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赤ちゃんをもっと「面白がる」こと

これまでこのマガジンでは「赤ちゃんの探索」と題してさまざまな角度から書き綴ってきました。ここからは5回にわたって「赤ちゃんの探索環境」をデザインする方法について考えていきたいと思います。そしてそれを、あらゆる子育ての場に転用する方法を考えたいと思っています。

1回目は、なぜ「赤ちゃんの探索環境」をデザインするのか。
2回目は、赤ちゃんの探索とは何か。
3回目は、赤ちゃんをとりまく「人的環境」について。
4回目は、赤ちゃんをとりまく「物的環境」について。
5回目は、「環境をどのように設計するか」について。

では、始めます。

この文章で伝えたいこと
・子育てを「子どもが自ら育っていくのを、大人たちがなんとか面白がって 手伝っていくこと」であると考える
・世界を知るために探索する赤ちゃんの姿は面白くて感動する。
・赤ちゃんの環境デザインはあらゆる場所で可能なはず

子育てとは?

一般的に「子育て」というと「大人が子どもに対して行う」という印象がありますが、実際は「子どもが自ら育っていくのを大人が手伝う」という感じかと思います。

そして「子育て」の当事者は、子どもであり、親であり、その他大勢の大人である、と考えます。ぼくも子どもについて学んではいますが、親ではない「その他の大人」として「子育て」について書いていきます。

子育ては、生まれてから3歳までの間が最も大変な時期だといいます。言葉が通じず、手も目も離せず、誤飲、アレルギー、怪我、事故といったリスクに囲われ、オムツ替え、食事を与えること、寝付かせることなど、タスクに追われます。

そんななかを1~10まで計画通りにこなすことは不可能に近いでしょう。子育ては、不測の事態に出会いながら自分の記憶や他人の話を頼りに「なんとかやっていくこと」であると思います。そして、そういう本来大変なものを「面白がっている」人たちがいます。「面白がること」は、自分も子どもも世界をも救うのだと思います。

なので、ぼくは子育てというものを「子どもが自ら育っていくのを、大人たちがなんとか面白がって手伝っていくこと」であると考えます。

大人が子どもを「面白い」と思うこと

ぼくは、ワークショップを作ったり研究したりして、子育てに対して周辺で関わっています。そして子どもが好きというよりは、子どもたちのやることをいつも「面白い」と思っています。大げさに言えば、さまざまな物事を学んでいく真っ只中の、命むき出しで生きている人たちの言葉や振る舞いを、いきすぎたエネルギーを、美しいと感じるときがあります。

もしかしたら、これを読んでいる子育てに苦悩するママから「周辺で面白がるなんてゲスい!この大変さを知れ!」と思われてしまうかもしれません。そう言われたらぐうの音も出ません。

でも、少しでもいろんな大人が子どもを「面白い!」と思えたらよくないですか?さらにその「面白がる」というまなざしや思考が、子どもたちの面白い姿をたくさん見るために環境を変えていく方向に作用したらどうでしょう?

ぼくも子どもの面白さに魅了されて、その環境を変える方向に運動を始めた人間の1人です。

なぜ「赤ちゃんの探索環境デザイン」なのか?

ここでは、0歳から3歳になるまでの子どもを「赤ちゃん」と呼びます。(2歳後半はもう少年少女って感じですが)

赤ちゃんは自らの感覚を使って自分の身体や物の仕組みや他者の心を知ろうとします。このように「赤ちゃんが世界の意味を知るために自ら働きかけたり観察したりすること」「探索」と呼びたいと思います。その「探索の活動」は知れば知るほど興味深く、子どもたちの一生懸命な様子には感動を禁じえないです。

このような探索の活動を促す環境を、さまざまな場所に作ることができたら、赤ちゃんたちに探索する姿の魅力を実演してもらうことができます。そうすれば、それを見て「赤ちゃんって面白い!」と思う大人が増えていくでしょう。語るよりもやってみせてもらうほうがはやいはず。

例えば住宅。物件をリノベーションして赤ちゃんと大人にとって魅力的な環境を作ることができるかもしれません。あるいは公共施設。公民館の子ども用スペースに一工夫すれば魅力が増すかもしれません。飲食店も良さそうです。さらには電車の中、車の中、飛行機の中、ショッピングモール、オンライン空間などなど、さまざまな場所が探索環境としてデザインする対象になりうるはずです。

そういうことにいつか役立つことを願って、ここから試論を展開します。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。いただいたサポートは、赤ちゃんの発達や子育てについてのリサーチのための費用に使わせていただきます。