学びの場における「関係性のデザイン」とは

ぼくたちはいろんな上下関係のなかで生きています。たとえば、先生と生徒、部下と上司、親と子、師匠と弟子など。「学び」という言葉には「上から下に伝える」というイメージがありますが、他者の学びをうながすために、関わり方を選ぶことができます。

今回は「学びの場づくり」における「関係性のデザイン」について考えていきます。

参加者とファシリテーター

まず、1つの型として苅宿俊文先生による「F2LOモデル」をご紹介します。

Fは、ファシリテーター。体験学習における司会進行役です。Lは、Learnerつまり参加者です。Oは、学びの目的。「どうすれば上手く料理が作れるか」「どうすればよい子育てができるか」など、そのワークショップの中心となるテーマです。

このFと2つのLとOを使って、4角形をつくります。2人のが互いに刺激たり支えあったりする関係をつくることが、このモデルのポイントです。関わり合いのなかで、学びの目的を探求していく。ファシリテーターはその探求を後ろからサポートするようなイメージです。

先生と生徒

F2LOモデルにおいて、まずはじめにファシリテーターは先生のようにふるまいます。このワークショップがどのような目的を持っているのか、どういう手順で目的を探求するかということを、まずは教壇に立って説明します。

その後、先生からファシリテーターへと移行し、最終的には学習者を遠くで見守るだけの「黒子」になっていく。F2LOモデルは、「先生と生徒」の関係から「ファシリテーターと学習者」の関係になり、最終的には「黒子と舞台役者」の関係へと、役割を着替え、関係性を作り変えていくモデルであるといえます。

ぜひ詳しく知りたい方は、苅宿先生らがまとめたこちらの書籍をご参照ください。

乗組員と船長

さて、このF2LOモデルをベースに、ぼくなりに他の関係性のバリエーションについて考えてみました。

例えば「船」における「船長と乗組員」の関係。学習者のスキルに差があり、なおかつ船長が目指すべき方向をつねにジャッジしている場合。建築家の事務所やデザイナーの事務所などは、この関係性が多いように思います。

このとき、「兄弟子」と「弟弟子」のあいだに学習の段階に差があります。兄弟子は船長が目指す学びの目的に近づいているので、「マストに登って周囲を見渡す」といった大事な役割を担います。

一方、弟弟子はまだ船に乗ったばかりで「どうやって学びを探求をしていいか」あるいは「船長がどのような知を持っているか」がわからないので、「船をこぐ作業」といった周辺的な作業で関わります。

この弟弟子のような学びへの入り方を「正統的周辺参加」といいます。

実際にやっているのは「船をこぐ」という周辺的な作業である。だけど、「船を目指すべき知にむかって進める」という目的には正統的に参加している。弟弟子が正統的に「周辺で」参加しているとすれば、兄弟子は、正統的に「中心で」参加していると言えます。

探索者と観察者

上の「船長と乗組員」のような関係に批判は批判があります。「学びのテーマを船長が占有してしまい、乗組員自身が学びのテーマ自体を探求することをしなくなってしまうのでは?」というものです。

それに対して「観察者と探索者」の関係が提案できます。このとき、観察者は空間の設計者でもあります

学びのテーマ自体を探索する範囲をうまく作り出します。狭すぎてもつまらないし、広すぎても漠然としてしましまう。たとえば良い公園は、この範囲のデザインが絶妙です。

その範囲の中で遊んでもらいながら、学びの目的自体を自ら探してもらう。そこから先は「観察者」になる。ただ冷徹に観察するのではなく、参加者たちの探索活動にたいして、さりげなく「いいね」というまなざしやしぐさをおくる。

ぼくが子育てや赤ちゃんとのコミュニケーションにおいて提案しているのは、基本的にこのモデルです。そのうち「探索環境デザイン」という視点で方法論をまとめたいと思っています。

われわれ学びの場をつくる側は「観察者」になることで、たくさんの発見を得られるというメリットがあるので、オススメの方法です。

アスリートとコーチ

似たような関係に「コーチとアスリート」の関係があります。いわゆる「コーチング」ですが、これはもう少し別物かなぁと。

選手個人によって「達成しやすい近い目標」と「達成が難しい遠い目標」を設定し、遠い目標に近づけていく。「達成したかどうか」という成果が具体的にわかるように学びの空間をつくっていくことが、学習を設計する側にもとめられています。

まとめ

ワークショップデザインの1つの視点に「関係性の変化」があります。先生、ファシリテーター、船長、観察者、コーチといった5つの役割を着替えながら、最終的にはワークショップデザイナーが不在の状況を目指していきます。

この「いなくなること」に関しては、またどこかでご紹介したいです。

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このnoteは、建築家で東京芸大の先生でもあられる中山英之さんの公開ゼミで、ぼくがレクチャーしたものを再編した内容です。中山さんとのディスカッションから考えたことは、次回のnoteに書こうと思います。

中山さんの著書「1/1000000000」は本当にマジでオススメです。


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アート/ワークショップコラム

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