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「乳幼児美術」をつくってみた

「乳幼児美術」とは、アーティストやんツーさんが提出した新しい概念。では作品をつくってみよう。100円均一で買い集められたものをコラージュして、赤ちゃんには知覚を使う玩具として、それでいて大人には「意味のコラージュ」として楽しめるような美術作品をつくってみよう。

わずか1時間ちょっとの時間で作品をつくる。材料を選び、電動ドリルを使って穴を開けて結束バンドで縛ったり、ビスで止めたりして固定していく。パパッとやってそれなりのものができればよいのだが、、、恥を忍んでぼくがつくったものをさらしておきます。

以下、自分へのツッコミ。

「これは遊ばないだろ」
「スカスカ」
「空気入れ無理だろ」
「空気が出るところを上に向けて風でなんか動かそうとしたのか知らないけど、なんかできるのか」
「あとなにそのベルト」
「赤さがきもい」
「あの網みたいなのの工夫のない取り付け方なんなの」
非常に悔しい。

ちょっとぼくのは参考にならないので、他の方の作品の写真を見ながら考えてみましょう!

まずはこちらの作品。ベルトがとりはずしできるようになっていて、そろばんはジャラジャラ。チェーンを引っ張ったりしつつ、綺麗に巻かれたロープの端をひっぱったり巻いてあるところをなぞったり、蛍光のタブを折り曲げてあって動かせるようになっている。あと、写真ではわからないが、左下の白い棒状のパーツにも何か役割があったはず。見事に全てが無意味化してて、物の動きだけが生きている。素晴らしい〜!

目を引くのは右下のシルバー。びろろーんと伸びるようになっている。裏側にはマスクが取り付けられてる。ゴム手袋も引っ張れるようになっている。卓球のラケットはキャンバスからはみ出し、さらに柄の部分にはカメラケースがぶらさがっている。その上にはネクタイが収められているが、これもながーく引っ張り出せる。その横の扇風機もクルクル回る。カメラケースは抱っこ紐に取り付けられたカラビナにぶらさげられたもので遊ぶ様子、パパが抱っこしているときにネクタイを引っ張って遊ぶ様子、布をめくって裏にあるものを取り出そうとする様子などなど、赤ちゃんの行動が目に浮かぶ!

やんツーさんが「自分にはこれはできない!」といって絶賛していたのがこちらの作品。そのままポイって置かれたかのようなランダムさがありながら、絶妙な余白。左側は平面のテクスチャを触り比べ、左上の人工芝はとくに刺激が強い。その横に、キャスターが二つと、よくわからない浮き?のようなものがクルクル回るようになっている。さらに右側にあるのはラップの芯とヘアカーラーで、これだけ回転の軸が違う。その下にちょこんとマジックテープのベルトがあり、テクスチャーの違いと、くっつける動作を促す。一番下にもマジックテープかな?下の部分の余白が、この一番長い黄色のテープをひっぱるように誘う。

なるほどこれ書いてみて思ったのですが、図像的に意味を「読んで」楽しめるものになっているんですね。そこに乳幼児美術の美術たる所以があるのか〜。これはぼくが勝手に「読んだ」ものだけど、赤ちゃんたちにこれらの作品がどう「読まれる」のでしょうか。

そして、作った人がどんな感覚でつくっていたのかも聞いてみたいです。題名とかも聞きたい。赤ちゃんたちが楽しめる「知覚(とくに触覚)」のおもちゃであることを第一に置きつつ、「意味」をコラージュすることに、どれくらい意識したのだろう。時間があれば、そういう会話も深めたかったところ。

あと、もし時間があれば、例えば「キャスター」「マジックテープ」「人工芝」の3つを組み合わせてコラージュしてみよう、という小さなハンズオンがあると、本番に入りやすかったかもしれないです。作品作りの素人としては「パッと思いつくものをやってみよう」というのは躊躇があるので、ウォーミングアップをしたかったところ。(自分がいい作品を作れなかったことへの言い逃れ)

さて次回はこうした「赤ちゃんのおもちゃ(知覚)/大人の美術作品(意味)」の矛盾を引き受ける「乳幼児美術」って、過去に類似したものがあっただろうか。そしてそれらとやんツーさんの提出した概念の差異は!?ということに迫りたいです。

*写真は全て竹久直樹さん(@ne0kitakehisa)によるアーカイヴです。やんツーさんからご好意で写真をご提供いただきました。作品の写真を使わせていただいたみなさんも、ありがとうございます!

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