランシーバーでデカイ声で、別のバスの運転手らしき相手とテンション高めに会話をしていて、「広東語は元気がいいなー」ぐらいに思ってました(ここプチ日和りどころ)

そしたら、バス停から1~2キロ手前で降ろされました。

「Get down」

ん?伝えた駅名はもっと先なんだけどなー。

英語も通じない運転手さんだったので、仕方なくそこから歩き始めました。


少し歩いていたら、今度は向かう方向の先からこちら側に移動している集団と遭遇。

20人ぐらいの、若めでキラキラ女子雰囲気なんだけどちょっとアキバ感が漂う今風な子たち。

そしたら、ビンゴ、日本語もペラペラで、イベントでコスプレやってきた帰りなんだとか。

その子たちに、こう言われました。

「この道は危ないから戻った方が良い。私たちに付いてきて!」

夜の香港は歩いたことがあったんですが、これだけの都市でもまだそんな道があるのかー、ブルックリンみたいなもんかな、なんて思ってたら、

「この先に交番がある。あいつらは誰彼構わず見つけたら棒で叩いてくる。日本人でも構わず。絶対に彼らを信じてはダメ」

20代前半の女子たちが、口々に、見るからに勇気凛凛に。

警察がもはや市民を守る存在ではなく、バーサーカー状態で傷つけてくる獣に変化してしまったこと。自分たちはそれでも絶対に負けない。

これから行く駅も危ないかもしれないから、安全な道まで一緒に行こう。

好きな日本のアニメやマンガの話を織り交ぜながら、日本人2人で歩いていた私たちを誘導してくれたのでした。

そして、そこでようやく気付いたのです。

あのバスの運転手さんは、目的地だった駅がデモで危険な状態かもしれないから、通常のルートから外れて、安全が確認された場所に(多分)回ってくれて、親切にもそこで私たちを降ろしてくれたようなのです。

トランシーバーでテンション高めに話していたのは、どこが安全なのかを運転手同士で情報交換をしていたんだってことに、ようやく気づきました。もちろん香港語(Hongkonese, 北京語でも広東語でもない地元語)は理解できなかったんですが、おそらく。

きっと、今の日本ではありえない状況を目の当たりにしました。

2日の夜、夕飯に付き合ってくれた同僚が言っていました。

こう聞きました。

「中国はなぜそこまで?元々イギリス領だったんだから、たとえ返還されたにしても、香港人の心情は分かりそうなもんじゃない?」

そしたら

「彼らは、心の奥底から、そこ(香港)は元々オレのもんだ、と思ってる。」

過去の戦争の歴史を機に奪われてしまったけど、中国政府としての香港への所有意識は脈々と受け継がれていて、そして確実に手中に戻そうと手を下している。

そう教えてくれました。

彼は「あくまでおれの考えだけどね」と付け加えました。

彼とは付き合いが長いので昔からよく知ってますが、決して政治思想の強いタイプじゃないです。そんな彼も私が着いた初日はデモに行ってました。

「随分歴史的なタイミングに来たもんだな 笑」

なんて言ってましたが。確かにバスのも、コスプレ女子たちのも含めて、相当衝撃的な記憶を刻まれた体験です。

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友人から話を聞いていた真っ最中にも、街は通常運転、でも街のどこかではデモが継続中でもある...

中国側の本音。テレビに映らない香港人の本音。

「これもおれ個人の考えだけど」彼は続けます。

香港独立派 vs 香港は中国になるでOK派は、実際のところ50%50%かも。やっぱり今の中国の経済力は、実際に香港を潤している。

去年、人々からの反対で計画が白紙になった、香港のとある山への建設計画がありました。

それを"計画通り"白紙化させ、その代わりにお台場みたいな人工島を作る計画が進んでいます。

香港の人からしたら、ただでさえ狭い土地で、森林豊かな山に、海に、どでかい建設物が立つことで、自然が失われることを憂慮する声の反面、莫大なお金が香港に流れてくるのは、魅力的なわけです。

その事実認識が正しいのか間違っているのか置いておいて、私はCNNやBBCがトップニュースとして報じる背景には、中国とアメリカの貿易戦争(これだって机の下では握手しているのかも)に関わる現象の1つであることを理解しているからこそ、注目しているんじゃないのかな、と思ってしまいます。

聞いている限り、どれだけ危ない状況なのか、ってことに終始してはいましたけどね。

西欧諸国にとってのハブである香港が、中国と今後どうなっていくのかは、その中国と争っているアメリカのスネ夫である日本も、日和ってる内にいつのまにか影響を受けてしまうことも...あるのかも?


