8月の内閣改造で経済安全保障相に就任することとなった高市早苗氏は「セキュリティ・クリアランス」の導入に積極的だという。
おやおや、セキュリティ界隈にとって、また制度が増えるのかと思って検索してみたら、なるほど、これが明文化されてない国家とは付き合えないという気持ちもわからなくもない。
というわけでアメリカの国務省のサイトに目を通してみる。
DSS(外交保安局)が個人のbackgroundを調査する。目的は国務省や他の組織で採用してよいか、もしくは権限を与えてよいかの判断材料とすることだ。毎年、38000人以上に対して調査が行われている。
では、どういう手順化というと、candidate(候補者)がアンケートを受け取って、それに記入してhiring office(採用担当)に送るところから始まるようだ。そして採用担当がDSSに送るとDSSは候補者の知人にインタビューしたり、場合によって本人と面談して、調査結果を採用担当に送り返す。
お役所のサイトの情報なので歯切れの悪さを感じるが、大学の授業をオンラインに公開することで知られるCourseraに、より直接的に書かれている。
ずばっとbackground check(身元調査)のようなものだと書かれている。
身元調査というと、まだそんなことしてる企業あるんだっけ?という気になる。日本では平成11年に出された「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事 業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が均等待遇、労 働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容 の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者供給事業者の責務等に関し て適切に対処するための指針」という長いタイトルの指針があり、令和4年の改定でも
と記載が残っている。アメリカ式のセキュリティ・クリアランスが導入されれば、職種によっては本人以外に聞くことが認められることになるわけだ。
Courseraには、もうちょっと突っ込んだことが書かれている。
1983年に最初に施工されたときはnepotism(縁故主義)、つまり能力がある人より縁故がある人を採用することを防ぐためのものだった。これが1941年には政府関係者に指紋採取を求めるよう拡大し、最近ではオバマ大統領の大統領令でも拡張された。
さて、日本には、どういう順番で導入をされていくのだろう。自分が政府のセキュリティ系の仕事をする可能性は低いが、自分の同僚や知人が関わるようなことがあったら調査機関からのヒアリングを受けたりするのだろうか。トータルで見れば必要なことだが、それを受容するための心の準備が必要な気がする。