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「自信のなさ」を生かすファシリテーションのコツ

「ファシリテーター」という言葉をご存知でしょうか。会議やワークショップの司会進行役を指してこう呼ぶことが多いです。

プロの「ファシリテーター」が進行する場に参加した方ならわかるかも知れませんが、自信満々で、堂々としていて、優雅でウィットに富んだ問いを立て、まとめあげていく人がいますよね。ものすごい技で、真似できないなと思ってしまいます。

「私も会議の仕組みを変えたくて、ファシリテーションをやってみたいけど、自信がない」「ワークショップをやりたいけど、上手な人みたいにできない・・・」という話をよく耳にします。

今日は、そんな「自信のなさ」は逆に生かせる強みであるという話をします。

「強いファシリテーターであるべき」という幻想

もしあなたがワークショップに参加して、そこで前に立ったファシリテーターが自信なさげにおどおどしていて頼りないとき、どんな気持ちになりますか?

ちょっとがっかりしたり、苛立ったりするかも知れません。損をした気持ちになる人もいるでしょう。その背景には「グイグイ引っ張っていくファシリテーターこそ理想のファシリテーターだ」という観念が強くはたらいているのかも知れません。

しかし、それでいいのでしょうか?「強いリーダーシップに導かれて、悦に入っているだけで、本当は思考停止しているのでは?」と、そう疑ってみることもできます。

・・・まあ、ここではあまり斜に構えずにいきますが、実は「弱い」ファシリテーターのほうが、参加者の思考や活動の量が増えるとも言えます。ぼく自身も、弱くて頼りなくポンコツなファシリテーターですが、この仕事でかれこれ13年なんとかやっています。

ファシリテーターの立場としては、最初は誰もが初心者で慣れていないので、たとえ自信がなくて頼りなくても、それでもやるしかないのです。

コツは、最初のつかみにあります。ウィットに富んだ冗談で参加者をほぐし、知的なプレゼンテーションで参加者を魅了する必要は、必ずしもありません。

コツ1:最初にさらす

自信がなければ、最初に「私はファシリテーションに不慣れで、自信がなくて、ご迷惑をおかけしてしまうかもしれません。間違えたり、至らなかったりしたら、助けていただけたら嬉しいです」と言ってしまう、という方略があります。

そう言われると、参加者としては「損をした」と思う人もいるかも知れません。でもそう思われても仕方ないですよね。だって不慣れで自信がないのだから。そのことは正直に言ったし。損したと思われた人に対しては、一旦満足してもらうのを諦めます。

ではどうするか。

逆に「それなら、いろいろ手伝うよ」と思ってくれる人もいます。そういう人を味方につけていき、どんどん手伝ってもらいましょう。そうして場を作っていくことができます。頼りにないファシリテーターに力を貸す人があらわれると、どんどんみんな協力的になっていきます。次第に「損をした」と思った人も、だんだんと力を貸してくれるかも知れません。

コツ2:「いいですか?」と確認する

ワークショップでは「こんなワークをやってみましょう」と活動を提案します。自信満々で言われれば「じゃあまあやってみるか」となりますが、頼りなさげに「こんなワークをやってみようかと思うんですけど・・・どうですかね・・・」などと言われたら「やるのやらないの?」となります。

そんなときは「どうですかね・・・」と語尾を曖昧にするのではなく、「いいですか?」と確認をします。

弱いファシリテーターは「こんなワークをやってみたいと思ったんですけど、やってみてもいいですか?」と心もとなげに確認をもとめます。参加者はワークをしにきているので、「いいですよ」と言います。あるいは無言でうなづきます。

この合意が大事なのです。「いいですか?」と確認の問いかけをすることで、うなづきや「いいですよ」という言葉を引き出し、言質を取るのです。この10秒ほどのやりとりで、参加者の能動性は大きく変わります。強制されているという意識は消え、「自分でやるって言ったしやらなきゃ」となります。

そのときに、「ワークの進め方でわからないことはありますか?」と確認をとると、さらに丁寧です。意外と、ワークの進め方について参加者が理解していないことも多いので、頼りないファシリテーションによってワークを進める地盤が固まります。

コツ3:感謝する

確認をして合意がとれたり、至らない点を質問で補ってくれたりしたときに、参加者の方に感謝をします。「たすけてくれてありがとうございます!」と言います。

感謝をされて悪い気がする人はあんまりいないと思いますし、何回も感謝をするのオススメです。

まとめ

「ファシリテーションをしなきゃいけないけど、自信がない」
そんなとき・・・
1. 自信がないことを最初に言ってしまおう
2. 確認しながら言質を取ろう
3. ひたすら感謝しまくろう

ほかにも
「自分の言葉や行動は参加者の"叩き台"であると考える」
「堂々と間違える」
「ワークを詰め込みすぎない」
「無理してまとめず、ただ受容する」
などいろんなコツがありそうです。思いついたら書き足しますね。

*ヘッダーは東京都現代美術館に常設された、鈴木昭男さんの「点 音(おとだて」という作品です。段を登って耳を澄ます、という作品です。何もしなくても、世界は音を立てていることを改めて知ることができる作品です。https://www.cinra.net/report/201904-mot

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https://note.mu/uss_un/m/mc8533a3b4adb

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