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「図工の先生」じゃないのかもしれない

「図工の先生」という肩書きは、とてもつよくて、「絵、うまいんでしょ!」とか「ものをつくったりするのが好きなのでしょう?」とか、思われることが多いです。

ところが僕は絵を描く人でもモノをつくる人でもありません。嫌いではないですが、実は「めんどくさいなー」と思ってしまうタイプです。

僕は美大や美術系学部学科の出身ではありません。その道を志したことこともありません。それが不思議な縁で、図工の先生に。

僕の経緯を知っていただくと、僕の様々な取り組みに、今回の桜の森再生プロジェクトに「図工の先生なのに?」という疑問から「あぁ、なるほど!」と納得してもらえるかなぁと思って、自分のことを書いてみたいと思います。ちょっとだけお付き合いくださいませ。

大学では経済、都市政策を学んでいました。美術系ではなく、社会系です。学校の先生になりたい思いはありましたが、当時中学高校社会の教員免許で、先生になるのはなかなかの狭き門でした。先生になることを急いではなかったので、卒業後は縁をいただいた大学職員として仕事をスタートすることになりました。

様々な仕事を経験させてもらいましたが、今につながる大きなきっかけはNPO法人CANVASとの出会いでした。

2010年から僕はホームカミングデーという卒業生を対象にしたイベントの企画運営を担当していました。そこで、来場者に30〜40代が少ない、という課題から、親子で足を運んでもらえるようにと考えたのが、子供向けワークショップでした。ただノウハウが全くない。そこで子供向けワークショップの先駆者的な存在であったCANVASと出会い、まず僕自身が造形ワークショップを体験して、体感して、学ぶ機会を得ることになったのでした。

その内容の面白さは圧倒的でまさに目から鱗でした。プライベートでもファシリテーターを経験させていただくなど多くのことを学びました。
2013年には、大学がもつコンテンツとの掛け算で、オリジナルのワークショップをつくる経験もさせてもらいました。CANVASスタッフと建築や化学の先生や学生と、チームになってイベントをつくっていくプロセスはとても充実したものでした。

またCANVASを通じて繋がる人達からも大きな影響を受けました。その1人が、当時すでに図工専科教員として活躍していた渡辺裕樹さん。CANVASのインターン出身であり、ワークショップの研究をしていた彼の図工の授業はとてもユニークで、とても楽しい!僕が小学校の時に受けた図工とはまるで違うものでした。

渡辺さんと出会った頃には小学校教諭への転職準備を始めていたので、「渡辺さんがいる学校に、僕が担任として赴任したら面白いことたくさんできそう!」と話をしていたことを今でも覚えています。当時はまだ僕自身が図工の先生になるなんて思ってもみなかった。そんな選択肢があるなんて知らなかった(美術の免許を持つ人がなるんだろう、と。)学級担任になるもんだと思っていたのです。

そして2014年3月。
教員採用試験合格後の配属先の連絡にて、まさかの図工専科教員となりました。子供向けワークショップの経験を自己PRとしていたから?何故なのかは知る由もありませんが、かくして僕は2014年4月から、突然「図工の先生」になってしまったのでした。

こんな経緯の「図工の先生」なので、"美術教育"ではなく、これまでに学んできたワークショップと渡辺さんの授業が根底にあります。上の図はCANVAS代表・石戸さんの資料ですが、僕の授業で大事にしていることもほとんど同じです。こうしたことを子供達に伝える/共有する/体感する そんな時間をつくっています。これは教員になって5年経った今でも変わりません。そういう授業をつくる人なので、僕は「図工の先生」じゃなくていいのかもしれません。

でも、「つくる」はとても大切な要素。だから今の学校で、それが存分にできる図工の時間を通じて、子供達と同じ目線で、かんじて、かんがえて、なやんで、つくって、伝えて、を楽しんでいます。