もしくは既に。。


教科書やメディアから見える印象と、事実とのギャップを知る度に、歴史や事実はなんとも、

小説よりも奇なり、です。

香港にとっては命と将来に関わっていることだから、面白がっているって表現はちょっとこの感情を表すにはちょっと違ってて、興味を引かれているという方が正しいです。

思いもしなかった国家の本音を知った時の「そうきたか!」っていうのは確かに面白がっていることは認めますけどね。当事者の友人と一緒にそんな陰謀論で盛り上がったから、まいっかということで。

それにメディアに関わる人たちが心の奥底から自らマスゴミであろうとしているわけではない、とも思っています。Twitterとかを駆使して自らがメディアになって発信しているジャーナリストもいるので、「なんでちゃんと報じないんだ!」みたいな議論は、他の方々にお任せします。

メディアが報じるか否かはその国に生きる人々の趣向性が表面化したものでもあると思うから。

テレビは面白くないって不満を言う人たち。無意識にリモコンをスイッチオンする習慣の人たち、両方の指向性が視聴率となって、そのまま番組を作ってる側の人たちの方向性を決めているって因果関係も往往にしてあるはず。

政府がコントロールしているってことそれだけが唯一の原因じゃない(もちろんその一面も随分分かりやすく感じるけども)。

視聴者の趣向性と政治への関心度合いのレベルが、メディアの報じ方に憑依している。

香港&海外と、日本の、対照的なメディアの姿勢を見て、そう思います。

日本人は礼儀正しいって言われても、実際のところ面裏あるじゃないですか

香港からのメッセージを伝えられたので、最後に、自制の意味と、made in Japanの価値を維持していくためにちょっと書きます。


香港人は、イメージよりも礼儀正しいし優しい

小説より"奇"になっちゃうのは、そもそも持っていた印象が勘違いだっただけ。事実とはほど遠い所に焦点が合ってたからだったんだとも思いました。

エレベーターでご老人グループが後から乗ってきて、降りる時ドアから遠いこちらをわざわざ先に出るよう笑顔で促してくれたっていう体験をしました。

同じ少子高齢化の波にある日本と香港。

ここがすごいよ日本人みたいなフィルターで世の中を見てても、無愛想で他人に関わろうとせず、長者優先我がもの顔な態度の日本人のご老人は実際にいるとこにはいるし。

失礼な話、日本人的視点で見ると雑多な印象の香港にも、紹介したようなとても人当たりの良いご老人もいます。

「日本人は礼儀正しい」は合ってはいると思うけど、ホスピタリティは香港も負けてない。

他人に介入しようとしないが表面上はとても礼儀正しい日本人は、無償の奉仕に対する考え方・実際の行為の度合いは、無条件に褒められるものでもない。

海外の人のJapanese is so politeという言葉を間に受けすぎてはダメだと思う節が、そう言われる度に、すごくすごくある。

礼儀正しいことには面裏があるし(もちろん根っからの方はいます!)、ハートウォーミングな"人類皆兄弟"的に対応してあげられるかどうかは、別物だと思います。

海外に来る度、優しい人と出会う毎に、そう思う。

当然ホームステイしたり、受け入れる側だったりした経験のある人は、その深い関係性からハートウォーミングな想いを抱いた経験がある人も多くいることでしょう。

分断しようしようとしている世界の情勢の中で、これからまだまだ現役でいることになる私たち世代が、日本人が、日本ブランドを武器に立ち振る舞うには、

各TV局がこぞってゴールデンの時間帯の番組で「ここがすごいよ日本人」みたいなことだけに焦点合わせてその内向きな視点ばかりでいると、

世界にきっと日本の人口以上に沢山いるはずの礼儀正しくて優しい人たち、高度経済成長期の時の日本人みたいにがんばってる海外の人や、トレンドを、見逃してしまうことだってあると思います。


思考停止していたらもったいない

日本は食も季節もマンガもアニメもお笑いもモノの質も、ほんとサイコー。

しばらく海外に行ってから、出汁を口にした時の「日本人でよかった」感は何者にも変えがたいです。

間違いなくそれは世界も認めている。

言いたいことは、そこで思考停止してたらもったいないなってこと。

日本の良さだけがベストとは限らない。中華料理だってめちゃ旨い。今正に国同士が揉めてるけど、韓国料理だってめちゃ旨い!若い女子ならファッションやエンタメ(ガールズグループとか)日本にない良さがあると感じてるコたちもいるはず。

その"面白さ"がある、一人一人の人生も、この世界も、とりあえずこの次元には一個しかないんだから、ネガティブな思想に引きづられて見失うのはもったいない。

そして、アジアの歴史、戦後の世界史の中で、人口の1/3が政府&中国に向かって、仕事を休んで、酷暑の下で抗議しに外に出て行く国が、割と近くで起きてるってことが、

マスオさんの声優が変わるってニュースに負けちゃうのは、マスオさんの存在感は確かにデカイのは認めるけども!!、こんなネット社会だからこそ興味を引くネタは実は結構ゴロゴロあるよってことが言いたいわけです。

日本人の一般人の思考の向け先は、ほんとにこんな感じで合ってるかなー、って発信や議論がもっと出てくれば、視聴率が変わってきて、メディアが変わってきて、一緒に面白がれる人が増えるんじゃないでしょうか。

日韓問題みたいなのは、右とか左とか、日本が正しい、韓国が正しい、とかのどっちか論で論じてても解決はしなそうなだって思ってます。

私が生まれる前からずーーーっとメディアも歴史も、その対立構造で議論してて、結果的に民族間紛争も、お金や石油や宗教解釈を巡る争いも、中々解決してません。随分長い間ぶつかり合ってるんですけど実際のところまだ続いちゃってます。

お互いに、相手に対して持っている印象が、『実は双方共平和を望んでいる』という事実に、勝てない。

印象は事実に勝る理論を突破できる日なんて来るのでしょうか。

考察は続きます。


貴重なお時間を使ってお読み頂きありがとうございました。全て無料で書いています。フォロー、スキ、コメント(賛否どちらも)はすごく励みになります!でわまたふらりとお会いしましょう:)