リュック全開の人と偽善者

今年になって、電車通勤を始めたわけだが、
サラリーマンの通勤スタイルは、カジュアルなスーツやジャケパンにリュックがトレンドだ。
ネクタイしてる人なんてほぼ見かけないし、スニーカーの人もたくさんいる。

そんな中、定期的に見つけるのが、リュック全開サラリーマン。
中には全開のままダッシュしている人もいる。
気づいたときに、親切に声をかけてあげるのが、いいのだろうが、
朝は声を出すことすら億劫だし、自分も通勤中のため、そこそこ急いでいる。

端的に言えば、他人のこと。どうでもいいわけだ。
滑って転んで、派手にダイブして、書類を通路にぶちまけようが、
階段を駆け降りる時に、誰かにぶつかった勢いで、パソコンが飛び出し落下した挙句、バラバラになろうが、
その中にUSBメモリが紛れて落ちたにも気づかずに、始末書騒ぎになろうが。
結果、個人情報漏洩に繋がり、その人の会社にダメージがあろうが、降格になろうが、クビになろうが。
もしかしたら、その人には、家族がいるかもしれない。
産まれたばかりの小さい子供がいて、明日のミルクが買えなくなってしまうかもしれない。
来年大学進学を控えているのに、入学金が払えず、必死で努力してきた受験勉強が水の泡になってしまうかもしれない。

いやいや、待て待て。俺にはそんなこと関係ない。
肩をトントンして教えてあげようとした時に、反射的に殴られるかもしれない。
もしかしたら、何かにイライラしていて、無差別殺人をこれから行おうとしていて、切りつけられるかもしれない。
実はそんな大袈裟な話ではないが、新卒の頃から、バックを全開で荷物を落とさないで通勤するチャレンジを、20年以上も続けてきて、今日俺が声をかけることで、そのチャレンジが終わってしまうかもしれない。
そのせいで怒りが爆発し、やっぱり殴られてしまうかもしれない。

そんなこんなを乗り換えの数分の間に考え、結果的には、肩をトントンした。
殴られることも、切りつけられることもなかった。

偽善者の勝利だ。

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